ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

アベルはご機嫌みたいです。

では、本編どぞー!



第六百五十三話 ご機嫌アベル

 

 

 

 

 

 独り別荘を出たアベルは早速、サラボナの町の散策を始める。

 

 

「ああ……なんていい朝なんだ……!! ああ、今世界は僕を中心に回っている……! おはよう小鳥たち、いいお天気だね。さっきの歌は君たちがさえずっていたんだね? いい歌だったよ……! ラララ~~♪」

 

 

 チュンチュンと、道端に群れるスズメたちに向けてアベルが話し掛けたものの、スズメたちは一斉に飛び立ってしまった。

 

 

「はははっ! すぐ逃げるなんて、僕の奥さんみたいに恥ずかしがり屋さんなんだなぁ! あっ、フン……、ふふふ……運が付くとはこのことだね……!」

 

 

 ――僕は運がいい……!!

 

 

 アベルはスズメのフンを踏んでしまったが、笑顔のままである。

 

 

 ……昨日に引き続き、今日のアベルもかなり機嫌が良いようだ。

 

 

「わんわん」

 

「あっ、リリアンおはよう! 君は早起きだね。ねえ、聞いてくれないかい? 僕、昨日ね――」

 

 

 サラボナのメインストリートに至る私道を行き、ルドマンの屋敷に差し掛かると、アベルの姿を見つけたリリアンが嬉しそうに駆け寄って来る。

 アベルはにこにことリリアンの頭を撫で、昨夜のことを話しだしたのだが――。

 

 ……リリアンと戯れるアベルの背後でガチャ、と。屋敷の外扉が開く音がした。

 

 

「……あら、アベル?」

 

「え?」

 

 

 名前を呼ばれ、アベルはその声に振り返る。

 

 

「おはよう。早いわね、アリアはどうしたの?」

 

 

 そこにはビアンカと、ルドマンの部下らしき男たちが四人――屋敷から出てきていた。

 

 

「ビアンカ! おはよう、もう帰るのかい?」

 

 

 アベルはリリアンから離れ、ビアンカの元へ。

 

 

「ええ。あなたたちの結婚式も無事見届けたし、ルドマンさんと提携も結べたし、そろそろ帰って仕事しなくちゃね。この人たちが山奥の村まで送ってくれるの」

 

「そっか。送って行こうと思ってたけど大丈夫そうでよかった」

 

「ふふふっ、ルドマンさんが手配してくれたの。かなり腕の立つ人たちらしいから安心ね。で、アリアは?」

 

 

 ビアンカはチラッとルドマンの部下たちに目をやり、にっこりと微笑む。

 ルドマンの部下たちはビアンカに微笑まれ、デレデレと頭を下げた。

 

 四人ともそこそこ強そうな戦士や魔法使い、僧侶……と言った風貌。

 

 ……これならビアンカも安全に村に帰ることができそうだ。

 

 

「え? あ、アリアは疲れてるみたいでまだ眠ってるよ」

 

「ふーん……そうなんだ。ちょっと顔見てから帰ろうかと思ったけど、起こしたら可哀想だからやめとくね。……また会えるもんね?」

 

「あ、うん……! スパが完成したらきっと行くよ……!」

 

「ふふっ、よかった! 楽しみにしてて! アベルたちには温泉を楽しんでもらって、売上に貢献してもらわなきゃだもの」

 

 

 それじゃ……と、笑顔で告げ、ビアンカ、彼女はアベルに背を向け歩き出す。

 

 

「……ビアンカ」

 

「ん……?」

 

「幸せになってね」

 

 

 アベルが呼び止めると、ビアンカが振り返った。

 

 

「…………うん、私、幸せになるわ。あなたが居なくても、幸せになれるってこと、証明してあげる……」

 

 

 彼女は結った髪を(もてあそ)びながら小さな声で告げる。

 

 ……アベルの耳には届かなかった。

 

 

「え?」

 

「……ふふっ。後悔しても知らないからね!」

 

 

 ビアンカは笑顔でそれだけ言ってくるりと反転、「さっ、行きましょう!」とルドマンの部下たちを伴い去って行く。

 

 

「えっ、それどういう……?」

 

 

 アベルはその場に独り取り残され、去って行くビアンカを見送った。

 

 

「…………? 今のはどういうこと……??」

 

 

 ビアンカの発言の意味がアベルにはよくわからない。

 だが、彼女が幸せになろうとしていることはわかる。

 

 

 別世界では何度も愛した女性――ビアンカ。

 この世界で自分とは結ばれなかったが、彼女はきっと幸せになるだろう。

 

 

 “ビアンカ、どうか君も幸せに。

  いつか再会した時はきっと心から祝福できると思うから。

 

  その時はなにかお祝いの品を贈らせてもらうよ。”

 

 

 

 

 ……アベルはもう姿が見えなくなったビアンカに、遠くから幸せを祈った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて――。

 

 

 ビアンカも行ってしまったことだし、仲魔たちの様子を見てから買い出しに行こう――。アベルは町の入口に向けて歩き出す。

 

 教会と噴水広場の前を通り抜け、馬車に戻ってキャビンを覗けば、ピエールがマットレスに伏していた。

 

 

「キャ~♡ アベルんおはよ~ン♪」

 

 

 ピエールに声を掛けようとするも、それより先にアベルに背を向けメイクをしていたキャシーが見返り、声を掛けてくる。

 

 ……キャシーの唇がツヤッツヤ。睫毛もバッサバサ。相変わらずのバッチリメイクだ。

 

 以前のアベルならキャシーに無愛想に対応しただろうが、今日のアベルはひと味違う。

 

 

「おはよう、キャシー。久しぶりだね」

 

 

 アベルの顔は爽やかな笑顔だった。キラースマイルとでもいうのか……、ここに町の女性でもいたら頬を赤く染めていたことだろう。

 

 

 ……ところがそんな笑顔を向けられたのに、キャシーの反応はといえば。

 

 

「ネ~♡ 昨日はおめでと~ン♡♡」

 

「ありがとう」

 

 

 キャシーもガンドフという恋人ならぬ恋魔物がいるからか、アベルの笑顔を見てもサラッと流した。

 あれほどアベルに惚れていたというのに、恋は盲目。今はガンドフ以外は眼中にないということなのか。

 

 だからといって、アベルは特に気にすることもなくはにかむ。

 

 ……キャビンの奥の方でもパペックが起き上がり、挨拶のようにコキコキと肩を鳴らすので、そちらにも笑顔を向けておいた。

 

 久しぶりの再会の挨拶もそこそこに、アベルはマットレスに伏せるピエールに声を掛ける。

 

 

「ピエール大丈夫かい……? もしかして二日酔い……?」

 

「ぅ……ぉ、ぉはようございます、主殿……、ご名答……」

 

 

 ピエールは頭痛が酷いらしく、頭を抱えて身体を起こそうとするがそのまま固まった。

 

 ……起き上がれないらしい。

 

 

「……今日はメッキ―と交代しようか……。メッキ―」

 

「メッキッキッ(やっと私の出番ですね~!)」

 

 

 まだキャビンで丸くなり寛ぎ中のメッキ―を名指しすると、メッキ―は嬉々として起き上り、嬉しそうに翼をはためかせた。

 

 

「主さまぁ、アリアちゃんは~??」

 

「アリアはまだ寝てるよ。だから出発は午後になると思う。それまでみんな待機ね」

 

「は~い!」

 

 

 アベルの指示にスラりんが仲魔を代表して返事をする。

 小さく「りょ、りょぅかぃしま……し、た……」とピエールからも声が聞こえ、アベルは馬車を後にした。

 




一番いい時なんですかねぇ。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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