ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

前回のプチあらすじ>ゆうじいに諸々報告し、一旦休むことにしたアベル。続きは一休みしてから。休むのも大事なのです。

♪ちゃーらーらーらーちゃっちゃっちゃー♪(宿屋のBGM)

では、本編どぞ!



第七百三話 そして夜が明け……?

 

「アリア、今日僕らができるのはここまでみたいだ。もう休もう」

 

「ん……、わかったぁ……」

 

 

 アベルがアリアを見ると、彼女が目を擦っている。

 アリアの眠気はピークに達しているようだ。

 

 

「ははは、眠そうな顔して……、しょうがないなぁ」

 

「え、わわっ!?(ちょっとアベル!?)」

 

 

 ――お姫さまだっこぉぉぉっっ!?

 

 

 狼狽えるアリアを抱き上げたままアベルは馬車に戻って行く。

 ……館内に眠る場所はない。今夜も馬車で休むのが一番だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おやすみ、アリア」

 

「……おやすみなさい」

 

 

 馬車に戻ったアベルはアリアが眠そうだったため、珍しく自重した。

 ……アリアを怒らせると怖い――のと、求めすぎて嫌われたらと改めて気が付いたためだ。

 

 彼女をマットレスに寝かせ、アリアは挨拶をしてすぐに目を閉じ眠りに落ちていく。

 いつも寝付きがいい妻は今日も夫に見守られ夢の中へ――。

 

 アベルもマットレスに沈むと、身体を横に向け、しばらくアリアの寝顔を眺めていた。

 

 

「……フフッ。しあわせそうな寝顔だなぁ……♡」

 

 

 アリアの唇からはヨダレが垂れている。

 何か美味しいものでも食べている夢を見ているのだろうか。

 

 妻が幸福そうでなによりだ――と、アベルの口角は自然と上がる。

 ……その内馬車の外から仲魔たちの寝息も聞こえてきた。

 

 

「異界か……」

 

 

 今、起きているのは自分だけ――、そうなってようやくアベルは今日起きた出来事を振り返る。

 

 

 ……今日という日は、あまりにも多くのことが一度に起き過ぎて、思考が追い付いていかなかった。

 

 こんなことは初めての経験だ。

 照明の切れた展示室も、破壊された【展示台】も、謎の赤い魔法陣も、見知らぬ世界の映像も、【やみのランプ】を壊されたのも全てが未経験――。

 

 “窓”と呼ばれた、青空の下に見えた灰色の町はアリアの前世の世界……。

 なぜ、あんな映像を召喚したのか……。

 

 “穴”とはなんなのか……。

 

 あの消えた幽霊は世界を掌握しようとしていたらしい。

 “穴”の召喚が上手くいけばできたというのか……。

 

 だが、それは失敗に終わり“窓”すらももう消えた。

 

 複雑に描かれた魔法陣を一瞬で覚えられるほど、アベルは記憶力が良い方ではない。

 もう“窓”すらも召喚することは敵わないだろう。

 

 気になるのは二点――。

 

 “窓”を見た直後に痛み出した腕と、あの幽霊が【おやぶんゴースト】から抜け出る前に言っていた言葉……。

 

 

『これで魔王さまに快適な世界をご案内できる……! あのアゴではなく、このオレのお陰ですよ、魔王さまぁああああ!!』

 

 

 ――……アゴ……じゃなかった、魔王……。

 

 

 アベルは仰向けになり、痛みのあった左腕の腕輪(バングル)を外し眺める。

 左腕の痛みはすでに治まっており、薄っすらと引っ掻き傷のような線が刻まれていた。

 

 

「魔王か……、あいつは魔王に通じていたということか……?」

 

 

 あの幽霊は魔王の部下だったのかもしれない。

 

 思いがけずアリアがあっさり倒してしまったから事なきを得たが、倒せなかったとしたらどうなっていたのだろう。

 ……もしかすると、博物館を破壊されたりしたかもしれない。

 

 魔王の部下ならば母に関することを知っていた可能性もあるが、あの幽霊を捕まえたところで、何も知らない可能性もある。

 多少の後悔は残るが、触れることのできない幽霊を捕まえるのはそもそも無理だ。

 博物館が無事ならばそれだけで、今はいい――。

 

 

 アベルは腕輪(バングル)を嵌めて再び身体を横に向け、眠るアリアを見つめる。

 

 

「……ふぁ……、君を見てると和むから不思議だよ……」

 

 

 ――明日、また考えよう……、朝日を浴びたらきっと頭もすっきりするはずだ……。

 

 

 大きなあくびをして、アベルはアリアを抱きしめ眠りに就いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして夜が……――。

 

 

「……ンン……よく寝た……。って、あ、れ……?」

 

 

 ふと、目を覚ましたアリアは半身を起こす。

 だが、周りがなんだかいつもと違う気がした。

 

 馬車の外がなんだか暗い……。

 

 隣にいつもいるであろうはずのアベルの姿がないのはたまにあるからいいとして、夜に眠ったはずが、目覚めても真っ暗とは……?

 

 天気が悪いのだろうか……。

 いや、雨音が聞こえないから雨が降っている様子はない。

 

 耳を澄ませば、虫の声やホーホーとフクロウの声まで聞こえる。

 

 

 ……まだ夜らしい。

 

 

「……えぇ!? 私寝過ぎちゃったの……?(アベル起こしてくれればいいのに……)」

 

 

 アリアは疲れ過ぎている時には夕方まで眠ることがあるものの、夜まで目覚めないことはさすがになかった。

 確かに最近アベルにいじめられ、体力を削られているから疲れてはいるけども……と、一瞬思ったが昨夜は夫婦の営みを行っていない。

 

 寝てる間勝手に――は、たとえ営みが好きなアベルでもしないはず……いつもの気怠さがないのがなによりの証拠である。

 

 

「……どういうこと……?」

 

 

 ……とりあえずアベルをさがしに行こう。

 

 アリアはマットレスから抜け出て馬車から降りた。

 

 

「あ、アリア嬢。おはようございます、よくお休みでしたね。疲れは取れましたか? 主殿から起きたら館内ロビーに来て欲しいとの言伝を預かってますよ」

 

 

 馬車から降りたアリアに、ピエールがやって来て告げた。

 

 

「おはよう……? ピエール君、いったいどうなってるの……? 私寝過ごした?」

 

「いえ、それが私にもよく……」

 

 

 アリアが周囲を見回しながら訊ねるとピエールは頭を左右に振った。

 “寝過ごした?”という問い掛けに返事はない。

 

 ……寝過ごしたわけではなさそうだ。

 いったい何が起こっているというのか――。

 

 

「ではアリア嬢、館内に参りましょう」

 

「あ、うん」

 

 

 ピエールが先導し、アリアを引き連れ館内へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……館内に入ると、アベルがゆうじいと何やら話をしている。

 扉が開く音にアベルが振り向き、アリアの姿を捉えた。

 

 

「アリアっ! おはよう!」

 

「お、おはよう……? って外真っ暗だよね……? まだ夜でしょ?」

 

 

 アベルが挨拶をすると、アリアは困惑したように返してくる。

 外は暗く、夜だというのに“おはよう”とはこれいかに? とでも言いたげな顔だ。

 

 

「うん、アリア。今は夜だよ」

 

「やっぱり……私寝過ごしたのね、ごめんなさい。寝過ぎちゃった」

 

「ううん、僕もさっき起きたところだから、アリアが寝坊したわけじゃないよ」

 

「どういうこと……?」

 

 

 やはりアリアが寝過ごしたというわけではなかったらしい。

 アリアは不思議顔で首を傾げた。

 

 

「ゆうじいさんと今話をしてたんだけど、ゆうじいさんが言うには僕たちが昨日の夜、眠ってから八時間以上経ってるんだって」

 

「八時間以上……? 寝たのって、真夜中過ぎてたと思うんだけど……、全然外の明るさが変わってないよね……?」

 

 

 ……アリアの眠っていた時間は八時間以上だが、アベルも同じくらい眠っていたようだ。

 彼女は真夜中に眠ったはずなのに、まだ夜なのはなぜかと疑問を呈した。

 

 

「そうなんだ。さっきまでここに親分ゴーストがゆうじいさんに謝罪に来ててね。話を訊いたら闇のランプのせいなんじゃないかって」

 

 

 投げ掛けられた質問に、アベルは落ち着き払ったように淡々と答える。

 

 

「え……? なにアベル、闇のランプのせいって……?(どういうこと……?)」

 




寝て起きても夜なんですよ……。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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