前回のプチあらすじ>占いババに別れを告げて、クリエたちを捜しをすることに。
二人はいったいどこにいるというのか……。
では、本編どぞ!
◇
占いババに別れを告げてアベルが駆けて行くと、カジノ脇の明るい場所で、ピエールとともに水路に設置された噴水を見下ろしていたアリアが足音に気付いて振り返る。
「アベル遅~い!」
「ごめんごめん」
ネオンに照らされたアリアは愛らしくリスのように頬を膨らませていたが、アベルが近付くと優しい笑みを浮かべた。
「占いババさまってば、また、闇がどうのって言ってたんでしょ?」
「え? あ、ああ……ってアリア知ってたの?」
アリアの話にアベルはなぜそのことを知っているのかと疑問に思う。
「うん……昔もそんなことを言われたことがあって。なんか抽象的でわかりにくいよね。闇って……魔力のことなのかな~?」
「魔力?」
「うん、ほら私、あのストーカーに出会ってからかなり魔力が上がった気がするんだよね……魔物の声も聞こえちゃうし、気配もわかっちゃうし」
「あ……そっか。そうだったね。けど、闇は魔力というより賢さなんじゃないかな……」
占いババの言う“闇”とは魔力……?? アリアの話に納得できなかったアベルは【ステータスウィンドウ】を表示した。
「賢さ? あ、私、すごい……!(って、なんでぱんつの色がわかるのよ……エッチなステータスウィンドウね!)」
アベルの表示した【ステータスウィンドウ】、アリアの細かな能力値を眺めて彼女は声を上げる。
彼女の装備品を表示する欄は相変わらずバグっており、本日の下着の色が書かれているが(※本日はピンク)、能力値に関しては正常に表示されているようだ。
……アリアの【かしこさ】の欄には“100”と記されていた。
確かに占いババは抽象的なことしか言わない時が多い。
アリアは“闇”について魔力だと予想をつけたようだが、彼女の言う魔力とは消費魔力というより【ステータスウィンドウ】で見られる【かしこさ】に該当するのではなかろうか。
アリアの言うようにあの謎の人物と接触してからというもの、彼女の【かしこさ】の伸びは著しい。
現時点でアベルは49と記されているのに、アリアは100――。
……だが相変わらず
「ね?」
「なるほど~! 確かに賢さの方が合ってる気がする~。さすがはアベルね♡」
「フフフ♡」
アベルが【かしこさ】欄を指差し教えると、アリアは納得して首を縦に下ろしウンウンと頷いた。
アリアに褒められたアベルは微笑み【ステータスウィンドウ】を閉じる。
「ん~……でも賢さなら上がれば上がるほどいいよね?」
「……そうだね」
「じゃあ占いババさまは、なんで“闇”って言う時に嫌そうだったのかなー……。あ、昨夜……と、実はアベルと再会する前にも言われたことがあったんだけど……その時の占いババさまの顔、すっごく怖かったの」
「っ……気のせいじゃないかな? 僕がさっき聞いたのはアリアの能力がこれからも上がっていくって話だったよ。……楽しみだね?」
……アベルはアリアに笑顔を見せて、シルクの髪を撫でた。
自分との再会前にも言われている……ということが少し気に掛かるが、占いババの告げた“闇”とは、本当はあの謎の人物に関係することではないのだろうか――。
アベル自らも“闇を抱えた”と言われて思い当たるのはそれしかない。
とはいえアベルの抱えた“闇”と、アリアの“闇”は別物とも考えられる。
占いババの言うアリアの“闇”は大きくなっているらしいが、彼女は普段と変わらず愛らしく朗らかだ。
そんな妻を不用意に不安がらせる必要はない。
もし何かあっても自らが対処すれば、アリアが傷付くことはないだろう。
……それとなく“闇”について上手くはぐらかしたアベルの指には、気付けば触り心地のいいアリアのプラチナブロンドが絡まっていた。
「へ~、そうなんだ? ……ま、いっか。じゃあアベル、まずはサンタローズに行ってみますか? フラグ立ったかもしれないし」
「フラグ……? ……そうだね、そうしよう」
最近ちょくちょく聞く“フラグ”――。
やっぱりアベルにはわからないが、スルーで問題なしと判断し聞き流す。
アベルはアリアの手を取りサンタローズをイメージして魔力を集中させる。
【ルーラ】を唱えたアベルたちの身体は瞬時に空高く舞い上がり、夜空の中を瞬く間にサンタローズへ向けて飛んで行った。
……ところがサンタローズに着いたものの、村にクリエたちの姿はやはりない。
念のためアベルたちは教会を訪ねる――と。
「……金髪のツインテールの女の子と、黒髪でツノみたいな前髪をした男の子……? あら、その二人ならずいぶん前に訪れましたよ。この村の再建を申し出てくれたのですが、見ず知らずの方に頼むわけには参りませんからアドバイスと設計図だけいただきましたわ。それと美味しいお菓子も……、村の子がとても喜んでましたね」
「本当ですか!?」
シスターリリィの返答にアベルは目を丸くした。
教会を訪れたアベルたちを見てシスターリリィは始め「さっきも来たのにまた来たの?」と笑顔だったが、アベルがクリエとシドーの特徴を話すと、彼女は二人と会ったことがあるらしく、クリエたちが設計図と菓子を振る舞ったという話をしてくれる。
……この世界には【世界の理】によって実のある話ができない者もいるが、質問の仕方さえ合っていれば話してくれる者もいる――、決して諦めてはいけないのだと、アベルは改めて思い知らされた。
「ええ、彼女……あ、クリエさんね。まだ子どもなのに、ものすごい速さで設計図を描いてくれて……、おかげで復興が進んでいるのですよ。その後、二人とも村の洞窟に入って行ったけど、すぐに出て来て……もう何ヶ月前だったかしら。近くに町はないかと訊かれたので西にアルカパがあるとお教えしましたよ。こんな話で役に立つかしら?」
「っ、ありがとう、シスターリリィ!!」
シスターリリィの手をぎゅっと握りしめ、アベルは頭を下げる。彼女は優し気にはにかみ「またいつでもいらっしゃいね」と、教会を出るアベルたちを見送ってくれた。
「アリア、アルカパだ……!」
「うん!」
教会を出たアベルたちはクリエとシドーの足取りを追って次の町――アルカパへ。
“クリエとシドー、二人が見つかれば世界は朝を迎えることができる――!”
……アベルとアリアはそう信じて疑わなかった。
◇
……さて、アベルたちが自分たちを捜していることなど知らないクリエとシドーの姿はいったいどこに――。
「おーい、クリエー! そろそろ行こうぜ!」
「うーん、もうちょっとー。一月もお世話になったし、お礼して行かなきゃ」
シドーが離れた場所から次の目的地を目指そうと促すが、クリエは夜の冷たい風が吹く墓に花を手向ける。
……クリエとシドーのいるここはレヌール城――六階屋上、王と王妃の眠る墓所だ。
彼女たちは修道院を出て各地を転々とし、レヌール城に流れ着いていた。
二人が探す“カケラ”は未だ見つかっていない。
アルカパでレヌール城の話をいくつか聞いたが、主はもうおらず、城は廃墟になっているものの、ここは神聖な気で満たされ静寂の中――。
“カケラ”探しに忙しいクリエとシドーは疲れもあってか一月ほどここ、レヌール城で寝泊まりし(勝手に)お世話になっていた。
というのも、二人の旅は長い。
“カケラ”探しは困難を極め、まだ二つしか集められていなかった。
……移動ばかりでは疲れも溜まるというもの。
西の大陸では小さな家を建て、そこを拠点に“カケラ”探しをしていたが見つけた“カケラ”は二つ――。
「この城にあると思ったんだけどなぁ……反応が弱かったから、自信なかったけどやっぱりもうないみたいだね」
クリエが【ふくろ】から西の大陸で手に入れた“カケラ”を取り出し見下ろす。
“カケラ”はどちらも歪な形をしており、大きさも違い、微かに青白く発光していた。
……“カケラ”を組み合わせると元の形に戻るようだが、二つの“カケラ”は隣同士ではないようでくっつかない。
それを確認してクリエは再び【ふくろ】に“カケラ”を仕舞った。
「なあに、時間はいくらでもあるんだ、のんびり探せばいい」
「そーだけどさ~。カケラを早く集めて元の世界に帰らないとルルたちが心配してると思うんだよね」
シドーがクリエの隣にやって来て“へへっ”と屈託なく笑う。
“カケラ”をあといくつ集めればいいのかクリエとシドーにもわからないが、それが揃った時、彼女たちは元の世界に帰れる――らしい。
……そう。占いババが水晶玉で見た通り、クリエとシドー、二人は異世界からやって来た旅人なのだ。
「……帰ったらルルもチャコもペロもマッシモも年寄りになってるかもな」
「えぇ~? 早く帰らなきゃ!」
「はっはっはっ! 冗談だ。たぶんオレたちと同じだから心配するな」
「冗談が過ぎるよシドー君」
シドーの笑えない冗談にクリエが眉を寄せると、彼は愉快そうに腹を抱えた。
「ハハハッ! まあそう怒んなって!」
プクッと頬を膨らませるクリエの肩をシドーはポンポンと軽く叩く。
「あ~あ、早くからっぽ島に帰りたいなぁ……、そんでもって思いっきりビルドしたいや……、この城の修繕が出来れば良かったのになぁ……直しても崩れちゃうし……。まあこの世界に来ちゃったのはボクのせいなんだけどさ……」
「は? オレのせいだろ?」
この世界に来たのは自分のせい――。
いつになく元気のない声でそう告げるクリエにシドーの口がへの字を描いた。
……どうやらクリエとシドーの二人は自分たちのせいでこの世界にやって来たらしい。
「いやいやいや……どう考えてもボクのせいでしょ。ほら、この空を見てよ。もう何日も夜が続いてる。夜が明けないのもボクのせいかも……この世界の人たちにも悪いことしちゃったなぁ。ホント、シドー君まで巻き込んでごめんね……」
クリエが夜空を指差し見上げてから、シドーに視線を移し頭を軽く下げる。
それに対しシドーはといえば……。
「……あーもう、辛気臭い顔すんな。いまさらどっちのせいとかどうでもいい。それに夜が明けないのはオマエのせいじゃない。落ち込むなんてオマエらしくないぞ。東の河を渡った向こうにラインハットっつー国があるんだろ? 今度はそっちに行ってみようぜ!」
「そうだね。町の建物を作るのはダメだけど、食べ物とか家具とかなら大丈夫だもんね! 行こう行こう!」
わしゃわしゃ、と。シドーは笑顔でクリエの頭を乱暴に撫でながら次はラインハットに行こうと誘っていた。
シドーの笑顔に釣られてクリエの顔にいつもの明るい笑顔が戻り、墓にお礼を告げる。
「王さま、王妃さま、お世話になりました!」
「世話になったな」
クリエが会釈すると、彼女に続きシドーも隣で頭を下げた。
そうして二人は墓所から立ち去ろうと歩き出した――のだが。
『いやー、さがしましたよ』
どこかで聞いたことのある女性の声が、二人が今から向かおうとしていた城の東塔から聞こえた。
いやー、さがしましたよ。
……サマルくん、ホントだよ。
色々悩んだ結果、クリエの一人称が“ボク”に決まりましたー。
ボクっ子は初めて扱うのでちょっと新鮮。
今回切りどころが……ちょっと長くなってしまいました。
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!