ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

前回のプチあらすじ>ゆうじいに期待を寄せられたアベルは気後れしていていたが……。

雲を掴みに……。

では、本編どぞ~。



第七百二十二話 雲を掴みに行こうよ

 

「いや、それだと手遅れになるんじゃ……」

 

 

 ――なんでこんなに楽観的なんだ……!?

 

 

 世界はすでに闇に閉ざされているというのになぜ……まるでアリアみたいじゃないか――、アベルはチラッと隣のアリアを見やった。

 

 

「ん?」

 

 

 ……アベルと目が合ったアリアは柔和な顔で大きな瞳をぱちぱちと瞬かせている。

 

 ゆうじいを見ても、にこにこと「はぁ~、展示台に名産品が並ぶのが楽しみじゃなぁ~♪」なんてアベルの持っている名産品の品名を一つ一つ上げて未来を夢見ている始末――。

 

 二人を見ていると、くそ真面目に重く捉えている自分が馬鹿馬鹿しく思えてアベルは“ふぅ”と一息吐く。

 

 

「あ、いや……」

 

 

 ……いけない、また暗くなってしまうところだった――、アベルはそっと頭の後ろを掻いた。

 

 

「ね、アベル」

 

「ん?」

 

「あちこち回ってみたけど、殆どなにもヒントがなかったよね?」

 

「うん。雲を掴むような話になってしまったね」

 

 

 改めて情報を整理すると、殆どの人々が“明けない夜”について気付いてはいなかった。

 

 だが、違和感を感じている人物はちらほらいて、小さな変化は確かにあったように感じる。

 とはいえ手掛かりといったものはなく、現在の状況を把握しただけに過ぎない。

 

 

 雲を掴むような話――、アベルは腕組みして顔を俯かせるとまた小さくため息を吐く。

 アリアも同じように腕組みして首を捻った。

 

 

「雲を掴む……。うん、そうだよ。雲を掴みに行けばいいんだよ」

 

「え?」

 

「アベル、もう一度オラクルベリーに行こうよ。占いババさまに訊いてみよ?」

 

「占いババ? けど、彼女たいしたこと言ってなかったよ?」

 

 

 アリアがオラクルベリー、占いババの元へ行こうと誘って来る。

 だが一度彼女の元を訪れてから、名産博物館に戻って来たわけで……。

 

 “どうせもう一度訪れても同じことしか言わないに違いない。”

 

 アベルはそう思っていたのだが――。

 

 

「うん。でもそれはアベルが今の状況を説明して、訊きたいことを指定しなかったからだよね?」

 

「あ、ああ……確かに僕から説明はしなかったけど……」

 

「正直に話してみよ? 彼女ならなにか示してくれるかもしれないよ? ほら、訊きたいことがあるなら ちゃんと指定しないとわからないかもしれないじゃない?」

 

 

 何か思い当たることがあるのか、アリアは現状を正直に打ち明けようと告げていた。

 

 これまでアリアの意見もあったから、アベルから世界の状況を人々に教えてはいない。

 それは占いババにもだった。

 占いババだから当然見通しているのだろうと思っていたのに、全くのスルーで驚いたくらいだ。

 その場にヘンリーがいたら「だから占いなんてのは信じられないんだよ」なんて鼻で笑っていたかもしれない。

 

 

 ……今回は事情を話して訊いてみようということらしい。

 

 

 とにかく、ここに留まっていても無駄に時が経つだけである。何の手掛かりもないまま時が経過すのはやるせない。

 アベルは藁をも縋る思いでもう一度オラクルベリーへと向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……おや、また来たのか。何じゃ、わしの占い結果が気に入らないっていうのかい? わしは腰が痛いんじゃよ。まったく、なんでか今夜は妙に腰が痛むねえ……」

 

 

 ……オラクルベリーにやって来たアベルたちは占いババの元を訪れていた。

 前回はアベルが先頭に立っていたが、今回はアリアが先頭だ。

 

 占いババは腰を擦りながらアリアをじろりと睨み付ける。

 アベルに対する態度と、アリアに対する態度がまるで違うが、アリアはめげずに占いババにずずいと近付いた。

 

 

「違うんです、占いババさま!」

 

「……な、何が違うというんじゃ。わしの腰は確かに痛いんじゃぞ? 一晩くらい座ってても痛みが出るほど衰えておらんというのに……ええい、そんなに顔を近付けるんじゃないよ……!」

 

 

 ――若さ漲るもちもちの肌をしおってからに……! わしにだってこんなプリップリな時があったんじゃからな……!

 

 

 ぶつぶつ……。

 占いババは しわしわの唇を尖らせながら文句を垂れている。

 

 ……話す相手がアリアだからなのだろう、ご機嫌斜めのようだ。

 吐息が触れるほど近付くアリアの頬に手の平を押し付けた。

 

 一晩座っていたくらいじゃ腰は痛まないらしいが、今の占いババは腰が痛いらしい。

 なぜ痛いのか本人は気付いていないが、実際は一週間以上時が経っており、一週間以上座っているのだから当たり前なのだ。

 

 それに気付かせてやれば本気で占ってくれるかもしれない……、アリアはそう踏んで押されて歪む頬は痛いが続ける。

 

 

「ぅにゅぅ……! 占いババさまはその水晶玉で未来を見通せるんですよね?」

 

「だから近付くなと……ん? 概ねはな」

 

 

 いまさら何を当たり前のことを訊いてくるというのか……、アリアが訊ねると占いババは首を捻った。

 その様子にアリアは占いババから離れ、瞳を輝かせる。

 

 

「水晶玉一つで未来を覗くことがおできになる千里眼をお持ちの占いババさま! その類い稀なる素晴らしい才能を見込んで、折り入ってお願いしたいことがあります。どうか私たちの話を聞いてもらえせんか? そして占いをし直して欲しいんです。こんなことを頼める方は世界広しといえども、占いババさま以外にいませんわっっ!!」

 

 

 アリアは手を組み合わせ、占いババを褒め殺すことに決め、彼女に向けて羨望の眼差しを浮かべた。

 記憶喪失中の似非淑女宜しく、ちょっと動作がオーバー気味でわざとらしい……。

 

 

「……(アリア女優みたいだなぁ……、バレバレだけど面白いからいっか……)」

 

 

 アベルはアリアの後ろで呆気に取られつつ、黙って見守る。

 

 

「類い稀なる素晴らしい才能……、ほっ……褒めたって何もでやせんぞっ!」

 

 

 褒められたって何が変わるわけでもない、女を占うなんてそもそも滅多にしてなんてやらないぞ――、アリアのわざとらしい演技をそう捉える占いババだったが、彼女の頬はぽっと赤く色付いている。

 

 それが例え演技であろうと、褒められて嫌な気はしない。

 町の人からは偏屈な占いババとして有名で、他人から褒められるなんていつ振りだろう、胸がこそばゆいではないか。

 

 

 ……占いババの三白眼はアリアのアメシストに射抜かれ、気まずさに目を逸らした。

 

 

「いえ、褒めてなんていませんよ~! 占いババさまが凄いお方だってこと、私知ってるんですから!! お人柄も素晴らしい方だってカジノに勤めていた時にも聞いていたんですよ……! 私はただ当たり前のことを言っただけですわ……!」

 

「はっ、またお前さんは調子の良いことばっかり言いおって……――、なんだい、言ってごらん。お前さんのその期待に満ちた瞳に免じて聞いてやろうじゃないか」

 

 

 ――まったく、この娘は邪悪な子だよ……記憶を取り戻したくせに初心な振りしおって……貸しにしといてやろうかねぇ……。

 

 

 アリアの褒め殺しをこのまま聞いていると気持ちが悪い――。

 ……占いババは頬を赤くしたまま話を聞いてやることにした。

 

 

「さっすが聡明な占いババさまっ! 話がわっかる~♪」

 

「……チッ、じゃが話はお前さんよりもその後ろの男前から聞きたいもんじゃな?」

 

「アベル!」

 

 

 アリアが指をぱちんと鳴らしてはにかむと、占いババの目はキラリと光り、その視線はアリアの後ろのアベルに注がれる。

 察しの良いアリアはサッとその場を退きアベルの背後に回った。

 

 

「あっ、はい! では僕から……」

 

 

 ……アリアと入れ替わったアベルは“明けない夜”について話していく。

 ことの発端と、その過程――時の流れについて、時間の感覚が誰もが鈍っていること、そして【やみのランプ】を直せば世界が元に戻る可能性があることを説明した。

 

 

「なるほど……つまりわしの腰の痛みはこの長い夜のせいじゃったということか……」

 

「腰……、あ、はい。恐らくあなたは七日間以上ここに座っていらっしゃるはずです」

 

 

 アベルの説明を聞き終えた占いババは、腰をトントンと叩きながら普段から深い眉間の皺をより深く刻み込む。

 重要なのはそこじゃないんだけどなと思いつつ、アベルは占いババに話を合わせた。

 

 

「ううむ……。にわかには信じられんが……すでに世界は闇の中か……闇……」

 

 

 占いババはチラッとアベルの後ろ、アリアに視線を投げる。

 

 

「ん?」

 

「さっき来た時も思ったが、すっかり闇が濃くなったのう……」

 

「え? あ、空がですか?」

 

「……いや。わしの思い違いかもしれんがな……わかった。この夜について占ってしんぜよう……ちょっと待っておれ」

 

 

 アリアが不思議そうに首を傾げると、占いババのほぼ見えない薄っすら眉が下がり、彼女は水晶に手を(かざ)し、占いを始めた。

 アリアはなんのことかわからないが占いババの手元を見つめる。

 

 

 ……アベルも占いババの占い結果を待つことにした。

 




Ⅴの占いババは実はあんまり役に立たないんですよねー……。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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