ストレンジャー号には六人の男が乗ってます。
では、本編どぞー。
◇
あれから数度の戦いを経て漸く、ストレンジャー号はカジノ船の停泊する小島へと接岸する。
「私は船長のブライズと申します。アリアお嬢さま、以後お見知りおきを」
「よろしくお願いします」
下船の際に船員の自己紹介をするというので、アベルたちは今、船員たちと対面していた。
船員の人数は船長含め、全部で六人。
船長の後ろには男たちが五人横一列で並んでいる。
アリアがルドマンの娘になったことが伝わっているのだろう、船長が恭しく頭を下げれば、彼女も倣うように丁寧に頭を下げた。
「この度はご結婚おめでとうございます。お二人はずっと旅をされていたとか……。この船旅がお二人の良き思い出になると良いのですが、いかんせん、魔物が多いのが難点ですね」
「あ……、ふふふ。しょうがないですよ。皆さん怪我をされないよう気を付けてくださいね。私、回復呪文が使えますから、もし怪我をしたら私のところに来てください」
「お心遣いありがとうございます」
““ありがとうございますっっ!!””
アリアの笑顔に船長は紳士に振る舞うが、船員たちの声はハモり、アリアに興味津々の顔――。
船員たちはお礼を告げると、船長とアベルを交互に見ていつ紹介が始まるのかと期待の眼差しを向けていた。
「あ、あー……えっと、船長。こちらから紹介していいですか?」
――ったく、アリアは愛想がいいんだから……。
アベルはにこにこと自分を見上げるアリアを複雑な気持ちで見下ろしてから、船長に話し掛ける。
……アリアは誰にでも愛想がいい
なんの警戒心も抱いていないような 愛らしい微笑みにやられた男はこれまでどれほどいたのだろう。
全員が野郎の中で、女が独り……ヤキモキしてしまうのは当たり前というもの。
“アライケマセンワ、シュジンガカエッテキマスワ”
昨日、アリアを休ませてくれた男の妻の寝言が、ふとアベルの頭を過る。
アリアを船内に残すと決めた以上、自分は甲板で戦い続ける。ずっと彼女を見ていることができないのだ。
……船員の内、二人が既にアリアに釘付けで凝視しているではないか。
もし戦いの最中、アリアが誰かと……? なんて、あり得ない話だが考えるだけでもゾッとする。
ルドマンの部下だから大丈夫だとは思うが、これはもう、死人が出ないことを祈るしかない。
「そうですか? 了解しました」
アベルの申し出に船長は首を縦に下ろし、どうぞと水を向けてくれた。
「僕はアベル。彼女は
アベルは仲間を紹介した。
アリアに関しては“
……アベルの紹介に仲魔たち
ところが、アリアが「アリアです。よろしくお願いします」と一言告げると、船員たちの目の色が変わり、彼女をじっと見て以下の仲魔たちについては聞いていない様子……。
だが、その内一人だけは訝し気に眉を寄せてアリアを睨まないまでも、鋭い眼で見ていた。
「――……というわけで、これからお世話になります」
アリアに厳しい目を向ける人は珍しいな……なんて思いながら、旅の説明を付け加え、アベルは仲間の紹介を終える。
……さあ、お次はストレンジャー号側の紹介だ。
「こちらこそよろしくお願いします、アベル殿。では、こちらも紹介していきましょう。では、左のアジスキーから……」
「あ、はい。自分はアジスキ―ッス。舵輪を握らせてもらってるッス! 好きな食べ物はアジフライッス!」
船長は、横並びの船員、左の男から紹介していくらしい。
一番左の男はアジスキ―……船の操縦を任されているそうだ。
大きな船を操作するだけあって、中々良い身体をしている。背も高く、アベルとそこそこいい勝負の筋肉量ではなかろうか、日に焼けた肌が健康そうに見える。
顔は面長で頬骨が出張った顔だ。
年齢は二十六歳、とのこと。独身らしい。
「よろしくお願いします」
――うん、僕の方がイケメンだな……!
筋肉に惹かれるかもしれないが、アリアのタイプではなさそう……と、アベルはこっそり【ラーの鏡】で自身の顔を見て、目やにを取り去った。
……愛妻の前だ、身だしなみは大事である。
「自分はイカスキーです! 先ほど特別室にご案内させていただきました! 好きな食べ物は焼きイカです! なにかありましたら なんなりとお申し付けください!」
アジスキーに、ぽんと肩を叩かれた隣の男はイカスキーだ。
細身の男で、主に雑用をしている。
年齢はアベルとアリアに一番近い二十歳らしい。
顔面偏差値は――普通。
……普通とはなにか。
そう、良くも悪くもないということで、特に印象に残る顔でもないということである。
声がはきはきとしており、気が良さそうな青年だ。
「よろしくお願いします」
――うん、僕の方がイケメンだな……!
さっきはよくもアリアに声を掛けてくれたね……!
夫である自分が目の前にいたというのに、妻の相手をするなどと名乗り出たイカスキーはアベルからすれば警戒の対象である。
……アベルの口角は上がっていたが、眉は凄むように顰められていた。
「ぁ……えと、では隣にバトンタッチします……」
なぜ睨まれたのだろう、自分はなにか若だんなに悪いことでもしたのだろうか……と、イカスキーの瞳は動揺し、揺れ動いた。
「……オレはウッツボ。船のメンテナンスを担当している。ウツボを釣るのが得意だ。オレが釣り糸を垂らすと大体ウツボが釣れる。ウツボが欲しい時は言ってくれ」
イカスキーの隣の男はウッツボという。
釣りが趣味らしいが、彼が釣ると九割の確率でウツボが釣れるそうだ。
ウツボが欲しい時は彼に頼むとしよう。
片目に眼帯をしている厳つい男である。
ガタイもよく、背はアベルより高い。一見ちょっと悪い男に見られそうな雰囲気だ。
上腕にはなぜかウナギの
ウツボではなく、なぜウナギ――。
ウナギが好きなのだろうか……。
……歳は三十六歳とのこと。
「よろしくお願いします」
――よし、既婚者だし、年齢的にアリアの圏外だな……!
ウッツボがアリアに笑顔を向けていたが、彼の左手薬指には指輪が光る。
既婚者だと判ったアベルは然程警戒しなかった。
「オレの話は以上だ」
ウッツボは隣の男の肩に手を置く。
白い服を身に纏った隣の男は……。
「私はエソスキーと申します。えと、コックをしています。担当は食堂です。船旅中、皆さんの胃袋を管理致します。得意料理はさつま揚げです。揚げたてが美味いので、今度ご馳走します」
名をエソスキー……、彼はイカスキーと顔がそっくりだ。
だが彼にはそばかすがあり、食堂にいるからだろう、イカスキーよりも色白である。
「ちょっ、さつま揚げって……!」
これまでアベルの隣で黙って頭を下げていたアリアが口を開いた。
さつま揚げとはなんという料理なのだろうか、アベルは食べたことがない。
“エソスキーって……、エソかぁ……、なるほどな~……”
アリアは「エソって言ったらかまぼことかに使われる魚よね……」などとぶつぶつなにか小さく呟いている。
「あ、私はイカスキーと双子の兄弟なんです」
「そうなんですね、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします。食べたいものがありましたらリクエストしてください。できる限りお応えしますよ」
「ありがとうございます」
エソスキーはイカスキーと兄弟とのこと。
アベルが会釈すると、彼は朗らかに笑った。
アリアに対しては目を向けると、ほんのり頬を紅く染める。
イカスキー同様、一目惚れでもしたのだろう。
双子は好みが似るのだろうか。
とはいえ、アリアに直接話し掛けたりしない辺り、節度を守れる青年のようだ。
――うん、勝手に好きになる分には好きにすればいいよ……!
アベルは特に気に留めないことにした。
残る最後の一人は、どこを見るでもなく顔を背け、アベルたちと目を合わさない男――。
「……オコーゼ」
男は自らそう名乗った。
船長の名前は海外版の船長の名前から拝借。
他の船員は当方オリジナルです。
出航が一年以上できていなかったため、船長以外十年前とメンバーが変わっております。
・ブライズ(船長)
・アジスキー(舵取り・アジフライが好き)
・イカスキー(雑用・焼きイカが好き・エソスキーと兄弟)
・ウッツボ(メンテ・釣りが趣味・ウツボ釣りの名人・片目に眼帯)
・エソスキー(コック・得意料理はさつま揚げ・イカスキーと兄弟)
・オコーゼ(詳細は次回)
ということで、「アイウエオ」でございますw
魚介にちなんだ名前となっております。
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!