ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

さえずりのみつって知ってます?

では、本編どぞ。



第六百六十四話 さえずりのみつ

 

 アベルは“むかしの本”を手に取り、パラパラとページを捲ると、(しおり)を挟んでおいた箇所を開いてアリアの前に突き出した。

 

 そこには【さえずりのみつ】という名の、エルフが作った秘薬があると書かれている。

 

 

「この、さえずりのみつっていうのが、王が失った声を元に戻したらしいよ」

 

「……(へえ……、って、さえずりのみつ……?)」

 

 

 ――あれ? 【さえずりのみつ】ってなんか聞いたことあるかも……?

 

 

 どこで聞いたんだっけ……。

 

 

 アリアは聞いたことのある名称に記憶を辿る。

 あれは……。

 

 

「……!(そうだ! あれは確かドラクエⅣじゃなかった……?)」

 

 

 ――ドラクエⅣの第二章、確かアリーナ編でそんなアイテムをゲットした気がする、まさかそれ……?

 

 

 確か、ドラクエⅣは四章まではクリアしていたような……?

 

 

 思い出そうとしても昔過ぎてストーリーはよく思い出せないが、アイテムの名前だけは記憶していた。

 思い至ったアリアがポンと手を叩き合わせると、アベルが目を瞬かせる。

 

 

「え、アリア……? ひょっとして知ってた……?」

 

「……」

 

 

 ……アリアはメモを認める。

 

 

「……ドラクエⅣで出てきたから知ってるかも……? え、どういうこと?」

 

 

 アベルがアリアの書いたメモを読み上げるが、意味がよくわからない。

 

 

 ――これ、ひょっとして、またゲームとか言うんじゃ……。

 

 

 そう思っていると、アリアの手がさらさらと続きを綴った。

 

 

「……ここはⅤの世界だから、Ⅳと繋がりがあるのかもね……? ……えっと、よくわからないけど……、アリアはさえずりのみつを知ってるんだね?」

 

 

 アベルの指摘にアリアは深く頷く。

 

 

「…………。大昔の話なのになんでアリアが知ってるの……。……アリアはやっぱり特別な人なんだね……」

 

 

 ――ここがゲームの中だから……?

 

 

 アベルは一度黙り込んでからアリアの頭を撫でた。

 

 

 似た時を繰り返す自分とは違い、アリアは大昔のことを知っている……。

 

 ……“むかしの本”に書かれている内容は予測の域もある代物。

 なぜなら、大昔に地殻変動があり、世界の地形そのものが変わっているからだ。

 

 “むかしの本”は今生きている人々の祖先たちが、口伝で後の世に残した貴重な本とされているが、人の手で何代にも渡り作り直され、作り直される度にページが増えたと前書きに書いてある。

 

 新たな歴史が発見され内容が増えたのか、はたまた誰かの妄想が書き込まれたのか――制作に携わった者たちの手が加えられている以上、全てが信じられるものではない。

 

 ……今、手元にあるこの本は七十年前のものらしい。

 

 どこまでが真実なのかはわからないが、初版本はかなり昔――、もうこの世には存在していないだろう。

 

 

 アリアの存在についてはやはり謎のままではあるが、その中の一文、【さえずりのみつ】について彼女の記憶と合致するならば、その情報は確かなものなのでは――。

 

 

「……僕の奥さんはすごい人なんだなぁ……」

 

 

 ――うーんミステリアス……! そんなところもいいね……!

 

 

 なぜかキラキラと瞳を輝かせるアリアにアベルは感心する。

 

 

 ……とにかく必要なアイテム名がわかって良かった。

 あとは【さえずりのみつ】を探せばいい。

 

 

 本には【さえずりのみつ】は昔【砂漠のバザー】で売られていたことがあると書かれている。

 貴重品のため、当時でも中々出回らないものだったらしい。

 

 王が声を失った時も売られておらず、その娘……王女が【さえずりのみつ】を求めて【さえずりの塔】という塔までわざわざ出向き、漸く手に入れたと記されていた。

 

 どうやら【さえずりの塔】には魔物が多く巣くっており、並みの人間では立ち入ることすら難しかったらしい。

 そんな塔になぜ王女自ら危険を顧みず登ったのかは、アベルにはわからないが、多くの兵士でも連れ立って行ったに違いない。

 

 それでも魔物たちの蔓延(はびこ)る塔は怖かったろうに……と、勇気ある親思いの王女に、アベルは昔の人ながら尊敬の念を抱いた。

 

 

「……(アリーナ姫めっちゃ強かったもんな~……! 余裕でクリアしちゃったもんね!)」

 

 

 アベルの思考とは裏腹に、件の姫が恐らくドラクエⅣで出て来るアリーナ姫と予想して、アリアは実際に逢えたら良かったな……なんて想いを馳せる。

 

 

「そんなわけで、アイテム名がわかったけど……さえずりの塔なんて塔、今はないんだよね……」

 

 

 【さえずりのみつ】という名前はわかったが、今のこの時代にさえずりの塔は存在していない。

 本には当時の世界地図が載っているが、現在とはやはり地形が異なっている。

 

 

 さて、どうしたものか……。

 

 

「……うーん……、地形はかなり違ってるけど位置的にはこの辺りなんだよね……」

 

 

 本の中の地図上、さえずりの塔がある場所を指差し、アベルは現代の地図、【ふしぎなちず】と照らし合わせた。

 

 

「……(なんとなく地形が似ているような……?)」

 

 

 それぞれの地図を覗き込み、アリアはアベルの示した場所を【ふしぎなちず】で確認する。

 

 

 そこは――。

 

 

「滝の洞窟付近かな……」

 

 

 ……そう。

 アベルの示した場所は滝の洞窟近くであった。

 

 だが、滝の洞窟で変わったアイテムなど見ていない。

 【さえずりのみつ】なんて貴重なもの、きっと宝箱に収められているはずなのだ。

 

 あの洞窟は隅々まで見たから、そんなものがあるわけがない。

 

 

「……やっぱり海に沈んでしまったんだろうか……。だとしたらさえずりの塔も壊れているし、さえずりのみつも海に溶けてなくなっているんじゃ……」

 

 

 ――このままアリアの声が戻らなかったらどうしよう……。

 

 

 海に沈んでしまった塔へは行くことができない。それに地殻変動のせいで塔は跡形もなく消えている可能性が高い。

 

 ……アベルの瞳が悲し気に揺れる。

 アリアの愛らしい声が二度と聞けなくなるなんて考えたくない。

 

 アベルの顔が曇ると、アリアの手が紫のマントを引いた。

 

 

「アリア……」

 

「……」

 

 

 “だいじょうぶだよ”

 

 

 アリアがゆっくりと唇を動かし笑顔を見せる。

 彼女はなんの根拠もないのに明るく笑っていた。

 

 そしてメモを書き書き。

 時々手を止めつつ、一生懸命文字を綴るアリアの姿に、アベルは黙って書き終わるのを待った。

 

 

 出来上がったメモには――

 

 

 “喋れなくても呪文は使えるし、慣れれば中級呪文くらいまではできるかもしれないよ? なにせ私は呪文のエキスパートだからね! それに、その内自然と戻るかもしれないでしょ?”

 

 

 ……とある。

 

 書き終えたアリアは腰に手を当て胸を張っている。

 

 

「ぁ……」

 

 

 ――アリアはなにも不安に思っていない……?

 

 

 アベルはアリアの笑顔にぼぅっとしてしまった。

 

 自分よりも不安なのは恐らく本人で、その彼女が不安そうな態度など一切見せず、今できることに懸命に取り組む姿がアベルには眩しく見える。

 

 

 ……アリアの笑顔を見ると、なんとかなりそうだと思えてくるから不思議だ。

 

 

「……っ、そうだよね! 僕が諦めたら駄目なんだ。今日は一旦サラボナに戻って、アイテム名がわかったことだけでも ルドマンさんに報告しよう。向こうでもなにかわかったかもしれないし」

 

 

 アベルの瞳に明るさが戻ると、アリアは弾けるような笑顔を見せて彼に抱きついたのだった。

 




アリアの声が出なくなった時点でお気付きの方もいらっしゃったかと思いますが、さえずりのみつはⅣに出て来るアイテムでございます。

Ⅳ、Ⅴ、Ⅵと天空三部作だから繋がってるんですよね~。
こんなエピソードがあっても面白いかなと思いながら書きました。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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