ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

705 / 822
いつもありがとうございます、はすみくです。

前回のプチあらすじ>“窓”と“穴”についてアベルは【おやぶんゴースト】に説明を求め……。

“窓”とは……。

では、本編どぞ~。



第七百一話 “窓” ―The window―

 

「……つまり?」

 

 

 ――アリアに消されたあの幽霊も誰かの信念が邪魔したって言ってたっけ……。

 

 

 アベルはすぐには答えを見つけられず、要約を求めた。

 

 

「……つまり、じいさんの強い信念が博物館を守ったんだよ。本来ならもっと時間を掛けてやるものらしいんだ。焦って一気に魔力を解放したもんだから、魔法陣に根こそぎ魔力を奪われ、オレの魔力よりもじいさんの信念のチカラの方が強くなって召喚が失敗したってわけ。じいさんはこの博物館に命を懸けてたんだろ? 死してなお……だもんな、すごいよな」

 

「ゆうじいさんの骨すごい……!」

 

 

 【おやぶんゴースト】の話では、ゆうじいの“絶対に名産博物館をオープンさせる”という強い信念が博物館に不要な物を掻き消したという。

 

 ゆうじいの幽霊は一階にいるのに、しかばねにも信念が宿っているということなのか。

 あの消えた幽霊も残留思念がどうと言っていたし、幽霊は捕まえようがないから、しかばねを使ったということなのだろう。

 

 ……アリアは【おやぶんゴースト】の言い分が今一つ理解できなかったが、ゆうじいの情熱とも呼べる信念はすごいのだなと感心していた。

 

 

「“窓”に映っていた光景は何かわかるか?」

 

 

 ゆうじいが自分の夢を自ら守ったということがわかれば、それでいい。

 ……アベルは次に訊きたいことを訊ねる。

 

 

「あれは、異界……異世界だよ」

 

「スカイツリーがあったものね」

 

 

 ……【おやぶんゴースト】の口から“異界”という単語が零れ落ちた。

 

 アリアが【おやぶんゴースト】の言葉に続いて“スカイツリー”という名称を告げると、アベルは思い出す。

 

 

「すかいつりーって……、そういえば僕の腕が痛みだす前に言ってたね(アリアが知っているということは……)」

 

「うん……、あの映像は私が前世にいた世界のものだよ」

 

「前世……っ」

 

 

 ――やっぱり……!

 

 

 異界はアリアの元いた世界――。

 アベルは見たこともない異世界の映像に、彼女が本当に異世界から来た人物なのだと驚愕した。

 

 今の今まで実は半信半疑だったのだ……。

 

 

「……なんであの風景が映っていたのかはわからないけど、たぶんあの風景のことを“窓”って言ってたんじゃないかな?」

 

「その通り! 姉ちゃん、話がわかるな!」

 

 

 アリアの意見で“窓”が何かわかってくる。

 “窓”はあの映像のことを指すようだ。

 

 

「……あれが“窓”か……。塔ばかりの世界なんだね。緑があんまりなかったなぁ」

 

「あれは塔じゃなくてビルって言って……」

 

「びる? 飛び抜けて大きな塔があったよね?」

 

「あ、それがスカイツリーで……スカイツリーっていうの634メートルの高さがある電波塔でね。なんで634メートルなのかというと、東京の旧国名である“武蔵”から来てるんだって」

 

「ヘエ……、タカイトウナンダネー……」

 

 

 ――ア、アリアの話が難しい……!!

 

 

 アベルの質問にアリアがにこにこと笑顔で身振り手振りを加えて説明してくれる。

 ……色々訊ねてみたものの、残念ながらアベルには理解が追い付かず、つい棒読みで返答してしまった。

 

 とはいえ、一生懸命説明してくれる妻が可愛いのでアベルはそのまま話を続けた。

 

 

 ……のも束の間。

 

 

「私も一度デートで上ったことがあるんだけど、すっごい高くってね。足元がガラス張りのところがあるんだけど、超怖かった」

 

「ヘエ……って、ちょっと待ってデート? なに? デートってなに!? アリア誰とデートしたの!? 僕以外の男といつの間に!? それウワ――」

 

 

 ――はぁっ? なにそれ、浮気じゃないか!!

 

 

 浮気はしないって言ったのに……! と、自分ではない男とのデート話にアベルは憤り、ムキになってアリアに詰め寄る。

 

 

「ちょ、アベルっ、前世の話だよ……!?」

 

「あ……、そ、そっか。そうだった……、ごめん。取り乱した(びっくりした……!!)」

 

 

 どうどう……と、デートは今の自分ではなく、前世の自分だとアリアが宥めると、アベルは我に返った。

 

 

 自分の妻は最近、かなり愛情表現をしてくれるようにはなったが、普段はあまりベタベタして来ないし、いつも優しいが相変わらずあっさりしている。

 夜の誘いもほぼ自分からばかりで断られたことはないのだが、だからといって不安がないわけではない。

 

 ――一年間のお預け期間の補填で付き合ってくれているだけだとしたら?

 ――子どもが欲しいからと、いやいや付き合ってくれているだけだとしたら……?

 

 アリアに愛されている……と思ってはいるが、アベルは自分の方が恐らく愛が重いのだろうということは自覚済みだ。

 

 結婚までしたというのになぜ不安に感じる必要があるのか……。

 アリアを信じているのに不安を感じる……というのは自分に自信がないせいかもしれない。

 

 彼女はアベル(自分)のいいところも悪いところも全て受け入れてくれる度量の大きい女性である。

 いつも前向きで嫌なこともそのまま、ありのままに受け入れてしまう人で、柔軟に対処し、解決してしまう。そんなアリアにアベルははつい色々と甘えてしまい、すでに依存傾向にあった。

 

 アリアの傍に自分以外の男が存在してはならない。

 もし、そんな存在が現れたら武力行使も厭わず、全力で退けるだろう。

 

 

 ……少し病的かもしれないということに、アベルはまだ気付いていない。

 

 

 要らぬ心配だとは思うが、アリアがいつ自分に飽きて心移りをするか……、アベルは不安で仕方なかった。

 

 

「アベルったら。私は浮気なんかしないってば……(なぜに浮気を疑うの……)」

 

 

 いつも一緒にいるのにいったい誰と浮気をするというのか……。

 アリアはアベルの下がった眉に苦笑いをする。

 

 

「ぅ……わかってる。わかってるけど心配なんだよ……。……けど、あの風景が異界か……。なんであんなものを召喚してたんだろう……」

 

 

 呆れたような顔をされ、まずいと感じたアベルはすぐに異世界の話に話題を戻した。

 

 

「さあなぁ……、そこまではオレにもわからんけど、ヤツはこの世界を手に入れたかったみたいだ。姉ちゃんに阻止されちまったから失敗に終わったけどな」

 

「アハハ……」

 

 

 【おやぶんゴースト】ににこりと微笑まれ、アリアは頭の後ろを掻き掻き。

 咄嗟の【ニフラム】で掻き消された幽霊の野望は思いがけずあっさりと潰えたようだ。

 

 

「……あいつはいったい誰だったんだ……? ラインハットで死んだとか言ってたけど……」

 

「……さあ……オレは彷徨う霊に、行くところがないならオレの家に居てもいいって声を掛けただけだからわからんけど……、上手くいってたのにとかブツブツなんか言ってた気がするな」

 

「ふーん……、まあ、いまさら消えてしまったし、あの霊が誰だったかなんてもういいか」

 

 

 アベルが幽霊の正体が誰なのか訊ねたものの、【おやぶんゴースト】も誰かはわからないらしい。

 判ればそれはそれでよかったが、判らないないなら判らないで別に構わなかった。

 あの幽霊が誰だったかなんて、既に倒してしまった相手だ。正直アベルにそこまでの興味はない。

 

 

「他に聞きたいことはあるか? ないならそろそろオレは我が家に戻りたいんだが……畑も仲間も気になるし……」

 

 

 ……【おやぶんゴースト】は家に帰りたいらしい。

 

 昼間の内、自分の意識がはっきりしている短い時間に何度もここから帰ることを試みたが、できなかったのだ。

 悪霊が去った今、やっと自由を得た【おやぶんゴースト】は、今こそ家に戻りたい――、育てている野菜たちや仲間たちが心配でならなかった。

 

 友達にも早く会いたい……。

 そわそわと故郷を思い浮かべる【おやぶんゴースト】の瞳には涙が一粒、月明かりにきらりと光る。

 

 

「訊きたいこと……? あっ、まだあるよ、訊きたいこと! ちょっと待ってて」

 

 

 ……アリアはハッとしてテーブルに駆けて行った。

 

 

「アリア……?」

 

 

 アリアの行動にアベルが目を瞬かせていると、すぐに彼女は戻って来て手にした物を【おやぶんゴースト】に見せる。

 彼女の手には、アベルがテーブルに置いた割れた物体――。

 

 

「これこれ、アベル。これのこと訊かなきゃ」

 

「あ……そうだったね。親分ゴースト、これはいったいなんだ?」

 

 

 アリアに促されアベルは【おやぶんゴースト】に訊ねた。

 




アベルは結婚したくせに未だ不安みたいですねー。

おやぶんゴーストに入っていた幽霊は誰なんですかねw
はっきりとは書きませんが、お察しかと思われますのでこのままスルーでございますw

原作では青年となった主人公に倒されてしまったヤツですが、実は魔族として有能だと思っております。
約10年(9年?)もの間ラインハットをいいようにしたわけですしね~。
フラフラしているどこかのアゴさんとは違うわけですよ。
アゴって誰やねんと、ここもあえて明記しませんがw

アゴ「ほっほっほっ……呼びましたか?」

----------------------------------------------------------------------
読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。