前回のプチあらすじ>いやー、さがしましたよ。
クリエとシドーは異世界の住人でした。
……いや、知ってるけど。
では、本編どぞー。
◇
「いやー、さがしましたよ」
――いっぺん言ってみたかったんだよね~。
今言うべきセリフはこれでしょ、とアリアはアベルの腕に掴まりながら言ってみる。
「……へ?」
アリアの声にクリエの目が大きく見開いた。
「クリエちゃん! シドーくん! や~っと見つけた~!!」
「あっ! アリアお姉さんとアベルお兄さん!」
「お? 久しぶりだな!」
アリアはアベルから離れることなく、クリエとシドーに手をふりふり二人に近づいて行く。
アベルたちに気付いたクリエとシドーが久しぶりの再会に顔を綻ばせた。
人前ではイチャイチャしないと豪語するアリアだが、なぜ腕を組んでいるのかと思えば、理由は単純――幽霊が怖いからである。
……かつてのレヌール城はオバケの巣窟だった。
前回記憶喪失中に訪れた時は昼間だったから然程気にはならなかったが、今は夜――。
レヌール城にもう幽霊は出ないものの、アベルが「まだ出るかもね」なんて脅すものだからアリアは怯え、アベルの腕を掴んでいる……というわけだ。
「やあ、二人とも元気だったかい? 見つかってよかったよ」
アベルは上機嫌でクリエとシドーに軽く手を挙げた。
「なんでこんな所に?」
「君たちを捜しに来たんだ。城の前に見慣れたワゴンがあったからここまで上って来たんだよ」
クリエが首を傾げるとアベルは城の南を指差し、マルシェワゴンがあったことを告げる。
今マルシェワゴンの側にはアベルの馬車が停車しており、パトリシアとスラりん、キングスで仲良く水分補給中だ。
「なになに? ひょっとしてまたボクたちのチカラを借りたいのかな!?」
アベルの言葉にクリエの瞳が輝き、興味津々な表情で両手を後ろに流すとアベルたちにダッシュで駆け寄って来る。
“キィーン!”とでも聞こえそうなクリエの走る姿にアリアが「アラレちゃん……」と溢したが、彼女は呟いてすぐ何か納得するようにうんうん頷いていた。
「実は……――」
……アベルはクリエたちに先ずは現在の状況から説明する。
少し勇気が必要だったが、包み隠さず自らの過失のせいで夜が明けない理由について話した。
「ぇ……」
話を聞き終えたクリエは目を丸くしたまま黙り込んでしまう。
……シドーも腕を組み黙ったまま……。
「……っ、僕のせいなんだ……もうしわけ……」
「っ、よかったぁ~~!!」
アベルが眉を顰め、息を詰まらせながら頭を下げようとしたが――クリエは突然満面の笑みでバンザイの要領で両手を広げ、安堵したように喜んだ。
「「え?」」
……思っていた反応と違う――、クリエに喜ばれたアベルとアリアは面食らってしまう。
「ボクのせいじゃなかった~!! シド―君! ボクのせいじゃなかったよ~!」
「へへん、だから言ったろ」
「うんうん、さっすがシド―君! よくわかったね!」
「へへっ、まあな!」
クリエは両手を広げたままシドーに抱きつき嬉し泣き……、シドーは頬をほんのり赤くしながらぽんぽんとクリエの背中を軽く叩いていた。
「えぇ……!? どういうこと……?」
アリアが二人の会話に首を傾げる。
「いや~、ボクたち異世界から来たからさ、そのせいでこんな状況になってるのかと思ってドキドキしてたんだよ。でもアベルお兄さんのせいなんでしょ? いや~よかったよかった! ボクのせいじゃなく、アベルお兄さんの
「いや……全然よくないんだけど……」
――そんな喜ばなくてもよくない?
クリエの明るい笑顔にアベルの両眉が下がった……。
確かに自分が悪いのだが、クリエに二度も自らのせいだと明るく指摘されたアベルは落ち込み項垂れる。
「アベル……」
アリアも眉を下げつつ微苦笑し、慰めるようにアベルの背中を優しく擦った。
「お兄さんたちはボクに何を協力して欲しいの? ボクはビルダーだからモノ作りしかできないけど、それをわかってて捜してたんなら、もちろんビルドの依頼だよねっ?」
……期待に満ちたクリエの瞳がアベルを見上げている。
彼女の背には見た目はおもちゃのようなハンマー――そのハンマーの頭、中央は赤、両側の面が青い大きなものだ。
修道院の修復で何度も見たそれは【ビルダーハンマー】というものらしい。
前に一度、アベルもアリアも試しに持たせてもらおうとしたが、かなりの重量でアリアは持ち上げられなかった。
……アベルは何とか持ち上げられたものの、あまりに重いため扱うには至らずじまい。
アリアと同じくらいの身長だというのに、クリエの力は強いと言わざるを得ない。
シドーも通常の【こんぼう】よりも一回り大きなものを背負っているし、二人はかなりの怪力だ。
クリエもシドーも見た目が華奢だからといって侮ってはいけないということは、修道院で身に染みてわかっている。
【ビルダーハンマー】はクリエにしか扱えないので、アベルは勇者の【てんくうのつるぎ】みたいだなと思っていたのだ。
「あ、ああ……そうなんだ」
アベルはクリエに頷く。
――異世界からやって来た子たちだとは知らなかったけど……なんか納得……。
改めてクリエとシドーを見るとわかる。
彼女らは明らかに異質な存在……、呪文が一切使えないというのにたった二人で世界を旅しているのだから驚きだ。
怪我をしても【やくそう】だけで充分だというし、しかもその【やくそう】――自分たちで作っているんだとか……。
【やくそう】や【どくけしそう】は、店で売っている物は例え材料が揃っていたとしても、配合割合が書かれたレシピがないから素人がそう簡単に作れるものではない。
レシピは各国や町で許可を得た者だけが扱えるもので、それがなければ例え作れたとしても粗悪品となり大した効き目はなく、売り物にはならないだろう。
もちろんアベルも作ったりなんてできない。
先ほど城の前に停まっているマルシェワゴンを見たが、菓子や料理だけでなく、【やくそう】に【どくけしそう】なども売り物として載せていた。
以前シドーに口に突っ込まれた【上やくそう】の効き目も凄まじく、修道院の屋根部品もあっという間に作ってしまっていたし、クリエの物作りは種類を選ばず多岐にわたる。
さらに彼女は重いものを軽々と持ち上げることができ、会って間もないプックルを御してしまった。
……この世界の人間とはとても思えず――と思っていたらその通りだったとは。
「うんうん、任せてよ! 最近ビルドって言っても食べ物とか服ばっかりで退屈してたんだよね」
クリエが楽しそうに笑っている……。
シドーも彼女の笑顔に目を細めて「よかったな」なんて金髪頭を撫でていた。
「さっき話した闇のランプの修復と、名産博物館で壊れた展示台がたくさんあるんだ。クリエちゃんにはその展示台の修復も頼みたい。必要な材料はこちらで用意するから安価でやってもらえると嬉しいんだけど……、できそうかい?」
「もちろんだよ! 展示台なら材料が揃えばなんとかなると思う。けど、闇のランプかぁ……初めて聞くな……」
アベルの話にクリエは笑顔で答えたものの、【やみのランプ】に関しては初めて聞いたアイテムのようで腕組みして考え込む。
「えっ、そうなの!?」
「うん。ボクたちの世界にはなかったからね」
アリアが驚いて瞳を瞬かせるとクリエの首が縦に下ろされた。
やみのランプはⅡ世界には無いのでつ。
※最近多忙のため更新頻度が遅くなっております。
スミマセン。引き続きがんばりまーす。
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!