ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

前回のプチあらすじ>アベルたちはおやぶんゴーストを送って各町を訪れることに。

浮いては沈むのは人生の常。

では、本編どぞ。



第七百九話 浮いては沈み

 

 

 

 

 

 【おやぶんゴースト】を家まで無事送り届けたアベルたちは【ルーラ】でラインハットへとやって来る。

 

 洞窟や屋根のない場所なら一瞬で移動できるから移動呪文(【ルーラ】)は便利だ。

 時を争う今、習得しておいて良かったとアベルは心からそう思う。

 

 ……ベネットじいさんには感謝してもし足りない。

 彼には足を向けて寝られないが、たまたま向いていたら自分も協力したのだし、許してもらおう――そんなことを考えながら城下町に足を踏み入れた。

 

 

「静かだね……」

 

「うん……なんか普段と変わらない感じ……?」

 

 

 ラインハットの城下町を見渡すが特に混乱した様子もなく、夜の散歩をする人々の姿が見える。

 以前夜に立ち寄った時と町の様子に変わりはないように感じた。

 

 

「……それもそうか……まだ二日目だもんね……って、あれ? どうだったっけ?」

 

「……うーん……、親分ゴーストさんを送ってる間に何度か休んだものね。実際は何日か経ってるのかも」

 

 

 町の様子にほっとしたのも束の間、アベルは今日の日付が今日であったかどうかわからなくなってしまい、考え込む。

 

 ……アリアも腕組みして“う~ん”と唸っていた。

 

 

「……そっか……時間の間隔もなくなっていくんだね……」

 

「アベル……」

 

「……僕のせいで……」

 

 

 何十時間も日が昇らず、博物館を出たのがいつだったのか……はっきりしない。

 眠ったのは五回ほどだった気がするが、それが日にちの移り変わりなのかはわからない。

 

 ただ静かに世界は闇に覆われている。

 ……アベルは自分の失態に落ち込み頭を垂れた。

 

 そんなアベルの背にアリアの手が触れて、ポンポンと優しく叩いてくれる。

 

 

「落ち込まない落ち込まない。大丈夫大丈夫! 落ち込むなんてアベルらしくないよっ。ほら、キャンディあげるから、あーんして?」

 

「っ……アリア……」

 

「甘いものでも食べてリラックスしよ?」

 

 

 アリアは鞄からビンに入った【キャンディ】を取り出し、アベルの口に放り込んだ。

 

 

「っ……うん……甘い……。はは……」

 

 

 口の中でコロコロと転がる甘い飴玉の音に、アベルは気が抜ける。

 こんな闇の中でもアリアは笑顔で「私も一つだけ……」と【キャンディ】を口に入れ、転がした。

 

 

「一緒に食べるとおいしいね♡」

 

「……うん♡」

 

 

 なぜ彼女はいつも笑顔なのだろう。

 こんな暗い闇の中だというのに……、いつも幸せそうに見える。

 

 そしてその笑顔を見ていると自分も幸せだと思えるから不思議だ。

 

 

 ……一度は落ち込んだアベルだったが、その表情はすっかり柔和な顔で不安も薄らいでいた。

 

 

「ね、アベル。跳ね橋も上がってるし、城には入れないみたいだよ?」

 

「……だね。じゃあしょうがない。ここへはまた今度来るとして、先に他の町を回ってみようか」

 

「おっけ~♡」

 

 

 城に目をやれば夜は城内に続く跳ね橋が上がっており、中に入ることができない。

 本当はヘンリーに話を聞いて欲しかったが入れないのでは仕方ない。

 今は各町の様子を見に来たに過ぎないため、無理にヘンリーと会おうとはせず、他の町へ向かうことにした。

 

 

 

 

 “【ルーラ】!!”

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……次にアベルたちがやって来た町はアルカパである。

 アルカパも特に変わったことはなく、人々も普段と何ら変わらず人気は疎らで、混乱している様子は無い。

 

 朝が来ないことに気付いていないのだろうか……。

 

 

「……誰も気が付いていないみたいだなぁ……」

 

 

 町の誰に話し掛けても、以前訪問した際に聞いた話しかしていないように思える。

 アベルは違和感を覚えながらも少しほっとしていた。

 

 

「ね~。やっぱフラグが立ってないのかなぁ?」

 

「ふらぐが立つとは……」

 

「え? あ、ウフフ♡」

 

 

 ……アリアが意味深な笑みを浮かべる。

 

 

「……アリアってホント変わってるよね……。僕は君がときどき難しくて……でもそんなところも好きだよ」

 

「あはっ♡ ありがとう! 私もアベルが大好きだよ♡」

 

「アリア……」

 

 

 アベルの告白にアリアは花が一気に満開になるような笑顔をみせた。

 アベルはそんな彼女の腰を引き寄せ顔を近付けていく……が。

 

 

「あっ、ちゅーはまた後でね! 人前ではメメちゃん!」

 

 

 アリアはサッとアベルの手を剥がし諫める。

 

 

「ぅー……アリアのイケズ……。暗いから誰も僕たちに気付いてないのに……この状況さえ気付いてないんだし……」

 

 

 ――だからキスしてもいいよね……?

 

 

 アベルは懲りずに再びアリアの腰を引き寄せるが、アリアはその手をやんわりと剥がした。

 

 アベルにアリアといちゃつく余裕が出てきたのは良いことではあるが、今はいちゃついている場合ではない。

 ……それにアリアは解決する気満々である。

 

 

「誰も気付いていないならなによりだよ。気付かれていない内に解決しちゃえばいいでしょ? 次行こ次!」

 

 

 次の目的地を目指そうよと、アリアはアベルの手を取った。

 

 

「それはそうだけど、解決ったって誰かに事情を話して相談……――」

 

 

 アベルは繋がれた手に途中まで喋って押し黙る。

 

 

 ……ラインハット、アルカパの人々にまだ詳しい事情を話せていない。

 

 

 とりあえず状況を把握したくて来てみたが、何も変化がないとは逆に困ったものだ。

 町の人々がなにも気付いていないのは妙だが、平和と言えば平和で、自らのせいでこうなってる――と説明せずに済むから助かる。

 

 ただ、それがいいのか悪いのか……。

 あと数日もすればきっと気付く人も出て来るだろう。

 

 カボチ村で責められたことがあるアベルは、また後ろ指を指されると思うと少々憂鬱である。

 しかも今回はカボチ村だけでなく全世界を敵に回したようなもの……。

 

 世界中の人々に恨まれてはさすがのアベルも多少なりとも落ち込むことは必至――。

 恨み節を言ったところで事実は変わらないというのに、無駄に呪詛を吐く人間はいる。

 唯一の救いはアリアが一緒にいてくれることだが、アリアまで恨まれると思うとやりきれない。

 

 これからアベルはサンタローズやサラボナにも行くつもりである。修道院にも顔を出した方がいいだろう。

 もちろん、山奥の村にも……。

 

 知り合いに訊かれたら嘘は吐けない。

 

 

 ――正直に口にしてしまえば、どんな目で僕を見てくるんだろう……。

 

 

 できればビアンカには言いたくない。

 フローラさんにもルドマンさんにも町の様子は訊きたいが、理由は言いたくない。

 

 都合がいいかもしれないが、アベルはビアンカたちには心配を掛けたくないし、色眼鏡で見られたくなかった。

 

 だが、事情を話さなければ解決への糸口は見つからない……。

 

 

「ア~ベ~ル~?」

 

「……ぁ、うん?」

 

「ここ、眉間にシワ寄ってる、笑顔笑顔。笑う門には福来るって言うよ?」

 

 

 深刻な顔をしていたアベルの眉間を、アリアの指が優しく突いてくる。

 

 

「アリア……」

 

「なにを考えてたの……?」

 

 

 アリアは真っ直ぐにアベルを見上げた。

 

 

「……あ、えっと、サラボナや山奥の村にも行くだろう? そしたらビアンカたちに事情を話さないとって思って……。ほら、彼女たちなら何か気が付いてるかもしれないし……」

 

「……事情を……?」

 

「うん……、僕のせいでこうなったからね。正直に話さないと――」

 

 

 ――本当は話したくないけど……しょうがないよな……。

 

 

 アベルはビアンカたちに会ったら相談をしようとアリアに持ち掛けようとしたものの……

 

 

「……うわ、アベルって馬鹿正直なのね」

 

 

 アリアは目を丸くしていた。

 




アリアはメンタルつよつよ(?)

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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