前回のプチあらすじ>アリアからゆうじいの夢を叶えてあげないかと持ち掛けられ……。
新婚あるある。
では、本編どぞー。
「無理して集める必要はないけど、旅先で名産品が目に入ったら手に入れて、たまにはここに来て置いて行ってあげたらどうかな? 見たくなったらルーラで来ればいつでも見られるし。他の人に見てもらえるのも嬉しくない?」
アベルがアイテム収集を好きなのは知っているが、協力できる範囲で名産博物館に通ってあげるのもいいのでは……?
アリアはガサゴソと、床に置かれた【ふくろ】の中身を見て告げる。
【ふくろ】の中は整頓されておらず、ごちゃごちゃだ。
【ふくろ】を振るだけで整頓できるというのに、たまに覗くといつも乱雑に詰められているのはなぜなのか。
その中からアベルはたまに間違えはするものの、望みのものを取り出すことができるのだから摩訶不思議である。
――【ふくろ】の管理はアベルに任せておけばいいよね。
キャビンの中の整理整頓はアリアがしているが、【ふくろ】内の物があまりに多過ぎる。
……アリアは【ふくろ】をそっと閉じた。
「…………そうだね。安眠枕とか、アリアが使うものは手元に置いて、他は預かってもらおうか」
「うん、それがいいと思う!」
これまで集めた各地の名産品を博物館に置くのは、いいアイデアかもしれない。
アベルの持つ【ふくろ】は道具がいくらでも入るが、見る際は、一つずつ取り出す必要がある。博物館という場で、一堂に置いておけば【ルーラ】で来る必要はあるが、一斉に眺めることができるというもの。
それに、自分たちだけでなく他の人にも見て喜んでもらえるのは、名産品を集めた者としても誇らしい。
ゆうじいも満足し、アリアも気分が良くなるのなら、断る理由がないではないか。
収集癖のあるアベルにとって消耗品以外、手に入れた物は手放したくない物ばかりだ。
名産品もそれなりに用途はあるから、アベルが持ち歩いていても特に問題はない。
ただ、【ふくろ】の中に入れておけば、邪魔にはならないが、【ふくろ】から必要なものを取り出す時に邪魔になることは多々ある……。
……アリアの話を聞いていく内アベルは最初は渋るも、考えを変えてゆうじいの願いを叶えてやることにした。
「じゃあ……明日はゆうじいさんが言ってた、メダル王の城に隠された幻の名産品とやらを探しに行こうか。ゆうじいさんいわく、そう遠くない場所にメダル王の城があるみたいだ」
「へ? あっ、早速探しに行くの? テル……」
テルパドールは……?
喉から出掛かって、アリアはやめた。
アリアが旅を始めた理由の大元は自分探しである。結婚した今も、それは変わらない。
だが、新たにアベルの母親のために勇者を捜すという目的も加わった。
自分の記憶は取り戻したいが、テルパドールにそのきっかけがあるかどうかはわからないし、急いで記憶を取り戻す理由もない。
アベルが決めたのなら、自分はそれについて行くだけ。
メダル王の城に行くのもまた一興ではないか。
……長い旅路には寄り道が付きものなのだから。
「ああ、ゆうじいさんしょんぼりしてたし、元気付けてあげないとかなって。あんまり放っておいて、レヌール城みたいに魔物に住みつかれても困るでしょ? 彼が元気なら悪霊なんかも寄って来れないと思うしね」
「アベル優しい~♡ そういうところ大好きっ♡」
アベルの思いやりにアリアは破顔し、抱きついた。
彼女は猫のようにじゃれつき、頬をアベルの胸元に摺り寄せる。
……さっきまで一対一での戦いは激しさを極めていたが、嵐は過ぎ去り――、二人は凪のひと時に話し込んでいたわけで。
「あっ、アリアっ……♡ そんなにくっついたらダメだよ……!」
――君にくっつかれると、反応しちゃうでしょ……!
アリアの髪がアベルの肌を擦ると、アベルの攻撃力が跳ね上がった。
「ん……なんか硬い……? あわわっ……またおっきく……!? ごめんなさぁいっ! そんなつもりじゃなかったの、許してぇっ」
「ダメッ! 許さないっ……! アリアっ!!」
アベルの攻撃力増加に気が付いた、防御力が低下したアリアは、マットレスから逃げ出そうとするも、すぐに引き戻される。
……このままではアリアはまたしても瀕死になってしまうだろう。
「や、優しくして……?」
「善処します♡」
アリアが身を守るように自己を抱きしめ恐る恐る伺うとアベルは優しい笑みを浮かべ、二人は二戦目へと進んだ。
◇
……翌朝、アベルは恒例の朝イチ【ベホマ】を唱えて、睡眠中のアリアに服を着せてキャビンから出る。
「「……」」
キャビンから降りるとピエールとプックルが無言でアベルを見ていた。
「おはよう、ピエール! プックル!」
「……おはようございます……。アリア嬢はご無事ですか……?」
「がう(主、昨夜もずいぶん泣かせたようだな……!)」
アベルが明るく挨拶をすると、ピエールの声が冷たい。プックルも心なしかつまらなそうに返事をした気がした。
「ああ! まだぐっすり眠ってるよ」
「…………そうですか」
「がうがう(今日も一緒に歩けないのか……)」
アベルの返答に、ピエールの声はやはり冷たい。プックルもしょんぼり顔だ。
「や、やだなぁ、なんでそんな冷めた声を……? プックルまで元気ないし……(新婚なんだけど!?)」
「いえ……、アリア嬢も自業自得ですので何も申しますまい……」
「がう……(そうだ、そもそもアリアがなんだかんだと受け入れるから……!)」
……キャビンの中で行う試合中、アリアはなるべく声を上げないようにしているにもかかわらず、抑えきれない声音はキャビンの外まできちんと届く。
そもそもプックルは耳が良いため、声を抑えたとしても聞こえるので無意味である。
結婚してからというもの、アベルがアリアを酷使するから、彼女が馬車から降りて来られないではないか。
ピエールとプックルはアベルに一言申したかったが、アリアが毎度受け入れるのも問題だとして何も言わなかった。
アベルが結婚するまでずっと我慢していたことは
結婚後からアベルは毎日が幸せそうで、仕える自分たちも幸せな気分だ。
だが、アリアを独占されてもう三週間近く経つ。
船上でアリアが瀕死になることは少なかったものの、食事時くらいしかピエールもプックルも、アリアと交流が図れていない。
……早くアベルが落ち着くか、アリアの体力が上がるか……そのどちらかしか解決方法はなさそうだ。
「……あー……うん、悪いと思ってはいるんだけどね……。抑えが利かなくてね……。そ、その内落ち着くと思うんだ。ほらっ! 僕たち子どもが早く欲しいしさ!」
アベルは気まずそうに頭の後ろを掻き、“子作りは大事だよね!”と微笑む。
「なるほどお子様をお望みでしたか……」
「がう!(おお! 主とアリアの子か……!)」
ピエールとプックルはアベルの話に頷いた。
……アベルにもアリアにも、現時点では互いに血の繋がった家族はいない。
アベルとアリアにとって、二人の子どもは血が繋がった肉親となる。
記憶がないせいもあるだろうが、アリアが時々淋しそうにしているのを見ているアベルは、一刻も早く彼女と血の繋がりのある家族を作ってやりたかった。
「……旅先で出産するのは大変だと思うから、出産する時は修道院かサラボナに戻ると思うけど、子どもができてもできるだけ一緒にいたいんだ。生まれてからも旅を続けたいし、馬車で子育てすることになると思う。だから彼女には馬車で過ごし慣れてて欲しいなって」
――まあ、それだけじゃないんだけど……。
アベルはもっともらしいことを並べたてながら、結局は性欲に負けてしまっている事実に蓋をする。
好きな女と毎晩一緒に寝て、手を出さないなんてあり得ない。
しかも相手は誘い上手なのだ。
自ら瀕死になることをわかっていて、その気にさせて来るから歯止めが利かなくて困っているのは、実はアベルの方である。
「……家族ができるのが楽しみだ」
――結構な頻度でしてるから、もうできたかもしれないなぁ……。
アリアに子どもができるまでは、できるだけたくさん彼女を愛でていたい。魔物を大量に狩った後の、荒ぶった気を静めてくれるのはいつも彼女だから。
彼女を抱く度に心が癒され、満たされ、解放感を得るとようやく落ち着きを取り戻すのだ。
……アベルはキャビンに視線を投げて目を細めた。
アベルとアリアの夫婦生活を語りながら物語は進んで行くというね……。
明日、明後日はお休みします。
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!