ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

展示室が変化してえるって……?

では、本編どぞ~。



第六百九十三話 展示室の変化

 

 

 

 

 

 ……館内に入ると広い玄関ホールの左手に受付らしきカウンターがある。

 玄関ホールではゆうじいがご機嫌な様子でムーンウォークをしていた。

 

 

「わぉ、ムーンウォーク……!」

 

 

 ゆうじいの軽やかなステップにアリアが見様見真似でステップを踏み出す。

 

 床を滑るように移動するバックステップのムーンウォークは、体重移動が肝だ。

 館内のツルツルとした床ならばステップも刻みやすかろう――?

 

 

「お嬢ちゃん、下手くそじゃな!」

 

「アハハ……、精進しますっ!」

 

 

 アリアの動きに気付いたゆうじいは、丁寧に彼女の隣へと移動し「こうじゃこう!」と指導を入れていた。

 【大きなメダル】のお陰でゆうじいの顔がにこにこと綻び嬉しそうだ。

 

 

「アリアなにやってんの……プッ、あははっ!!」

 

「アリア嬢……あなたという方は……ハハハッ!」

 

「がうがう!(なかなか筋がいいんじゃないか……!?)」

 

 

 アベルとピエールは笑い出し、キングスと入れ替わったプックルはアリアのステップを褒める。

 ……以前アリアがキャシーやパペックに踊りを習っている時も、面と向かって言ったことはないが、実はいつも応援していたプックルであった。

 

 

「ふぅふぅ……こんなもんじゃろ……あとは自主練でもすれば覚えられるじゃろうて……ぜぇはぁ……死ぬ……。いや、わし死んでたな」

 

「はぁ……はい、先生! 地道に練習します!」

 

 

 指導時間は時間にしたら十分程度だが、ゆうじいの息が上がっている。

 幽霊だというのに、なんという――。

 

 ……ゆうじいはムーンウォーク指導で疲労感を憶えてしまった。

 

 

「……はははっ! アリア新しい踊りを憶えられそうでよかったね」

 

「うんっ♡」

 

 

 アベルは身体を動かし、ほんのり頬を上気させたアリアの額に浮く汗を拭ってやる。

 アリアの笑顔は弾けるようで、楽しそうだ。

 それだけでアベルの顔は緩んだ。

 

 

「おお、そうじゃ! お前さんにこれをやろう」

 

「え?」

 

 

 アベルがアリアの汗を拭う中、息を整えたゆうじいがアベルに布を差し出す。

 

 

 

 

 “アベルは【みがき布】を受け取った!”

 “アベルは【みがき布】を手に入れた!”

 

 

 

 

「台座に置いた名産品の前で、その布を使うと名産品が磨けるぞい! ただし、お客さんの前で展示品を変えたり、磨くのはよくないからのう……。やはりお客さんの帰った後、夜に作業するのがいいじゃろう」

 

「どうも……」

 

 

 ――【みがき布】か……。

 

 

 ゆうじいは幽霊なのにもかかわらず、物に触れることができるようだ。

 床が綺麗なのはゆうじいが掃除をしているためなのだろうか。

 

 アベルの手には柔らかく丈夫な【みがき布】。この布で展示品を磨くのは夜の間だけ――

 

 

「ささっ、さっそく展示室へ行って、【展示台】に名産品をセットしておくれ。お客をすぐに呼ぶから明日にでも世界各地から集まるぞい!」

 

 

 アベルが“今夜展示品を置く作業をして、磨いて……”と考えている間にゆうじいは、展示室は正面奥と二階、それから三階に特別展示室があるのだと教えてくれる。

 

 

「アベル館長。名産品飾りに行こ?」

 

「館長……フフッ、館長か……。そうだねアリア君、行こうか。手伝ってくれるよね?」

 

「ウフフ♡ はいっ」

 

 

 アリアの声にアベルは腕を差し出し、彼女がそっと手を添える。

 二人は笑みを交わしながら展示室へと向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……アベルが触れた展示室に続く扉はギィィィ……と音を立て開いていく。

 その瞬間――。

 

 

「な……!?」

 

 

 アベルたちを玄関ホールあら見送るゆうじいの目が見開かれた。

 

 

「真っ暗……」

 

 

 扉を開いた先は真っ暗闇――。

 アリアは目蓋を瞬かせる。

 

 部屋には照明がないのだろうか?

 月明かりがあるはずなのに、展示室にはその僅かな明かりすらもない。

 

 

「……ゆうじいさん、灯りはないんですか?」

 

「そんなはずは……!」

 

 

 アベルが振り返りゆうじいに問う前に、ゆうじいが展示室の扉にやって来て闇の中へと目を凝らした。

 

 

「なんということじゃ……、部屋には夜間照明を設置していたはずなんじゃが……この間までは点いておったというのに……まあメンテナンスをしておらんかったからな。長年放っておいたせいで魔力が切れたのかもしれんなぁ……――」

 

「僕、見て来ますよ」

 

 

 ……夜間照明は魔力を使用したものらしい。

 調光ができるが耐久年数がどうの――、ゆうじいはぶつぶつとぼやいている。

 

 アベルは【ランタン】を取り出し、様子を見て来ると申し出ていた。

 

 

「悪いのう。部屋の天井中央に照明装置があるから、そこに魔力を流してもらえれば元に戻るはずじゃ。あ、お前さん火炎呪文は使えるかの? 初級でいいんじゃが」

 

「いや、僕は使えないですけど、妻なら」

 

「あ、私使えます!」

 

「ほう! ならすぐ直りそうじゃな。よかったよかった」

 

 

 アベルとアリアは展示室の灯りを復活させるべく、【ランタン】を片手に暗闇の中へと足を踏み入れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、な、ななななな……!? なんじゃこりゃーーーー!!」

 

 

 

 

 ……展示室にゆうじいの叫び声が響き渡る。

 展示室中央ではアベルたちが困り顔で辺りを見回していた。

 

 

 

 

 先ほどアベルとアリアは暗闇の中、【ランタン】のぼんやりとした灯りを頼りに、展示室の中央へと辿り着き、天井に丸い照明装置を見つけた。

 その照明装置に向けアリアが【メラ】を放つと、装置は炎を吸い込み、部屋の灯りが無事灯る。それは波紋のように天井全体に広がり、やがては部屋全体へ広がった。

 

 

 ……と、ここまでは良かった。

 

 

 展示室の灯りが復活すると、展示室前で様子を見ていたゆうじいが「おお! あっさり直ったな!」と喜び勇んで展示室に駆けて来たのだが――。

 

 

「どうなっておるんじゃ!? なんで展示台がこんな……!」

 

 

 展示室の有り様にゆうじいは頭を抱えわなわなと震える。

 

 

 ……展示室に置かれていた【展示台】の殆どが壊れていたのだ……。

 

 

「……古くなって壊れちゃったんですかね?」

 

「そんなわけなかろう!? この間見たときはなんともなかったんじゃぞ!?」

 

 

 アベルは壊れた【展示台】に近付き、様子を見る。

 ……ゆうじいも別の【展示台】に触れて見下ろした。

 

 

「この間っていつのことですか?」

 

「……うーむ……、何年前じゃったかのう……。忘れたわい」

 

「えぇ~……?」

 

 

 ――年単位か……。

 

 

 前回展示室に入ったのはいつなのか……訊ねたアベルだったが、ゆうじいは忘れてしまったらしい。

 

 いつ壊されたのかはわからないが、【展示台】の壊れ方が一定の法則で壊れているように感じた。

 一つ一つ拳で破壊したような形状だ……。

 

 

「っ……わしは、わしの代わりに館長になってくれる人をさがすため、基本玄関ポーチにおるんじゃよ。たまに管理人室に行くこともあるが、展示室にはなにも飾ってないから特に見ておらんかった。これはいったい……」

 

 

 せっかく館長を任せられる人物を見つけたというのに、【展示台】が破壊されているだなんて――。

 ゆうじいの目には薄っすらと涙が浮かんでいる。

 

 

「老朽化かな……?(にしてもこんな風に崩れるものかしら……?)」

 

「いや……これ、故意に壊されたみたいだよ……?」

 

 

 アリアが壊れた【展示台】を見下ろし呟くと、アベルは顎に手を当て見解を告げた。

 




ゆうじいは当分成仏できそうにありませんねぇ。

さて、名産博物館器物破損事件編(漢字ばっかりヤダーw)が始まりました。
テルパドールがどんどん遠ざかっておりますが、楽しんで書いているので温かく見守っていただけるとうれしいです。

長くてヤダーって方は、名産品博物館破損事件が片付いた頃から読んで頂いても問題ないかなと思いますw(いやでも、まだテルパドールに行かないんだけども……)

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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