ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

白い花……。

では、本編どぞ~。



第六百四十四話 はなむけの白い花

 

◇

 

 

 

 

「あっ……!」

 

 

 ファーストバイトも終わり二人が席に戻ると、そろそろ昼の宴も終盤……。

 そんな時アリアの目の前を黒い影が横切る。

 

 

「アリアっ!?」

 

 

 アベルは咄嗟にアリアの身を庇い、横切った影の後を目で追った。

 来賓客も驚いたのだろう「キャー」との悲鳴――。

 

 

 まさか魔物……!?

 

 

「アベル殿っ!」

 

 

 末席で悲鳴を聞いたピエール達は警戒し、アベル達の元へ駆け付けようとしたが、アベルが手を挙げ留める。

 

 

「っ、あれは……さっきのトンビか……?」

 

 

 目で追った先にはトンビの姿が……。

 トンビは船の上、はるか上空を優雅に何度か旋回し、遠くへ飛んで行った。

 

 

「あぁ、びっくりしたー……、ん? あっ、お花……!」

 

「え?」

 

 

 アベルがアリアに視線を戻すと、彼女の席には萎れ始めた白い花が置かれている。

 そういえば あのトンビ、足に花を持っていたっけと二人は思い出す。

 

 

「あのトンビ、これを渡しに来たのかな……?」

 

 

 アリアはトンビの置いて行った、一輪の白い八重咲の花を手に取った。

 甘く爽やかな香りのする名も知らない花は、神の塔の中庭に咲いていた不思議な花――。

 

 他で咲いているところを見たことがない。

 

 

「……この花……、アリアが昔 髪に付けてた花に似てる」

 

「あ、本当だ……はい」

 

 

 アベルがよく見たいのか覗き込んで来るので、アリアは花をアベルに渡す。

 瞬間、ピリッとした痛みがアベルの前腕に走った。

 

 

「ぃっ!?」

 

 

 ――今、腕に痛みが走った……?

 

 

 アベルは痛みに眉を顰める。

 すぐにアリアに花を返した。

 

 

「アベル……? どうかしたの?」

 

「……あの鳥……、もしかして……」

 

 

 ――あのトンビは……あいつの化身……?

 

 

 アリアが首を傾げているが、アベルの脳裏にはルドマンの屋敷の窓を割った時のことが浮かんでいた。

 

 ……今の痛みはあの時と同じ痛み。

 あの時は窓を割った時の痛みかと思っていたが、どうも違うらしい。

 

 アベルはそっと痛みの出た部位に目を下ろす。

 だが、腕輪(バングル)をしているからか、今はよく見えなかった。

 

 

 今夜腕輪(バングル)を外して確認してみようと思い至る――も。

 

 

「ん……?」

 

「今夜……あ、いや、なんでもない。きっとお祝いに来ただけだよ。君は動物とも仲が良いから、どこかで噂を聞きつけたんじゃないかな」

 

「ははっ、そんなわけ……」

 

「……アリア、僕さ」

 

 

 今夜――と口に出し、アベルはアリアに伝えるべきことを思い出す。

 まったくなんてことだ、口にしようとする度に邪魔が入るから、中々伝えられないではないか。

 

 

「う、ん?」

 

 

 アリアは穏やかに小首を傾げた。

 

 

「僕、今日――」

 

 

 アベルが意を決して伝えようとする――と。

 

 

 

 

「アベル、お話中のところごめんなさいね」

 

 

 

 

 無情にも、マザーがやって来て声を掛けてきた。

 

 

 

 

「え……」

 

「……せっかくの楽しい宴の席で申し訳ないのだけど、急用を思い出してしまって……すぐ修道院に戻りたいのです。移動呪文をお願いできるかしら」

 

 

 マザーは申し訳なさそうに眉を下げ、アベルに頼み込んでくる。

 

 

「えぇ……僕、今アリアに」

 

 

 ――僕が今日、誕生日だって伝えたいのに……っ!!

 

 

 今朝【ステータスウィンドウ】を見たら誕生日マークが付いていたのだ。

 だから、今日は自分の誕生日である。

 

 晴れて十八歳――。

 アリアと約束の年齢に達したのだ。

 

 だからこそアベルは朝から上機嫌で、ずっと笑顔だったというのにアリアに伝えられていない。

 

 

「あ、じゃあ私がおく――」

 

「僕が送ります! すぐ戻るからアリアは宴を楽しんでて。仲魔たちも置いてくから」

 

「そ、そう? じゃあ、私ここにいるね」

 

「ああ」

 

 

 アリアが立ち上がろうとすると、アベルはそれを制し、自ら立ち上がった。

 彼女単独で【ルーラ】を使わせるわけにいかない。

 

 ……戻って来なかったら困るではないか。

 

 

「ごめんなさいね」

 

「いえ。では頭を打つといけないので あちらに行きましょうか」

 

 

 アベルは【ルーラ】した際、ここでは帆に引っ掛かってしまうため、マザーを【ルーラ】の影響が出ない場所まで連れて行こうとする。

 

 マザーはその前に……と、アリア向き直り口を開いた。

 

 

「……アリア、今日は本当におめでとう。良いお式でした。またいつでも修道院に遊びにいらっしゃい」

 

「はい、マザー。こちらこそ今日は遠くからありがとうございました」

 

「うふふ、ルドマンさまによろしくお伝えくださいね」

 

「はい!」

 

 

 アリアが深々と頭を下げ、お礼を言うなりマザーは優しい慈愛の笑みを浮かべる。

 怒られなくて良かった……。アリアは内心ドキドキだったがマザーの満足気な笑みにほっと胸を撫で下ろした。

 

 そうしてアベルはマザーを伴い、頭をぶつけない位置まで彼女を連れて行くと【ルーラ】を唱える。

 

 

 

 

 ……アベルとマザーの身体は瞬く間に空の彼方へと飛んで行った。

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

 アベルがいなくなっても宴は続き、アリアは独り残ったが、ビアンカやフローラたちに囲まれ楽しい時間を過ごす。

 

 

 その間に修道院へ向かったアベルは早々に修道院前へ到着――。

 

 

「移動呪文は便利ですね」

 

「ははは、ですね。ルーラでいつでもこちらに遊びに来れるので、時々泊まらせて下さい」

 

 

 あっという間に到着したことに、マザーは修道院を目前に目を瞬かせていた。

 

 今度修道院に寄ったら泊めてもらおう。

 きっとアリアも喜ぶはず……とアベルはあらかじめお願いをしておく。

 

 

「ええ、もちろん」

 

 

 マザーは快く首を縦に下ろした。

 

 

「では僕は戻りますね」

 

「あっ、アベル!」

 

 

 踵を返し、立ち去ろうとするアベルにマザーが声を掛ける。

 

 

「はい……?」

 

「……実は、あなたに話しておきたいことがあるのです。あの子と結婚したから言っておくべきだと思って、こうして送ってもらったのだけど……」

 

「え」

 

「……特別室について来て下さるかしら」

 

「はい……」

 

 

 ――なんだ……?

 

 

 さっきまで朗らかな笑みを浮かべていたマザーの顔が急に真顔になり、アベルは不穏な感じがしてマザーの後ろについて行く。

 

 

 ……修道院内に入ると、以前と同じ面々がアベルに会釈したり、手を振ったりしてくれた。

 そうして特別室に入ると、ショコシスも居て、彼女はマザーからコソコソ耳打ちされると早々に部屋から出て行く。

 

 マザーは人払いをしたようだ。

 

 

「アベル、そのままちょっと待っていて下さい。確か……この辺りに……」

 

「……?」

 

 

 マザーがベッドの下にある収納を漁り、なにかを探している。

 アベルは言われた通り待つことにした。

 




アベルの誕生日なんですが、現在はシステムで気付いていますが、サンチョがいればわかるかな~と思ってます。
アベル、自分の誕生日把握してないんだ……。

そうそう、白い花は実は架空の花でして。
一応モデルの植物があったりします。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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