ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

前回のプチあらすじ>修道院生活中、アリアは一度もサンタローズに来てはくれなくて……。

まさかの……?



第七百十一話 まさかの……

 

 二人の休日が重なった時、一緒に行こうとアベルがアリアを誘ったこともあったが、彼女は一度も付き合ってくれなかった。

 なぜなのだろうとアベルは疑問に感じていたが、理由は今もわからずじまいである。

 

 実はその理由――アベルがビアンカかフローラと結婚すると思っていたために、別の女がいたことがわかるとアベルの心証が悪くなると思い遠慮した……というものなのだが、それをアリアが話すことはないだろう。

 

 

「そう……アリアさんの姿は見かけたことは無かったけど……、あなたとアリアさん、当時からお付き合いしていたのね?」

 

「はい。アリアの記憶が戻ってから割とすぐに付き合うようになりました」

 

 

 なんだか馴れ初めを訊かれているようで気恥ずかしいが、アベルはシスターリリィに訊かれるままに答えた。

 

 

「あら、記憶が戻ったの、よかったわね! 呪いもなくなったみたいだし……安心したでしょう?」

 

 

 ……聖職者であるシスターには呪いが解けたかどうかわかるのだろう、シスターリリィのアリアを見る目が優しい。

 

 

「はい……呪いを解いた後も色々ありましたが、無事に式も挙げましたし……――」

 

 

 ……ここまで言ってアベルは黙り込む。

 

 

 別世界と同じ出来事だけでも波乱だらけだというのに、式を挙げてアリアが声を失い、声を取り戻したと思ったら今は世界が闇の中だ。

 アリアとの結婚を後悔はしていないが、ともに歩む道は波瀾万丈……平穏とは程遠い生活である。

 

 

 ――アリアは幸せだと思ってくれているのだろうか……。

 

 

 アベル……自分は定住する家もない、流浪の旅人。

 大半の女性が手にしたいと願う安定、定住とは程遠い男だ。

 

 いつか母を救出してサンタローズに戻って来たいと思ってはいるが、今は世界が闇に閉ざされていて、母の救出以前にやらなければならないことができた。

 

 世界が闇に閉ざされても、アベルはアリアがいるだけでどこでも楽園だと思えるが、彼女はそうではないかもしれない。

 

 元々アリアは怖がりで臆病者だというのに、嫌な顔せずに旅に付き合ってくれている。

 

 そんな健気な妻のために夫の自分ができることと言えば、問題が起きたら早期に解決し、妻の不安を取り除くことくらいではなかろうか。

 ここのところ励ましてもらってばかりで、苦労させている気がする。

 

 

 ……アベルは落ち込んでいる場合じゃないことに改めて気が付いた。

 

 

「……よかったわね。夫婦が仲良く過ごせているならなによりよ。二人一緒なら楽しいでしょうし、どんな辛いことも乗り越えられるわ」

 

「はい……、あ。シスターリリィ、妻を紹介しますね。アリア!」

 

 

 ――罪悪感を感じてる場合じゃない、さっさと解決しないと……!!

 

 

 シスターリリィに“二人一緒なら――”と優しい笑みを向けられ、アベルはアリアを呼びに行く。

 

 

「あっ、もうお話終わったの?」

 

「うん、アリアをシスターリリィに紹介したいんだ」

 

 

 アリアはすでに【クッキー】を食べ終え、呼びに来たアベルを見上げた。

 そんなアリアの手を引いたアベルは、彼女をシスターリリィの元に連れて行く。

 

 

「アリアさんお久しぶり。呪いが解けてよかったわね」

 

「シスター、私のこと憶えてて下さったんですか? その節はお世話になりました」

 

 

 シスターリリィに手を差し出され、声を掛けられたアリアは握手をしながら頭を下げた。

 

 ……隣ではアベルがアリアを穏やかな瞳で見守っている。

 

 

「ええ、もちろんよ。ウフフ、あの時の私の勘は間違っていなかったようね」

 

「カン……ですか?」

 

「ふふふ、アベルが幸せそうで……私もうれしいわ」

 

 

 いったいなんのことかわからないアリアは小首を傾げたが、シスターリリィはちらりとアベルに目配せし、にやりと意味有り気に微笑んだ。

 

 

「っ、シスターっ!」

 

「うふふ、こんな綺麗なお嫁さんもらっちゃって~、アベルったらやるわね!」

 

 

 このこの~♡ と、シスターリリィの肘鉄がアベルの脇腹を小突く。

 軽く小突いているはずなのだが、ゴスッゴスッと脇腹に強い衝撃が加わった。

 

 

「っ……、……って、痛っ! シスター! マジで痛いんですけど!?」

 

 

 ――控えめに言って、めっちゃ痛い……!

 

 

 アベルはあまりの痛さに床に膝をついて倒れてしまった。

 

 

 ……アベルの体力(HP)がマイナス150――。

 教会だというのに【痛恨の一撃】をなぜかくらう……。

 

 

「ひぇぇ……、シスターチカラつよぉ~い……」

 

「あら、私ったら……最近木の柱を独りで持ち上げられるようになったのを忘れていたわ。ごめんなさいね。実はラインハットの兵士がやって来た時戦ったの。何人か()っ……コホン、気絶させたのよ」

 

「……ベホマ!(今、()ったと言おうとしませんでしたか……?)」

 

 

 驚きのアリアにシスターリリィが力こぶを作ってみせる。

 全身を覆う修道服の上からでも明らかな上腕二頭筋のその膨らみ――。

 

 ……アリアは倒れたアベルに駆け寄り【ベホマ】を掛けた。

 

 

「アベル大丈夫……?」

 

「う、うん……。突然過ぎて受け身が取れなかった……。アリアは大丈夫かい? さっき握手してたよね? 手、痛くないかい?」

 

「うん、私は平気。手加減してくれたみたい。アベル起き上れる?」

 

「ああ、アリアの回復呪文のお陰でもうなんともないよ」

 

 

 アリアとアベルが互いに労わり合う中……。

 

 

「そうだわ、フィーロ神父にも挨拶していって! 二人のこと心配してたのよ」

 

 

 シスターリリィは何事もなかったように手をぽんと叩き合わせて祭壇に目を向けている。

 

 

「フィーロ神父……」

 

 

 ――ぐぬぅ……、モブのクセにアリアの素肌を僕よりも先に見た糸目のおっさん……!

 

 

 アベルは祭壇で日誌を記入しているフィーロ神父をじろりと睨む。

 失礼に当たるかもしれないがまだ恨んでいるため、フィーロ神父と話すのは気が向かない。

 ……アベルの足は二の足を踏んで動けなかった。

 

 ところがアリアはすでに――。

 

 

『フィーロ神父さま。その節はお世話になりました、私呪われっ子だったアリアです』

 

 

 祭壇でアリアがフィーロ神父に話し掛けている……。

 

 

「あっ、アリア!!」

 

 

 ――なんで行っちゃうんだよぉっ……!

 

 

 フィーロ神父に話すことなんて特にない。

 特にないのだが、アリアが行ってしまったなら自らも行くしかない。

 

 ……アベルは不服ながらも祭壇に向かった。

 

 

「まあ、ご結婚を……それはそれは……」

 

「はい、フィーロ神父さまやシスター、他の教会の方々のお陰で呪いを解くことができて、アベルとも結婚することができました。本当にお世話になり、ありがとうございました」

 

 

 アベルが祭壇にやって来るとアリアはフィーロ神父にアベルと結婚をしたことを話しており、頭を下げている。

 割って入るわけにはいかないため、アベルはアリアの隣で話を聞くことにした。

 

 

「私たちはきっかけを与えたに過ぎません。今のあなたがあるのは神と、アベル。これまで出会ったすべての人々のお陰でしょう。これからも出会いを大切にして感謝を忘れず、笑顔でお過ごし下さい。あなたの笑顔は周りの人々に幸せをもたらすはずですよ」

 

「はいっ、ありがとうございます! アベルっ、いつもありがとう♡ これからもよろしくお願いします!」

 

 

 フィーロ神父と話していたアリアだったが、話を聞き終えるとすぐに隣のアベルに身体を向けて手を取り破顔する。

 アリアの笑顔は花が一斉に開花したように華やかで、見ているアベルの心まで解れそうだ……。

 

 

「……っ、こちらこそだよ……!」

 

 

 アベルはアリアの笑顔に釣られて顔を綻ばせた。

 

 

 ――くそっ、糸目神父いいこと言うじゃないか……!

 

 

 だからといって、アリアの素肌を見たことをアベルが許すことはない。

 アリアに優しい笑顔を見せた後で、アベルは眼光鋭くフィーロ神父を睨み付けていた。

 

 だがフィーロ神父にはアベルの睨みが効いているのかどうか……、彼の目が糸目のためによくわからない。

 

 

「……アベル? どうかしましたか?」

 

「はい……どうかしています」

 

 

 ――さてどう切り出したものか……。

 

 

 フィーロ神父が訊ねたが、アベルは口をへの字にして剥れている。

 それに対するフィーロ神父の顔は穏やかで、彼の口からは教会の決まり文句が零れ落ちた。

 

 

「生きとし生けるものは、みな神の子。我が教会にどんなご用かな?」

 

「……フィーロ神父、あなたはアリアの……僕の妻の肌を……」

 

 

 ――僕のものを許可なく勝手に見て……!!

 

 

 アベルはどう伝えればいいか思考しながら声に出していく。

 

 ……アリアはなんのことかさっぱりの様子で、アベルがなぜフィーロ神父を睨み付けているのかわからない。

 急に険悪な雰囲気になってどうしたのだろうと不思議顔でアベルを見ていた。

 

 

「……ん? なんでしょうか……? 彼女の肌がどうかしましたか?」

 

「……っ、チッ!! お・い・の・りをお願いしますっ!!」

 

 

 フィーロ神父の表情はずっと穏やか(に見える)で何も変わらず、何を考えているのか全く読めない。

 そのためアベルは彼にアリアの肌を思い出させるのが嫌で、すかさず話題を切り替えた。

 

 

 ――こんなこと、前にもなかったっけ……?

 

 

 以前にもこんなことがあったような気がする……と、記憶を辿ってみる。

 

 

 ……サンタローズに来るとつい、子どもに戻ってしまうような気がしてアベルは少し恥ずかしかった。

 




まさかの痛恨の一撃をくらいましたとさ。
シスターリリィ、実はかなりの実力者だったりしますw

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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