ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

前回のプチあらすじ>部屋の灯りが点いたと思ったらアリアが抱きついてきて……?

ただのしかばね……?

では、本編どぞ!



第六百九十六話 へんじがない。ただのしかばね……?

 

「……ガイコツ……?」

 

 

 なんと、アベルたちのすぐ側にガイコツが落ちている。

 

 

 ――なんで、こんなところにガイコツ……?

 

 

 調べれば“へんじがない。ただのしかばねのようだ。”と天の声が聞こえそうだ。

 アリアはこういう類のものが苦手だから悲鳴をあげたのだろう――そう思ったアベルは彼女の頭をぽんぽんと撫でてやる。

 

 

 ……そんなアベルたちだったが、扉の前では魔物が床に手と膝をつき、深呼吸を繰り返していた。

 

 

「はぁ、はぁ……まったく、なんて弱い身体だ……、魔力が足りん……!」

 

 

 ぜぇ、はぁ……。

 

 

 魔物は室内の照明に気付いていないのだろうか、反応がない。

 夜間照明のため、煌々とした灯りではないが、それでも魔物の全容がわかってくる。

 

 

「……アリア。あいつどこかで見たことあるような気がしないかい?」

 

「え……?」

 

 

 顔さえ上げてくれれば、思い出せそうなのに――。アベルは目を凝らし、魔物を窺う。

 アリアもアベルから離れて魔物を観察した。

 

 

 ……【まほうつかい】のマーリンによく似ているが、服の色が違う。マーリンはモスグリーンのローブだが、目の前の魔物のローブは紫――首元には大きく重そうな金の首飾りをしている。

 

 

 ――あれ? どっかで会ったことあるような……?

 

 

 アリアは【グリンガムのムチ】を手にじっと様子を見る。

 

 

「……クソッ……! なぜだ!? なぜ開かん! あの女が贄になれば開くと思ったのに……!!」

 

 

 ダンッ、ダンッと魔物は悔しそうに床に拳を打ち付けている。

 金の腕輪の床を打つ金属音がキンキンと弾けていた。

 

 

「クソッ……! ラインハットで死ぬことさえなければこんな弱い身体に入らずに済んだものを……!」

 

「ラインハット……?」

 

 

 ――どういうことだ……?

 

 

 魔物のぼやきにアベルは首を傾げる。

 

 ラインハットで死んだ……。

 そういえば、この魔物――、一度死んだと言っていたなとアベルは思い出した。

 

 

「お前のせいだぞ女ぁっ!!」

 

 

 魔物が顔を上げアリアに向けて怒りを露わにする。

 

 

「っっ!? わ、わたしのせい?? って……その顔……!!」

 

「……お前は……!(思い出した……!)」

 

 

 唾を飛ばしてくる魔物にアリアは身体を引いて避けつつ、記憶の中の魔物を思い出す。

 アベルもアベルではっきり見えた顔に魔物が誰であるかを思い出した。

 

 

「「おやぶんゴースト……!!」」

 

 

 二人の声はハモり、おやぶんゴーストが口を開けたままニヤリと不気味に嗤う。

 だが、その口には歯が二本しか存在していない。

 

 以前もそうだったが、歯が二本なのにはっきり発音できるのはすごい。

 相変わらず頭はつるつるなのだろうか……、アベルはちょっと気になる。

 

 

「はっはっはっはっ!! 残念だったな、オレさまはニセた……おやぶんゴーストだっっ!!」

 

「「ニセおやぶんゴースト??」」

 

 

 “ニセおやぶんゴーストとはなんぞ……?”

 

 

 アベルとアリアは互いに顔を見合わせてから再び【ニセおやぶんゴースト】と名乗る者へと注目した。

 

 

「……魔法使いの身体をしているから魔力が豊富かと思えば、弱っちい。あんなチンケな家に住んでいたから居城を変えてやったのに、昼になれば森に逃げるから夜に戻って来るしかない。あいつに貸しを作ってもどうせ裏切るから独りで世界を掌握しようと思ったのに、召喚はうまくいかず、それもパァだ。どうしてくれる!!」

 

「……? どういうことだ?」

 

 

 ニセおやぶんゴーストの話にアベルは首を傾げる。

 

 身体は【おやぶんゴースト】のようだが、中身は違う……ということなのだろうか……。

 本人がニセおやぶんゴーストとか言ってるしその可能性が高い。

 

 

「……深い闇の中でなければ真理には近付けない。一度死んだオレさまだけがそれ(・・)に気付き、こうして“窓”の召喚を果たしたというのに、窓は映像を映すだけで、“穴”は開かなかった。強い信念が邪魔したせいだ……!」

 

「邪魔って……(信念……?)」

 

 

 続くニセおやぶんゴーストの話に今度はアリアが眉を寄せた。

 

 “窓”とはさっきの映像のことを指しているのだろう、“穴”……がなにかはよくわからない。

 ただ、ニセおやぶんゴーストが“穴”というものを召喚しようとしていた――ということはわかった。

 

 

 ……とはいえ、それも強い信念によって邪魔されたらしい。

 

 

「女ぁっ! お前どうやって邪魔をした!? オレさまの崇高な夢をお前のような女の夢や信念が邪魔できるはずなかろう!?」

 

 

 ニセおやぶんゴーストが怒り、アリアに唾を飛ばしてくる。

 ……ピエールがやって来てそれとなく盾で防いでくれた。

 

 【おやぶんゴースト】とは幼い頃出逢っているものの、アリアは認識していたが、向こうは認識していたかどうかは不明である。

 ほぼ初対面のアリアに対して、物言いがずいぶんと失礼ではないか。

 

 

「夢って……」

 

 

 ――なんでこんなに怒ってるの……カルシウム足りてないんじゃない……?

 

 

 船上生活で釣った魚の干物があるから分けてあげようかと、アリアは考えつつ、ニセおやぶんゴーストの邪魔をした夢とやらが気になる。

 

 

「アリアの夢は僕と新しい家族を迎えることだよね?」

 

「ちょっ!? ま、まぁ、それもそうだけど……♡(他にもあるんですけどー……!)」

 

 

 アベルが【パパスのつるぎ】を取り出しながらアリアに微笑み掛ける。

 ……アリアの顔は赤く染まった。

 

 

「そんなチンケな夢でオレさまの夢が掻き消されてたまるかっ!!」

 

「チンケとは失礼だな。……つまり、誰かの夢や信念がお前の夢を邪魔したってことか? 僕の信念が邪魔したか?」

 

 

 憤るニセおやぶんゴーストにアベルは【パパスのつるぎ】を構え訊ねる。

 

 

「お前はそもそも対象外だ! ……ハッ! そうか……そこのしかばね……!」

 

 

 室内に転がる“しかばね”を見下ろし、ニセおやぶんゴーストが地団駄を踏み出す。

 

 

「え?」

 

 

 ――対象外って……酷くない? 僕は母さんをさがすっていう揺るぎない信念を持っているというのに……。

 

 

 “そもそも対象外”と一蹴されたアベルはちょっと淋しい。

 ……が、アベルはニセおやぶんゴーストの言うしかばねに視線を落とした。

 

 アリアたちも一斉にしかばねに視線を注ぐ。

 

 

「……クソッ! そうだった……そのしかばね、残留思念が強いから贄にしたんだった……! 避けておけばよかった、クソッ、クッソッ……!! 展示台を壊して夢を砕いてやったのに……!!」

 

 

 “忌々しい……!”

 

 

 ニセおやぶんゴーストの顔が歪み、またしても地団駄を踏む。

 

 

「……あのしかばね……ゆうじいさんだったの……。やっぱりあなたが犯人だったのね……!」

 

「だとしたらどうだというんだ!!」

 

「…………、おしおき」

 

「は?」

 

 

 ビシッ……! ニセおやぶんゴーストの足元に、アリアが振るった【グリンガムのムチ】がしなり、打ち付けられた。

 

 

「っっ!?」

 

 

 ニセおやぶんゴーストは飛び跳ね身を竦める。

 

 

「オイタが過ぎる子には罰を与えないとね……」

 

 

 アリアは【グリンガムのムチ】を手繰り寄せ、両手で左右に引き伸ばした。

 

 ビィィン……と、張られたムチは再び片方だけ放され、重力にならって床に落ちる。【グリンガムのムチ】の三つの矢じりがカチカチと鳴り合わさった。

 

 彼女の瞳は大きく見開かれ、怒りの炎が燃えている。

 激おこ……らしい。

 

 

「アリア……♡」

 

「死者を冒涜する者は何人たりとも許さない。オバケを生み出すなんて許すわけにいかない。あなたは改心したんじゃなかったの?」

 

 

 ビシィッ!!

 

 

 アベルの目にハートが映る中、アリアは冷静に告げながら再び【グリンガムのムチ】を振るう。

 

 ……今度はニセおやぶんゴーストに命中した。

 

 

「ギャアッ!」

 

 

 アリアの一撃だけで、ニセおやぶんゴーストは床に倒れてしまう。

 【会心の一撃】……のようだ。

 

 

「クソッ、クッソォッ!! お前みたいな奴にオレさまが負けるはず……!」

 

「……うるさい」

 

 

 ビシッ!

 

 

 ……ムチがしなり、直後に「ギャアアアッ!!」というニセおやぶんゴーストの悲鳴――。

 

 

「お前っ、お前は天空……」

 

「黙りなさい。あなたのお話は謝罪だけ聞きます。以降、ごめんなさいか謝罪の言葉以外受け付けません」

 

「ふざけん……ギャアアッ!!」

 

 

 ニセおやぶんゴーストの話は聞きたくないとばかりにアリアはムチを振るう。

 それはニセおやぶんゴーストの話し始めが「ご」から始まらない限り続いた。

 




アリア、ムチの扱いマスターしましたw
アベルと再会する前はチェーンクロスをずっと使ってたしね。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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