ほこらにはツボが置いてあるんですよね。
では、本編どぞ。
◇
そうして、馬車で新たな仲魔(?)が現れる中、アベルたちは船に乗り、ルドマンの言う小島のほこらへと到着する。
「アリアー、到着したよー……って……、なんで汗だく……!?」
「……」
アベルがキャビンを覗き込むと、アリアは汗だくで“はぁはぁ”と荒く息を吐き出していた。
「っ!? 具合でも悪いのかいっ!?」
アリアの様子にアベルはキャビンに乗り込み、彼女の額に触れる。
頬や首に汗が流れて、なんだか艶かしく感じられたが、アリアが心配で邪な考えは頭を振って掻き消した。
「……熱はないみたいだね。よかった……」
「……(ごめんなさい、アベル……)」
――違うの~……!
口が利けないというのはとても不便である。
アリアはたった今まで「筋トレしてました!」と言えずに、自身を気遣ってくれるアベルに申し訳なくなり縮こまった。
「アベルん、アリアは運動してただけヨン」
「え? 運動?」
キャシーの言葉にアベルはアリアを見下ろす。
彼女は“うんうん”と頷いていた。
「なんで運動なんか……、あ、ひょっとして体力をつけたいって話……?」
アリアの答えは“はい”。
一度だけ首を縦に下ろす。
「はははっ! そっか。早速筋トレしてたんだね。くくくっ、すぐ始めるとか君って行動力あるよね」
「……(体力大事でしょ……?)」
つんつん。
アリアはアベルの逞しい胸を指先でつついて、上目遣いに見つめた。
「……っ、コホンッ。そうだねっ、体力は大事だよね……っ!」
――アリアの体力が増えれば、あっちも増やせる……?
一朝一夕では体力がつくことはないが、毎日続ければきっと身になってゆく。
アベルはなるべくアリアの筋トレに付き合ってあげようと、そっと汗を拭ってやった。
……後日アリアの【ちから】と【みのまもり】が上がるのだが、それは少し先のことである。
「……アリア、その髪型……ポニーテール? だったっけ……。似合うよ、可愛い」
「!」
元々は掃除のために束ねた髪――所謂ポニーテールは動きやすい。
修道院でも度々していた髪型だが、筋トレ時にはこのスタイルで行こうと決めた。
しかし、アベル――。
――アベル褒め過ぎでしょっ……!
褒められたアリアの頬は“ぽぽぽ”と赤く色付いた。
……さて、ほこらへと向かおうではないか。
「……このほこら……」
やって来た小島のほこらは森の中にあり、ほこらを囲むようにして木々が風に吹かれそよそよと吹き抜け、アベルが呟く横でアリアの髪を揺らした。
強い結界が張られているのだろう。魔物の気配がほこら周辺には全くせず、鳥たちの声が時折聞こえるだけで静かなものだ。
ルドマンから渡された鍵でアリアが入口の扉を開き中へ入ると、巨大な円状に見慣れない魔法陣が描かれていた。
「どこから入ればいいんだ……?」
なぜかこの場所の記憶が降りて来ていないアベルは、一度魔法陣の周りを一周してから歩き始めた地点へと戻ってくる。
「……(ここ……)」
――魔法陣からすごい強い魔力を感じる……なにか封印でもしてるみたい……。
アリアは魔法陣をぼぅっと見下ろす。
複雑に描かれた魔法陣からは強い魔力を感じた。
「……あ、ここから入れそうだ。アリア、行こう」
アベルが地下に下りる階段を見つけると、魔法陣を眺めるアリアの手を取り下りて行く。
魔法陣は人を弾くものではないらしく、入る際に触れたがすんなりとアベル達を地下へ通した。
ほこらの中は巨大な井戸のような構造となっており、壁に沿うように階段が設けられ――その螺旋階段はかなり長く続いている。
「ついでにツボの様子も見て来て欲しい……だっけ」
「……」
「アリア。目を回さないよう、ゆっくり下りよう。転ばないようにね」
アベルの優しい気遣いにアリアは手を引かれたまま、深く頷いた。
……ぐるぐるぐると、螺旋階段を下り続けて漸く地下フロアへと辿り着く。
部屋の中央には淡く青い光をたたえる猫の顔を
地下に着くなりアベルはアリアの手を放し、早速壁を調べ始める。
「……(あのツボ……かな、フタが付いてる……)」
アベルが壁を調べる中、アリアはツボが気になるのか、そちらへ近づいて行く。
「がう(アリア、不用意に近付くな)」
「!?(プックル!?)」
魅入られたようにツボに近付くアリアのスカートの裾をプックルが引き留めた。
メッキ―と、パペックはアベルに付き添い、壁を調査中だ。
「……(でも、このツボ……中に……)」
アリアがツボに触れようとすると、青い光をたたえたツボが一瞬だけ赤い光を帯びる。
「「!?」」
アリアは目蓋を擦り、見間違いかとツボに目を凝らす。
プックルはビクリと毛を逆立て、アリアからスカートを放した。
「……(気のせい……?)」
――今、一瞬赤く光ったような……?
ツボから一瞬だけ強い力を感じた気がしたが、気のせいだったのだろうか。
プックルが離れ、アリアはそっとツボに触れた。
……ツボは青い光をたたえている。
「……(なにを封印しているんだろう……)」
ツボから僅かだが、温かさを感じる。
――外に出たがってる……?
アリアは首を傾げた。
そんなアリアに壁を調べていたアベルから声が掛かる。
「アリアー! ちょっとこっちに来てー!」
「!(はーい!)」
アリアはアベルに呼ばれて駆けて行った。
「グルルル……」
――アリアの目、さっき一瞬赤く光った……コワイ……。
プックルはガクブルしながらアリアの後を追う。
……プックルが驚いたのはツボが赤く光ったからではなかったのだ……。
このほこら、ゲーム中ではツボを確認するだけなんですけどね。
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