久しぶりに仲間の追加です。
では、本編どぞー。
「もう出発されるのですか?」
ピエールがアンドレを撫でながら今日の予定を訊ねて来る。
「そうだね。アリアはしばらく起きないと思うから、馬車に乗せたまま一旦船に戻って南下しようと思う」
「南下……では、テルパドールへ?」
「いや、テルパドールの近くにも島があるみたいだ。確認できたら先にそっちへ行こうかと思って」
昨夜、ゆうじいが去り際に言い残した“メダル王の城はここからそんなに遠くない島にある”の言葉を聞き逃さなかったアベルは、テルパドールよりも先にメダル王の城を目指すことにした。
【ふしぎなちず】を取り出し確認するが、この場所からはそれらしき島も、城のシンボルも見えない。
もう少し南下すれば見えてくるかもしれない。
「メダル王の城……ですか。そういえば昨夜、ゆうじい殿がそのようなことを言っていたような……」
「ああ、ゆうじいさんの夢を叶えてやりたいなってさ」
「……アベル殿……。あなたはアリア嬢には鬼畜ですが、そういう優しさは変わりませんね。ご立派です」
「……鬼畜って……アハハ……」
――褒めてるのか、貶しているのか……。
ピエールの辛辣な物言いにアベルの額には汗が浮く。毎晩アリアの呻き声を聞かされていれば、そう思ってしまうのも無理はないかと頬を掻いた。
「では、参りましょうか」
馬車を一瞥してからアンドレを操り、ピエールは名産博物館の敷地を出て行く。
アベルもパトリシアに声を掛けて歩き出した。
◇
次の目的地が決まり、アベルたちは一度船に戻って海を南下する。
……名産博物館から真南に南下すると、次第に砂漠の島が見えてきた。
「アベルさん! 砂漠の島が見えるッス! 上陸しますか!?」
「いや、砂漠の島の前に行きたい所があります。ここから東南に向かってください。この緑の島へ……!」
「了解ッス! 取り舵取り舵っと……!」
砂漠の島テルパドールを目前に【ストレンジャー号】は、アジスキーの操る舵輪が左へと回り東南の方角へ。
アベルの手には【ふしぎなちず】が広げられており、テルパドールの島の隣、城のシンボルが描かれた緑の島を目指していた。
島の名前は知らないが、恐らくそこにメダル王の城があるはず。
メダル王の島と言ってもいいかもしれない。
……海上で一晩過ごすことになったが、次の日、船を降りた場所が良かったのだろう、陽が落ちる前に無事メダル王の城へと辿り着くことができた。
島の中央付近にある湖の中、【スライム】の像で装飾された石の橋を渡った先の浮き島に、【スライム】を思わせる巨大な黄金の屋根をもつ城が建っている――。
大きさはラインハットからすればかなり小振りながら、夕日を浴びて光り輝く眩い屋根が本物の【金】だとしたら、とんでもない価値のある城だ。
……メダル王はルドマンも驚く大富豪なのではなかろうか。
「のっしのっし」
「わわっ! キングス、押さないでっ、きゃぁあああーーっ!」
「ちょっ!? キングス!」
城を前に馬車からアリアが降りようとしたタイミングで、先ほど仲間になった王冠を頭にのせた巨体――スライムの王、【キングスライム】の【キングス】が彼女の背中にピタリと身を寄せた。
……といえば聞こえはいいが、ほぼ体当たりである。
勢い余ってアリアは外へと弾き飛ばされてしまった。
馬車からはスラりんの「キャーー! アリアちゃーん!!」という声と、メッキ―の「メッキッキーーッ!!」という震えた声が重なって聞こえる。
なぜなら、アリアが弾き飛ばされた先には、剣の切っ先のように尖った岩が待ち構えていたのだ……。
咄嗟にアベルが駆け出し彼女を受け止めたからよかったものの、【キングスライム】の巨体に弾き飛ばされては一溜りもない。
「っ……」
――本当やめて……! 戦闘中でもないのにアリアを危険にさらさないでくれ……!
アベルは真正面から胸に飛び込んで来たアリアに、心臓がバクバクと逸りしばらく彼女を抱きしめる。
……呪いは解けたというのに、アリアが不幸に見舞われるケースが多い気がする。
顔を傷付けられたことといい、滝に呑まれたことといい、声を失ったことといい、食中りを起こしたことといい、船から落ちそうになったことといい……今もそうだ(一部アベルが加害者であるが)。
難なく助けることができているのは良いことだが、あまりにも災難が多過ぎやしないだろうか。
しかも何の前触れもないから、アベルの肝が冷えて仕方ない。
あのままアリアが独りで地面に落下していたら、大怪我を負って最悪死んでしまっていたかもしれない。
(仲魔にアリアを殺させるわけにはいかない……!)
【スライム】好きのアリアは【キングスライム】のキングスも、もちろん大好きだ。
キングスもアリアを好いているようで、仲間になった経緯は一目惚れらしい。
……ここに来るまでの戦闘中、【スライム】の群れが現れ、アベルたちは余裕で倒せると踏んで戦っていたのだが、その【スライム】の
しかも、仲間を次から次へと呼び、【スライム】たちはあれよあれよという間に合体し、【キングスライム】へと変身したのである。
その様子を馬車から見ていたアリアは「すごーい、合体した~! 生キングスライムだ~♡」と瞳を輝かせて戦闘を見守っていた。
そんな馬車にいるアリアに気付いた【キングスライム】……後のキングスは彼女と目があった途端に馬車へと一目散――。
ドアを閉める――というよりは巨体を器用に膨らませ自らがドアになったつもりか、通せんぼを図ったのだ。
驚いたアリアはスラりんに守られながら、馬車の奥へ後退ったが、キングスの巨体は馬車の出入口を完全に塞ぎ、つぶらな瞳はアリアを凝視した。
その目は狂気じみたように血走っており、アリアはドン引き。
馬車内で彼女がキングスになにか話し掛けていたが、外のアベルには聞こえず、馬車に張り付くキングスを倒した。
その後、彼が起き上がり仲間になったわけだが――。
アリアから「なんか好かれちゃったみたい」と言われ、キングスは馬車の中では元の【スライム】に戻り乗車していた。
八人までしか乗れないという馬車だが、キングスたち(?)は八匹で一匹扱いのようで、問題なし。
アベルが馬車を覗けば、キングスたちはアリアの周りでうっとりと身を寄せ、アリアも【スライム】が好きだからか、にこにこと嬉しそうに彼等に餌付けしているではないか。
まさか、馬車から出ようとした瞬間、【キングスライム】に変身するとは思わないアリアは突き飛ばされた形になった……という。
つまり、キングスに悪意はなかった。
だが、悪意は無くとも、不運に見舞われることはあるのだ。
……アベルは一度抱きしめる腕に力を込めてから彼女を地面に下ろした。
「……アリア大丈夫かい? 怪我はしてない?」」
「……っ、うん平気。びっくりしたよねアベル、受け止めてくれてありがと……」
「びっくりしたよねって……なにを呑気な……っ、どういたしまして♡」
アリアがアベルを見上げ、いつも通りの優しい笑顔を見せてくれる。特に怪我をした様子は見受けられないので、アベルも笑顔で返した。
彼女に“今、死に掛けたんだよ!?”と怒鳴りたいところだが、そういう目に合わせているのは もしかすると自分が原因かもしれないため、アベルはなにも言えない。
……アリアも特に気にしていないのが幸いである。
アリアの後ろには馬車から降りたキングスがやって来ており、まるでストーカーのように彼女の背後にピタリと位置をとっていた。
「のっしのっし♡」
「あ、ふふっ、ポヨンポヨンしてて気持ちいいねっ♡」
“さっきはごめんね”とでも言っているのだろうか――。
キングスは自らアリアにくっ付くような真似はせず、程よい距離感を探るように身体を揺らしていた。
そんなキングスの身体にアリアが寄り掛かると、キングスの頬は赤みが差したかのように濃く色付く。
「あ~……アリアを好きなのはわかったから! けど、とりあえず君は馬車で待機ね!」
「のっしのっし」
「イヤだって」
アベルはキングスに怒っても仕方がないので馬車待機を命じたが、キングスは嫌らしい。
アリアが通訳してくれた。
「イヤって言われても……、君アリアを突き飛ばしちゃうでしょ?」
「のっしのっし」
「王冠をあげるのでそこをなんとか……だって」
のっしのっし……としかアベルには聞こえないが、アリアには理解ができているようだ。彼女はキングスに相槌を打つとアベルに顔を向ける。
「……王冠がなかったら、キングスライムじゃなくなるんじゃないのかい?」
「のっしのっし」
「その通り! だって。うふふっ♡」
アベルがアリアに微苦笑してからキングスの王冠を見上げると、キングスはポヨンポヨンとジャンプする。
通訳し終えたアリアは口に手を添えて可愛く笑った。
キングスはシャイボーイ(変態)という設定。忘れそう……w
▼書かないと忘れる久しぶりの現在パーティー
メイン:アベル、ピエール、プックル、メッキ―
馬車:アリア、スラりん、キングス(new!)
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!