サンチョのパンは美味しいぞ。
では、本編どうぞっ。
パパスから離れ、森の少し奥へと入った二人は並んで座る。
「はい、どうぞ」
「ありがとう……サンチョさんのパン……すき」
アベルにパンを渡され、アリアは受け取ると嬉しそうに微笑んだ。
そして、いただきますと呟いて齧り付く。
「おいひぃ~~♪」
「…………ぼ、僕もパン作ろうかなぁ~?」
「え~? どうひて~?」
少女の喜ぶ姿にアベルが突然そんなことを言うので、もぐもぐと咀嚼しながらアリアは応える。
「え……、ど、どうしてだろ……? っ、よ、よくわかんないや!」
つい口走っただけで、特に何か考えてるわけじゃなかったアベルは、アリアからプイッと視線を外した。
「ふふっ、じゃあ、アベルが美味しいパンを作れるようになった頃、食べに行くよ」
アリアは上機嫌でアベルに返す。
「へ……? 食べに行く? 一緒に住むんでしょ……?」
「ん……? 一緒に住むって……?」
「っ、あっ、な、何でもないっ!!」
アリアと一緒に暮らす計画はまだ誰にも言ってなかったんだ、とアベルは慌てて口を覆う。
「ん……。おいしいねぇ~! サンチョさんてお料理上手だね。こんなお料理がいつも出てきたら最高ね!」
お嫁さんにしたいくらいだわっ!!
アリアはサンチョのサンドイッチに舌鼓を打って、幸せそうだ。
食べ終えると指にソースが付いたのか、ぺろっと舐め取っていた。
「……ね、アリア」
「ん?」
「……アリア。サンタローズに帰ったらさ、一緒に暮らそうよ。そしたらサンチョの料理いつでも食べられるよ? 父さんも事情を話せばいいって言ってくれるかもしれないし」
アベルは計画の一部をアリアに話してみることにした。
「え……、でもだって、それは……」
「僕も、君の自分探しっていうの……? それを手伝うからさ。だめかな?」
「っ、うーーーーん……。でもそれは……」
アベルの提案にアリアは眉間に皺を寄せ、難しい顔をする。
あなたは物語の主人公なんだから、こんなモブに関わってる場合じゃないでしょう?
アベル、
あなたにはあなたの。
私には私の。
物語があるんだよ……?
多分、それは交わらないものだと思うのだけど……とアリアは考えていたのだが。
「だめ……?」
不意にアベルが上目遣いにアリアを見つめてくる。
「う…………、その目、止めてくれないかなぁ……」
アリアはサッと目蓋を両手で覆った。
魔性の瞳っていうの……?
その瞳を見ると、逆らえなくなるんですけど……?
アリアは“この目に弱いんだよね……”と黙り込んでしまう。
「……僕さ、少しだけ、未来がわかるんだ」
「え……? 未来……?」
急に何を言い出すんだろうと、アリアは目を瞬かせる。
「うん……。これからラインハットに行くでしょ?」
「あ、うん」
「ラインハットで父さん、王様とお話するんだよ。その間、僕は自由にお城の中を散歩していいんだ」
「え、はぁ……。まぁ、王様から呼ばれたんだしそれはそう……だよね」
アベルの言葉にアリアはそうなるよねと頷いた。
「……王様がね、僕にこう云うよ“そなたはパパスの息子であろう。中々良い目をしておるな”って」
「へっ……?」
話の続きを聞いていたアリアが目を瞬かせる。
「それ以上先はわからないから、何が起こるのかは今はわからないけど……。お城に着いたらわかるかもしれないなぁ……」
アベルはその先もわかるといいんだけど、本当、肝心な時に役に立たないなぁと思いながら後ろ頭を掻いた。
「アベル、それ……、本当なの……?」
その様子を見ていたアリアが茫然としながら、口を開く。
「え? あ、うん。何かほんの少し先しかわからないから、あんまり意味ない気がするけどね」
「……どうして、そんなこと私に……(私、モブなのに……)」
それって、アベルの特殊能力なの……?
パパスさんやサンチョさんは知っているのかな……。
でも、そんな話聞いたことないから二人には黙ってるということ……?
それ、モブの私に話しちゃって、いいことなの……?
アリアはゲーム主人公の告白に、自分が聞いていいものなのか戸惑ってしまった。
「アリアだって、前世? の話、してくれたから」
けれど、そんなアリアの気持ちなどお構いなしに、アベルは口角を上げる。
「あぁ……。ね、パパスさんはそのことを知っているの?」
「……ううん。言ってない。いつもわかるわけじゃないんだ。今回もたまたま少し先がわかっただけで、いつもは数秒前とか直前に気付くだけだったから」
父さんには内緒だよと、アベルは口元に人差し指を立て“しぃー”っとして、パパスの居る方の茂みをちらりと見たのだった。
「……そう、なんだ……」
わかる?
気付く?
どういうこと?
普通、未来が
見えるって言ってないだけ……?
気の所為……?
アベルの物言いに、違和感を覚えて、アリアは頭を捻る。
「けど、君に関することは、全然わからなくって」
「ん? わからないって何……?(どういうこと?)」
アベルが頭を左右に振ったかと思うと、きゅっ、と今度はアリアの手を取り握って彼女を見つめる。
「君と一緒だったら、違う未来が……」
その先を言おうとした所で、ガサガサガサッと葉の揺れる音が聞こえた。
「っ!?」
「魔物っ!?」
二人は慌てて武器を構える。
が。
草木を分けて出て来たのはパパスだった。
『あ……パパスさんだ』
「……アベル。そろそろ行こう。日が暮れると魔物が増えるぞ」
パパスはアベルを呼びに来たが、彼に微笑み掛けただけで踵を返し歩いて行く。
「あっ、はーい! …………行こっか。アリア」
『あ、うん……』
アベルは立ち上がりお尻に付いた土や草を払うと、アリアの手を引いて立たせ、パパスの後を追って走って行った。
「私と一緒なら、違う未来……??? 何、アベル……あなた、何を抱えているの……?」
主人公だから、未来が見えるの……?
でも、
アリアもアベルを追って歩いて行くのだが、目の前の小さな背中に、何か大きなものが圧し掛かっている気がして気になって仕方なかった。
サンチョの知らない所で、アリアのサンチョに対する株は上がりまくりなのです。
本当はサンチョとの絡みも書きたかったんだけど、書けなかった……。
一応アリアが恩返しをいくつかしているので、まぁいいか。
外伝でも書けたらその内。忘れてなければwww
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読んでいただきありがとうございましたっ!