前回プチあらすじ>アリアの言う、ツボに伝えて欲しいこととは……?
大きなメダルを持っていくとゆうじいが喜ぶんですよね~。
では、本編どぞ~。
「“いい子にしてたら私が起こしに来てあげるから、それまで眠っていて欲しい”って」
「いい子に……って、ツボの中に入っているのは子どもなのかい?」
――いい子か……、最近僕、悪い子ってばっかり言われてるよな……。
たまには いい子いい子して欲しい……なんて、アベルは昨夜のアリアを思い出しムラッとしてしまう。
昨夜アリアは――。
『またこんな……、アベルは悪い子ね……♡』
暗がりの中、キャビンに敷かれたマットレスに座る自分の股ぐらで、妖しく微笑む妻にアベルの身体は打ち震え、“悪い子”と
アリアの体力が自分の欲求に追いつけないから仕方ないが、アベルはここ最近毎晩のように“悪い子”とばかり言われ続けている。
子ども扱いされるのはあまり好きではないアベルだが、これだけはゾクゾクするからもっと言って欲しいくらいだ。
昼間は無邪気で愛らしい妻が、二人きりの夜は大胆不敵に挑んで来るのが夫であるアベルには堪らない。
……思い出したアベルの頬はいつの間にか熱くなり、赤らんでいた。
「いや、わかんないけど暴れん坊な気がして。今の私より強い魔力だったし(あれ、なんかアベル顔赤くない……? 気のせい?)」
急に頬を赤く染めるアベルにアリアは首を傾げる。
「えぇ……暴れん坊って僕みたいな……? っ、コホンッ! アリアの予感か……君の予感って当たるからなぁ。暴れん坊の偉大な魔法使いか……。その子が起きた時、アリアとどっちが強いんだろう……?」
――夜は僕の方が暴れん坊だけどね……!! っと、いけないいけない。
すっかり頭がピンクになってしまったアベルは慌てて咳払いをし、さっさと話題をすり替えた。
「僕みたい……? ウフフッ。その時は私も強くなってるだろうし、呪文見せ合いっこでもしてみようかな? 一度全力で最上位攻撃呪文を放ってみたいんだよね♡」
アベルの意味深な言葉がよくわからなかったアリアは【グリンガムのムチ】を両手でにぎにぎ、可愛く微笑む。
彼女の笑顔は可愛いが、言っていることは物騒極まりない。
「アハハ……冗談だよ。アリアやその子が全力で呪文見せ合ったら、辺りになにも無くなってしまうよ……」
――魔物だけじゃなく、動物も植物も死に絶えるんじゃ……。
言い出しっぺはアベルだが、アリアの魔力の凄さを知っているがゆえにここは止めておく。
アリアよりも魔力の強い“誰か”と、彼女が地上に向けて交互に【イオナズン】や【メラゾーマ】でも放とうものなら、辺りは更地と化し大惨事になるだろう。
「じゃあ、火炎系と爆発系はやめとくね。風なら大丈夫……?」
「いやいや、風系もやめておこうね。冷気系も植物たちが死んでしまうからダメだよ? ていうか、緑溢れる土地を更地にしてまで、ルドマンさんのご先祖と争う必要は無いよね?」
「争うわけじゃないけど確かに……。自然に悪いよね」
ツボの中の“誰か”の力量に興味はあるが、巻き込まれる自然が可哀想だ。
……アベルの説得にアリアは納得して深く頷いた。
「アリアはいい子いい子♡」
素直に聞き入れてくれる妻の頭を撫でて、アベルは今度こそ名産博物館に戻るべく【ルーラ】のイメージを固める。
“【ルーラ】!!”
……ツボの中にいる“誰か”はルドマンの先祖――、とは確定していないが、アベルは都合よく考えながらメダル王の城を後にした。
◇
不思議な話だが、アベルの唱えた【ルーラ】は、離れた場所に停泊している【ストレンジャー号】にも連動し、船員たちは急な浮遊感に襲われ雄々しい雄叫びを上げたという。
……というのも船の所有者がアベルに登録されているかららしい。
船長たちにアベルは、あらかじめ【ルーラ】の話をしてある。
最初は慣れないだろうが、その内慣れてくれることを願うばかりだ。
……アベルたちは【ストレンジャー号】とは離れた場所、奥深い森の中の名産博物館前に着地していた。
「はぁ……ルーラにちょっと慣れてきたかも」
「そっか……、いつでも僕に掴まってくれていいからね」
「うん、ありがとアベル、そうするね♡」
「へへへ♡」
アリアは【ルーラ】の際にはアベルにしがみつくようにしている。彼女がそっと離れてはにかむと、アベルも笑顔で応えた。
「さあ、じゃあゆうじいさんのところに行こうか!」
メダル王の元を出たのは薄暗くなり始めた夕暮れ時――。
もうすぐ完全な闇の時間だ。
生身の人間ならともかく、幽霊のゆうじいにとっては昼の訪問も、夜の訪問も変わらないだろう。
「ゆうじいさん! 前回はすみませんでした!」
「ははは……、いや、ええんじゃよ……」
前回訪問した時と同じく、ゆうじいは博物館の玄関ポーチで独りポツンと立っていた。
アベルが明るい声で話し掛けるが、ゆうじいの目はよそよそしい。
それはそうだろう、なにせアベルとアリアは前回訪問時、協力して欲しいと願うゆうじいを意図せず無視したのだから。
「実はあれから妻と話し合って、ゆうじいさんの夢を叶えたいなって思いまして!」
「どうした? なにか新しい名産品でも持ってきたのか?」
悲しいことにゆうじいには話し相手がいないのだ、こんな辺鄙な場所を訪れる旅人などそうはいない。致し方なしといったところか……、口をへの字にしながらも一応話を聞いてくれる。
「あ、はい。ゆうじいさんが言っていた幻の名産品ってこれのことですか……?」
アベルは【大きなメダル】を取り出すのは重くて嫌だったので、【ふくろ】を指差し、ゆうじいに中を覗くよう促す。
アベルに期待していないゆうじいだったが、一応見るだけ見てやるかと【ふくろ】に首を突っ込んだ。
すると――。
「おお! おう! おおう!」
ゆうじいは【ふくろ】に首を突っ込んだまま、興奮したように激しくヘッドバンキングしている。
アリアが「だからその動きやめて……!」とアベルの斜め後ろで顔を両手で覆った。
……アリアの位置からは卑猥に見えるようだ……。
「これでいいんですよね?」
「それはまさしく大きなメダル! よし! 今日からお前さんがこの博物館の館長じゃ!」」
【ふくろ】から顔を出したゆうじいの瞳はきらきらと輝き、アベルの股間を両手人差し指で指し示す……否、アリアからはそう見える。
「も、もぉ、ゆうじいさんたら紛らわしいんだから……っ」
……アリアが独りで勝手に恥ずかしがっている。
頭がピンクなのはアベルだけではなかったようだ。
その間に機嫌が良くなったゆうじいが博物館の中へと案内するので、アベルたちはついて行くことにした。
「……アリアのヘンタイ」
「っ……!?」
アベルにぼそっと呟かれ、アリアは俯いてしまう。彼女の耳が赤い。
……そんな彼女がアベルには可愛くて仕方なかった。
「あれ? あそこにいるのってコロマージじゃないか?」
アベルは館の前でウロウロする、丸みを帯びたクリーム色の小さな身体に妖精のような尖った耳、オレンジ色の木の葉の帽子と同じ色の木の葉のマントを身に付け、手には星を模った頭が付いた杖――つぶらな瞳の【プチマージ】を見つける。
「コロマージ?」
「アリア憶えてるかなー? 妖精の世界で戦ったことがあるんだけど(強かったよね……!)」
「憶えてるけど、あの子コロマージと色が違う気がするよ……?」
「そうだったっけ……? ま、いいや。悪さしているようには見えないし、せっかくだから話を聞いてみようよ」
妖精の世界で戦ったことのある【コロマージ】は身体が水色――。
アベルは今目の前にいるクリーム色の【プチマージ】と【コロマージ】を勘違いしているようだ。
「こんばんは。君は今なにをしてるんだい?」
「名産品をみる画面ではL1ボタンやR1ボタンで台座を回転させることができるプチ。ちなみにもとのマップに戻りたければ×ボタンや□ボタンでキャンセルすればいいプチ~」
アベルが話し掛けると【プチマージ】は謎の言葉を吐き出した。
「え……? えるぼたん……? なに、どういうこと……?」
【プチマージ】の話にアベルの身体は硬直する。
「LボタンやRボタンて……アハハ……」
――やっぱりどこへ行ってもゲームなのね……。
アベルの後ろでアリアは苦笑い。
この世界はやはりゲームの中で、自分はリアル体験中なのだ。
つまり、アベルは誰かが操作しているということになるのだが、これまでアベルの態度にそれを感じたことはないし、アリア自身も同じ――。
バグっているのか、それともゲームの名残りがただ残っているだけなのか……まったく不思議な世界である。
「アリア、今のなに? どういう……意味わかる?」
アベルの瞳が動揺に揺れていた。
「あはは……。気にしなくていいよ。大丈夫だよ」
「う、うん……」
アリアがアベルの背をトントンと優しく叩くと、アベルは安堵したように強張った表情を緩め、今度こそ博物館内へと向かった。
ちょいちょいエロ要素を入れてすみません、いやいまさらなんですけどねっ!
コロマージの下りは私自身がすっかり間違えて憶えておりまして……。
セリフの語尾が「プチ~」っちゅうもんだから「あれ? プチマージじゃね?」となったわけです。
アベルもすべての魔物を憶えているわけではないんですね~w
※明日、明後日は投稿をお休みします。
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!