メダル型チョコ……!
では、本編どぞ~!
「ちょ!? ア、アリア、どこ見て……!?」
「……えっ? 四次元ポケットだけど……? お金いっぱい入ってるっていうから膨らまないのすごいなって」
アベルは目を見開き慌てふためいた。
……アリアの視線の先は男の――。
「お、お客さま……そんな……股間に視線を集中しないでください……ぽっ」
……そう、股間だ。
男の頬は赤く色付き、股間が反応を示している。
彼は見られると興奮するタイプのようだ。
「え゛え゛っ!? 股間っ!? ハッ!? ヤダヤダヤダ、ちがいますよっ!?」
――って、ちょっと大きくなった!? アベルの方が大きい……!
アリアは気付くや否や、アベルの手を引きその場を後にした。
一瞬しか視認していないが、瞬時に夫と比べてしまったことに顔を真っ赤に染める。
毎日のように目の当たりにしているソレはやはり大物なのだと再認識し、今夜も……? なんて、イケナイ妄想をしながら城内をゆく。
「っ、ち、違うんだからねっ。私は別にそんなとこ見てたわけじゃ……!」
「そんなとこって……?」
「だから、そこっ、ソレッ!」
言い訳しながらふと立ち止まり、アリアはアベルの股間を指差す。
「あぁ……ここね。フフッ、僕の股間なんか指差して……アリアってエッチだよねぇ……」
「っ!? ちがうもん、ちがうんだってばっ。四次元ポケットが気になっちゃっただけで……!」
――ナニコレ! 私、痴女みたいじゃんっ!
アベルがチラッと自らの下半身を見下ろしたあとで、ニヤニヤと流し目を送っている。
……指摘されたアリアの顔は茹蛸だ。
「……僕の股間は見ててもいいけど、他の男のは見ないで欲しいかなぁ」
アリアの視線が他の男の股間に集中するのは、はっきり言って不愉快である。
妻の視線をいつでも自分に集中させておきたいアベルは、戒めの言葉を伝えておいた。
「なっ!? ぅぅ……ちがうって言ってるのに……。アベルのいじわる……(アベルの持ってる【ふくろ】と同じ感じかなって思っただけなのに……!)」
……少し
アリアが赤い顔のまま瞳に涙を湛えて、唇を噛みしめアベルを見上げている。
怒る寸前――といったところだろうか。
「ウッ……カワィ……。ごめんごめん。恥ずかしがってるアリアが可愛くて、ちょっと意地悪しちゃった。ごめんね」
――涙を堪える君も可愛いよ……なんて言ったら怒るんだろうなぁ。
このままだとアリアを怒らせてしまいそうで、アベルはこの辺で手を引くことにした。
……こんな些細な妻いじりの時間が愛おしい。
アリアと結婚できてよかったとアベルの目や唇は弧を描いていた。
「むっ。イジワルやだ。キライっ!」
「きらいっ!? ごめんっ!! 嫌わないで!?」
結局アリアを怒らせてしまったようで、彼女がフイッとアベルから目を逸らす。
妻の“キライ”の一言はアベルにとってはダメージが大き過ぎる。
……アベルはすぐさま謝罪を始めた。
“ごめん。”
“ごめんなさい。”
“申し訳ありませんでしたっ!!”
“僕が悪かった、どうか許してください!”
アリアが一向に目を合わせようとはしてくれないため、アベルは懸命に言葉を尽くす。
しばらく謝り倒してなんとか許してもらい……、気を取り直して次に城内を歩く若い男に話を聞くことにした。
「おや、あなたもメダルを交換に? ボクはまだ戦士のパジャマしか貰ったことがないんですよ。それにしてもここの名物、メダル型チョコはおいしいなあ。もう、やみつきになっちゃって!」
アベルが話しかけようとすると、若い男はチョコレートを食べていたようで、口の周りを黒くしたまま にんまりと微笑んでいる。
メダル王といえば、【小さなメダル】だが、アベルもメダル交換に来た旅人だと思われたらしい。
「僕たちは、隠された幻の名産品を探しに来たんですけど、なにか知りませんか?」
「え? この城に隠された幻の名産品?? そんな話は聞いたことがないなあ。王さまに訊ねてみたらどうだい?」
アベルの質問に答えた若い男は【メダル型チョコ】の金の包み紙をムキムキ、チョコを口へと放り込んだ。
かなりやみつきになっているようで、「これで止めとかないと……けどおいしくて止められない……!」なんて、既に次の【メダル型チョコ】の包み紙を剥いており、手が止まらない様子――。
アリアから「チョコレートおいしそ……」という小声が聞こえたアベルは、あとで買ってあげようと決めてメダル王に幻の名産品について聞いてみることにした。
◇
「なぬ? この城にあるという幻の名産品について聞きたいとな?」
玉座の間にやって来たアベルに答えるは、メダル王――。
鼻の下から伸びる白く長い髭をもてあそび、背は低め、ぽっちゃり体形の金の冠をのせた高貴な身形。
メダル王はどんな人物かと思ったが、いざ目の前にするとつぶらな瞳と品の好いまん丸メガネに、懐っこい笑顔の老王である。
彼は旅人であるアベルの質問に、気持ちの良い笑顔を向けてくれた。
見たところ側には護衛などもいないようで、何やらメダル王から不思議な感じがするのは気のせいだろうか……。
モンスターじいさんの時と同じく、深く知ってはいけない気配を感じる。
「はい、どうかそちらをお譲り願えないかと」
……メダル王の正体など深く詮索するまい――。
アベルは幻の名産品についてだけ集中することにした。
「う~む……それはひょっとすると、この前偶然出てきたアレのことじゃろうか。わしも色々アレの使い道を考えてみたんじゃが、イマイチでのう。つい前では王座に敷いて座っておったのじゃよ。じゃがもう、シリが痛くて……」
そう告げたメダル王はしょっぱい顔でお尻を撫でる仕草をする。
「玉座に敷いて……?(幻の名産品って、お尻に敷くものなの……?)」
アリアはアベルの隣で首を傾げていた。
「宿屋のおかみさんが使いたいというのであげたんじゃが、どうしたかのう」
「ありがとうございます。では宿屋のおかみさんに聞いてみます」
メダル王の話を聞いたアベルは、その後宿屋のおかみに訊ねたものの、宿屋のおかみはゴールド銀行のおやじにあげたと言う。
“これはたらい回しかな……?”なんてアリアがアベルの後ろで考える中、アベルはついでに名物だという【メダル型チョコ】はいかが……と、おかみに勧められたので、二つ購入し、一つは名産博物館用、一つはアリアにあげた。
「わぁ! ありがとうアベルっ♡ とってもうれしい……!」
【メダル型チョコ】を受け取ったアリアは今日一番の笑顔を見せる。
……彼女は食べ物の贈り物ならば絶対拒否しないのだ。
「フフッ、アリアはホーント、食べ物には目がないよね~。よろこんでくれて僕も嬉しいよ♡」
――これこれ! この笑顔が見られるのならいくらでも貢ぐのになぁ♡
アリアの笑顔にアベルも胸がいっぱいになり、自然と顔が綻んでしまう。
「で、でもこのチョコレート、超高級品よね。二つで480ゴールドだなんて……大事に食べなきゃ……、あとでみんなで分けて食べようね」
「独り占めしていいのに僕たちにも分けてくれるんだ……? ありがとうアリア♡」
「ふふふっ、だってみんなで一緒に食べた方がおいしいもの」
「そうだね♡」
【メダル型チョコ】は二個入りで、480ゴールド。チョコレート一つが240ゴールドとはかなりの高級品である。
アリアの感覚的に、前世の通貨は1ゴールドで100円程度だ。そこから円換算すると【メダル型チョコ】は二つで48000円となる。
なんという高級品。48000円あれば、独り暮らしならば余裕で一月の食費が賄えてしまえるではないか。
クリエから買った【ケーキ】なんかは現在は値上げしたが、それでも10ゴールドである。それから比べても破格だ。
「……(独りで食べたら罰が当たっちゃう……)」
――みんなで食べればカロリーも分散するし、買ってもらってしまった罪悪感も少しは薄れるわ……それにおいしさは等分だもんね……!
倹しいアリアは自らの鞄の中へと丁寧に【メダル型チョコ】を仕舞った。皆で食べるのが楽しみである。
その様子を微笑ましく見ていたアベルは、彼女の背後に階段があるのを見つけた。
「あれ……? 階段だ……(地下があるのか……)」
「ん? アベルどしたの? あ、行ってみる?」
「うん、寄り道していいかい?」
「どうぞどうぞ」
アリアがアベルの視線の先を辿ると、下り階段が目に入る。
幻の名産品を探索中ではあるが、気になったら確認せずにはいられない。アリアに訊ねられて、アベルは先に地下へと向かうことにした。
メダル型チョコはおみやげ品で、複数個買えるそうな。
高いんだよ。ぼったくりなんじゃ……。
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!