ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

メモに書いた呪文を……?

では、本編どぞ。



第六百六十一話 メモに書かれた呪文

 

 

 

 

 

「この本のことでしょうかね……?」

 

 

 学者、デズモンが分厚い赤い本をアベルに差し出す。

 

 アベルたちが城の二階、西の部屋にいるデズモンの元へ訪れ、ルドマンが昔読んだという変わった装丁の本について訊ねると、一冊の分厚い本をテーブルの上、うず高く積まれた中から取り出し持って来てくれたのだ。

 

 

 ……あっさりと見つかった。

 

 

 その本の表紙は赤い――のだが、でかでかと中央にオレンジ色の握り拳が突き出すように描かれており、拳部分が浮き出ているように見える。

 なるほど、変わった装丁だ。

 

 

 タイトルは、“世界の――――、――――イム~エン――――”

 

 

 本が古すぎてタイトルが掠れ一部読み取れないが、世界のことについて書かれたものらしい。

 

 

「生き物の研究過程において、古い文献を探しておったところ、希少なこの本と出逢ったのだが、大した情報は得られなかった。どうやらこの本は土地に関することが主で、その土地での主な産業やら採れるものなどが記載されておるらしい。生き物に関しては大昔に存在していた魔物が少々載っているだけ。必要ならばお貸ししよう」

 

 

 ……数百年前の世界のことが書かれた希少な本らしいが、デズモンには無用の長物だったようだ。

 快く貸してくれた。

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

 アベルは“むかしの本”を手に入れ、ラインハットの城を出ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ……もうこんな時間か……」

 

 

 ラインハットの城を出ると、空が夕焼けに染まり始めている。

 

 

「……今日はサラボナに戻らず宿屋で一泊しようか」

 

「……」

 

 

 アベルの提案にアリアは首を縦に下ろした。

 

 

「部屋に着いたら、さっそく本を読んでみよう。プックル、メッキ―、君たちは馬車に戻っててね」

 

 

 アベルはプックルとメッキ―に馬車へ戻るよう指示を出し、宿屋に足を向ける。

 

 本が分厚いから目的のページを探すのが大変だろう。

 せっかく宿屋で二人きりだが、今夜は自重して、アリアの声を取り戻すことに集中することにした。

 

 

「ようこそ旅の宿に。夜道を歩かれて、さぞやお疲れでしょう。ひと晩64ゴールドになりますが、お泊まりになりますか?」

 

「はい」

 

 

 宿屋に辿り着き、アベルは64ゴールドを出すと、指定された部屋に向かった。

 ……ここに来る前に、城下町で夕食は済ませてある。

 

 

「アリアお疲れさま! 今日も疲れたよね? 君は先に寝てていいからね」

 

「……」

 

 

 部屋に着くなりアベルはベッドに腰掛け、手に入れた“むかしの本”を開いた。

 アベルの顔は真剣そのもので、当該のアイテム名を探るべく文字を追い始める。

 

 

 アリアもチラッと中身を覗き見たが、文字がところどころ擦れており、読みにくい。また、ずいぶんと癖の強い文字で綴られていて、スラスラと読むのが困難そうな代物だ……昔の文体なのだろうか。

 読みにくい文字を追い続けるアベルに感心する。

 

 本来なら自分が探すべきものなのに、アベルは先に寝ていいと告げ、独りで読み始めてしまった――。

 

 ここは口出しせず彼に任せた方がいいのだろうか……。迷うがそもそも声が出せないから口出しすることができない。

 

 

 ――申し訳ないけど、ここはアベルにお任せしちゃおうかな……。

 

 

 一心不乱に文字を追い続けるアベルをじっと見ながら、アリアはまだ眠るつもりはないが、自らも隣のベッドに腰掛けた。

 

 

(アベルって格好いいなぁ~……。この人が私の旦那さまかぁ……。えへへ♡)

 

 

 ――……すき、アベルだいすき……♡

 

 

 真剣に本を読み込むアベルの姿に、アリアはしばし見惚れる。

 

 

 

 

 ……そしてしばらく経ち……――。

 

 

 

 

「ふぅ……、なんとか三分の一は読んだかな……」

 

 

 アベルは本から顔を上げて首を左右に捻った。コキコキッと音が鳴る。

 ずっと下を向いていると首が凝るものだ。

 

 少し休憩でもするかと、アベルは隣のベッドに目を移した。

 

 

「……あれ、アリアまだ起きてたの?」

 

「……」

 

 

 アベルがアリアを見ると、彼女はまだ起きていて、なにやらメモを認めている……。

 

 

「なにそれ? メラと、ヒャド……? なんで呪文を……?」

 

 

 メモ用紙は小さく切られており、一枚一枚に呪文名が書かれていた。

 

 

「……」

 

 

 “喋れなくても呪文が使えるかなって、試してみようと思って”

 

 

 アリアはまだ切る前のメモ用紙にそう書き綴った。

 

 

「えっ、それは無理なんじゃ……」

 

 

 アベルが驚きの表情を見せるが、アリアはにこにこと“試してみたいの”と手を動かす。

 

 

「……、やってみてくれるかい?」

 

 

 アベルの問い掛けにアリアは頷く。

 そうして彼女は書いた小さなメモに祈るように口付けてから、放り投げ、メモに向けて手を翳した。

 

 

 するとなんと、そのメモが小さく燃えた……!

 

 

「えっ」

 

「!!(大変っ! 火事になっちゃう!!)」

 

 

 アベルが呆気にとられ目を丸くする中、アリアは驚きに目を見開く。

 メモに書かれた文字は“【メラ】”。紙は燃え、威力は小さいもののアリアは見事呪文を発動させた。

 

 だが、ここは宿屋の一室である。

 火など熾こしては火事になりかねない。

 

 アリアは慌てて火を消すべく、床に落ちた小さな火を叩き消した。

 

 

「……っ、アリアっ!! 手見せて……!」

 

 

 アリアが素手で火を消しているのを目にしたアベルはハッと我に返り、彼女の手首を掴む。

 彼女の手の平は少々火傷し、赤くなっていた。

 

 

「ホイミ……! ああもう、なんで素手で火を消すんだ!? 足で踏み消せばよかったのに……!」

 

「……」

 

 

 アベルが回復呪文を掛けながら、ふぅふぅとアリアの手の平に息を吹き掛ける。

 彼は眉を下げ心配そうな顔で、手に火傷の痕が残っていないか確認するとアリアを真っ直ぐに見つめた。

 

 

 “ごめんなさい”

 

 

 ……アリアがゆっくりと唇を動かす。

 アベルはそれを読むと“ふー……”なんて、鼻息を漏らして弱り目で微笑んだ。

 

 

「君が怪我したらと思うとぞっとする。心配なんだ、気を付けてね?」

 

「……」

 

 

 ――アベルの過保護……。

 

 

 アベルの手がアリアの頭にのせられ、前後に動く。

 アリアは過保護だなと思いながらも、アベルの手の感触に心地好さを感じていた。

 

 

「……アリア、さっきのメモに“メラ”って書いたのかい?」

 

 

 アベルに問われ、アリアがコクコクと首を縦に下ろす。

 まさか上手くいくとは思わなかったが、呪文が発動したことは純粋に嬉しい。

 

 ……アリアは書いたメモをアベルの手の平にのせた。

 

 

「……ヒャド、バギ……イオ……か。アリア、君ってやっぱり凄い……!」

 

 

 小さなメモに書かれた攻撃呪文を一枚一枚アベルが読み上げる。

 さっき燃えたのは【メラ】だったらしい。

 

 

 アベルはメモを読み終えると【ステータスウィンドウ】を表示させた。

 




本はあっさり見つかりました。
ほんでもって、アリアは喋れないのに呪文が使えるというチート能力の持ち主。
いや、今更だけども。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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