ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

スラりん……なんの癖なんですかね。

では、本編どぞ。



第六百六十五話 スラりんの癖

 

 

 

 

 

「ルドマンさんっ! なにかわかりましたか……!? こちらはアイテム名がわかって……」

 

 

 あれからラインハットで少々買い出しをしてから、サラボナへと【ルーラ】で戻り、アベルはアリアを引き連れルドマンの屋敷を訪れていた。

 

 

「お義父さんと呼んでくれ!」

 

「っ、お義父さん!! さえずりのみつというアイテムが声を取り戻すらしいです……!!」

 

 

 ――お義父さんって……なぜそんなことに拘るんだ!?

 

 

 アベルの顔を見るなりルドマンが眉を寄せ懇願するので、アベルは言われたままに呼んでやる。

 すると、ルドマンの顔がパッと明るさを見せた。

 

 

「おお! さえずりのみつ……! まさしく秘薬の名前にぴったりだ。実はこちらでも調べたら、今し方それらしきものが書かれた日記が見つかってな」

 

「本当ですか!?」

 

「ああ、私のずいぶん前のご先祖様の日記なのだが……、…………」

 

 

 ルドマンは一冊の古びた日記を開き「ここだここ」と、日記に書かれた文字をトントンと叩く。

 そこには【さえずりのみつ】とは、はっきりした名称は書かれていないものの、“のどに効くエルフの秘薬を、ご先祖様の残した大昔の財宝とともにほこらに隠した”と記されていた。

 

 続く文字には他の財宝についても書かれているが、次のページから一部が破られており詳しくはわからない。

 

 ……かなり昔の日記らしい。紙が随分と赤茶けている。

 

 アベルが手に入れた“むかしの本”よりも年季が入っているような気がした。

 

 大昔の財宝も気になるところだが、今はアリアの声を取り戻すのが最優先だ。

 それに――、ルドマンが急に黙り込んでしまい、様子がなんだかおかしい。

 

 

「ルドマ……、お義父さん……? どうかしましたか?」

 

「……あ、いや。ちょうど良かったのかもしれん。……実は山奥の村の西の小島に小さなほこらがあるんだが、それがこの日記に書かれたほこらのようなのだ。私も何度か行ったことがあるのだが、財宝なんて隠されてはいなかった。……なにか仕掛けがあるのかもしれん。もしかしたら、破られたページに書かれていたのだろう。注意深く探してみてくれ。ついでにそのほこらの中に置いてあるツボの様子も見て来てくれると助かるよ」

 

「……ちょうど良かった……って……?」

 

「わっはっは。アリア、お前も行くのだろう? さえずりのみつを取りに行くのはアベルに任せ、ここで留守番していてもいいのだよ?」

 

 

 アベルの質問が聞こえなかったのか否か、ルドマンは笑い飛ばしてからアリアに目を向ける。

 ルドマンに笑顔を向けられたアリアは首を横に振り振り、アベルのマントを掴んだ。

 当然だがアリアはアベルについて行くらしい。

 

 

「わっはっは。まあ、そうだろうと思ったよ。アベル、アリアを頼むぞ。アリア。これは入口の扉のカギだ、失くさないようにな」

 

 

 引き留めるのは無理だろうと解っているのか、ルドマンはアリアに“入口のカギ”を渡した。

 

 

「では、早速行ってきます……!」

 

 

 

 

 ……アベルはアリアの手を取り、ルドマンの屋敷を後にする。

 

 ほこらまで少々距離はあるが、その間アリアには馬車で控えてもらえば問題ないだろう。

 

 

「アリア、声が戻るまでは馬車にいてね。たまには馬車でゆっくりしててよ」

 

 

 ――というか、君はしばらく馬車にいて欲しい……。

 

 

 サラボナの町を出てパーティー編成を組み直し、眉を下げたアリアがキャビンからアベルを見下ろしていた。

 彼女には馬車でのんびり過ごしてもらい、体力を温存し、夜眠る時には自分を癒してもらいたい。

 

 アリアと一緒に眠れば、一日の疲れなんて吹っ飛んでしまうから。

 

 ……そんなアベルの想いと、アリアの想いは違うらしい。

 アリアは一緒に歩きたそうにアベルを見ている。

 

 

「っ……、声を取り戻したら一緒に歩こうねっ! プックル、メッキ―、パペック!」

 

 

 アベルはアリアの淋しそうな瞳を見ていられず、フイッと目を逸らし仲魔たちを引き連れ歩き出す。

 

 馬車の車輪はゆっくりと動き出し、いざ目的地へ――。

 

 

「……(アベル……)」

 

 

 ――声が戻らなかったら、ずっと私を馬車に乗せておく気なの……?

 

 

 アリアは自分に背を向けるアベルをしばし見つめるも、振り返らない彼に諦めてキャビンの中に目を転じた。

 

 キャビンの中にはラインハットで購入した甘い菓子に、デールから貰った大量の【モモガキ】……。これでも食べてのんびりしてね、ということなのか。

 

 

「アリア~♡ あなたもついに馬車行きになっちゃったわネン」

 

「……」

 

 

 キャシーがアリアの傍にやって来て【フルーツパイ】を手渡してくる。

 受け取ったアリアは軽く会釈し、そういえばこの間もラインハットで【フルーツパイ】を食べたっけと思い出し齧った。

 

 サクッ。

 

 サクサクの生地の中で甘酸っぱいフルーツのフィリングがたっぷり詰まった【フルーツパイ】。中身は【モモガキ】だ。

 

 美味いというのにアリアの顔は不満そうである。

 

 

「もぉ~、そぉいう顔しないノン♡ アベルんが、アリアのために朝からあれもこれもと馬車にお菓子を積んだんだカラ。この辺りは何度も行ったり来たりしてるんでショ? たまにはのんびり高みの見物でもしたらいいのヨン。アタシが話し相手にあってあ・ゲ・ル……って、アリア喋れないんだっケ! うっふん。可哀想ネ~」

 

 

 キャシーの指がアリアの膨れた頬をつつく。

 彼女はそう言ってくれるが、アリア的には呪文が使えれば攻守ともにアベルの役に立てるのに悔しくて堪らない。

 

 今は我慢の時――わかってはいる。

 

 それでも馬車でのんびりしてろだなんて、申し訳なくて仕方なかった。

 

 

「……」

 

 

 ――よぉし……! アベルたちが移動してる間に私は私のできることをしよう……!

 

 

 ぺろりとアリアは【フルーツパイ】を平らげて、キャビン内を見回す。

 キャビンの中は少々――物が乱雑に積まれていた。

 

 普段アベルもアリアも外で歩き、また、戦っており、キャビン内で過ごすのは夜寝る時くらいなもの。朝起きればすぐ外に出て朝食を摂り出発だ。

 

 以前ならちょこちょこと手入れしていたキャビン内だが、アベルの結婚問題が具体的になってから、アリアも掃除をする精神的余裕がなく放置気味――。

 

 だからだろうか、キャビンの中には埃が溜まっている。

 

 

「アリア……? なにやっテ……」

 

 

 キャシーが驚きに目を丸くする中、アリアは髪を一つに束ね【絹のエプロン】を身に着ける。

 

 ……手には使い込まれた小さな(ほうき)と塵取り――、移動中は転ぶと危ないので座りながら掃除を始めた。

 

 

「ピキー! アリアちゃんお掃除するの!?」

 

 

 アリアが掃除を始めると、スラりんがびくりと身体を震わせる。

 

 ……スラりんはキャビンの隅へと“なにか”を隠しながら後退った。

 

 

「……」

 

 

 スラりんの様子にアリアが眉を寄せ、じりじり。ゆっくりとスラりんに近付くと、慌てた様子でぷるぷる――身体を揺らしている。

 

 

「っ、来ちゃだめー! なんにもいないよ、なんにもいないったら!」

 

 

 ……スラりんはたまにゴミやガラクタをキャビン内に持ち込む癖がある。

 

 物は【木の枝】やボロ布や壊れた食器等々、旅の途中で見つけた品々なのだが、アベルもアリアもビルダーではないため、【木の枝】以外は使い道がそうない。

 

 ビルダーのクリエならガラクタを別のものに作り変え、有用品に生まれ変わらせることができるとはいえ、スラりんはビルダーとは違う。

 修道院生活中にクリエに影響され集め出したらしいが、アベルもアリアもスラりんの収集癖に少々困っていた。

 

 だから見つけては説得し捨てるのだが、つい(・・)拾ってしまうようだ。

 

 ……スラりんはビルダーに憧れているのかもしれない。

 

 

 さて、今回はなにを隠しているのやら。

 

 

「……?」

 

 

 ――今、動いた……?

 

 

 アリアが近付くと、スラりんの後ろできらりと“なにか”が光って見えた。

 

 

「っ、出てきちゃだめ!」

 

 

 スラりんの慌てた声――。

 その瞬間、スラりんの背から素早く“なにか”が飛び出す。

 

 “なにか”は飛び上がってアリアの肩横を風を切りながら通り過ぎようとしたのだが――、アリア、彼女は鈍臭いが基本的に素早い。

 

 キャッチ! とばかりに条件反射でそれを受け止めていた。

 手にした冷たいような硬いような感触にアリアは目を瞬かせる。

 

 

 手には――

 

 

「……!(メタルスライム……!?)」

 

「キュルッ、キュルッ!(見逃してよ~!)」

 

 

 ……アリアの手の中で通常よりも小振りな【メタルスライム】が身体を震わせ驚愕している。

 まさか自分の素早さに追い付ける人間がいるなんて……という表情だ。

 

 

「……(咄嗟に掴んじゃったけどGじゃなくてよかった……、ていうか)」

 

 

 ――重っ……!

 

 

 つい素手で掴んでしまったが、アリアは【メタルスライム】片手に、修道院で時折こんにちは(・・・・・)するゴキ……Gでなくて良かったとほっと胸を撫で下ろした。

 Gは素早い。【メタルスライム】といい勝負ではなかろうか。

 ゲームの中だというのに、存在するあの黒光りするフォルムも、突然飛ぶところもアリアは大の苦手で、いつもはシスター達が退治してくれるが、時々は自分も退治することだってあるのだ。

 

 だが、手の内にいる、小さな【メタルスライム】……、小さい身なれど重量がかなりある。いったいいつから紛れ込んだのだろう。

 

 

「ああっ、きらりん!! ピキー! アリアちゃんその子を放してあげて……!」

 

「……(きらりん……?)」

 

 

 ――名前まであるのね……、この子……ふむ……。

 

 

 スラりんが駆け寄り、【メタルスライム】を放すよう訴えて来るが、アリアは【メタルスライム】を上下に腕を上げ下げしてみた。

 

 

「アリアちゃん……? なにやってるの……?」

 

「キュルッ、キュルッ!(ホワイ!?)」

 

「……(やだ、これ……)」

 

 

 ――筋トレにピッタリじゃない……!?

 

 

 心配そうな顔のスラりんと、困惑気味な【メタルスライム】をよそに、アリアは腕の上げ下げ運動を行う。

 【メタルスライム】の重さは1.5キロ……と言ったところか。

 

 

 体力を付けたいアリアには丁度良い重さであった。

 




きらりんはメタルスライムが仲間になった場合の三匹目の名前です。
正式な仲間ではありません。スラりんの持ち物扱い。
ミニサイズで、スラりんの四分の一ほど…?(適当)

「来ちゃだめー」は、ナウ〇カさんのセリフを引用してみました。
飛び出たのはメタルスライムでしたけど…。最初は虫にしようかと思ったんですが、虫はアリアも私も苦手なのでやめました。

体力を付けてアベルに殺されないようにしないとねw

今回は編集ミスでちと長めです。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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