ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

漏れる……。

では、本編どぞ~。



第六百七十一話 漏れる!?

 

 

 

 

 

 ……酒場に着く頃には空は茜色。だが、まだ夜の営業とは違い店は昼の様相のままで客の数は少ない。

 

 アベルとアリアは昼間から酒を飲む船乗りの話を聞くことにした。

 

 

「あんた船で旅をするのか? だったらいいことを教えてやろう。この港から陸にそって南下すると大きな砂漠につきあたるはずだ。その砂漠のどこかに大きなお城があるって話だぜ」

 

 

 以前聞いた話とは違う話にアベルとアリアは顔を見合わせる。

 ポートセルミには何度か来ているが、初めて聞く話だ。

 

 

「陸に沿って南下か……」

 

「アベル、せっかくだからあの人にも訊いてみる?」

 

「うん、そうだね」

 

 

 アリアがアベルのマントを引いて、【バーカウンター】に座る若者を指差す。

 アベルは頷き、二人は船乗りに会釈して若者の元へと向かった。

 

 

『おーい、あんた! この人たちが砂漠の城について聞きたいんだと! さっきそんな話してたろー!?』

 

 

 【バーカウンター】の若者にアベルが話し掛けようとすると、先程の船乗りの男が若者に大声を飛ばす。

 

 

「ん、砂漠……?」

 

「あの、ここから船で南に行った先の砂漠の城のことをお聞きしたいんですが……」

 

 

 船乗りの声で振り返った若者に、アベルは声を掛けた。

 

 

「砂漠のお城の話なら私も聞いたことがあります。なんでも伝説の勇者を祀ってたお墓があるとかないとか……」

 

「伝説の勇者を祀ったお墓……?」

 

 

 ――勇者の情報が……!

 

 

 一年振りに入って来た勇者の情報――、アベルはアリアに目配せして頷く。

 

 

「あるとかないとかなんで、本当かどうかは知らないけどね。こんな話で役に立ちますか?」

 

「はい! ありがとうございます」

 

「そっか、ならよかった! 砂漠の城へ行かれるんですか? あそこへは船がないと……」

 

「ええ、船で行ってみます」

 

「そうですか。お気を付けて!」

 

 

 若者から勇者に纏わる話を仕入れ、アベルとアリアは酒場を後にしようと歩き出したのだったが――。

 

 

 

 

 “ガタンッ!!”

 

 

 

 

 突然アベルの後ろで椅子が倒れる音がした。

 

 

「っ……」

 

「アリアっ!?」

 

 

 ……アベルが振り返ると、アリアが腹を抱えて床にへたり込んでいる。

 

 

「アリア!! いったいどうしたんだい!?」

 

 

 駆け寄ったアベルの目に映ったアリアの顔色が真っ青だ……。

 

 

「っ……アベ……、きも……」

 

「え(僕キモイ!?)」

 

 

 突然“キモイ”と言われて、アベルの胸にグサリと何かが刺さる。

 だが、アリアの額には脂汗が……。

 

 

 ――傷付いてる場合じゃない!!

 

 

 アベルは彼女に近付き様子を窺った。

 

 

「おなか……ぃた……」

 

「ええっ!?」

 

「ト、トイレ……! 漏れちゃう……!!」

 

「ええっ!?」

 

 

 ――トイレ!? 漏れる!?

 

 

 アリアの発言にアベルは目を見開き彼女に寄り添う。

 

 ……アリアはお腹が痛いらしい。

 アベルは慌ててトイレを探し、酒場の外にあるトイレへ彼女を連れて行った。

 

 

『耳塞いでてね……!!』

 

「えー」

 

 

 “バタンッ!”

 

 

 アベルの不満気な声を聞く前に、トイレの扉が勢いよく閉まる。

 アベルは扉の前で言われた通り耳を塞……がなかった。

 

 

 目を閉じ深呼吸――扉の中から漏れ聞こえてくる神秘的なメロディを心で感じ、悦に浸る。

 

 

 

 

『っ、……ぅぅ……』

 

 

 

 

 ……アリアは中々トイレから出てこない。

 

 

 

 

 “ぁぅ、神さま……、ぅぅぅ……。”

 

 

 

 

 もうかれこれ十分以上トイレから出てこないが、彼女は大丈夫なのだろうか。

 トイレからは辛そうな呻き声が聞こえ続けていた。

 

 

「アリア……」

 

 

 ――アリアがお腹を痛くしている……、なにか変な物でも食べたのか……?

 

 

 彼女がトイレに入ってすぐはドキドキ興奮していたアベルも、次第に心配になってくる。

 

 今日食べた物は自分と同じもののはず。

 キャビンに持ち込んだ菓子も底をついていたし、他になにを口にしたというのか……。

 

 アベルは扉の前で考え込むが、自分が食べていないもので、アリアの食べた物が思い当たらない。

 

 

「うーん……」

 

「……ぁ、ァべ……」

 

 

 アリアの声がしたと思ったら、扉を背に首を捻るアベルの身体が揺れた。

 

 

 ……アリアがトイレから出てきたのだ。

 

 

「アリア、すっきりしたかい……って、アリア……!? 顔が真っ青じゃないか……!!」

 

「……ア、アベル…………」

 

 

 扉に振り返ったアベルがアリアを見れば、彼女の顔は真っ青。

 やつれたようにぐったりしており、今にも倒れそうである。

 

 

 ……いや、実際にアリアはアベルに倒れ込み、意識を失ってしまった。

 

 

「アリアーーッ!?!?」

 

 

 新しい情報も手に入れたし、さあ船旅に出発だ……! なんて言っている場合ではない。

 一刻も早くアリアを回復させなければ。

 

 

 “【ベホマ】!!”

 

 

 アベルが回復呪文を掛けるが、アリアの意識は戻らない。

 慌てて【ザオラル】を掛けようとしたが、その前に【ステータスウィンドウ】を確認する。

 

 ……ところが体力(HP)は特に問題なかった。

 

 息をしているから、死んでいるわけではないのはわかる。

 だが、意識がない。

 

 

「ぁ、アリア……!」

 

 

 ――いったいどうすればいいんだ!?

 

 

 初めての事象にアベルは狼狽(うろた)える。ヒュッと血の気が失せ、指先が冷たくなった。

 

 ……馬車は酒場前に置いて来ている。

 ピエールに診せればなんとかなるだろうか。

 

 いつもアリアを軽々と抱き上げ連れて行くアベルだったが、あまりの動揺にその場から動けずにいた。

 

 

 そんな時――。

 

 

「ハハハ……、ったく、オレの留守中になにやってたんだかなーっと……ん? おい、あんたどうしたいんだい?」

 

 

 トイレにやって来た船乗り……酒場で話した男とは違う男だ。

 この男……アベルは知っている。

 どこかで会ったことがあるような気がするが、はて、どこでだっただろうか。

 

 ……その男がアベルたちに近付いて来る。

 

 

「っ、妻が急に倒れて……!」

 

「なんだって!? ……診せてみな」

 

 

 アベルが声を絞り出し告げると、男はアリアの様子を窺った。

 アリアの顔は真っ白でぐったりしている。

 

 

「なんで倒れた?」

 

「……っ、急にお腹が痛いと言ってトイレに……しばらくトイレにこもって出てきたらその後倒れて……」

 

「……うーん、脱水症状かなー……。一先ずウチに来な。寝かせて様子をみよう。あんたも酷い顔をしてるから一息吐いたらどうだい?」

 

「す、すみません……」

 

 

 事情を話すアベルに男は家が近いからと二人を引き連れ家に向かった。

 




何のプレイだよ……と思いつつw
アリアがお腹を壊しましたとさ。

あ、酒場の外のトイレは捏造です。
あるっていう体で。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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