ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

水着ってなんですかね。

では、本編どぞー。



第六百七十七話 水着

 

 “……オコーゼ。”

 

 

 自らの番だと気付いた男がぶっきらぼうに告げる。

 彼の名はオコーゼ。大きな槍を抱えたモヒカンヘアの大男である。

 

 ……ずいぶんと愛想がない男だ。

 

 名前以外自分から何も語ろうとせず、アベルたちを一瞥しただけですぐに視線を逸らし、表情も乏しくスンとしている。

 

 

「彼にはこの船の用心棒をやってもらってるんですよ。そこそこ腕が立つ男で……――」

 

 

 黙り込む彼の代わりに、船長がオコーゼについて教えてくれた。

 

 オコーゼ、彼の歳は二十四歳。

 かつてポートセルミで兵士をしていたが、訳あってストレンジャー号の用心棒になったらしい。

 

 

「少々無愛想ですが、悪い奴じゃないんで仲良くしてやってください。ほら、オコーゼ」

 

「……よろしく」

 

 

 船長のフォローでオコーゼは意外にも前に歩み出て、アベルに手を差し出すので握手を交わす。

 

 

「よ、よろしくお願いします」

 

「……ス」

 

 

 アベルが会釈すると、オコーゼも無表情ながらも頭を下げてくれる。

 

 ……握った彼の手は硬く、豆だらけだ。日に焼けた浅黒い身体にも傷が多く、相当な場数を踏んでいると見える。

 

 ここに来るまでに甲板中央で戦うアベルたちとは違う場所で、誰かの悲鳴と、魔物の叫び声が聞こえたことがあった。

 アベルたちが主動で戦うとはいえ、数が多い時は漏れが出ることもある。

 

 オコーゼ、彼は船員たちを守る頼もしい男のようだ。

 

 

「よろしくお願いしま……」

 

「……」

 

 

 アリアも握手を……と、手を差し出したが、オコーゼはなぜか無視して元いた位置へと戻った。

 

 オコーゼに無視されたアリアは「あれ? あはは……」となぜ無視されたのかわからず、空笑いをしている。

 

 

「……えっと、じゃあ……紹介も終わったので、僕たちはカジノ船に行ってきます」

 

 

 アベルは空笑いのアリアをチラ見してから下船する旨を伝えた。

 

 

 ――アリアと握手をしない男がいるなんて……。

 

 

 彼女と握手しなくてよかったが、珍しい男もいるものだ。

 

 アリアは老若男女問わず、大抵の人に好かれる容姿をしているというのに、いったい何が気に入らなかったのだろうか。

 ただ、アリアに興味がないならないで、警戒せずに済むからアベル的には全く問題なしである。

 

 

「わかりました。では我々はいつでも出航できるよう、準備を整えておきます」

 

「よろしくお願いします。アリア、行こう」

 

「あ、うん」

 

 

 船長に会釈して、アベルはアリアの手を取った。

 

 

 ““いってらっしゃいませ!!””

 

 

 ……船員たちに見送られ、アベルたちはカジノ船に向かう。

 

 

 

 

 歩み板を下りるアリアの背を、オコーゼはしばらく睨み付けていた――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ストレンジャー号を下りたアベルたちは、すぐにカジノ船に続く桟橋がある浜へと着く。

 桟橋にはカジノ船に向かう客たちを乗せる小舟が控えているのが見えた。

 

 

「ん~、ちょっと冷たいかなぁ」

 

 

 浜辺を歩きながら風に吹かれる髪を押さえ、アリアは寄せては返す波に触れた。

 

 

「ん? どしたのアリア、寒い?」

 

「あ、ううん。違うの。結婚式の時にね、ここなら安全に泳げるかなって思ったんだけど、水も風も冷たいし、ちょっと無理そうだなって」

 

 

 アベルが訊ねると、海で泳ぐ気だったらしいアリアの表情は残念そうである。

 

 

「泳ぐって……あはは、そうだね。もっと温かい地域じゃないと泳ぐのはおすすめしないかな」

 

 

 魔物が出る海で泳ごうとは、アリアも呑気なこと言う。

 泳ぐのなら、町中の川にしておいた方が良いというのに。

 

 

 ――【せいすい】を使えば入れなくもないか……。

 

 

 別世界でも海で泳いだ記憶がないアベルは、彼女の話にいつか海で泳がせてやりたいと思う。

 

 

「そっかぁ、買った水着の出番はまだまだ先だね」

 

「水着? いつ買ったの?」

 

 

 ――水着ってあれだよね、泳ぐ時に着る下着みたいな服……。

 

 

 アリアの“水着”という単語(キーワード)にアベルは即座に反応をみせた。

 

 奴隷時代の先生が持っていたムフフな本。

 本の中に水着を着た女性の姿絵があったのを見たことがある。

 

 まだ性に目覚めるか目覚めないかの頃だ。姿絵の女体の曲線美に訳も分からずドキドキしたのを憶えている。

 

 

「あ、えっと、結構前だよ。もう一年前になるかな。ルラフェンでクリエちゃんから買ったの」

 

 

 “クリエちゃんて服も作れるんだって、すごいよね!”

 

 

 アベルの素早い反応に、アリアは一年前の記憶を思い出しながら語る。

 

 ルラフェンに来たクリエが、ワゴンで色んなものを売っていた内の一つが水着で、アベルとは別行動中、キャシーとのお出かけでアリアは水着を買ったという。

 

 

「え、そんな前に買ってたの!?」

 

「うん。キャシーとお揃いで色違いのを買っちゃった」

 

「水着……、っ、どんな水着!?」

 

 

 ……さっきからアベルはずいぶんと食い気味だ。

 アリアに詰め寄り目が血走っている……。

 

 

「えっ、わぉ、アベル食いつき良すぎ……」

 

 

 アリアは苦笑いで後退った。

 

 

「ねえ、どんな水着!?」

 

「どんなって……白の普通のビキニだけど……?(アベル近い……)」

 

「ビキニってなに?」

 

「えっ、と……ブラとパンツみたいな水着(近いよ、アベル……!)」

 

 

 歩きにくい砂浜の上をじりじり、と。

 アベルに詰め寄られ、アリアは到頭浜に生えた【ヤシの木】まで追いやられてしまった。

 

 

「ブラとパンツって……、っ! 見たい!!」

 

「っ、ダメだよ、寒くて風邪ひいちゃうもん」

 

 

 なぜ、こんなに追い詰められているのだろう。

 壁ドンならぬヤシドンみたいではないか。

 

 アベルに上から見下ろされ、アリアの顔は困惑気味だ。

 

 

「今夜、部屋で見せてよ!!」

 

「へ、部屋……? 船の……?」

 

「ううん、今夜はカジノ船の特別室に泊まる予定だからね! そっちの部屋! そうだ、お風呂! 特別室にお風呂あったよね! お風呂一緒に入ろう! その時に着たらいいよ」

 

 

 ――すぐ脱がすけど……いや、着たままでもいいかもしれない……。

 

 

 困ったように眉を下げるアリアに、アベルは【ヤシの木】に腕を掛け、早口で告げてにっこりと微笑む。

 

 

「っ……い、一緒に……?」

 

 

 ――一緒にお風呂って……まだ入ったことないじゃない……。

 

 

 ヤシドンされたアリアはアベルの影に覆われ、目を瞬かせた。

 

 山奥の村で温泉に入ろうと言ったまま、まだ実現できていない。

 あの時は、温泉だからタオルを巻いて入ればいいし、離れて座ればいいと思っていたが、特別室の風呂は狭かった。

 

 二人が入るのにギリギリの広さ。

 しかも水着で入ればとアベルは言う。

 

 

「いいでしょ? もうアリアの全部知ってるんだし。水着着てたら恥ずかしくないでしょ?」

 

 

 アベルがにこにことアリアの髪を一房手にして口付ける。

 

 

「っ、全部知ってるって……ぅ……み、水着着て入るなら、別にいいけど……」

 

 

 大好きな夫の顔が間近に迫り、アリアの頬が真っ赤に染まった。

 

 アベルの勢いに負け、押し切られてしまったが、夫の望みを叶えてやりたくなるのが妻というもの。

 ビアンカのスパがオープンしたら一緒に入るものだと思っていたから、こんなに早く一緒に入る機会がくるとは思っていなかった。

 

 丁度良い機会だ。

 湯船にゆっくり浸かりながら今後の話をしてみるのもいいかもしれない。

 

 

 ……アリアはちょっぴり恥ずかしかったが、今夜アベルと一緒にお風呂を楽しむことに決めた。

 

 

「よしっ! じゃあ、昼間はたっぷり稼いで、夜はゆっくり休んで、明日からの旅に備えよっか!」

 

 

 アベルは弾けるような笑みを向けてアリアの手を引き、カジノ船に向かう。

 

 

 

 

 ……その日、アベルは日が暮れるまでカジノで稼ぎ、夜にはアリアの水着姿を拝ませてもらい幸せな時を過ごした――。

 




ルラフェンで購入したのを使う時がやって来ました……!と、浜辺で泳ぐのもいいかなと思ったら、寒くて入れませんでしたというオチです。

ただ、アベルは諦めが悪いため室内で堪能しましたよと……。

ちなみに水着は第三百四十九話で購入したもので、ビルダーズ2で出てくる【みずぎ】にございます(クリエちゃん作)。
色を変えているため、アリアの水着は白。キャシーは赤。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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