ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

ラインハットのお城を散歩してみよう!

では、本編どうぞっ。


第七十話 城内見学

 

 城内見学をすることにしたアベルは、先ずパパスとラインハット王の背後に見える階段を上がって行く。

 

 

「ね、ねえ……アベル……。さっきの王様の……」

 

「……言ったでしょ? わかる(・・・)って。このお城の中も大体わかるから案内するね」

 

「っ……わかる(・・・)って、何。そんなこと、あなたが知ってるわけないじゃない……」

 

 

 アベルが苦笑しながら言うので、アリアは瞳をぱちぱちと何度も瞬かせた。

 

 

 次に行った目的地で聞く台詞を、一言一句違わずアベルが知っているのはどう考えてもおかしい。

 

 

 アリアが考え込む中、四階に辿り着くと、

 

 

「確か、ここは王様の寝室なんだよね~。あの兵士さんに話し掛けると、遊ぶなら他に行けって言われちゃうんだ。ね~、兵士さん! 僕今城内を散歩中なんだけど……」

 

 

 アベルは部屋の前の警備兵に声を掛け「坊や、ここは王様の寝室なんだよ。遊ぶなら他に行って遊びなさい」と(たしな)められる。

 

 

『っ……』

 

「そこの階段を上がると屋上だよ。居眠りの兵士さんが居るんだ」

 

 

 アベルに言われるまま、アリアは階段を上って行った。

 

 

 

 

 

 

 階段を上り切った先はといえば、アベルの言う通り屋上だった。

 

 

「…………っ、どう……(いうことなの……?)」

 

「ん~! 気持ちいい風~!! ほら、ここから中庭が見えるでしょ? このお城真四角に出来てるんだよ、面白いよね」

 

 

 気持ち良さそうに背伸びし城の全景を指すアベルとは対照的に、アリアは驚愕の表情でアベルをまじまじと見つめる。

 

 すると、

 

 

「ああ、屋上は暖かくて気持ちいいなあ……。こっくり、こっくり……」

 

 

 目と鼻の先にいた兵士がゆらゆらと身体を前後に揺らし、呟いているのが聞こえてきた。

 アリアは兵士を一瞥すると、アベルへと視線を戻す。

 

 

「アベル……あなた……」

 

「……僕がわかるのは、このお城の一部分だけだよ」

 

 

 僕がわかることは未来ではないのかもしれない。

 では何なんだろう?

 

 アリアは信じてくれるだろうか……。

 

 

 アベルは瞳を伏せて、後ろ頭を掻く。

 その表情は憂いの顔だった。

 

 

「……どういうことなの……? 詳しく話して?」

 

「……詳しくっていっても……ここに来る前にわかったのがそこまでだったから、その後何が起こるかはわからないんだ」

 

 

 そう、今回珍しく随分先までわかったと思ったら、次のまた(・・)の感覚が一向にやって来ない。

 既視感覚が常に纏わりついている気持ち悪さといったら、ない。

 その感覚は殆どが直前に来るものだから、新鮮味に欠けるし、心構えも出来ないし、対処もしようがない。

 

 

 毎度のことだが、本当に役に立たない感覚だなとアベルは思った。

 だけど、アリアといるとそんな感覚を感じにくい。

 

 

 この先、何が起こるかはわからないけれど、全てが新鮮に感じられる気がする。

 

 もう、また(・・)を繰り返したくない。

 アリアなら、このわけのわからない感覚から救い出してくれるよね……?

 

 

「何が起こるかって……。い、イベント的な何か……?」

 

「イベント……?」

 

「あ、いや……。何でもない……」

 

 

 アリアの言葉にアベルは首を傾げる。

 

 どうしてだろう、アリアって不思議なことばかり云うな……。

 楽しいからいいんだけど……と、アベルは目を細めた。

 

 

「信じてくれる……?」

 

「あ、うん……。あれだけ当てられたら信じるしかないよね……って、私はいつでもあなたを信じてるよ。ね、未来がわかるって……全部わかるわけじゃないんだね」

 

 

 自信なさげにアベルが窺うと、アリアは口元に手を当て思案しながら頷く。

 真剣に悩んでくれているのか、

 

 

「それって、特殊能力よね……、上手く活かせないかな……。未来がわかるなら行動も変えられそうだよね」

 

 

 アリアが腕組みして呟く。

 

 

「っ! そうなんだよっ。けど、肝心な時に全然役に立たないんだ! もう、気持ち悪くって! だから君に協力して欲しいんだ!」

 

 

 先程までおずおずしていたアベルだったが、アリアが信じてくれた様子に心弛びし破顔した。

 

 

「そう、なんだ……? じゃあ、便利でもないのね……。私で良かったら出来る限りの協力はするよ」

 

「っ、ありがとうっ!」

 

 

 アベルはアリアの手を取り、ぎゅうっと握りしめる。

 アリアの眉間に皺が寄った。

 

 

「っ、アベル手、痛いっ!」

 

「あ、ご、ごめんっ。けど、何か……、すっごく嬉しいや……、ありがとアリア……」

 

 

 アベルはすぐに手を放し詫びて、ほっとしたような顔で微笑んでいた。

 

 

「…………そう、よかったね……」

 

 

 アベル、すごくほっとした顔してる。

 

 今までどこか飄々としてる子だなって思ってたけど……。

 そうじゃなかったのかな……。

 

 主人公だから何かあってもしょうがないって思っていたけど……、でもよく考えたらまだ六歳の少年なのよね。

 アベルが何を不安がっているのかはわからないけど……そんな子供を突き放すことなんて出来ないもんなぁ……。

 

 私モブだけど、もう少し介入してもいいのかな?

 

 自分のことはその後で探すかぁ……。

 

 

 アリアはやっと心から笑えたような顔をするアベルに優しく微笑み掛けるのだった。

 

 

「アリア! 次、あそこにいる人に話し掛けてみる!?」

 

 

 アリアの返事にすっかり気を好くしたアベルは「さあ、散歩散歩」と二階屋上を見下ろし、歩廊の先にウロウロしている人物を指差した。

 

 

 

 

 

 

 二人は一度王の間に戻る。

 パパスとラインハット王は難しい顔でまだ話をしていた。

 

 

「……であるからして……」

 

「はぁ、まあ、そうでしょうな……」

 

 

 内容はよくわからないが、話に集中しているのかアベルが目の前を通っても気が付かない。

 

 

『何の話してるんだろうね?』

 

「ねー? まぁ、いいよ。行こ行こ!」

 

 

 アベルとアリアは二人の横を通り過ぎ、二階屋上歩廊へと向かった。

 

 




アベル……何か不憫。

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読んでいただきありがとうございましたっ!

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