ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

釣りネタが好き。

では、本編どぞー。



第六百八十二話 釣果はタイ

 

 

 

 

 

 あれから食事を終えたアベルはアリアと部屋に戻りたかったが、アリアは食堂に残りピエールたちの世話をするというので、夜釣りの準備でもしておこうと単身先に特別室に戻ることにした。

 

 

「あ、オコーゼさん!」

 

 

 特別室への戻り際、独り暗い海を眺めるオコーゼが目に入り、アベルは声を掛ける。

 

 

「ん……? あ、アベル……」

 

 

 振り返ったオコーゼはなぜか眉を寄せていた。

 アベルを呼び捨てにするが、声は小さくアベル本人には聞こえない。

 

 

「夕飯、食べないんですか? もうみんな食べてますけど……」

 

「……人前で堂々とイチャついて、恥ずかしくないのか?」

 

 

 アベルがまだ食事を摂っていないオコーゼに訊ねるが、オコーゼは呆れたような顔で眉を顰める。

 

 

「えっ、あっ……、ははっ。やっぱり見ちゃいましたか……」

 

 

 ――アリアって、恥ずかしがりのくせに時々大胆だからなぁー……。

 

 

 立ち寄った町でいちゃつくのは然程気にならないが、ともに旅する仲間の前でというのは中々恥ずかしいものである。

 ぽりぽりと、気恥ずかしさにアベルは頬を掻いた。

 

 

「あの女は……」

 

「あの女? アリアのことですか? 僕の妻にあの女って言うのやめてもらっていいですか?」

 

 

 思わぬオコーゼの無礼な物言いに、アベルの目が鋭く据わる。

 そういえば、なぜかオコーゼはアリアを敵視していたっけと思い出した。

 

 

「……じゃあ、アリア……?」

 

「なっ!? 呼び捨てもやめてください!」

 

「っ……なら、お嬢でいいか……?」

 

「お嬢って……」

 

 

 ――普通に“アリアさん”とか、“奥さま”とかあるじゃん!?

 

 

 オコーゼの“お嬢”呼びにアベルは困惑する。

 他の船員たちは“アリアさん”だったり、“アリアお嬢さま”だったりするのに、オコーゼの言い方は敬称呼びながらもえらくぶっきらぼうだ。

 

 悪い人ではなさそうだが、他の船員とは違い、オコーゼの性格はどうにも掴みにくい。

 普段アベルもアリアも基本的に、誰に対しても丁寧に接する性格のため、オコーゼのようなタイプは理解がしづらかった。

 

 

「あんた、あのおん、お嬢に騙されてないか……?」

 

「は? 騙す? なにが?」

 

「……お嬢は……、いやなんでもない。オレは……」

 

 

 オコーゼは言い淀み、アベルから離れて行く。

 

 

「あ! ちょっと! オコーゼさん!?」

 

 

 ――なんなんだ……??

 

 

 変な人だな……と、アベルは特にオコーゼを追いかけるでもなく、特別室にさっさと戻ることにした。

 

 アベルが釣りの準備をし、待っていると食事の片付けを終えたアリアがピエールたちとともに戻って来る。

 

 ……その晩は仲魔たちとともに、特別室に設けられたバルコニーで、アリアが海に落ちかけるというハプニングがありつつも夜釣りを楽しみ、深夜には解散した。

 

 

「じゃあ、僕たちはコレを食堂に置いて来るから先に休んでてね」

 

 

 そう告げるアベルの腕には大きな【タイ】……八十センチは優に超えている。

 

 

「はい、我々は一階で休ませていただきます。おやすみなさいませ」

 

「みんなおやすみ~。また明日ね」

 

 

 ピエールがプックルとスラりん、メッキ―を引き連れ一階へと下りて行くのをアリアは手を振って見送る。

 

 ピエールたちは一階で、アベルとアリアが二階の寝室でそれぞれ休むのは、ピエールが気を利かせたからに他ならなかった。

 

 主君たち新婚夫婦の寝室で、ともに休もうなどと望めば、翌日アベルからどんな恨み言を聞かされるかわかったものではない。

 結婚してからというもの、アベルはアリアと過ごせる夜を殊の外楽しみにしているのだ。

 

 ……落ち着くまでは触らぬ神に祟りなし。

 毎度瀕死になるアリアが少々不憫にも思うが、アベルの機嫌が常に良いのは仕える身としては好ましい。

 

 彼女も何だかんだと嫌がっている様子はないし、アベルの精神安定剤として是非頑張って欲しいものだ――ピエールはせめてもと、暇さえあればアリアの様子を注意深く観察することだけはしている。

 

 

 ……アベルとアリアも一階に下り、食堂へ向かった。

 

 

「おっきなタイだね~♡ すごいよアベルっ。よく釣り上げたね!」

 

「ははっ、すごい引きだったから釣れるか心配だったけど、釣れてよかったよ」

 

 

 寝る前に明日朝食にできる魚を食堂に持って行くべく、アベルは釣り上げた大きな【タイ】を抱え、【ランタン】を持つアリアとともに甲板を歩く。

 アベルが抱えている【タイ】は仲魔たちとともに力を合わせ、釣り上げた大物である。

 

 

「おお~! こりゃすごい! 大物が釣れましたね!」

 

「あ、イカスキーさん、どうして? もう寝たんじゃ……?」

 

 

 ……食堂に向かう途中で、海を眺めるイカスキーと出会う。

 アベルは、なぜ暗闇の中独りで……? と疑問に思い訊ねた。

 

 

「ああ、万が一に備えての見張りですよ。一応ね」

 

 

 イカスキーによれば、アベルが予想した通り、船には保護呪文が掛かっているから魔物が寄りつくことはほぼないらしいが、念のため――ということで、交代で見張りを立てているとのこと。

 

 

「そうだったんですか。なら僕たちも――」

 

「いえ、これは自分達船乗りの仕事ですから! アベルさん達は昼間戦って疲れてるでしょう? 魔物が出たらお知らせするので、その時は協力願いますよ」

 

「そういうことなら……」

 

 

 ……海の男たちは逞しい。

 イカスキーもある程度は武器を扱えるらしく、戦いに心得があるようだ。腰には短剣が装備されていた。

 

 

「アリアお嬢さまも、船は自分達に任せてゆっくりお休みくださいね!」

 

「あ、ありがとうございます。イカスキーさんもお気を付けて……」

 

「はいっ♡」

 

 

 お嬢さまと呼ばれ慣れないアリアのぎこちない笑顔に、イカスキーはデレデレとした満面の笑みで返す。

 

 

「アリア、行こう? 魚が重い」

 

「あっ、うん……!」

 

 

 アベルはすぐにその場を立ち去るべく歩き出した。

 アリアの持つ【ランタン】の灯りが無いと足元が見えづらい。魚が重いと言えば、自然と彼女は自分に付いて来るだろう。

 無自覚で誰にでも笑顔を振り撒く妻には、もう少し警戒心を持って欲しいものである。

 

 ふとアベルは死んだ【タイ】の濁った瞳と目が合い、重いと嘆くほど重くはないのに、言い訳に使ったことを心で詫びた。

 

 

「ね、アベル」

 

「ん……?」

 

「明日の朝はお刺身定食だね♡」

 

「お刺身定食……」

 

 

 食堂に着くとエソスキーはもう寝たのだろう、食堂には誰も居らず、部屋は暗かった。

 

 アベルは明日の朝使ってもらえるようにと、近くにあった木箱に氷を溜めてテーブルの上に【タイ】を置いておく。

 

 するとアリアが鞄から筆記具を取り出し、ご丁寧に“お刺身定食をお願いします”とメモに書いて【タイ】の側に置いた。

 

 

「エソスキーさんにお魚を捌かせるとすごいのよ?」

 

「すごい……?」

 

「こーんな大きなナイフで、サクッサクッとあっという間にお魚を(さば)いちゃうんだから。味付けもとっても上手だし!」

 

 

 【タイ】を食堂に運び終え、アベルとアリアは部屋に戻るべく歩き出す。

 アリアが手振りで魚を捌くナイフの大きさを表現すると、【ランタン】を手にしたアベルの唇が尖った。

 

 

「……ぼ、僕だってやればできるけど!?」

 

「え?」

 

「あ、えと、味付けは下手だけど……」

 

 

 食堂と甲板を結ぶ階段を上がりながら、アベルは後ろのアリアを振り返る。

 

 

「……? なんのこと?」

 

「……あ。な、なんでもない……」

 

 

 ――これ、嫉妬だ……!

 

 

 アリアがエソスキーを褒めるから悪い。

 だが、相手はコック。料理のプロである。料理をよくするアリアが味付けを褒めるのは当たり前といえば当たり前だ。

 

 ……アベルはみっともない嫉妬をしていることに気付き、慌てて身体を戻すと残りの階段を上がっていく。

 

 

「ふふっ、そう? 確かにアベルも捌くの上手だよね~?」

 

「え? どういうこと?」

 

「……私のこと、あっという間に脱がしちゃうし……? 私、いっつもまな板の上の鯉だもん」

 

「あっ……、へへっ……。そうだね。じゃあ今夜も……♡」

 

「……アハハ……、アベルは元気だねぇ……」

 

 

 アベルに期待の眼差しを向けられ、アリアは空笑いを浮かべた。

 

 




オコーゼはなぜかアリアを敵視している。
理由はそのうち判明するかと思います。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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