隠し部屋には……。
では、本編どぞ。
呼ばれたアリアがアベルの元に着くと、壁の一部が開いていた。
……隠し扉らしい。
隠し扉の奥は思ったほど広くはなかった。広さは人が一人隠れられるくらいの広さで、財宝など置いている様子は無い。
「……(隠し部屋……!?)」
「ああ、この奥にあると思ったんだけど……、あったのはこれだけだった」
アリアの様子にアベルが隠し部屋に落ちていた一通の手紙を差し出した。
「……(これ……)」
手紙にはこう書かれている――。
“屋敷に入った泥棒にここが知られ、大昔の財宝を盗まれた。
すぐに気付いたものの、奴等は逃げ足が速く、取り返したのは入口の扉のカギとさえずりの――だけ。
ここに置いておけばいずれご先祖様の封じ――が、――――でしまうだろう。
――で私は考えた。北の大瀑布、その源流、巨大な湖の近く、岩山の側に宝箱を――、私の子孫なら開けられるようにしておいた。
ふふん、これなら泥棒が盗んだところで宝箱は開かず、使えやしないだろう。ざまあみろ。もしまた盗みに来たのならとっ捕まえて懲らしめてやるからな!
私の代で代々受け継いだ宝を失くすとは、ご先祖様にも子孫にも顔向けができないではないか!
これを読む子孫よ。必要ならば探すが良――、ちなみに財宝が無くなったゆえ部屋は埋め、扉の仕掛けも簡素なものにした。
まったく、封印の力で財宝を長く保管できる良い場所とはいえ、仕掛けの解き方を書いた日記のページを盗まれては意味がないではないか。ご先祖様には困ったものだ。
だいたい、ご先祖様がこんなところに――いや、やめておこう。これ以上はただの愚痴だな。
……ルドネス”
“ルドネス”……とは、ルドマンの先祖の名前なのだろう。
……あまりに癖のある字と、盗賊に対しての怒りが溢れて一部文字が読みにくいものの、【さえずりのみつ】の在りかがなんとなく想像がつく。
「大瀑布って、あそこか……滝の洞窟の……」
――上だ……!
アベルは手紙に目を通すアリアの横で【ふしぎなちず】を広げた。
……ルラフェンの北西、巨大な湖から流れる大瀑布。
滝の洞窟の上に当たる場所――。
手紙によると、湖近くの岩山の側に宝箱を隠したようだ。
屋敷に泥棒が入り、日記の一部を破ったのは盗賊らしい。
以前は隠し部屋も広かったのだろう。
描かれた魔法陣は人間だとすり抜けることができるから、財宝がなくなった後、下手に誰かに住み着かれても困る。
そこでルドマンの先祖は部屋を埋めた――ということか。
アベルの場合、壁を調べていたら不自然に出っ張った箇所を見つけ、押し込んだだけで小さな隠し部屋を見つけたのだが、こちらの仕掛けも もはや盗賊にばれても構わないらしい。
なぜなら、隠した宝箱はルドマンの血筋でなければ開かないのだから。
「……よし。じゃあ早速宝箱を探しに行こう……! あ、そういえばツボは……」
アベルの声に、手紙を読み終えたアリアは首を縦に下ろす。
……アベルはルドマンからお願いされたツボの様子を見に向かった。
「……ネコみたいな形……不思議なツボだね……」
「……(ねー)」
アベルの隣でアリアが深く頷く。
“アベルはツボを覗きこんだ!
ツボは静かに青い光をたたえている。”
「……青く光ってる……なにが入ってるんだろう……」
「……」
アベルがツボに手を伸ばそうとすると、アリアの手がそれを引き留めた。
「わ、割らないよ!? っ、……さあっ! ツボも確認したし、ほこらを出たらルーラでルラフェンに行こっか! 宝箱を手に入れてルドマンさんに開けてもらおう!」
アリアが首を横に振り振りする中、ツボの様子も確認できたことだし、ほこらを出て【さえずりのみつ】探しに向かおうと、アベルは歩き出す。
パペックと、メッキ―がアベルに続き、アリアもツボを背に歩き出した。
「……(あとで起こしに来てあげるから、今はゆっくり寝ててね)」
ふと去り際、アリアがツボに振り返って視線を投げる。
……アリアの後ろを歩くプックルがビクリと肩を震わせたのだった。
◇
小島のほこらを後にし、アベル達は【ルーラ】でルラフェンへ向かう。
「……アリア、もうすぐ日が暮れそうだけど、このまま湖に向かってもいいかい? 数日掛かりそうだし、しばらくキャンプになる」
……ルラフェンに着いたが町には寄らず、このまま出発するらしい。
アリアに予定を告げて、彼女が頷くとアベルはすぐさま西の湖を目指し出発した。
ルラフェンから西に歩き、急勾配の山道を登る。
山道は木が茂っておらず剥き出しの地肌で平坦だが、勾配がきつい。前回【ルラムーン草】を探しに来た際は遠回りして良かった。
アリアが歩いていたなら疲れ果てていたことだろう。今回、彼女は馬車に乗ってるから急勾配でも安心だ。
アベルは時折キャビンに振り返りながら山道を登って行った。
急勾配の山道を登り詰め、目の前には鬱蒼とした森が広がる。
地図を確認すると、このまま森を北に抜ければ先に湖が見えて来るが、アベルの目的地は地図上に描かれている三つの岩山である。
ルドネスの手紙に書かれていたのは“岩山の側”……とだけ。
この山は大昔にできた山なのだろう。
とてつもなく巨大だが、過去に大噴火があったのか、カルデラを形成し現在は湖となっている。
そのカルデラの周りも長い年月をかけ深き森へと姿を変えた。
噴火でもなければ、セントベレス山よりも高い山となっていたに違いない。
森の中では多くの動物や魔物達の姿が見え、人間が足を踏み入れるには憚られる場所である。
「……この岩じゃないみたいだな……」
地図上で一番近い場所、北東の岩山の周りを探したが、宝箱を見つけることはできなかった。
アベルは次の岩山を目指そう――とのことで、さっそく移動を始める。
「……アリアちゃん。きらりんのこと黙っててくれてありがとう」
ガラガラガラ、と。馬車の車輪が回る中――キャビンではアリアが【メタルスライム】のきらりんを手に、腕の上げ下げ運動をしていた(重さが丁度いいらしい)。
腕の上げ下げに伴ってアリアの服に隠れた二匹の【スライム】も上下するが、それを見て喜ぶ男たちは現在馬車の外である。
……スラりんに黙っていて欲しいと言われ、アベルにはきらりんのことは秘密だ。
スラりんにお礼を言われ、アリアはにっこりと微笑み、筋トレに汗した。
「……(アベルに言っても大丈夫だと思うんだけど……)」
アリアはそう思ったが、スラりんはきらりんがアベルに倒されるのが嫌らしい。
なにせ、きらりんは通常の【メタルスライム】よりも小さく可愛らしい。
仲間になるにはアベルに一度愛のムチを受けないといけないわけだが、その光景を目にするのが心苦しい……とのこと。
自らが倒された時のことを思い出したのだろう。
愛はあるが、タコ殴り……いや、惨殺……?
下手をすればただ死にゆくだけの非常に痛い愛のムチである。
小さなきらりんが起き上がれなかった場合、スラりんの心のダメージはいかほどか。
きらりんは物を食い散らかすくらいで、他に悪さをするわけでもなし、スラりんが黙っててと言うなら黙っていよう……ただし、筋トレに使わせてもらおう。アリアは小さなきらりんに笑顔を向けながら筋トレを続けた。
「アリア。今日はここでキャンプしよう」
日が傾き、アベルは海のように見えるの湖の
アリアもキャビンから降りて火
「……(メラ……!)」
アベルの組んだ薪にアリアは紙に書いた呪文に魔力を込める。
瞬時に紙は発火し、火種となったそれを薪へとくべた。
「ふーっ、ふーっ……」
頼りない小さな炎を消さない様、アベルが息を吹き掛け、炎が大きく燃えだすと火熾しは完了だ。
「……(ごめんね、アベル……)」
「さすがアリア! 火種をありがとう。助かるよ」
アリアは煌々と燃える炎を前に、しょぼい火しか出せなかったことを申し訳なく思うが、アベルはそんなアリアの頭を撫でる。
今日はキャンプを始めたのが少し遅かったからか、辺りはすでに暗い。
その中で呪文に頼らず火熾しをするのは大変だっただろう。
小さな炎があるだけですぐに暖を取れるのだからありがたい。
アリアが申し訳なさそうにしている意味がよくわからないアベルは、頬を赤く染める彼女に口付けをしておいた。
……その晩もアベルはアリアを愛でて、二人は仲良く就寝する。
翌朝にはキャビンでアベルの【ベホマ】を唱える大きな声が聞こえた。
ルドネスは……、ゲームをプレイした方だと既知でおられるかと思いますが、ルドマンや、ツボを使用しヤツを封印したルドルフさん、Ⅳの移民で出て来る多分ルドマンの血筋のルドストさんの「ルド」繋がりで「ルドネス」と名付けてみました。
盗賊に財宝を盗まれて激おこです。
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!