前回のプチあらすじ>“えっち”に食いついたシドー君にアリアは……。
シドーくんはピュアッピュア。
では、本編どぞ。
……少年シドー――身体は第二次性徴が丁度始まる頃だろうか。
だが心は純真無垢――。
勝手でおかしな想像だが、元々神であったために人としてはまだ未熟なのかもしれない。
特に精神はまだお子様……、修道院では無邪気にクリエの傍を常にウロウロし、食堂に連れて行った時もおいしそうにおやつを食べていたし、パン作りも楽しそうにしていた。
全くすれてない素直な子――というのがアリアから見た少年シドーの印象である。
そんな少年に“えっち”とは何かをどう説明すればいいというのか……。
アリアは学校の教師でもないし、彼の親でもない。
クリエがわかっているようだから、ここは二人で成長していって欲しいところだ。
……まだ性に目覚めていない少年に余計なことを吹き込んではよろしくないという大人の配慮などシドーには解らなかった。
「ハーゴンに、ロンダルキアって……アリアオマエ、なんでそんなことまで知ってるんだ……!?」
アリアの配慮にまんまと誘導され、シドーの瞳が揺れる。
狼狽える様子にアリアの目は細くなった。
「あ、えへへ☆(言いたくないわけじゃないんだけど~、シドー君動揺してるから黙っとこ)」
「……オマエもクリエみたいに笑って誤魔化すんだな。ハッ、言いたくないならまあいいけど」
明らかな誤魔化しの笑顔にシドーが頬を膨らませるも、最後には破顔する。
……アベルもそうなのだがシドーも女の子の笑顔に弱いらしい。それ以上訊いて来る様子はない。
「ねね、シドー君」
「ん?」
「君たちはどこから来たの? どうして君が破壊神シドーなのかな? ローレシアの王子たちはどうなったの?」
シドーの質問には答えないくせに、今度はアリアから質問していく。
ゲームのシリーズ的にⅤの世界とⅡの世界は繋がりがないはずなのだ。
なのにシドーがこの世界に来たのはなぜなのか……、純粋に興味がある――ただそれだけの理由であった。
「……どこって……なんでっ、はあ……――つまり、アリアはオレとクリエがどんな世界から来たのか知りたいってことか?」
シドーは額を抱え、大きなため息を一つ吐いてから顔を上げる。
察しよく確認を取るのは神である所以か。
神の力あるあるで破壊神シドーも万物を知る――というわけではなさそうだが、あまり動じていないところを見るとなるほど、神であると納得ができそうだ。
「……うん。私が知っている破壊神シドーはキミみたいな可愛い男の子の姿じゃなかったもの。たぶんだけど、翼が生えてて腕が四本。尻尾がヘビみたいで、ドクロの首飾りしてて、こーんなに大きな身体をした魔物っぽい姿をしてたんじゃないかな?」
「……アリアがなぜオレたちの世界のことを知っているのかは謎だが――、まあ話してやってもいい」
アリアが身振り手振りで破壊神シドーの大きさを表現する。
ちょっと小振りな気がするのは実際に見たことがないからなんだろうとシドーは思うが、大体合っている……というより描写が詳し過ぎな気がするのだが――。
なぜアリアが破壊神シドーを知っているのか。謎は謎だがシドーは先ず質問に答えてやることにした。
「やったー! シドー君って優しいよね!」
「オレは神だからな。懐が深いんだ。ただし、アベルには言うなよ?」
シドーが了承すると、アリアは嬉しそうに破顔する。
クリエの笑顔と同じく、アリアの笑顔もシドーは嫌いじゃない。
……鼻の下を人差し指で擦り擦りアリアの隣に腰掛けた。
「え? なんで? 私たち夫婦だから秘密にするとか嫌なんだけど」
――だからなんでここでアベル?
破壊神といえど、さすがは神。
その慈悲は深いようで、教えてくれるらしい。
破壊の方向に慈悲深いわけじゃなくて良かったとアリアは思った。
だがしかし、アベルには秘密に――とはこれ
……不可解なシドーの物言いにアリアの首が横に倒れる。
「……少なくとも、あいつから妙な気配が去るまでは話すのは止めておいた方がいい。絶対後悔する。これは神としての忠告だ」
突然凄むような視線を間近に向けられ、アリアの喉がこくりと音を立てる。
シドーの赤い瞳に見つめられると、恐怖からなのか何なのかはわからないが頷くしかなく、首を縦に下ろした。
「……わ、わかったよ……(急にそんな怖い顔しなくても……)」
――妙な気配ってなんだろう……?
アベルから妙な気配がする……、それは修道院生活中にはなかったものらしい。
……修道院から出てもうかなりの月日が経っている。
数えきれないほどの戦闘をこなし、レベルも上がった。
以前と違い強くなったというのが変化というならそうなのだろうが、妙な気配――だがそこに触れてはいけないという。
警告された気がしたアリアは、もしかしたらアベルがⅤの主人公だからあまり干渉するのはよくないというゲームの強制力なのかと察し、心苦しいがアベルにはシドーが破壊神であることを黙っておくことにした。
「よし、いい子だ。じゃあオレが知ってる範囲で話してやろう」
「う、うん……!(いい子って、シドー君の方がどう見ても年下なのに……!)」
アリアの返事にシドーは目を細め頭を撫でてくる。
どう見てもシドーの方が年下のように見えるのだが、クリエからもちょいちょい子ども扱いを受けているアリアは渋々頷いた。
……シドーがクリエと共にいた世界を語り出すと、アリアの表情が驚きと喜びと交互に忙しく切り替わっていく。
「……で――。……オレが――、……――というわけだ」
「うわぁ……そうだったんだ……。なるほど……スピンオフ……ビンゴ……」
――なるほど~!
シドーが語り終えるとアリアは口元に手を添え、何度も頷く。
……クリエとシドーがいた世界はどうやらⅡ世界の延長上の世界らしい。
が、アリアの知っているⅡの様相とは少々違っていた。
クリエはローレシアの王子・サマルトリアの王子・ムーンブルクの王女が救った世界のメルキド出身とのこと。
クリエから聞いた話じゃメルキドは昔から栄えている町で、メルキドの守り神である【ゴーレム】はいなくなってしまったが、先祖が残した【メルキドの守りカベ】で町は守られているらしい。
アリアの知っているⅡ世界ではメルキドは滅び、町自体ないのだが……。
そしてシドーは破壊神であるものの、ややあって今の姿になったそうな。
いろいろ聞いたが一度に全部聞いてしまったせいか、アリアの頭の中は咀嚼が追い付かず、整理した結果辿り着いたのは“スピンオフゲームに違いない!!”ということであった。
サービス精神旺盛なシドーはどうやってこの世界に来たのかも教えてくれるも、アリアは驚き過ぎて「ほえぇぇ……」と間抜けな声しか出せなかった。
……兎にも角にも、クリエとシドーは“カケラ”が揃わないことには元の世界にも戻れず、どうにもならないということだけは理解する。
「……アリア、オマエ……驚いてる割に納得するんだな」
「あ、うん……。私の知ってる世界とはちょっと違ったみたいだけど、そういうのもあるんだなって……」
「……オマエ、何者なんだ……」
「あはは……だから異世界から来たんだってば」
「オレたちと異なる異世界……か……」
シドーもアリアが何者かはわからないものの、自ら言ったように“懐が深い”のか、もしくはアリアに然程興味がないのだろう。
微苦笑するアリアを物珍しそうに眺めていた。
シドーとアリア……。
この世界では特に敵対する間柄でもないため、互いに悪感情はない。
そもそもアリアは勇者でもなければ、ビルダーでもないわけで。
……アリア自らも己がわかっていない存在自体が謎の女なのだ。
「はぁ……そっかぁ。なんかすっきりした~。教えてくれてありがとう」
ひょっとしてシドーとクリエのいた世界に“アリア”がいた可能性も……と一瞬過ったが、シドーの話に興味は惹かれたもののⅡの世界には天空人は出てこない。
それに話を聞いてこれといって何もピンとくることがなかった。
だからかその可能性は薄いと感じる。
……自分のことはやっぱりさっぱりわからない。
けれどもアリアの表情は晴れやかだ。
気になる部分はまだ残ってはいたが、ここ数日のもやもやが晴れ清々しい気持ちで腰掛けていた木の根から立ち上がる。
「スッキリか……アリア、それはアレをビルドした感じか?」
「アレってなに?(ビルド……?)」
突然珍妙な質問をされたアリアは振り返り首を傾げた。
「……オレにはわからんが、人間はトイレから出て来るとスッキリしたと言うだろ? 元の世界にいた人間たちがそうだった。トイレから出てくるとみんな晴れやかな顔をしてるんだ。今のオマエみたいに」
「ここはトイレじゃないんですけど!?」
「……それもそうか。オレはアレをビルドしたことがなくてな……。この世界でならと思ったんだが……いつかしてみたいもんだ」
「はぁ……(アレをビルドって……シドー君は排泄しないのね……)」
シドーも立ち上がり、アリアにアレをしてみたいとカミングアウトしてくる。
……スッキリの意味をはき違えて憶えているようだ。
急にう○こをしてみたいと言われても実演してみるわけにもいかないし、アリアにはどう答えればいいのかわからない。
どうも目の前の少年はまだまだ世間知らずのようである。
シドーは食事を摂ることもあるというのに、食べたものはいったいどこに行くのだろうかとアリアは興味を惹かれたが、ここは深入りはしないでおくことにした。
アレをビルドしないシドー君の謎……。
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!