ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

前回のプチあらすじ>クリエたちには制約があるようで……。

制約とはなんぞや。

では、本編どぞー。



第七百二十八話 “カケラ”

 

「うんうん。異世界から来た制約みたいなものなのかな~。一応、ボクたちが住む用の小さな家だと、住んでる間は形を保ってくれるんだけど、引っ越した途端崩れちゃって、素材に戻っちゃうんだ」

 

「え~! なにそれ~!?」

 

 

 異世界から来た者には制約がある……らしい。

 アリアは驚きに声を上げつつ、自分に制約なんてあったっけと思い起こしてみる。

 

 ……そういえば小さい頃、人間と一部の魔物から見えなかったっけ――と一つ思い当たったが、そもそもあれは身を守るための保護魔法だったから違うかもしれない。

 であれば、未来の話をしようとすると息が詰まって話せなくなったのがそれに当たるような――?

 

 とはいえ、ピエールにも適用されているようだから、それも違うように思う。

 そもそも転生しているから転移して来たクリエたちとは条件が違うというのか。

 

 ……クリエとシドーの二人はともに同じ世界からやって来た。

 ひとりぼっちでこの世界に来たアリアは、二人が少し羨ましく思えた。

 

 

「ん~。この世界にあんまり干渉しちゃいけないってことかな。ボク、ひとりでお城とか建てられるからね。なんだったら世界の地形すらも変えられるからね。天気もある程度操れるし」

 

「ええっ!? それってもう神さまじゃない……」

 

 

 クリエの話は続き、驚きの一言を告げる。

 

 ……クリエは城を建てることができ、地形すらも変え、天気も操れるという……。

 いったいどんな世界からやって来たというのか。

 前を歩くアベルも目を見開き、クリエとシドーを交互に見やる。

 

 クリエはアリアに得意気な笑みを見せており、アベルはシドーと目が合った。

 

 

「ハハッ! クリエはすごいだろう?」

 

「あ、ああ……にわかには信じられないけど……」

 

 

 シドーがニヤッと不敵に笑い、アベルも愛想笑いを浮かべる。

 

 

「いや、神さまはボクじゃなくて……」

 

 

 ……アベルたちの後ろで、クリエの人差し指がシドーの背に向けられようとしていた。

 

 刹那、“ゴホンッ!!”

 シドーが大きく咳払いをし、ちらっとクリエに視線を投げる。

 

 

「ん? ……あ、えへへっ。冗談冗談、城造りならともかく、地形を変えるなんて無理に決まってるじゃん。真に受けちゃってやだな~」

 

 

 シドーに睨まれた気がしてクリエは首を傾げるも、すぐにツインテールの片方、金の髪をくるくると人差し指に巻き付けもてあそんだ。

 

 

「あ、お城を建てられるのは本当なんだ?」

 

「えっへん!」

 

 

 城を建築できるというのは本当らしい……。

 アリアに問われたクリエは腰に両手拳をそれぞれ当てて胸を張る。

 

 

「まあ、そんなわけで、勝手にお城とか建てられないように世界が干渉を拒んでるのかなって思ってる。世界地図変わっちゃうでしょ?」

 

「あ……、そ、そうなんだ(私、めちゃくちゃ干渉しちゃってるけど大丈夫なんだろうか……)」

 

 

 異世界から来たら干渉し過ぎてはいけないのだろうか――。

 アリアは心配していたが、話を聞いていたアベルはクリエの話に“世界の理”が存在するからそうなのだろうと納得する。

 

 恐らく“世界の理”は、世界の均衡が保てなくなるほどの干渉を嫌い、それを強大な力で排除しているのだ……。

 

 

「そっか……クリエちゃんはなんでも作れるけど、万能ってわけじゃないってことか……」

 

 

 アベルは不思議な二人の底知れぬ特殊能力が、異世界の力によるものだと腹に落とし込むように小さく呟く。

 

 

「……まあそういうことだな。そもそも呪文だって使えないしな」

 

「そうなのか……」

 

 

 ――いや、君たち呪文が使えなくてもめちゃくちゃ強いよね……!

 

 

 アベルの独り言が聞こえたらしいシドーは、穏やかな顔でアベルに深く頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれからアベルたちはレヌール城一階の宿屋までやって来て、誰もいないが勝手に部屋を使わせてもらうことにした。

 

 ……宿の客室は二階に位置している。

 階段を上がった部屋に灯りはなく、クリエは荷物の中から【カベかけたいまつ】を取り出し壁にいくつか設置した。

 

 

「わぁ……、灯りがあるだけでなんて安心感……☆ クリエちゃんありがとう☆」

 

「フフフ☆ どういたしまして! 灯りがあればオバケが出たとしても寄って来ないから安心してね!」

 

 

 パチパチと小さく弾け燃える松明の炎を目にしたアリアがほっとした様子で微笑むと、クリエは嬉しそうに目を細める。

 幽霊はもう出ないはずのレヌール城だが、念には念を――ということなのだろう。

 それに、松明を燃やせば冷たい部屋の空気も多少は温まるというものだ。

 

 ……部屋の中には四台のベッドがあり、その一つにクリエは持っていた荷物を下ろすと手にはめたグローブを外す。

 枕横にそれを置いて腰掛けた。

 

 

「ふぅ~。もう一泊お世話になることになっちゃった」

 

「あら、ここで寝泊まりしてたの?」

 

 

 足を投げ出し、後ろ手をつき背を伸ばすように寛ぎのポーズをするクリエに、アリアは隣のベッドに腰掛け訊ねる。

 

 

「そっ。ここを拠点にして、カケラ探ししてたんだよ~」

 

「あ、カケラって、前にも言ってたやつね。見つかった?」

 

「ううん、残念ながら。この近くに反応があったから来てみたんだけど、なかったよ」

 

「そっかぁ。残念だったね」

 

 

 アベルは二人の会話を聞きながら、そういえばクリエとシドーは“カケラ探し”をしているんだったなと思い出し、アリアの隣に座った。

 

 ……シドーは武器をクリエの向かいのベッドに立てかけたと思ったら、床で腕立てを始めている。

 ああして日々鍛えているから強いのだろうか……。

 

 

「まあ、その内見つかると思うからがんばるよ」

 

「がんばってね。どんなものなのか私たちにも教えてもらえれば、旅先で見かけたら回収しておくんだけど……」

 

「あはは、ありがとーアリアお姉さん。でもカケラはボクたちにしか見えないものだから二人には見つけられないと思うよ」

 

「ん?」

 

 

 ……“カケラ”はアベルとアリアには見えない……? クリエの言葉の意味が理解できず、アリアは首を傾げた。

 アベルもぱちぱちと瞬きを繰り返している。

 

 その様子にクリエは自らの【ふくろ】をガサゴソと――。

 “何か”を取り出しアベルたちの前に両手の平をさらけ出した。

 

 

「カケラって、コレ……なんだけど……見える?」

 

「見える……? なにが?(あ、クリエちゃんの手相、生命線が長い……)」

 

 

 ……クリエの両手の平には何もない。

 アリアはつい、クリエの手の(しわ)にこの子は長生きしそうだと凝視してしまった。

 普通の手と違うのはこれまで幾度もビルドを重ねてできた働き者の証、硬そうな立派なタコがあること――。

 

 

「ほらね~。今、手の平にカケラをのせてあるんだけど、アリアお姉さんには見えてないみたい。アベルお兄さんもでしょ?」

 

「あ、ああ……」

 

 

 ――何もないんだけど……本当に手の平にのせているのか……?

 

 

 クリエが人を騙すような人間には見えないが、狐につままれた気分だ。

 アベルは手のタコ以外何も見えない小さな手の平に素直に頷く。

 

 そうしている内にクリエは手を引っ込め“カケラ”を【ふくろ】に仕舞った。

 その際、指で摘まむように元に戻しているので、形は見えないが“カケラ”があるということだけはアベルもアリアも理解できた。

 




アベルとアリアにはクリエの言う“カケラ”は見えませんでしたー。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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