ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

前回のプチあらすじ>アベルが三階の特別展示室の扉を開くと……?

魔法陣? 灰色の町?

では、本編どぞ~。



第六百九十五話 赤い魔法陣と灰色の町

 

 

 

 

 

 ……三階の特別展示室へとアベルたちはやって来た。

 アベルの開いた扉の先はやはり真っ暗闇――かと思われたが、一階や二階とは違う光景が広がっている。

 

 

「こ、これはいったい……?」

 

「なに……? これ……?」

 

 

 特別展示室には暗闇の中、複雑な魔法陣が描かれ、その魔法陣は赤い光を帯びて、部屋の中空にアベルが今まで見たことのない映像を映し出していた。

 

 

「……灰色の……町? なに……? 四角い塔がいっぱい……あの高い塔はいったい……?」

 

 

 鳥の視点――空からの眺めなのだろうか……。アベルの瞳に青い空の下、灰色の町と、形の大小が異なる四角い塔が無数に映り込む。

 地上に目を凝らせば、道らしき縦横の通路に色とりどりの【鉄】の塊が、規則性を持ちながら行ったり来たり。

 

 中には人間のような生物が歩いているのも見えるが、遠目過ぎてはっきりしない。

 

 塔の連なりや、見たこともない映像に瞬きも忘れたアベルは、興味を掻き立てられてその情景に手を伸ばした。

 

 ところがアベルが手を伸ばしても、その手はすり抜けてしまい、映像は一部モザイクが掛かったように乱れるだけ……。

 

 ホログラムのように映し出されたそれは、灰色のビル群――。

 緑は少なく、よく見てみれば小さな家々のような建物も見える。

 

 

「これはいったい……」

 

「がう(異世界っぽいな!)」

 

 

 ピエールは見知らぬ町の様子に固まっていたが、プックルは映像を見上げて何かを察したようだった。

 

 

「あれって……まさか、スカイツリー……!?」

 

「すかいつりー? アリア知ってるの!? っうわっ!? あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っっっ!!」

 

 

 ――腕が……!!

 

 

 アリアが灰色の町に一際高く(そび)え立つ、先端が細い形状、円筒の塔を指差しながら告げると、アベルは突として左前腕に激しい痛みを感じて声を上げた。

 

 

「アベルっ!?」

 

「ぅぅ……っ……左腕が急に痛み出して……!」

 

「見せてっ! これ外して!」

 

 

 急に苦しみだしたアベルにアリアは駆け寄り、腕輪(バングル)を外すように促す。

 ……アベルはすぐに腕輪(バングル)を外した。

 

 

「っ……爪かな……?」

 

 

 アベルの腕輪(バングル)の下には、腕に食い込むように爪らしきものが刺さっている。

 

 

「なにこれ……! なんでこんなの刺さったまま放っておいたの……!?」

 

「いや、ぅ……こんなの刺さってるなんて知らなくて……」

 

「知らないってどういう……、あぁ痛そう……! アベル、ちょっと痛いかもしれないけど我慢してね」

 

 

 アベルの話はともかく、まずは治療が先だとアリアは腕に刺さったツメを引き抜く。

 

 

「ホイミ!」

 

 

 ツメを引き抜いてすぐに血がどっと溢れたが、アリアの回復呪文のお陰で傷はすぐに塞がった。

 

 

「ちょっと痕が残っちゃったね……まだ痛い?」

 

「……いや、もう大丈夫。ありがとう……」

 

 

 ――まだ少し痛い気もするけどこれくらいは我慢できる……。

 

 

 小さな傷にアベルはルドマンの屋敷で出会った謎の人物の存在を思い出す。

 

 あの時痛みはあったが腕には何もなかったはず。

 結婚式を挙げた夜にこっそり見てはみたが、傷も痛みも特に何もなし。

 

 左腕の痛みはあの人物からの何かしらのサインなのだろうか……。

 

 

「これ……やっぱり爪かなぁ。魔物と戦っている内に刺されたのかしら?」

 

 

 アリアは取り出した物体を掲げた。

 アベルの血が付いているそれは、人の爪よりはやや大きい黒い破片だ。

 

 爪の形をしているが、何かの破片とも取れる。

 

 

「……あ、うん、多分そうだと思う。腕輪(バングル)の隙間に入り込んでたのが、急に刺さっちゃったんだよ」

 

「……こんな深く刺さるまで気付かなかったの……?」

 

「あはは……うん、僕って鈍感だよね~」

 

 

 ――今はまだ、アリアに知られるわけにはいかない。

 

 

 君と結婚するために得体の知れない人物と取引をした――、なんて言えばアリアは怒るだろう。

 

 あの人物から約束の詳しい内容を聞くまで、アベルは彼女には何も言えない。

 対価を支払うのはアリア、勝手に約束したのはアベル――自分である。

 

 心配そうに腕を撫でる妻に、アベルは申し訳なくて微苦笑するしかなかった。

 

 

 そんな中、アベルたちの背後――展示室の扉が開く音がする。

 

 

 ギィィィ……。

 

 

「ふぅ、さて続きを……、ん? 戻って来てみれば、キサマら……!!」

 

「「えっ?」」

 

 

 アベルたちが声に振り返ると、そこには【まほうつかい】らしき魔物がハンカチで手を拭き拭きやって来て、険しい顔つきを見せた。

 

 

「……あっ、お前はっ!! ……ハハハッ!! オレはなんて運がいいんだ。一度死んだが、諦めずにいてよかった。これなら“穴”を召喚できるぞ……!」

 

「一度死んだって……(あの金の腕輪……、さっき拾ったのと似てる……)」

 

 

 オレ……、野太い声から察するに魔物の性別は男らしい。

 魔物の片手には細い金の腕輪が光っている。

 

 アリアは金の腕輪の持ち主が見つかり【グリンガムのムチ】を取り出していた。

 

 

「穴って……」

 

 

 ――こいつ……どこかで見たことがある気がする……、どこでだっけ……。

 

 

 “穴”が何か……アベルにはなんのことかはわからないが、魔物がアリアを注視しているのはわかる。

 そして、その魔物の姿をアベルは見たことがあった。

 

 

 ……アベルはアリアを庇う様に背後に隠す。

 

 

「フハハハッ!! 女ぁっ!! オレのために贄となれ……!」

 

「わわっ!? アベルっ!」

 

 

 魔物が突然両腕を挙げ、魔力を解放し始めたのか、その手に禍々しい魔力が集まっていく。

 集まった魔力が足元の魔法陣に流れているのだろう、魔法陣は赤く点滅したかと思ったら、白みを帯びた光を溢れ出させた。

 

 アベルたちは丁度魔法陣の中にいたため、その影響をもろに受ける。

 

 

「アリアっ!」

 

 

 アベルは即座に身体を反転、アリアを抱きしめた。

 魔法陣から眩い光と共に風が吹き荒れ、アベルたちの服やマントを揺らす。ピエールの目庇がカタカタと音を立て、プックルのたてがみがユラユラ靡き、アリアのマントとスカートを巻き上げた。

 

 

「きゃあっ! ぱんつ見えちゃうっ!!」

 

「今日は何色!? こっからじゃ見えない! 僕は白だよ!」

 

「ばかぁっ!(奇遇~! 私も白だよっ♡ おっそろ~!)」

 

 

 アリアのスカートの中身はピエールとプックル、それに魔法陣を操る魔物からしか見えない。

 なぜかアベルは自分の下着の色を伝えた。

 

 

 ……魔法陣は光と共に風を巻き起こし続けるが、それ以上の変化は見られない。始めこそ勢いのあった風は徐々に弱くなっていった。

 

 

「あ、あれ……?」

 

「風が止んだ……、あっ。映像が……!」

 

 

 風が止むと同時に室内に映し出されていた映像が消え失せ、魔法陣も消える。

 ……部屋は闇に包まれてしまった。

 

 アベルとアリアは抱き合いながら映像の方へと視線を移したものの、そこはすでに暗闇――何も見えなくなり、アベルはいつの間にか放り出していた床に転がる【ランタン】を手にすると天井に向けて持ち上げる。

 

 ……その先には丸い照明装置があった。

 

 

「アリアお願い」

 

「あっ、うん! メラッ!!」

 

 

 ボッとアリアの指先から炎の玉が現れ、照明装置に向けて解き放たれる。

 照明装置に【メラ】が触れると、室内の灯りが一斉に点った。

 

 

「明るくなった……って、ヒィッ!? アベルぅっ!!」

 

「アリアっ!?」

 

 

 灯りが点った途端、アリアが小さな悲鳴を上げ抱きついて来る。

 何事かと思ったアベルは辺りを見回した。

 




ここで問題です。
さて、映像の町はどこでしょうw

……いや、違うな。
さて、まほうつかいらしき魔物の正体は……? ってことで、次回に続く!

※今日は11/11のため、ゾロ目で11時にも投稿してみました。
20時にも投稿予定です。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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