ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

前回のプチあらすじ>アリアのムチが炸裂。ニセおやぶんゴーストはなすすべもなく……。

僕の女王様て……。

では、本編どぞっ。



第六百九十七話 僕の女王様

 

「……アリア……、ちょっと怖いよ……?」

 

 

 ――アリアを怒らせないようにしよう……。

 

 

 妻が怒ると怖いのは知ってはいるが、アベルはあまり見たことがない。

 彼女は真に怒ると言葉使いが丁寧になるのだと初めて知った。

 

 

 アリアの後ろでアベル、ピエール、プックルはぶるぶると震える。

 ニセおやぶんゴーストの魔力が枯渇しているとはいえ、一方的過ぎるではないか……。

 

 

 ビシッ! ピシッ!

 ビシッ! ピシッ!

 ビシッ! ピシッ!

 

 

 【グリンガムのムチ】がアリアの思考を読み取るかのようにしなり、ニセおやぶんゴーストの被服を徐々に剥いでいく。

 痛みももちろんあるだろうが、傷はあまり付いていないように見える。出血は少なかった。

 それよりも徐々に貧弱な生身を空気に晒され、ニセおやぶんゴーストは痛みよりも羞恥心の方が勝り頬を色付かせる。

 

 このままでは丸裸にされてしまう……。

 

 

 ……アリアの一方的な攻撃はしばらく続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ビシッ! ピシッ!

 

 

 【グリンガムのムチ】が大きくしなり、尖端の矢じりが器用にニセおやぶんゴーストの被服を少しずつ削り取っていく。

 アリアはニセおやぶんゴーストに攻撃する隙を与えないまま、ずっとムチを振り続けていた。

 

 

 ……怒っているのはわかる。

 わかるが、そのアリアは――。

 

 

「……」

 

 

 ……無言且つ、無表情だ。

 

 

 アベルたちは互いに身を寄せ合い、スラりんにも負けないほどにぷるぷると震えながらアリアを見守っている……。

 

 

「アリア……(僕はどんな君も受け止めるよ……、コワイケド……)」

 

 

 人によって怒り方は違うんだなぁ……などと、アベルは無言&真顔でムチを振るう妻の姿を受け入れるため、一心に目に焼き付けた。

 

 

 ……アリアからのムチ攻撃は受けない方が良いかもしれない。下手をしたら死んでしまう可能性も……。

 だが、あのコントロール能力……【グリンガムのムチ】でなければワンチャン――。

 

 

 アベルの背にぞくぞくとしたものが這い上がる。

 恐怖による震えか、武者震いか――。

 

 

 ――とにかく今は僕の女王様を見守っていよう……。

 

 

 アベルの瞳は期待に満ちていた。

 

 

「ご、ごめんなさい……。もう許して下さい……(なんだって裸にされ……!)」

 

 

 ……遂にニセおやぶんゴーストの身体は大きな金の首飾りと、大事な部分を残し(まさかのふんどしであるが、ずいぶん短くなってしまった)、服は散り散りに。周囲に散らばっている。

 無言・無表情ゆえにアリアが楽しんでいるのかは不明だが、極力身体を傷付けないようにムチを操っている辺り、傍からは楽しんでいるようにしか見えない。

 

 

「…………私に言うんじゃないの! ゆうじいさんに言って!」

 

「っ、ごめんなさいっ! 申し訳ありませんでしたっ……!」

 

 

 アリアが漸くムチを振るうのを止め、口を開くと、ニセおやぶんゴーストは慌てて“しかばね”の前へ駆けて行き土下座した。

 

 

「よろしい! 謝れたね! じゃああなたはここから出て行きましょうか」

 

「……っ、クソッ! 女ぁっ! お前というヤツは規格外だな!!」

 

 

 【グリンガムのムチ】を仕舞いながらアリアは笑顔を見せる。

 その笑顔にほぼ素っ裸のニセおやぶんゴーストは、わなわなと震え唾を飛ばした。

 

 

「……あなたなんでそんなに私のこと敵視してるの……?」

 

「クソッ! クソッ! クソッ!!」

 

 

 アリアは唾が飛んで来たので顔を背ける。

 ニセおやぶんゴーストはまたしても地団駄を踏んだ。

 

 ニセおやぶんゴーストの身体から流れ出た血が辺りに飛び散り、部屋に敷いてあった絨毯に汚れが付着する。

 

 

「……トイレ行きたいの? 身体冷えてお腹痛い? 大丈夫?」

 

「さっき行ったわボケェ!! お前調子狂うんだよっ!! クッソッ……」

 

 

 思わぬアリアの気遣いの言葉に、ニセおやぶんゴーストはいきり立った。

 

 アリアはゆうじいのしかばねに謝ったことで怒りが収まったらしい。いつもの柔和な顔でニセおやぶんゴーストの様子を見ている。

 

 だが、そんなアリアと会話をすればするほど、ニセおやぶんゴーストには苛立ちが募っていった。

 

 

「クソッ……あ」

 

 

 このままでは怒りに我を忘れて冷静さを欠いてしまう――。

 そう思ったおやぶんゴーストは、ふとアベルへと視線を注ぐ。

 

 

 ……その視線の先はアベルの……アベル?

 

 

「ん……?(なんで僕の股間を見てるんだ……?)」

 

「フハハハッ! やっぱりオレさまはついている!! こうなったら……!」

 

 

 おやぶんゴーストの熱い(?)視線に気付いたアベルが首を傾げた瞬間――。

 おやぶんゴーストは駆け出し、アベルへ体当たりをかました。

 

 

「あっ……! アベルっ! 気を付けてっ!!」

 

 

 “ドンッ……!”

 

 

「わっ!?」

 

 

 アリアの声と同時、アベルの身体はおやぶんゴーストに押され尻餅をつく。

 おやぶんゴーストはアベルに体当たりしたあとですぐさま踵を返し、扉を開け放ってさっさと部屋から出て行ってしまった。

 

 

「アベル大丈夫!?」

 

 

 尻餅をつくアベルの元へアリアが駆け付けると、彼女は膝をついて心配そうに眉を下げる。

 

 

「……ああ、平気だよ。急に押されて受け身が取れなかっただけ。なんともないよ」

 

「そっか、よかった……」

 

 

 アベルの答えにアリアは安堵し、笑顔を浮かべる。

 アベルはそんな彼女に笑顔を見せて頭をそっと撫でてやった。

 

 

「あいつ……なんか企んでたみたいだけど結局出て行ったね」

 

「うん……。あの人……おやぶんゴーストだったのよね……?」

 

「たぶん……」

 

 

 二人は立ち上がり、開けっ放しにされた扉を見つめる。

 視線の先にはバルコニーに続く扉があり、その扉が開いている。

 

 ……バルコニーから出て行ったというのか。

 

 

「あっ! アベルの袋が……!」

 

「え、あっ!」

 

 

 ふとアベルに視線を移したアリアが声を上げ、アベルは自己を見下ろした。

 

 ……腰にぶら下げたアベルの持っていた普段使いの持ち物を入れる小さな袋が破け、中身がいくつか足元に転がっている。

 大容量が入る不思議な【ふくろ】じゃなかったのは幸いだ。

 

 

「アベル、もしかしてなにか取られたんじゃ!?」

 

「っ、確認する……!」

 

 

 アベルは袋を外して中身を確認する。

 

 

 ……普段使い用の小さな袋には【やくそう】と【まほうのせいすい】、ゆうじいに貰った【みがきぬの】……それと【やみのランプ】が入っていたはず――。

 

 床に落ちているのは【やくそう】と【まほうのせいすい】だ。

 ならば、袋の中には【みがきぬの】と【やみのランプ】が……

 

 

「ない……」

 

「え?」

 

「闇のランプがない……。いつでも夜にできるから持ち歩いてたんだけど……入ってない」

 

「ええっっ!? 大変っ! すぐ追いかけなくちゃ!!」

 

 

 ――【やみのランプ】なんてレアアイテムじゃないっ!!

 

 

 アベルの狼狽える様子にアリアは駆け出す。

 

 

「あっ、アリア! 僕も行く……!!」

 

 

 アベルも駆け出し、ピエールたちも続いた。

 




アベルは袋を二つ所持しております。
なに?4つだって!?
なに言わせてんのよ!(あ、わからなくていいです、スミマセン)

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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