ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

前回のプチあらすじ>アンディに見送られ、家を出たアベルとアリアは……。

さて、次行ってみよう。

では、本編どぞ~。



第七百十九話 さて、次はどこへ?

 

 

 

 

 

 アンディの家を出たアベルたちは、【ルーラ】で移動するよりもせっかくここまで来たのでこのまま山奥の村を目指すことにした。

 

 確か、町を出て東の大陸とサラボナの町がある島を結ぶ橋の側に小船が停泊していたはず……。

 思い出したアベルはアリアと話をしながら町のメインストリートを歩く。

 

 

「フローラさんとお父さま……どこに行ったのかはわからないけど、空の異変に気付いていたのね」

 

「ああ……、ひょっとしたらビアンカも……」

 

 

 アリアが“さすがはヒロイン!”と感心して告げる中、アベルも真剣な眼差しで頷いた。

 

 

「うん、きっと気付いているんじゃないかな!? なんたって、彼女もフローラさんと同じくアベルの元嫁さんだもんね!」

 

「元嫁って……僕は初婚なんだけど!?」

 

 

 ――僕がこの世界で二人と結婚してたみたいな言い方……!

 

 

 この世界の自分は初婚なのですが……と、アベルはアリアの言い分に苦笑いを浮かべる。

 

 ビアンカとフローラとは数えきれないほど結婚してはいたが、それは別世界のアベルであって、この世界のアベルではない。

 ……アベルという名前ですらも違うだろう。

 

 別世界の自分は自分であり、自分ではない存在――。

 ビアンカを愛した自分もいれば、フローラを愛した自分もそれぞれの世界に存在している別人のようなもの。

 

 今のアベルはアリアだけを一途に愛する男なのだ、別世界の自分たちと一緒くたにされたくはない。

 結婚するまでビアンカとフローラのどちらかと結婚してしまうと思っていたくせに、なぜ彼女は平気そうに笑顔を見せるのか――アベルにはさっぱりわからない。

 

 考えられる理由としてはこの世界が“ゲームの中”だからというものではあるが……。

 

 

 “ゲームの中”――。

 

 

 ……それだけでアリアはいつもすんなり納得してしまう。

 いったい“ゲームの中”とはなんなのだろうか……。

 

 別世界の記憶は常に薄っすらとある。

 感情は伴っていないが、ビアンカを愛していたことも、フローラを好きだったことも記憶としてはある。

 ……アリアにそれを悟られたくはない。

 

 とりあえず彼女が傷付いた様子はないからいいが、自分で言ったことに自身で傷付く人もいる、誤解を招くような言い方はやめて欲しい――。

 アベルは明るく微笑むアリアを見つめてそう思った。

 

 

「うふふっ♡ わかってるよ? ビアンカちゃんならきっと相談に乗ってくれるはずだよ」

 

 

 ……アベルが眉を寄せている間も、アリアは楽しそうに笑顔を見せている……。

 

 

「はぁ……ったく……アリアは……。そうだね、こうなったら僕も腹を括るよ」

 

 

 ――例え一時、ビアンカに罵られたとしても朝が来れば許してくれるはず……。

 

 

 アベルはため息一つ吐いてから相槌を打った。

 ……話している内にメインストリートから抜けて馬車まで辿り着き、アベルはビアンカに全てを話す覚悟でアリアを抱き上げる。

 

 

「大丈夫だよアベル。ビアンカちゃんならきっとわかってくれる。それに私もいるから」

 

「……うん」

 

「だからね、私も一緒に歩きたいな~?」

 

「それはダメ。それとこれとは話が別だよ? メッキ―、アリアと交代ね」

 

「むぅ、けち~! 下ろしてよ~!」

 

 

 アリアが足をばたつかせるが、アベルはにこにこと笑顔を見せてキャビンに彼女を乗せた。

 メッキーは涙目のアリアと申し訳なさそうにすれ違うようにして馬車から飛び出す。

 

 ……話をしていてもアベルがそれを忘れることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すみません……、船は現在乗ることができません」

 

「え、それはどういう……」

 

「いつの間にか動かなくなってしまいまして、修理が必要なので明日の昼には修理工が来る予定です」

 

 

 山奥の村まで行く手段として使っていた小船の前までやって来ると、そこにはルドマンの私兵が立っており、アベルたちに船が使えないことを説明してくる。

 ……なんと小船は故障中らしい。

 

 

「故障中……」

 

 

 ――こんなことは初めてだ。

 

 

 アベルには小船の故障など体験した覚えはない。

 今の状況自体そうだが、初めて尽くしの体験にアベルの額には汗粒が浮いた。

 

 

「……早く朝になるといいのですが……、今夜はなぜか夜が長く感じますね」

 

「……そう……ですね……」

 

 

 兵士は長い夜になんとなく違和感を感じている様子で、愛想笑いをしつつ会釈する。

 ……アベルは兵士に頭を下げて馬車に戻った。

 

 

「アリア」

 

「うん、聞こえたよ。船が故障ってことは……山奥の村には行けないんだね」

 

「みたいだ」

 

「……じゃあ、ルラフェンかポートセルミにでも行ってみる?」

 

「そうだね、じゃあルラフェンに行ってみようか」

 

 

 まさか物理的に山奥の村に行けないとは思わなかった。

 ……アベルは仕方なく、ポートセルミへと向かうことにしてアリアに手を伸ばして移動呪文を唱える。

 

 

 “【ルーラ】!!”

 

 

 いつも通りアリアが「ひゃぁっ!!」と声を上げ、アベルたちの身体はルラフェンへ。

 ところがルラフェンでは特別変わった情報は何も得られず、次にポートセルミにも足を延ばしたが、そこでも人々の反応は相変わらず――。

 ……誰も“明けない夜”に違和感を覚えていなかった。

 

 ポートセルミに寄ったついでにオルソーの家も訪ねたが、彼は出張中らしく家の扉に“出張中! ご用の方は置手紙をどうぞ”と張り紙が貼られていた。

 オルソーがいないということは、当然ノアも留守のため、パトリシアは残念そうだった。

 

 ……カボチ村はアリアの強い反対があって行っていないため、よくわからないが恐らく人々の反応は他の町と同じだろう。

 念のためにうわさのほこらにも行ってみたが、そこも変わらず――。

 

 ゲームの強制力が働いているのだろうと勝手に解釈したアリアが「フラグが立ってないのね……!」なんて言うので、アベルはわからないなりに理解しようと笑っておいた。

 

 

「……うーん……、西の大陸も同じか……これじゃいったいどうしたらいいのか……はぁ……」

 

 

 アベルは頭を抱えてため息を吐く。

 一日に何度も【ルーラ】で移動し町を歩いた気がするが、夜は明けずに暗いまま。

 疲労だけが溜まっていくだけで、殆ど手掛かりを掴めていない。

 

 

 ……アベルとアリアは一度名産博物館に戻り、馬車の中で休憩を取っていた。

 

 

「アベル……」

 

「今確実なのは、はっきりと異変に気付いているのがフローラさんとルドマンさんだけってことだけど……二人がどこにいるのかわからないからどうしたもんかな」

 

 

 ぼんやりとした灯りの【ランタン】を床に置き、アリアとアベルは二人並んで柔らかいのマットレスに腰掛け、アリアは毛布に包まり三角座りをしながら温かいお茶を飲み、アベルは胡坐(あぐら)をかくようにして腕を組んでいる。

 

 ……アベルの眉間には皺が寄っており、またしても深く考え込んでいる様子――。

 

 念のため名産博物館に戻る前、まだ行っていなかった海辺の修道院やオラクルベリーにも足を運んだが、海辺の修道院ではマザーに「里帰りが早すぎる」と怒られ、オラクルベリーでは、ひょっとしたらと訪ねた占いババも、大したことは話してくれず、誰も“明けない夜”について気付いた様子は無かった。

 

 闇の恐怖に怯えた様子がないのは良いことだが、夜が長くなればばれてしまうかもしれない……。

 

 

「……うん……、とりあえず少し休も? ずっと移動しててアベル疲れてるよね?」

 

 

 アリアはお茶を飲み終えると、カップを床に置いて横になる。

 

 

「……ああ……けど、休んでいる間も世界は寒冷化していってる」

 

 

 昼間はあれほど温かったというのに、夜が明けなくなってから世界がずいぶんと冷えた気がする。

 昔【はるかぜのフルート】で春を呼んでもらい、気候は巡る様になったというのに、春が来る前の寒さに似ているのが気持ち悪い。

 

 いまさら後悔しても意味はないが、アベルは悔しくてたまらなかった。

 ……あんなふとした瞬間に世界が闇に覆われるなんて思いもしないではないか。

 

 アベルの歯が強い力で噛み締められ、ぎりぎりと軋む。

 世界中の人たちが気付く前に朝を迎えに行かなければならないというのに、アベルはまだ解決に繋がる手立てを何一つ手に入れられていないのだ。

 

 

 ……そんなアベルの頬に横になったはずのアリアの手が伸び、そっと触れた。

 

 

「一日くらい休んだって変わらないよ。町の様子はだいたい把握できたし、一度身体を休めて明日考えよ?」

 

 

 ――また考え込んでる……。

 

 

 アベルの険しい表情にアリアは眉を下げる。

 

 

「明日……なのか、今夜……なのか。まるで時が止まってるみたいで気持ちが悪いね」

 

「ううん、時は止まってなんかいないよ?」

 

「え?」

 

「うえ見て?」

 

「うえ?」

 

 

 ……アリアがアベルの頭上を指差す。

 そこは布に覆われていて何もないが、彼女の言う上とは恐らく空のことなのだろう。

 

 アベルは彼女に言われるままにキャビンから顔を出し、空を見上げた。

 そこには月……前に見上げた時と形が違う気がした。

 




あちこち回ってみましたがヒントが見つかりませんでしたー。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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