ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

前回のプチあらすじ>シスターリリィに痛恨の一撃をくらわされ、フィーロ神父に食って掛かったアベルだったが……。

心の拠り所、あると良いですよね。

では、本編どぞ~。



第七百十二話 心の拠り所

 

 

 

 

 

 お祈りを済ませ冒険の書を記録してもらい、アベルたちは“明けない夜”についての情報は得られそうにないため教会を後にすることにした。

 シスターリリィに「たまには二人で顔を見せに来てね」と別れの挨拶を交わし、アベルとアリアは教会を出る。

 

 

「ね、アベル、さっきなんでフィーロ神父を睨んでたの?」

 

「別に……。そんなことないけど?」

 

 

 教会の扉が閉まると、アリアはアベルに訊ねた。

 普段はアリアに訊かれたことはなんでも快く返すアベルだったが、今日は素直じゃない。

 

 

「ふぅん? なんか怒ってたみたいだけど……、ふふふっ♡」

 

 

 ……アベルの態度にアリアはなぜか急に笑い出した。

 

 

「なにアリア? なんで笑うの?」

 

「あ、ふふっ、ごめんね。なんか拗ねてるように見えたから?」

 

「っ……!(バレてた!?)」

 

 

 ――なんでわかるんだ……!?

 

 

 アリアの察しの良さにアベルは息を詰まらせる。

 まさか、理由もばれてしまったのだろうか……。

 

 もう一年以上前の出来事に今でも嫉妬の炎をメラメラと燃やしているだなんて、恥ずかしくて口になどできるはずもない。

 あの頃からアリアの肌は自分のものだと思っていたと知られたら、引かれるではないか。

 

 

 “え~、やだアベル……気持ち悪~い……。”

 

 

 ……アリアが嫌悪感露わにドン引きする様子が想像できて、アベルの顔が瞬時に青褪めたが、彼女が次に口にした言葉は予想したものとは違った。

 

 

「……ここがアベルの故郷だからかなぁ」

 

「ん……?」

 

「さっきのアベル、昔のあなたみたいで、可愛かったなって」

 

 

 アリアは穏やかな笑みを浮かべてアベルを見上げている……。

 

 

「可愛いって……、僕は大人の男なんだけど……」

 

 

 ――よかった~~!! アリア気付いてないっ!!

 

 

 可愛いと言われたアベルはちょっぴり不服であるが、邪な独占欲に気付かれたわけではなくてほっとした。

 

 

「……あなたが甘えられる場所がここにもあるってわかって安心したよ」

 

「アリア……僕が甘えられるのは君だけだよ……?」

 

 

 アリアは何を言っているのだろう……。

 

 アベルにとって、今やアリアだけが癒しであり、安心して甘えられる人だというのに、彼女はここ、サンタローズの教会が甘えられる場所だと言う。

 

 

 ……アベルは窓から温かな灯りが漏れる教会を眺める。

 

 

「ふふっ、アベルがあんな風に誰かに素直に感情を出すのって仲間以外だと珍しいよね。フィーロ神父の何が不満だったのかはわからないけど、あなたはこの村では無邪気な子どもに戻れるんだよ。それくらいここはあなたにとって安心できる場所ってことなんだと思う。中々気が休まらない旅が続くけど、たまにはサンタローズに来てシスターたちとお話でもしよ? 疲れも癒されると思うな」

 

「……あ、うん……」

 

 

 ――まぁ、確かにシスターたちの前だと素が出てしまう気がするけど……。

 

 

 幼いアベルがサンタローズにいたのはパパスと旅から戻って数日間しかなかったが、不思議なことにフィーロ神父とシスターリリィの二人と話す時は、他の町では感じない安心感みたいなものがある。

 

 フィーロ神父はアリアの呪いを解くきっかけをくれた大恩人、睨み付けるなど本来ならかなり失礼に当たるというのに、なぜか彼には感情を露わにしても平気だと無意識に思っているからつい睨み付けてしまったわけで(しかも、罪悪感などこれっぽっちもない)。

 

 父と旅に出る前に住んでいた時、さすがに幼過ぎて憶えてはいないが、可愛がってもらっていたのだろう……。

 

 

 ……フィーロ神父とシスターリリィのアベルを見る目はいつも優しい。

 

 

「ふふっ、甘えられる人が一人しかいないより、複数いた方がきっといいよ。あのお二人は前に来た時もそうだったけど、アベルを優しい眼で見ているもの」

 

 

 ……アリアから見ても教会の二人はそう見えるようだ。

 

 アベルに睨み付けられても、フィーロ神父はアベルが可愛くて仕方がないに違いない。

 幼い頃はやんちゃ坊主であったし、アベルが歳を取ってもフィーロ神父の目にはきっと幼い頃の彼のままに映っているのだ。

 シスターリリィも親身になってくれているし、いつまで経ってもアベルは村の子で、二人から見れば可愛く愛おしい存在なのだとアリアは思う。

 

 

「え……アリアそれって、僕が負担ってこと?」

 

「ん~、そうじゃないけど、アベルの心を軽くしてくれるのは私だけじゃないってことを知っていて欲しいだけ」

 

 

 不意にアベルの眉間が怪訝そうに顰められ、アリアは微苦笑した。

 

 

 ――アベルってば、私のこと好き過ぎない……?

 

 

 なぜ、アベルはそう感じてしまうのか……。

 ……アベルが負担などとアリアは言ったわけではない。

 

 ただ、心の拠り所は一つに絞らないで欲しい――。

 複数あった方が、もしその内のどれかが欠けても、絶望することはないだろうから。

 アベルを気に掛けてくれる人は自分(アリア)以外にもたくさんいるのだということを忘れないで欲しいのだ。

 

 いつ何時、何が起こるかなんて、人生を繰り返しているアベルにだって予測できないことが起こることもあるだろう。

 今起きてる出来事が“初めて”のことだと言っていたからなおさらだ。

 

 ……アリア自身、前世では突然死んでしまった。

 あの時、未来に何が起こるかは当然わからなかったが、その日の晩のドラマを見る予定に、次の日の予定、来週の予定……と、当然来るであろう未来は突然消え、この世界に来ることになった。

 

 この世界では常に命の危険にさらされている。

 いつ自分が死んでしまうのかわからないのだ。

 

 蘇生呪文があるとはいえ、この世界に“死”がないわけではない。

 死ぬときは死ぬ――。

 

 簡単に死ぬつもりはないが、前世はあっさり逝ったわけで、アリアは自分がもし死んだらアベルが苦しまなければいいと思う。

 そして、逆も然り――。

 

 

(……まあ、アベルが死ぬことはないか……。)

 

 

 主人公であるアベルが死ぬことは恐らくないだろう。

 そこだけは安心できるから気が楽である。

 

 ただ、自分のことはわからない。

 なぜなら、自分(アリア)はバグ……、存在すること自体危うい存在なのだから。

 

 アベルが自分を大事にしてくれているのはわかるが、彼の愛は中々に重い。

 もっと他にも目を向けて欲しいとアリアは思っている。

 

 

「うーん……なんかよくわかんないけど……、確かにここに来るとつい気が緩むかもしれない……」

 

「でしょ! 私にとっての修道院が、アベルにとってのサンタローズってわけ。疲れた時は癒されに来ようね♡」

 

「うん、わかった」

 

 

 アベルはアリアの話にわかったような わかっていないような困惑顔ながらも腹に落とし込むように何度か頷く。

 

 ……アベルが理解してくれたようでよかったとアリアは嬉しそうに微笑んでいた。

 

 

「……にしても、アリア。この状況について誰も気が付いていないんだね……」

 

 

 ……アベルは空を見上げ一見穏やかな星が散らばる闇夜を眺める。

 

 この状況――とは。恐らくすでに五日以上朝が訪れていない……。

 なぜ誰も気が付かないのか不思議だ。

 

 

「そうだねぇ……。とりあえずサンタローズの人たちが混乱してなくてよかったよ。次はオラクルベリーにでも行く?」

 

「うーん……、ラインハットも、アルカパも、サンタローズも町の人たちが異変に気付いている様子は無かったから、たぶんオラクルベリーも同じだと思うんだ」

 

「確かに……」

 

「オラクルベリーはパスして、一度西の大陸に行ってみようか」

 

 

 アベルは東の大陸の町の反応はたぶん一緒だろうと見積り、西の大陸に向かうことにした。

 西の大陸はポートセルミ、ルラフェン、カボチ村、サラボナ、山奥の村と町や村を合わせて五箇所あるが、現状把握をしたいだけなので、あと一、二箇所くらい回ればだいたい把握ができる。

 

 ……このまま夜を長引かせるわけにはいかない、そろそろ対策に動きたいところだ。

 

 

「そうだね、それがいいかも。時間がもったいないものね。先ずはサラボナに行ってみる? お父さまやフローラさんならもしかしたらなにか気が付いているかもしれないし……あ、でも二人には会わない方がいいかな?」

 

「……必要なら会うよ」

 

 

 ルドマンとフローラならもしかしたら何か気付いているかもしれない。

 そうならアベルはどうしたらいいか相談できるが、すべて話せばどう思われるのか、少し怖い。

 

 

「お父さまに会っても細かいことは黙ってていいからね。というか、別にお父さまに会わなくてもいいよ?」

 

「ううん、いいんだ。アリアが隣にいてくれるならそれだけで」

 

 

 アベルの心中を察して告げるアリアに、アベルは首を横に振った。

 




シスターと神父はアベルをいつでも優しく迎えてくれるのです。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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