ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

656 / 822
いつもありがとうございます、はすみくです。

好きな子の寝顔が見られるって幸せなことなんだ。

では、本編どぞ。



第六百五十四話 眠り姫を眺めて

 

「よし! 朝食でも買って行こうか……!」

 

 

 アベルは独り、酒場に向かう。

 酒場で軽食を作ってもらうつもりなのである。

 

 

 

 

 ……カランコロン。

 

 

 

 

 酒場の扉を開きドアベルが鳴ると、酒場のマスターと給仕のバニーガールがやってきたアベルに視線を集中させた。

 

 酒場はまだ朝だというのにすでに営業中のようで、男性客が独り【カウンターテーブル】に伏せている。

 彼の前には酒……。

 

 昨夜も宴会場で彼を見た気がするのだが、まあいい。

 アベルは特に話し掛けることなく一見するだけに留めた。

 

 

「おはようございます。昨日はありがとうございました」

 

「お客さん、いい人と結婚できてよかったねえ」

 

「ははは、はいっ! ありがとうございます」

 

 

 アベルが【バーカウンター】に向かいマスターに話し掛けると、目を細めてくれる。

 アベルは照れながら頭を下げた。

 

 

「それで今日はどうしたんだい?」

 

「あ、軽食をお願いできないかと。持って行きたいんですけど……」

 

「ああ……お客さんは旅人だったね。今用意するから座って待っててくれ」

 

「すみません、お願いします」

 

 

 マスターに軽食をお願いし、アベルは近くの席に着席する。

 

 するとマスターは【小麦】と【タマゴ】を取り出し、調理を始めた。

 いったい何を作るのだろう――、アベルはテーブルに肘をつきながらマスターの手元に集中する。

 

 

(これって……前にアリアが作ってたやつかな……?)

 

 

 なんとなく知っている料理の気がして、出来上がりを楽しみに待つことにした。

 

 

「あたしもなんだか結婚したくなっちゃったな」

 

 

 アベルがマスターの調理工程を眺めていると、給仕のバニーガールがアベルの隣にやって来て呟く。

 

 

「はは……」

 

「お兄さんは彼女を選んだのね。実は誰を選ぶのか心配していたの。やっぱりお兄さんは素敵な人だったわね♡」

 

 

 照れるアベルをバニーガールが褒めると、アリア以外に褒められ慣れていないアベルは全身がむず痒くなった。

 

 

「昨日は飲みすぎたなあ。よーし、むかい酒だ! グビグビグビグビ。う! ゲロゲロ……」

 

 

 不意に伏していた男性客が顔を上げた――と思ったら酒をがぶ飲み。気持ち悪くなったのか嘔吐し始めてしまう。

 

 

「わっ、お客さん!? 飲み過ぎよっ」

 

 

 ……バニーガールは慌てて対応しに走って行った。

 

 

(あの人……やっぱり昨日宴会場にいた人だ……。かなり飲んでたはずだけど……よく飲むなぁ……。)

 

 

 嘔吐する瞬間を見てしまったアベルは「うっ」と口元に手を当てつつ、まだ飲んでいたのかと感心してしまう。

 

 そうしてバニーガールが客を介抱している様子を、なんとはなしに見ている間にマスターがアベルの元へとやってきた。

 

 

「はいよ、アベルさん。ホットケーキだ。冷めてもおいしいよ」

 

「ありがとうございます、助かります」

 

 

 ――やっぱり【ホットケーキ】だった!

 

 

 アベルはマスターに【ホットケーキ】の入った紙の箱を手渡された。

 

 

 キャンプでもアリアが時々作ってくれる料理――【ホットケーキ】。

 【パン】とは違い発酵が要らないから手軽にできるし、ジャムを付けて食べても良し、チーズをのせて食べても良し。

 

 アリアの【ホットケーキ】は冷めてもふわふわのままで、小腹が空いた時には重宝している。

 アベルも好きなメニューである。

 

 

 

 

 ……【ホットケーキ】を手に、アベルは酒場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、道具屋で買い出しも済ませたし……アリア起きてるかな?」

 

 

 酒場を出て、道具屋で【やくそう】や【せいすい】を買い足し、アベルはルドマンの別荘へ戻る。

 

 

 

 

「アリア~♡」

 

 

 

 

 アベルは勢いよく別荘の扉を開いた。

 ところがアリアからの返事はない。

 

 ベッドには眠り姫がすやすやと穏やかな顔で眠っている。

 

 ……まだ二度寝から目覚めていないようだ。

 

 

「……カワイイ……♡ ああもう、なんて可愛いんだアリア♡」

 

 

 アベルはベッドに向かうと傍らで床に膝をつき、眠るアリアの顔を眺める。昨日から顔が緩みっぱなしだが、勝手に表情筋が動くのだから、しょうがない。

 

 昨夜はたくさん泣かせてしまったが、涙を零すアリアも可愛くて愛おしくて仕方なかった。

 彼女が声を上げる度にぞくぞくと背中を這うあの感覚。やっと自分のものにできたという達成感。すべてが満ち足りた多幸感――。

 

 今ならゲマも許せるかもしれない……そう思ったが、アベルはやっぱりゲマだけは許さない。

 

 

 彼女の悲しい泣き顔は見たくないが、あんな涙が見られるなら何度でも泣かせたい。

 

 

 ……アベルの顔はついニヤニヤと――。

 

 

 傍から見れば少々気持ち悪いかもしれない。

 だが、そんなことは今のアベルにとってはどうでもよかった。

 

 

 ……こうして彼女の顔を眺めるのは何度目だろう。

 

 

 昨日結婚し、今日からアリアと夫婦として旅をする。

 きっとこれからも二人三脚、今まで通り楽しい旅が続いていく。

 

 母に近付くにつれ、魔物との戦いは激しくなっていくだろうが、彼女がいれば穏やかで温かな癒しの場所が常に傍にある。

 

 

 ……アベルはアリアが自然に目を覚ますまで、飽きもせずにずっと寝顔を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゆっさゆっさ。

 

 ゆっさゆっさ。

 

 

 

 

「ん……?」

 

 

 ……しばらくして、アベルは微睡んでいたのか、肩を揺すられ目を覚ます。

 

 

「ぁ……アリア♡ ……起き……って……あ゛っっ!!」

 

 

 アベルが目を覚ますと、アリアが布団に胸元を隠し半身を起こしていた。

 ところが、アリアを見たアベルは目を大きく見開く。

 

 

「……?(アベル?)」

 

 

 アリアは声が出せないからと、頭を傾げながら首を擦った。

 寝て起きたが、声が出ない。

 

 ……まだ咽喉(のど)は回復していないようだ。

 

 

「っ、ごめん、アリア! ちょっと待ってて……! す、すぐ戻るからっっ!!」

 

「…………?」

 

 

 アベルはアリアを見るなり慌てて別荘を出て行ってしまう。

 いったいどうしたのだろう……、アリアは目を瞬かせ、アベルのいない間に着替えることにした。

 




アベルはいったいどこへ行ったのか……は、次回!

さて、長い結婚式が終わったので、今週から水木とお休みします。

----------------------------------------------------------------------
読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。