ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

前回のプチあらすじ>ブラウニーの毛皮を剥く様子にアリアは……。

皮を剥ぐのです!

では、本編どぞー!



第七百三十五話 皮を剥ぐということ

 

 ……昔、幼いアベルとパパスの旅に同行していた時のことだ。

 【いっかくうさぎ】の皮をパパスが剥いで捌き、袋に入れていたっけな――、アリアはあの時も自動的にモザイクが掛かったことを思い出した。

 

 その直後は一時的に食欲が減退したが、あれがこの世界の普通である。

 

 アリアは前世でそんな光景を見たことが無かった。

 生きるために命を頂くということは残酷なれど、避けられない必要なもの。

 この世界の人々は逞しく、魔物の皮を剥ぐなど子どもでも当たり前に行える。

 幼いアベルとビアンカも確かそんな話をしていたことがある。

 

 転生者であるアリアはそれが苦手だが、前世でも直接見てはいないが動物たちの皮を剥ぎ、肉を食らうことは知っていた。

 アリアももちろん肉を食べたことなど何度もある。

 

 前世、現実世界でなにも知らず当たり前のように享受してきたものは当たり前などではなく、パパスやクリエのように働く誰かが与えてくれたもの。そして尊い命の犠牲の上にあったものなのだ。

 

 この世界に来て、残酷でもありのままを見ることができたアリアはしゃがみ込んでしまったが、こみ上げる吐き気を我慢しながら【ブラウニー】とクリエに感謝を込めて手を合わせた。

 

 

「アリア嬢……」

 

「アリア、この先に魔物がいるかどうか教えてほし……っ!? どうしたんだい!?」

 

 

 ウッ、ウッとえずくアリアの背を擦るピエールの後ろから、さっきまで少し離れた場所で戦っていたアベルが戦闘を終えてやって来る。

 アベルはアリアの蹲る姿に慌てて駆け寄った。

 

 

「ぁ……ううん、なんでもないの……。ちょっとしっかり見ておこうと思って……ウプ」

 

「大丈夫かい? アリア苦手だったもんね……」

 

 

 ――苦手なんだから見なきゃいいのに……。

 

 

 クリエの作業が目に入ったアベルはピエールと交代し、吐き気を押さえるアリアの背を撫でてやった。

 鶏の羽を毟ることには慣れたアリアだが、皮を剥ぐのはまだ慣れていない。

 作業工程をこんなにじっと見ているのは初めてで、今日の昼は何も食べられないのではないかと心配になる。

 

 

「うん……でも、慣れようと思って……ぅぅ」

 

 

 【ブラウニー】を捌くクリエの足元には多量の鮮血がどんどん広がっていく。生臭い血の臭いが辺りに漂っていた。

 しばらくすれば【ブラウニー】の亡骸とともに消えてしまうが、それより前に血の臭いに誘われ魔物たちが集まってくるだろう。

 早くこの場を離れた方がいい。

 

 ……アベルは一刻も早くアリアを安全な場所へと移動させたかった。

 

 

「アリア、苦手なものは苦手でいいんだ。無理しちゃダメだよ……? クリエちゃん、終わったら向こうもお願い! まだ間に合うはず」

 

「はーい! すぐ行くね~! んしょっ、と!」

 

 

 “ベリベリベリッ!!”

 

 

 アベルが先ほど倒した【ブラウニー】の皮剥ぎをクリエに頼むと、現在作業中のクリエは剥ぎ途中の皮をがっちり掴んで最後は力任せに肉体と皮を引き剥がした。

 その拍子に血が辺りに飛び散る。

 

 ピピッと跳ねた血はアリアの身体と顔を汚した。

 

 

「……ぁぁ~……(ムリッ!)」

 

 

 ……【ブラウニー】の鮮血を受けたアリアは目を白黒させたかと思うとその場に倒れてしまう。

 

 

「ちょ、アリアッ!? 大丈夫かい!?」

 

 

 すぐ傍にいたアベルがアリアを支えたが、彼女の意識はすでになかった。

 

 

「……(可愛いブラウニーの皮を剥ぐなんて、なんたる所業……!!)」

 

 

 そこはゲームに忠実でぱっとアイテム化してくれていいのに……などと思う意識を失ったアリアの瞳からは涙が零れている。

 すでに天に召されている【ブラウニー】とはいえ、皮を剥がれる姿を目の当たりにしたのはかなりショックだったようだ。

 

 

「……アリアってこういうところが可愛いんだよね……(トラウマにならなければいいけど……)」

 

 

 ……アベルは気を失ったアリアの額に思わず唇を落とす。

 いつまでも世慣れないアリアに微苦笑し、そっと涙を拭ってやった。

 

 そうこうしている内にアリアの顔や身体に飛んだ【ブラウニー】の血が消え、肉体も消えていく。

 一定時間が経つと倒れた魔物の身体が消えるのは、魔物が魔力で形成されており、倒されると肉体から魔力が出ていってしまうからという説があるが、どういう理論なのかは実ははっきりしていない。

 

 ただ、遺体の処理をしなくていいのは助かる。

 倒れた魔物の身体が残ったままであれば、アベルのような旅人の後ろには魔物の死骸が道を作ってしまうであろうから。

 

 

「あ、らぶらぶ~。ボクあっちに行ってくるね~!」

 

「っ! あっ、うん! お願い!」

 

 

 ――しまった、クリエちゃんの前だった……!

 

 

 クリエに指摘されたアベルはぼっと頬を真っ赤に染め、先ほど倒した【ブラウニー】のいる場所――シドーがいる方へと走って行く彼女を見送った。

 

 ……しばらくしてアリアが目覚めると、アベルはピエールとプックルに彼女を任せ再び戦いに参加する。

 何度か戦って気付いたことだが、【ブラウニー】に止めを刺すのはクリエかシドーでないと【ブラウニー】の死骸は直ぐに消えてしまうのだ。

 

 いつもの戦闘ならアベルが皆に指示を出し戦うのが常――なれど今回は勝手が違う。

 アベルは特に指示出しなどは行わず、クリエとシドーには自由に戦ってもらい、二人のどちらかに【ブラウニー】へ止めを刺してもらう。アベル自身は二人のサポートに徹することにして補助呪文や回復呪文を中心に使用し、普段と違う戦いを続けた。

 

 

 ……そうして洞窟に入ること、数時間――。

 

 

 幾度とない戦いを終え、クリエが自らの【ふくろ】に仕舞った【毛皮】の数を数える。

 ひぃ、ふぅ、みぃ……と、必要な枚数の【毛皮】が揃ったのか満足そうな顔のクリエは深く頷いてからすぅっと息を吸い込んだ。

 

 

「みんな、おつかれさまでした~! 足りない毛皮、全部で19枚! 揃ったよ!」

 

「わぁ! おつかれさま~!」

 

 

 愛らしいクリエの笑みにアリアが即座に反応を見せる。笑顔でパチパチと拍手を贈った。

 笑顔で皮を剥ぐクリエが不気味で、アリアは始め怖くてちょっと吐いてしまったこともあったが、十五枚目頃から無念無想の境地に至る。

 目の前の出来事をありのままに受け入れ、耐性を付けた。

 

 見た目が可愛い魔物に対する非道な行いは中々に心苦しいが、必要ならば致し方ない。

 ただただ犠牲に感謝し冥福を祈るだけである。

 

 

 ……アリアはクリエの持つ【毛皮】の入った【ふくろ】に向かって「ありがとう命」と拝んだ。

 

 

「アリア大丈夫かい? 顔色があんまり良くないけど……。ずっと見てて気分が悪くなったんじゃ……?」

 

「ううん。途中からモザイクが消えてびっくりしたけど、もう平気。今度からお肉の解体もできそう。でも、次にブラウンに会ったら謝っておかなきゃ……」

 

「ブラウンには黙っておこうね。怯えて病んでしまうかもしれないから」

 

「え……あ、うん。それもそうだね」

 

 

 【ブラウニー】大量虐殺の件、既に仲魔となっているが同族のブラウンには話せない。恐らくショックを受けることであろう。

 誤ってアベルが【ブラウニー】に止めを刺したことも何度かあった。【ブラウニー】の犠牲は集まった【毛皮】の枚数イコールではないのだ。

 




べりべり。
命に感謝。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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