ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

突然に出てきた、モモガキ。

では、本編どうぞっ。



第七十三話 モモガキ

 

 待機所を後にし、アベルとアリアは一階台所へとやって来ていた。

 

 

「あら、あなたヘンリー様の遊び相手として呼ばれた子? 大変ねえ……。同情するわ」

 

 

 女中の娘なのか、小さな女の子がアベルを憐れむ目で見て来る。

 

 

「え? 僕は別に……」

 

「ごめんなさい、私用事があるの。失礼するわね」

 

 

 女の子はアベルの話を聞くことなく、去って行ってしまった。

 

 

『アベルって……あんまり話聞いてもらえないのね……』

 

「……なんでだろ……」

 

 

 アリアの呟きにアベルも同調する。

 

 

『……ははは……』

 

 

 何かわかる気がする。

 ゲーム中、主人公って基本無言だからね……。

 

 その所為……かな?

 

 

 この世界じゃアベルめちゃくちゃ喋ってるのにね、とアリアは空笑いを浮かべた。

 

 

『アベル、ヘンリー王子の遊び相手なの?』

 

「……何かそういう流れになってるみたいだね」

 

 

 アベルはつまらなそうに頬を膨らます。

 

 

『あれ……? 何だか嫌そう……?』

 

「……僕、ヘンリー王子苦手なんだ」

 

『あ、へぇ……わかってる(・・・・・)んだ』

 

「そういうこと! ……こんにちは!」

 

 

 アリアに応え、アベルは傍のテーブルで食事中の青年に背後から声を掛ける。

 

 

「わっ!」

 

 

 声を掛けられた青年が大きな声を出して椅子から飛び上がった。

 

 

「っ!?」

 

 

 アベルも青年の声に驚き目を見開いて、アリアも同様に何事かと驚いてしまう。

 

 

「ああ、びっくりした。てっきりヘンリー王子かと……。人がカエルを嫌いなのを知ってて背中にカエルを入れるんだよ。ひどいよなあ」

 

「ヘンリー王子はいたずら好きなんだね」

 

「そうさ、人が驚くのを楽しんでるんだ。困ったものだよ。仕事中にやられるとホント困るんだよなあ」

 

「お兄さん、驚かせちゃってごめんね」

 

「坊やはいい子だなあ……」

 

 

 アベルが青年に謝ると、青年はこちらこそ驚かせてごめんよとアベルの頭を撫でたのだった。

 

 

『なるほど、ヘンリー王子はいたずらっ子なのね』

 

 

 アリアは再びヘンリーについて考えてみる。

 

 

 ヘンリーの名前どこかで聞いたことがあるんだよね……。

 どこだったかな……?

 

 

 

 

 

「あら、坊や。何か食べるかい? モモガキがあるから剥いてあげようね」

 

「わぁ、ありがとう!」

 

 

 アリアが考え込んでいる内にアベルが女中のおばさんに話し掛けられていた。

 おばさんは【モモガキ】なる果物を剥いて小皿にのせると、傍の空いているテーブルに置いてくれる。

 

 

「さあ、お食べ」

 

「いただきまぁす!」

 

 

 アベルはフォークを手に取り、剥かれた果実に差し込んだ。

 フォークを刺すと、瑞々しい果汁がじゅわっと滴る。

 

 

『モモガキ……?』

 

 

 アベルがおばさんの剥いたモモガキを食べると「コレ、甘くて美味しいね!」と嬉しそうに食べる。

 

 

 桃なの……?

 柿なの……?

 

 

 でも、美味しそうね、とアリアはアベルの幸せそうな顔にほっこりした。

 

 

「はい、アリアも一口」

 

 

 アベルは一切れ食べ終えると、もう一つフォークに刺してアリアの口に放り込む。

 

 

『んむっ……!』

 

 

 もぐもぐもぐ……。

 

 

 アリアは初めて食べる異世界の果実を咀嚼した。

 

 

 うん、甘い。

 桃のような気も、柿のような気もする不思議な食感ね。もっと熟しても美味しく食べられそう……。

 

 

「おいしい?」

 

『ん? ぅん……。こんなの初めて食べたよ、美味しいね。ありがと♪』

 

 

 アリアはアベルの優しさに目を細めた。

 口の中に甘みが広がり、幸せな気分で満たされる。

 

 

「へへ……どういたしまして。もっと食べる?」

 

 

 はいどーぞ、とアベルはもう一切れ刺してアリアに差し出す。

 

 

『あ、ありがとう……、でもいいの? アベルの分なのに』

 

「うん、いいよ。僕の分もあげる」

 

 

 美味しいものを食べてる時のアリアの顔、幸せそうで見ているこっちも幸せな気分になるんだよ。とアベルは嬉しそうに破顔した。

 

 

『……アベル、あなたって本当、優しい子ね……』

 

 

 アリアは二切れ目を貰い、感動してしまう。

 

 そういえば、私にいつも食事を持って来てくれてたな……、と思い出し“自活しないと!!”と誓うアリアだった。

 

 

「え? そうかな……? えへへ……」

 

『ごめんねぇっ……! その内ちゃんと自活出来る様にするからねっ!』

 

 

 照れ臭そうに後ろ頭を掻くアベルを余所に、アリアは目蓋を拭い【モモガキ】の美味さを噛み締めた。

 そして、アベルの分までウマウマとしっかり平らげる。

 

 

「ははっ、気に入ったみたいで良かった。おばさん、ごちそうさま!」

 

 

 アベルはアリアが美味しそうに食べる様子を眺めてから、おばさんに小皿を返した。

 

 

「あらあら、もう食べちゃったのかい? 食べるのが早いんだねえ。」

 

「えへへ……」

 

 

 アベルは鼻の下を指で擦る。

 

 

『た、食べたのは殆ど私なんです……。早食いでごめんなさい……!』

 

 

 社畜時代の癖で食べるのが早いのです……!!

 

 

 見えないとは思うが、アリアはおばさんに頭を下げた。

 

 

「みんなヘンリー王子様を悪く言うけど、私はそうは思わないね。小さい時、お母上を亡くして王様は新しい王妃様をもらったけど……。やっぱりヘンリー王子にとっては本当の母親じゃないし。それに新しい王妃様が可愛がるのはデール王子だけときちゃ、ひねくれるのも当然だよ」

 

「そうなんだ……」

 

 

 僕も母さん居ないけど……。

 父さんとサンチョが可愛がってくれてるもんなぁ……。

 

 新しい母さんが居たら、違ったのかな……?

 

 

 アベルはパパスが新しい女性を迎えなくて良かったと思った。

 

 

『……ヘンリー王子は、淋しい想いをしてるのね……(可哀想……)』

 

 

 アベルは苦手だって言ってたけど、こんな話聞いたら同情しちゃうな。

 

 

 アリアはヘンリー王子に会ったら優しくしてやろうと決めたのだった。

 

 

 

 

 

 

「……はぁ~……。大体話聞いたし……じゃあ、そろそろ行く?」

 

 

 台所を出て、アベルが深いため息を吐く。

 

 

「え? あ、うん。最後は二階の東側ね?(何で嫌そうなの……)」

 

「うん。ヘンリー王子の所」

 

「ヘンリー王子かぁ……やんちゃだって言ってたけど、どんな子なんだろ……?」

 

「…………、……ん~……、僕とは違うタイプかな?」

 

 

 こっちね、とアリアを案内しながら階段を上り、二階の東側へと向かった。

 




モモガキはDQBに出て来るアイテムです!
DQB大好きなので出してみました。

モモガキ……。
桃はバラ科モモ属。柿はカキノキ科カキノキ属。
接ぎ木したら出来たりするのでしょうか……。

桃は柔らかいのがいいし、柿は硬いのが好きな私はモモガキなる実が出来たらどうしたらいいのでしょう。

と、どうでもいいことを書いてしまった……。

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感想など頂けたらめっちゃ嬉しいです。

読んでいただきありがとうございましたっ!

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