ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

前回のプチあらすじ>毛皮をゲットしに来ましたよ、と。

では、本編どぞ。



第七百三十四話 毛皮を手に入れるには

 

 洞窟に入るのはアベル、アリア、クリエ、シドー、ピエール、プックルの六名。

 少々人数が多いが、二人増えたところで問題ないだろう。

 洞窟は以前来た時と様子が同じで、遠目に見える魔物たちが強くなっている様子はない。

 これなら難なく【おおきづち】と【ブラウニー】を狩ることができそうだ。

 

 ところが前回アベルと記憶喪失中のアリアが入った西の入口の先には【おおきづち】どころか、今ではアリアもずいぶん慣れた【ドラキー】の群れもあまり見掛けることがなかった。

 魔物自体の出現も少なく、魔物探知ができるアリアが「あれぇ? この先スライムと とげぼうずと せみもぐらの気配しかしないんだけど……?」なんて言うのでパパスの秘密の部屋に続く東の入口から入り直し、【ブラウニー】を狙うことにした。

 

 東の入口はイカダに乗り川を遡上していくのだが、その間クリエが気まずそうに「なんかボクのせいでごめん……、その内たぶんまた増えると思う……ブラウニーはそんなに――から」ボソッと呟かれたものの、アベルには何のことかよくわからなかった。

 

 

 ……そうしてアベルたちは奥を目指す。

 イカダから降りて地下に続く階段を下り、西の入口側よりも少々強い魔物たちと遭遇し始め、アベルはシドーとともに切込み隊長よろしく駆けて行った。

 

 

「アリアお姉さんはボクと一緒にいるといいよー。ボクが守ってあげる」

 

 

 アベルとシドーが魔物の群れ目掛けて走って行く中、クリエがアリアの傍で愛らしい笑顔を見せる。

 始めはクリエがアリアを守るというから、か細い女の子に任せて大丈夫なのかと心配したものの……、結果的に心配する必要はまったくなかった。

 

 

「わわっ!? 狙いは私っ!?」

 

「だいじょぶだいじょぶ。はーい、メルキドの守りカベっ、どーん!!」

 

 

 “ドンッ!!”

 

 

 アベルとシドーが硬い甲羅を纏った亀のようなドラゴンの【ガメゴン】や【いっかくうさぎ】の上位種【アルミラージ】と戦っている間に、【ブラウニー】の群れがアリア目掛けて大木槌を振り上げて走って来ると、クリエは落ち着き払って自らの【ふくろ】の中から【メルキドの守りカベ】なる大きな壁を取り出しアリアの手前に置いた。

 

 やってきた【ブラウニー】が【メルキドの守りカベ】に何度も攻撃を試みるが、「ぐぐぐ……こわせない!」と嘆いては単純なのか猪突猛進を繰り返す。

 その隙にクリエが【ブラウニー】の背後に回り込み、素早い攻撃で群れを一掃した。

 

 

「すごいなクリエちゃん……!」

 

 

 離れた場所でシドーとともに【ガメゴン】と【アルミラージ】を倒し終えたアベルが絶賛すると、それに気が付いたクリエがサムズアップしてはにかむ。

 

 ここには以前にも来ているが、レベルの差はあるにしてもクリエの動きが素晴らしいではないか。

 風を切るように素早い動きと手捌き……、【はやぶさのけん】を見事に使いこなしている。

 素早さだけで言えばアリアも相当なものだが、クリエの装備する【はやぶさのけん】は一振りで二度斬り込み、確実に仕留めるから頼もしい。

 

 アリアの呪文で倒すことも容易であるが、欲しいのは【毛皮】のため【ブラウニー】に傷を付け過ぎたり身体を燃やすわけにもいかず、クリエに狩ってもらうのが一番だろう。

 

 ……それにやはりアリアは魔物に狙われやすい気がする。

 

 すべての魔物がアリアを狙うわけではないが、一部の魔物がアリアを狙って突進して来ることが多いような……?

 この洞窟内ならアリアが狙われてもピエールやプックル、アリア本人が対処できるから問題ないが、これから行く先はそうはいかない。

 

 アベルは戦いながらアリアの様子を時々見ていたが、ここを出たらやっぱり彼女を馬車に乗せておこうと改めて思った。

 

 

 ……【毛皮】を集める今回のミッション。

 実は洞窟に入る直前、アベルたちは作戦を立てた。

 

 【ブラウニー】以外の魔物はアベルとシドーが受け持ち、ピエールとプックルとアリアにはクリエの補佐に回ってもらう……ということにしていたのだが、クリエが攻守ともに優れているため三人も補佐は要らなかったかもしれない。

 ピエールとプックルにはアリアの守りに回ってもらい、クリエの邪魔にならないよう動いてもらうのがよさそうだ。

 

 

 ……アベルがアリアを心配する中、当の本人は目の前に置かれた大きな壁を見上げて目を丸くしていた。

 

 

「メ、メルキドって……」

 

 

 ――あの【メルキド】……!?

 

 

 “メルキドは町の名前だ――ⅠとⅢに出て来た町の……”と、そこまで考えたアリアは頭を抱える。

 クリエの口から出たアイテム名は知らないが、“メルキド”の単語の意味はわかるのだ。

 

 

「っ……?(メルキド? いったいどういうことなの……!?)」

 

 

 ――やっぱり、クリエちゃんとシドー君、ロト三部作に関係してるよね……!?

 

 

 クリエとシドーの正体が益々わからなくなりアリアの頭は混乱するが、前方の曲がり角から魔物の気配を感じ、一旦その思考を頭の端に追いやる。

 

 

「――アベルっ! 前方の角を曲がったところに魔物の群れがいるよ!! ブラウニー二匹とがいこつへい四匹。その後ろから別グループも来てる! そっちはガメゴンが四匹! ゆっくり近づいてるから先に手前の群れから倒しちゃお!」

 

 

 アリアはこれから遭遇する魔物の気配を正確に捉え、アベルに予告した。

 以前よりもはっきりと魔物の気配がわかるらしく、一度でも戦った魔物は種類まで判別できるようだ。

 

 

「っ!? わかった!!(アリア、魔物探知能力が上がってる……!?)」

 

 

 倒れた【ブラウニー】の皮を剥ぐクリエを手伝っていたアベルはその場を離れアリアの告げた場所へと走り出す。

 シドーはアリアの一声を聞くや否や先に駆けて行き、すでに戦闘を始めていた。

 アベルも魔物の群れと遭遇すると、シドーの素早さに負けないよう戦いを始める。

 

 

「うんうん。一枚ゲット~! この調子で狩っていこ~!」

 

「……クリエちゃんて皮を剥ぐのも上手なのね……(たぶん上手なんだろうなーとは思っていたけども……)」

 

 

 クリエが【ブラウニー】の着ぐるみのような【毛皮】を手に掲げにっこり満足そうに微笑むと、アリアは残された【ブラウニー】だったものを見下ろす。

 

 少々可哀想だが、クリエに【毛皮】を剥がれた【ブラウニー】は無残な姿を晒していた。

 アリアは作業するクリエの手元をずっと見ていたが、脳が自動的にモザイクを掛けてくるので、何をしているのかはわからずじまいである。

 

 ただ、皮を剥ぐ音だけリアルに聞こえるのはどうしようもない。

 その内【毛皮】のない【ブラウニー】の姿も一瞬しか見えないままに身体が跡形もなく消えていく。

 

 ……泥臭い作業だということだけはわかった。

 

 ゲームの中ではあるが、リアルなこの世界ではすべてのアイテムがすべて都合よく簡単に手に入ったりはしないらしい。

 アリアも記憶喪失中に屠殺されたニワトリやウサギを捌いたことがあるから多少の心得はある。

 

 伊達に十年以上異世界で暮らしてはいないのだからと、手伝おうとしたのだが……。

 

 

「アリアお姉さん大丈夫?」

 

「え……?」

 

「顔が真っ青だよ? こういう作業はボクに任せていいからアリアお姉さんはボクの後ろにいてね~。すぐもう一匹剥いじゃうからっ♪」

 

 

 ……アリアの顔色が悪かったのだろう、クリエは血の付いたナイフを片手に満面の笑みを見せた。

 いつもならクリエのその笑顔が可愛く思えるのだが、今はちょっと……。

 

 

「ウプ……」

 

 

 アリアは見るも無残な【ブラウニー】の姿とクリエの笑顔にこみ上げるものがあり、思わず口元を覆う。

 笑みを浮かべるクリエの顔や身体には【ブラウニー】の血が付着し、その姿が狂気に満ちているように見えたのだ。

 

 

「アリア嬢、私が傍で守ります故、少し休憩されては……?」

 

「っ、へ、平気……ウッ……(逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ……!)」

 

 

 ……ピエールがやって来て背を擦ってくれる。

 可愛い【ブラウニー】が倒され皮を剥がれる――その事実にアリアの額からは嫌な汗が大量に流れ落ちていった。

 




ブラウニーの皮を剥ぐクリエがそれはもう楽しそうに見えてですね……。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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