散歩長いな……。
では、本編どうぞっ。
二人は散歩を再開する。
“まだまだこの城色々あるんだよ”とアベルが先導し、西へと戻って行く。
アベルの後ろを歩いていたアリアだったが、その途中で世界地図が描かれた球体を見つけ、そちらへと寄って行った。
『これ……、地球儀?』
「ちきゅうぎ……?」
あ、地球じゃないね! とアリアは球体を眺める。
「これ、世界地図だよ」
『そう、みたいね。へぇ……こんなに広いのね。こんなに広いと、大変そうだなぁ……』
「何が……?」
『あ、自分探し。何年掛かるんだろ……』
アリアは「ここがラインハットで、ここがサンタローズね……」と地図を指しながら、どこから手をつけようかと考え込んでいた。
「大丈夫だよ。僕も一緒なんだから見つかるよ」
『え……?』
アベルの一言に地図を見ていたアリアが振り向く。
どういうこと???
あれ?
ひょっとしてアベル、私を妖精の世界に行かせるつもりない……?
『あ、ね、アベ……』
「さ、次そこの階段を上がって二階に行ってみよっ!」
訊ねようとするとアベルは二度も通り過ぎ、まだ上っていない階段を指してそちらへ向かう。
“上に何があるかな~? 楽しみだね~!”と、わかっているはずなのに口にしていた。
『ちょ……アベルー?』
聞く耳持たずなアベルの態度に、アリアはわざと遮ったんだと悟る。
都合の悪い話は聞きたくない、ということなのだろう。
まぁ、サンタローズに戻るまで付き合いましょ。
そうすれば気も済むよね……?
アリアは渋々ついて行くことにした。
◇
階段を上がると、兵士達の待機所らしき場所へと出る。
手前側にはテーブルと椅子がいくつかあり、鎧を纏った戦士がその一つに腰掛けている。食事や休憩に使われているようだ。
奥にベッドも見えるので、兵士や戦士達はここで休憩を取ったり、仮眠したりしているのだろう。
『……戦士さんが二人と、兵士さんが奥に一人いるね。皆に話し掛けるの?』
「んー……どうしよう」
アリアが目視で確認できた三人の人物に声掛けするか訊ねるのだが、アベルは腕組みして考え込む。
というのも、一番近くに居るテーブル前を行ったり来たりする赤い鎧を身に纏った戦士はかなりの強面で、アベルは声を掛けようか躊躇っていた。
『あっ、あの人恐い顔してるね。声掛けるの怖い?』
「っ、べっ、別に!? 全然怖くなんてないけどっ!?」
アベルは思い切って声を掛けてやる! と強面戦士に近づいて行くが、
やっぱやーめた!
と、強面戦士の前まで行って踵を返したのだった。
ところが、その拍子に強面戦士が方向転換し、ぶつかってしまう。
「っ! あっ、っと、……ごめんなさい」
アベルは鼻を打ち付けたのか、そっと自分の鼻先を撫でた。
「やあ、坊や。こちらこそ悪かったな。今考え事をしていたのだ」
「考え事?」
「次の国王はヘンリー様か? デール様か? まっ、余程のことがない限りやはり後継ぎは長男のヘンリー様だろうな!」
強面戦士は、顔は怖いが小さな子供には優しいタイプだったらしい。
アベルの頭をぽんぽんと撫で、また考え事を始めうろうろしだした。
『ふふっ、アベルったら……。見てたよ?』
「っ、笑わないでよ……。っ、あ、今度はそこに座ってる人に声を掛けて来るね」
アリアがくすくすと笑っているので、アベルはばつが悪そうに頬を膨らまし、今度はテーブルに着いている鉄の鎧を身に纏った戦士に声を掛けに行った。
「あの~……」
「皆どうかしているぞ。王様がまだお元気だというのに次の国王の話など……。そんなことよりも気になるのは、あちこちの国で子供が攫われているらしいということだ。坊やもお父さんから離れて外を歩いたりしてはいけないよ」
「え……?」
「さっき、あいつが言っていただろう? ヘンリー様か、デール様かと。そんなことよりも子供の話だ。物騒だと思わないか?」
強面戦士をチラ見して、鉄の鎧の戦士が同意を求めて来る。
「あ、うん……」
「気を付けるんだぞ」
「はぁい……」
わかったならよし、と鉄の鎧の戦士はアベルの頭をぽんぽんと撫でたのだった。
「……だってさ、聞こえてた?」
アベルがアリアの元に戻って来る。
『うん。……誘拐かぁ……怖いね。アベルも気を付けてね』
「僕は強いから大丈夫だよ」
『……ふふっ、それもそうね。でも……何だろう、嫌な予感。アベル、パパスさんから離れちゃダメだよ?』
「っ、アリアこそ、僕から離れちゃダメだよ?」
アリアの言葉に、アベルは何故か向きになってそんなことを言う。
『いや、私は人間から見えないから大丈夫なんだけど……?』
「そんなことは聞いてないよ! アリア弱いんだからねっ!」
今度はあの兵士に声掛けよ! っとアベルは奥へ走って行ってしまった。
『……ははは……。も~……、すぐ弱い弱いって言う……。力はともかく、前より随分強くなってると思うんだけどなぁ……』
アリアは自分の両手を見下ろす。
魔力が以前より漲っている感じがして、今なら強い呪文も唱えられそうな気がした。
アリアはそのままアベルの後を追う。
「う~ん、気になる……。王妃様が何やら質の良くない連中と付き合っているようなのだ。このことを王様に報告した方がいいのか、どうしたものだろう……」
「質の良くない……?」
兵士と話を終えアベルが首を傾げていると、アリアがようやく追い付き訊ねた。
『ん? どうしたの?』
「あ、うん。なんかね、この兵士さんが王妃様のこと王様に報告した方がいいか迷ってるんだって」
『ふーん? まぁ、ホウレンソウは大事よね』
「ホウレンソウ?」
『報告、連絡、相談ね。頭文字を取って、報連相。でも、下手にホウレンソウして怒る上司もいるから考えものよね。兵士さんが悩むのもわかる気がする』
アリアは腕組みしてうんうんと頷く。
「ん? 何でそんなことわかるの?」
『元社畜だからね! 私の上司も結構気難しくって! よく怒られたものよ? 先輩もしょっちゅう怒ってたなぁ……』
あ、元上司と元先輩ね! とアリアは笑う。
「しゃちく……? へぇ……。天界って、怒りんぼが多いんだね。天使なのにそんなに怒るんだ……」
『天界……あはは……。とにかく、ここの王様気難しそうだったし、王妃様のことを報告するの、躊躇うのもわかるかな~って思ったの』
何の報告かはわからないけど、多分良くないことなんでしょう?
自分の奥さんの悪い話を聞くのは、嫌よね……?
下手したら報告した兵士さんが罪に問われるんじゃ……?
アリアは報告しないのもアリ! と思うのだった。
「ふぅん……? そんなもんなんだね。僕は、ホウレンソウ……っていうの? 何でもして欲しいけどなぁ……」
『アベルみたいな優しい子が王様だったらいいのかもね。私も何でもホウレンソウしちゃうよ?』
「え? あ、へへっ……、そ、そう……? じゃあ……」
アリアの一言にアベルは心が温かくなる。
“じゃあ、何でも言ってよね”
アベルは心の中で告げていた。
『このフロアに他に話を聞く人はもう居なさそうね。そろそろ王の間に戻る?』
「ううん、まだ行くところが残ってるよ」
『そうなんだ、さすがはお城。広いのね~』
二人は待機所を後にした。
ラインハット城内を散歩=これもうデートですよね!
全然らぶくないけどっ!
結構ゲームを忠実に再現しているような気がするので、そろそろ端折りたいが楽し過ぎてやめられない止まらないwww
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評価いただけるとモチベ上がりますので、良かったら下さいっ。
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読んでいただきありがとうございましたっ!