前回のプチあらすじ>闇の中から金属音がしたと思ったら黒い煙がモクモクと……。
ニフラ~ム。
では、本編どぞ~。
「っ……イヤな予感がする……! アベルっ! 早く捕まえよう!」
「え、あ、ああ!!」
――アリアの予感は当たる……!
ニセおやぶんゴーストが観念し、自ら出て来るのを待っていたアベルだったがアリアの声にすぐに真の闇に突入し、ニセおやぶんゴーストを捕らえる。
……不思議なことに、ニセおやぶんゴーストは然程抵抗もせずにあっさりと捕まった。
「いったい今、なにをしたんだ!? 僕から盗んだ闇のランプを返せ!」
「……クックックッ……! これで魔王さまに快適な世界をご案内できる……! あのアゴではなく、このオレのお陰ですよ、魔王さまぁああああ!!」
アベルに羽交い絞めされながら、ニセおやぶんゴーストが空に向かって声を張り上げる。
「どういうことだ!?」
……アベルはニセおやぶんゴーストを締め上げ、彼の手元などを見るが、ニセおやぶんゴーストは何も持っていない……。
【やみのランプ】をどこに隠したというのか――。
「クックックッ……フフフ……アーッハッハッハッ!! この身体は用済みだ!」
「なっ!?」
突如、ニセおやぶんゴーストの身体が脱力する。
アベルは急に力の抜けたニセおやぶんゴーストのせいでバランスを崩した。
ニセおやぶんゴーストから、半透明の【まほうつかい】に似た幽体が飛び出す。
その幽体は勝ち誇ったようにニヤニヤと余裕の笑みで宙へと舞い上がって行くのだが――、
「ギャッ! オバケ禁止っ! 二フラム!!」
幽体離脱を目の当たりにしたアリアは、宙を彷徨う幽体に向け【二フラム】を唱えていた。
……【二フラム】とは――、魔物や邪悪な魂を持つ者たちを強い祈りでもって光の彼方へと消し去る呪文である。
アリアが【二フラム】を唱えると、ニセおやぶんゴーストから出た幽体は白く輝き消え失せる。
『ギャーー!! おんなぁっ! ふざけん……――』
……幽体の最期の言葉は途中で途絶えた。
「悪霊退散っ! ……フゥ……」
――彷徨える魂には【二フラム】が効くのね……!
不意に唱えてしまったが、効いたようで何よりである。
アリアは苦手な幽霊が消え去り、ほっと胸を撫で下ろした。
「アリアナイス!」
「え? あ……えへへっ♡」
アベルにサムズアップされ、アリアは照れながら控えめにピースサインを形作る。
「……ねえ、アリア」
「ん?」
「さっき幽霊……? が身体から出たみたいだけど……」
「う、ん?」
「……こいつ、まだ生きてるよ。気を失ってる」
「えぇっ!? どういうこと!?」
なんと、ニセおやぶんゴーストは幽体が出た後も息をしているらしい。
アベルは脱力したニセおやぶんゴーストが呼吸しているのに気付き、捕らえた腕は放さないままでいた。
「アリア、こいつ……ホンモノおやぶんゴースト……かな?」
「いや、そこはおやぶんゴーストでいいんじゃ?」
「あ、それもそうだね。何か知ってるかもしれないから起きるまで待ってみようか。一応縛り上げとこう」
アリアからツッコミを受けつつ、アベルはロープを取り出し【おやぶんゴースト】を縛り上げた。
……ピエールのいる階段側へと連れて行く。
「さすがですアベル殿、アリア嬢」
【おやぶんゴースト】を階段下に連れて行くと、ピエールが見張りを止め下りてきた。
【おやぶんゴースト】が目を覚ますまで待つつもりだが、月明かりに照らされた身体を見てもやはり彼はなにも持っていない。
……【やみのランプ】をどこにやったというのか。
「……落としたのかな……、だとしたらバルコニーに落ちてるよね」
物陰に転がっているかもしれない――と、アベルは辺りを見回す。
だが、月明かりだけでは物陰は暗くてよく見えなかった。
「あ、アベル。照明装置がもしかしたら階段裏にあるかもしれないから、見て来るね」
「うん、お願い」
もう幽霊はいないから安心……とばかりに、アリアは照明装置を探しに階段裏へと歩いて行く。
アベルも“あ、そっか灯りか!”と【ランタン】を取り出し物陰を探した。
「……無いなぁ……」
バルコニーの端やテーブルの下を覗いても【やみのランプ】は見つからない。
……その内バルコニーの照明が点灯した。
「アリアありがとう」
「……ねえ、アベル、こんなものを拾ったんだけど……これって……」
アリアが階段下に戻って来るとアベルはお礼を告げたが、彼女の手には銀色の金属の塊が――。
……ティーポットのようだ。
ティーポットは真っ二つに割れてしまっている。
「……ティーポット……? あれ、蓋の上に月の飾りが付いてる。おしゃれだね」
真っ二つに割れたティーポットの蓋は開けられないようにできているようで、片方に月をモチーフにした【金】の飾りが付いていた。
「ね~……って、アベル、そうじゃなくって……、これ、ティーポットじゃないよたぶん」
「え? ティーポットじゃなきゃなんなんだい?」
――ゆうじいさんが壊れたティーポットを片付け忘れてたんじゃないのか?
アリアが一応同意してくれるも、これはティーポットではないと否定し割れた物体をアベルに差し出す。
……アベルは割れた物体をまじまじと見下ろした。
見たことがある気がする……ような?
「……よく見て。中が真っ黒なの。しかもなんか変」
割れた物体の内側をアリアはこすこす。
触れた指先をアベルの目の前へと差し出し見せる。
アリアの指は黒い汚れが付着していたが、それはすぐに砂のように零れ落ち、僅かな煙となって今度は空へと昇っていく。
……煙は夜の闇に溶けて消えた。
「え……」
――なに……? 黒い煙……?
アベルは嫌な予感がして固まってしまう。
「ぅ、ぅぅ……」
アベルが固まっている間に、縛り上げ階段下に転がされた【おやぶんゴースト】から呻き声が聞こえた。
「あ、アベル、あの人起きたみたいだよ」
「っ!」
【おやぶんゴースト】の呻き声にアリアはアベルの腕に触れる。
アベルはハッと我に返り、割れた物体を一先ずテーブルに置いた。
「……ぅぅ……、ここはいったい……へ、へーっくしょーい!! …………? はっ!?」
自分はなぜ縛られているのだろうか……。
しかもなんだか寒い。
【おやぶんゴースト】は現在の状況を把握するため、とりあえず周りに視線を彷徨わせる。
「……おやぶんゴースト、お前は僕たちの敵か?」
――レヌール城の一件では反省できず、口だけだったということか?
あの幽霊と共謀したというのか……?
アベルは【おやぶんゴースト】の傍にやって来てしゃがみ腕組みすると、冷たい声に冷ややかな瞳で見下ろした。
横たわる【おやぶんゴースト】とアベルの距離はかなり近く、凄みが感じられる。アベルの瞳は【おやぶんゴースト】を見定めるように目蓋を大きく見開き見つめていて、瞬きさえしていなかった。
……さっきまではアリアの怒りに圧倒されていたが、アベルも憤っているのだ。
「……え? 敵って……何言って……。オレはもう人間に悪さはすまいと誓って、ラインハット領でオレたちだけの城を手に入れ、慎ましく仲間と楽しく暮らしてる魔界のはみ出し者だ! オレほど改心した魔物はそういないんだぞ!?」
【おやぶんゴースト】は首をもたげ、アベルに自己紹介をする。
魔界のはみ出し者ではあるが、人間に迷惑を掛けてはいない――というのが彼の主張だ。
そう話す過程で自分が裸であることに気付き、【おやぶんゴースト】は道理で寒いと合点がいく。
……彼は大きな首飾りと金の輪っか、丈の短いふんどししか身に付けていない。
「……慎ましく……? どこが? 博物館で展示台を壊しただろう?」
“ガチャン!”
【パパスのつるぎ】を鞘から引き抜き、【おやぶんゴースト】の首飾りに突き刺しながら静かに訊ねるアベルの顔はなぜか笑顔である。
剣は首飾りの継ぎ目に挟まり、【おやぶんゴースト】の顎はすぐ傍に……。少しでも動けば【パパスのつるぎ】の刃先が顎を真っ二つにするだろう。
……縛り上げた相手の魔力は枯渇しているし、彼は身動きが取れない状態だ。一発殴ってやりたいところだが、既に【おやぶんゴースト】はボロボロ――、一方的に殴りつけたりすれば、魔物も人間と同じように扱う妻に悪印象を与えかねない。
……アベルの笑顔は引きつっていた。
悪霊退散w
そもそもおやぶんゴーストを一方的にボロボロにしたのはアリアなんですけどねw
----------------------------------------------------------------------
読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!