ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

ニセおやぶんゴーストを追っていきます。

では、本編どぞっ!



第六百九十八話 追跡

 

 

 

 

 

「待て! ニセおやぶんゴースト!!」

 

 

 アベルたちは急いでにバルコニーへと駆けて行く。

 二階に位置するバルコニーに続く三階の扉の先は下り階段だ。

 

 階段を早足で駆け下りたアベルは、ニセおやぶんゴーストがバルコニーから飛び降り逃走を図ったのではないかと、手すりから身を乗り出し辺りを見回した。

 ところが敷地内はおろか、その先の森の中に目を凝らしても、それらしき人物は見当たらない。

 

 ……バルコニーは二階に位置している。

 手すりを乗り越え、負傷したあの身体で飛び降りれば、逃走は難しいだろう。

 

 とすれば、まだ近くにいるはず。

 

 アベルは一旦敷地外に逃げたという考えは保留にし、バルコニーを調べることにした。

 

 ここのバルコニーはかなり広く、バルコニーに設置されている照明は全て消えている。月明かりがあるとはいえ かなり視界が悪い。

 テーブルの下、柱の陰、階段の裏……と、隠れられる物陰も多いと一見してすぐにわかった。

 

 夜の闇がそれを助けてくれるから、身を隠しておいて ほとぼりが冷めた頃逃げ出せばいいとでも思っているかもしれない。

 

 階段を上がって逃げられるとまずいので、ピエールに階段上で見張ってもらい、アベルはまず階段裏を覗いた。

 月明かりが差し込まない階段裏は闇があるだけで何の気配もなかった。

 

 階段裏の側にある大きな柱の裏を見ても、誰もいない。

 

 バルコニーには三階から下りてきた階段を中央に、左右に白いクロスが掛かった大きなテーブルが二台ある。

 展示品を見た客が休めるよう設けられた休憩所なのだろう。

 

 二台のテーブルのどちらかにいるのだろうか――。

 ……アベルはまず西側のテーブルを調べることにした。

 

 だが西側のテーブルを見ても、東側のテーブルを見ても、どちらのテーブルの下にもニセおやぶんゴーストはいなかった。

 階段上で待ち伏せするピエールに、ニセおやぶんゴーストが来たか訊いたが来ていないという。

 

 

「これは……逃げられたかな……?」

 

「うーん……、でも、まだ近くにいる気がするよ?」

 

 

 アベルはやはりすでに敷地外へ出てしまったのだろうかと再び森へ視線を投げるが、アリアは違うとバルコニーを見回す。

 

 

「え?」

 

「あ、ほら私、魔物の気配を感じ取れるから、近くに誰かがいるのわかるんだ。でも、あの人魔力使い果たしてたし、傷付いてたでしょ? だから微弱過ぎて近くにいるってことしかわからないの、ごめんね」

 

「いや、アリアすごいよ! ありがとう!」

 

 

 ――そうか、アリアは魔物の気配や魔力を感じ取れるのか……!

 

 

 そういえばいつからだったか、アリアは魔物がやって来る方角を事前に教えてくれたことがあったっけ……と、アベルはアリアの特殊能力に目を見開く。

 

 使いようによっては便利な能力だが、アベルに現時点でアリアを馬車から降ろす選択はない。

 それでも妻の能力を褒めることはしておかなければと、アベルはアリアを褒めた。

 

 

「え? えへへ♡ 褒められちゃった♡ もうちょっと神経を集中したらわかるかもしれないからやってみるね。……」

 

 

 褒められたことが嬉しいのか、アリアの笑顔が月の光を浴びて輝いて見える。

 ……彼女は目を閉じ、黙り込んだ。

 

 

「ご褒美に今夜もいっぱい楽しませてあげるからね♡(月明かりの下の君も綺麗だよ……)」

 

「……え……いや、それはいいよ……、死んじゃう……」

 

 

 アベルの一言に目を閉じるアリアの頬が色付く。

 

 

「え……? あっ! えっと今のはっ! そのっ……、あっ、本音なんだけど違うっていうか……」

 

 

 ――マズイ……! 心の声と本音が逆になってしまった……!!

 

 

 アリアの態度にアベルは自分の口から出た言葉を思い出し、気まずさに頬を掻き苦笑いを浮かべた。

 

 

「もぅ、アベルったらそんなことばっかり言って…………、ぁ」

 

「ん?」

 

「んー……、なんかぐるぐるしてる?」

 

 

 アリアは目を閉じたまま首を傾げて告げると目蓋を開く。

 

 

「ぐるぐる?」

 

「うん。あの人、近くを行ったり来たりしてる……ような?」

 

「……ということは」

 

「うん、たぶん私たちがテーブルの下とか探している間に次の場所に移動してる」

 

「そういうことか。ピエール! そっちはどうだい!?」

 

 

 アリアが言うにはアベルたちが一箇所をさがしている間に、ニセおやぶんゴーストが先回りし、逃げているということらしい。

 昼間なら目立ってすぐに見つけられるが、闇に紛れて見えにくいということなのだろう。

 

 アベルは階段上のピエールに大きな声で訊ねる。

 

 

「はい! こちらは異常なしですよ!」

 

 

 ピエールの返事がして階段には上がって来ていないことがわかる。

 つまり、ニセおやぶんゴーストは階段後ろを回り、左右のテーブルを行ったり来たりしているということだ。

 

 ならば――。

 

 

「アリア、二手に分かれて左右のテーブルの下をさがそう、その後は一斉に階段裏だ」

 

「だね!」

 

「プックル、アリアに付いてやって」

 

「がう(任せろ)」

 

 

 アベルたちは二手に分かれ、それぞれテーブルの下を捜索することにした。

 ……だが、どちらのテーブル下にもニセおやぶんゴーストの姿はなかった。

 

 

「「次は……」」

 

 

 左右のテーブルから顔を出したアベルとアリアはそれぞれ口にして――

 

 

「「階段裏!!」」

 

 

 アベルたちは左右から階段裏に向かい、お見合いをする。

 階段裏、側には柱もあるが、左右から柱の裏を回るようにして来たので、残るは月明かりの届かない階段裏(暗闇の中)のみ。

 

 

「あれ? いない……?」

 

「……ううん、アベルそこにいる」

 

 

 アリアが階段裏、真の闇に指を差すが――。

 

 

「え? あっ! アリア危ない!!」

 

 

 “ゴォォッ!”

 

 

 不意打ちで闇の中から赤く大きな炎が現れ、アベルはアリアを庇うように飛び出した。

 

 

「っ……び、びっくりした……」

 

「うっ……熱い……、アリア平気かい?」

 

「アベルっ……! ありがと……ベホイミ!!」

 

 

 アリアがダメージを負うことはなかったが、アベルは避けたにも関わらず少々ダメージを負ってしまう。

 すかさずアリアは回復呪文でアベルを回復させ、アベルが受けた火傷は綺麗に消えた。

 

 

「……どういたしまして! アリア、当たりだね! やっぱりあとでたっぷりご褒美あげる!」

 

 

 ――君が無事でよかったー……!

 

 

 アベルはアリアの頭を撫でるが、またしても本音と思いが逆である。

 

 

「いや、いいよっ!?(アベルってば私を殺す気ね……!)」

 

「よし! もう逃げられないぞ。さあ早く出て来い! 時間がもったいない」

 

 

 やんわりと断るアリアだったが、アベルは意に介さず真の闇に向かってニセおやぶんゴーストに声を掛けていた。

 

 

「……も~……私の話聞いてないし……」

 

 

 ……アリアは微苦笑して【グリンガムのムチ】を構える。

 

 

 そうしてしばらく経つと、闇の中からキンキンと、金属のかち合う音が聞こえた。

 

 

「……? 早く出て来るんだ!」

 

『……クソッ、クソッ! こうなったらこいつを……!!』

 

 

 アベルは再び声を掛けるが、闇の中でまたしても赤い炎が上がる。

 ところが、その炎はアベルたちに向けられたものではなかった。

 

 そして再び、キンッ、キンッ……という金属音。

 いったいなんだというのか……。

 

 

 その内、キィィン……と一際大きく金属音が鳴り響き、真の闇から――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……夜の闇のような煙がモクモクと――、上がったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あっ! アベル!!」

 

「え、なんっ……!?」

 

 

 ――なんだこの煙は……!?

 

 

 光を通さない真っ黒い煙が、大量に階段裏の陰から溢れ出てくる。

 アベルたちは瞬時に滝の洞窟での戦いを思い出し、咄嗟に息を止めるが反応が遅れて少し煙を吸ってしまった。

 

 ところが煙を吸い込んでも特になんの痛みもない。

 ……毒ガスではないようだ。

 

 黒い煙がどんどんと空へ昇っていく。

 それは徐々に夜の闇に溶け込むようにして消えていった。

 

 

「……なにをしたんだ?」

 

 

 ――煙が空に昇ってった……だけ?

 

 

 空に昇っていく黒い煙を眺めながらも、アベルには何が起こったのかわからない。

 次第に煙は消えてしまい、アベルはニセおやぶんゴーストがいるであろう、真の闇に向けて訊ねるが、応答はなかった。

 




もっくもく。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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