ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

さて、そろそろ出発しますかね~と。

では、本編どうぞっ。



第六十五話 冒険しよう

 

 アベルとアリアは祈りを捧げ、教会を後にする。

 階段を下りて、川沿いの元来た道を二人は黙って歩いて行く。

 

 

「がうがうっ」

 

「ぁ、うん、わかってるよ……」

 

 

 プックルがアリアの服の裾に齧りついてじゃれて来るが、アリアは黙りこくるアベルを窺いながら歩いていた。

 

 

 “ラインハットに行っちゃだめだ”

 

 

 アベルは何でそんなことを何度も口にしていたのだろう……?

 それに、何で涙なんて……?

 

 

 アリアは教会を出てから一言も発しないアベルが不思議で、思い詰めたような横顔に何とも言えない居心地の悪さを感じる。

 アベルにもう少し一緒に冒険したいと言われたが、まだ返事はしていなかった。

 

 

「…………アリア」

 

 

 不意にアベルがアリアの方へと顔を向ける。

 

 

「……あ、……ん?」

 

「……一緒に来てくれるよね……?」

 

 

 おずおずと、アベルは告げる。

 普段のアベルらしくない、弱々しい口調だった。

 

 

「ぁ…………。…………っ、アベルはラインハットに行きたくないの……? そんなに遠い所なの?」

 

「…………ううん、ラインハットはそんなに遠くないよ。サンタローズを出て東に行った先の大きな河を渡った先にある国なんだ」

 

 

 アベルはアリアに説明し、はっとして口元を手で覆う。

 

 

 何で、僕はそんなこと(・・・・・)を知っているの……?

 

 

 ああ、そっか。

 

 

 また(・・)だから……か。

 

 

 アベルは合点がいって、ふぅと息を吐いた。

 妖精の世界でも思ったが、“また(・・)”が直前よりも少しだけ、先がわかるようになっていることに気付く。

 そのことが何を意味しているのかは未だわからないままだが、事前の記憶が役に立つならそれもいいかと思うのだった。

 

 

「へぇ……、近いんだ。それなら……もう少しだけ付き合うよ。呪文使えるし、お礼しなきゃね。すぐ戻って来るんでしょう?」

 

「え」

 

「え? 戻って来ないの?」

 

「あ、いや……戻って来る……? かな……」

 

 

 アリアの言葉にアベルは首を捻る。

 アベルの中の、また(・・)が反応しないのだ。

 

 

「ふふっ、何それ。戻って来なきゃ、サンチョさん淋しいでしょう?」

 

「ははは……。そう、だよね……」

 

 

 本当に、肝心な時に役に立たない記憶だなぁと、アベルはアリアの苦笑に合わせて笑う。

 

 

「あ、ねえ、一緒に行くなら私、パパスさんに姿見せてもいいかな?」

 

「えっ?」

 

「ほら、ポワン様がこっちに送ってくれた時、私の意思で姿を見せられるかも~って仰ってたじゃない?」

 

 

 私が恐れを抱かなければ、姿を現すことが出来るかもしれない。

 

 

 アリアはそう思ったのだった。

 ところが、

 

 

「…………アリア。それ、ちょっと待ってくれない?」

 

 

 アベルは難色を示す。

 

 

「えぇ? どうして……?」

 

「っ、だって、アリア子供だから家に帰れって云われるかもしれないよ? そしたら、一緒に冒険なんて出来ないじゃないか」

 

「そ、そうだけど、見えないのは不便で……!」

 

「ラインハットまで行っちゃえば、無理矢理帰そうなんてしないと思うから、僕がいいって言うまで我慢して?」

 

「ぐ……。確かに一理ある……」

 

 

 アリアはアベルに諭され「これも恩返しだもの、しょうがないなぁ」と、了承したのだった。

 

 

 

 

 

 

 アリアが納得した頃、二人は村の出入口へと辿り着き、待ちぼうけのパパスを見つける。

 

 

「父さん、お待たせっ」

 

「おお来たか、アベル。今度の行き先はラインハットのお城だ。前の船旅と違ってそんなに長い旅にはならないだろう。この旅が終わったら父さんは少し落ち着くつもりだ。お前にはいろいろ淋しい思いもさせたが、これからは遊んであげるぞ」

 

 

 アベルが声を掛けると、パパスは優し気に目を細め「戻ったら何をして遊ぶか考えておくといいぞ」と大きな手でアベルの頭を撫でた。

 

 

「………………っ、やったー! じゃあ、肩車でしょー? それから……」

 

 

 アベルも嬉しいのか満面の笑みでパパスを見上げる。

 

 

 だが、心の中は違っていた。

 

 

 ……父さん、僕、本当はラインハットに行きたくないんだ。

 ラインハットに行っちゃだめだって、僕の中の何か(・・)が訴えてる。

 

 

 けど、どうしてかな。

 

 

 それと同時、行かなきゃいけない(・・・・・・・・・)気がするんだ。

 

 

 彼女(アリア)が居るから、大丈夫……だよね?

 

 

 一抹の不安を胸に、アベルは優しい父の顔を見つめていた。

 

 

「はっはっは。肩車ならすぐに出来るぞ? もっと他にはないのか? 例えば、釣りや、隠れん坊、工作に、楽器なんかもいいな。字の練習も付き合ってやらないとな。礼儀作法なんかは……違うか。サンチョに相談だな」

 

 

 パパスはアベルに体験させたいであろう事柄をあげる。

 

 

「字の練習に礼儀作法……? 何それつまらなそう」

 

「わっはっは。まぁ、そう言うな。お前には色々教えてやりたいのだ。知っておいて損はない。先ずは、お前の好きなことをしよう。やりたい事をたくさん考えておいていいからな」

 

 

 アベルが頬を膨らますと、パパスは白い歯を見せて頭をぽんぽんと撫でる。

 父の笑顔にアベルは帰った後のことを考えることにした。

 

 

 帰ったら、先ずは肩車をしてもらって……、かくれんぼでしょ……?

 それと、字は読めるから書くのはそんなに苦労しないから要らないかな。自分で練習すればいいよね。

 礼儀作法よりも剣の稽古をつけてもらおうかな……?

 

 釣りは……行ってみたい!

 

 父さんとする遊びならきっと何でも面白いよね!

 

 

 アベルは帰った後のことで頭の中をいっぱいにするよう努める。

 アリアもアベルの笑みに顔を綻ばせていた。

 

 

 あ、でも、アリアはどうしよう……?

 

 

 ちらっとアリアに視線を送る。

 

 

『どうしたの……?』

 

「ううん。何でもない」

 

 

 アリアは身寄りが居ないし、一緒に暮らしてもいいかもしれない。

 

 

 そんなことを考えるアベルだった。

 

 

「さて、行くとするかっ!」

 

「うん!」

 

 

 パパスの掛け声で、アベルはアリアの手を取る。

 

 

『……手は繋がなくてもついて行くけど……?』

 

「アリア、すぐ居なくなるからね」

 

 

 こそこそとアベルは小声で話し、パパスの背中を見上げる。

 パパスは門番と留守の間の話を二言三言交わして、歩き出す。

 その後ろにアベル達も続いた。

 

 

 父さんがいれば魔物がいくら現れてもへっちゃらだ。

 僕も強いし、プックルだっている。

 アリアも呪文が使えるようになったし、頼もしい。

 

 早く用事を済ませて帰ってこよう。

 

 そして、村に帰ったらアリアと一緒にまた冒険するんだ。

 また(・・)とは違う、別の冒険を。

 

 父さんが旅に出るなら説得して、一緒に連れて行ってもらう。

 

 

 もちろん、アリアと一緒に。

 

 

 アベルは隣で「私そんなにいなくなったりしてないと思うんだけど~?」と首を傾げる少女に笑い掛ける。

 

 

 君は、また(・・)に疲れた僕に、新しい何か(・・)を見せてくれる。

 

 

 次は、何を見せてくれるの?

 

 

 出来ればそれは、

 

 

 楽しいことだといいのだけど。

 

 

「いってらっしゃい、パパスさん!」

 

 

 村の出入口で手を振る門番に一度だけ振り返り、アベル達はサンタローズを後にした。

 




漸くサンタローズを出ます。
アリアさん、妖精の世界へはしばらく戻りません……。
というか、戻れますん……どっちだwww

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感想など頂けたらめっちゃ嬉しいです。

読んでいただきありがとうございましたっ!

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