ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

前回のプチあらすじ>アレをビルドしたいシドー君……。

頭が柔らかいのです。

では、本編どぞ~。



第七百四十話 柔らか頭

 

「さて、と。んじゃ、アリアの疑問も解消できたようだし、そろそろ船に行くか?」

 

「え? あ、うん。シドー君、船ってどこにあるかわかる?」

 

 

 アリアの疑問が解消されて満足らしいシドーが船に行こうと歩き出す。

 

 ……だが待って欲しい。

 船の方向はその先で合っているのだろうか、アリアはシドーの後を追い掛けながら訊ねていた。

 

 

「は? アリアがわかるだろ? 魔物はオレに任せておけば問題ない」

 

 

 当然アリアならわかっているだろうと、眉間に皺を寄せたシドーが振り向く。

 

 

「あ、私方向音痴なんだ~!」

 

 

 ――神さまが付いているなら安心だよね……!

 

 

 シドーの頼もしい一言にアリアは挙手して明るく主張してみた。

 

 鬱蒼とした闇の森の中でも、アベルかシドー、クリエの三人の内一人でもいれば恐怖を感じることはない。

 たとえ幽霊が出たとしてもシドーは神だ、どんな魔物でも何なく倒してしまえるだろう。

 

 なぜ破壊神が味方なのかという問題はともかく、これほど頼もしい味方もなかなかない。

 森の中を少々迷ったところで小さな島である。じきに森を抜け、海沿いを行けばその内船に辿り着く――。

 

 

 ……アリアはサンタローズの洞窟に引き続き、徒歩移動が楽しくて仕方なかった。

 

 

「方向音痴? 自慢げに言うなよ……はぁ、しょうがないな……――」

 

「あははは……(ひょっとしてシドー君もナカーマですか……?)」

 

 

 シドーが方向音痴であるかは定かではないが、船が停泊している場所は知らない様子。

 それはそうだ、【ルーラ】を使った場合のアベルたちの着地点と、船の着水点は異なるのだから。

 その内着くさと楽観視するアリアとは対照的に、シドーの口からは小さくため息が漏れ、歩みを止めた。

 

 そんなシドーはアリアに苦々しい視線を送ってから、目を閉じ何かを探るように黙り込む。

 

 

「…………あっちかな」

 

 

 少ししてシドーは目蓋を開き、ある方向を指差した。

 

 

「わかるの!? すごい!」

 

「……いや、船の場所はわからん。だがクリエの居場所なら離れててもわかるんだ。一旦博物館に戻るか」

 

「なんと……!」

 

 

 どういう原理が働くのか不思議だが、シドーはクリエの居場所なら離れていてもわかるらしい。

 

 

 ――神の力……いや、これもう愛の力なのでは?

 

 

 アリアはシドーとクリエはやはり強い絆で結ばれている二人なのだと確信する。

 地図を持っているのはアベル、そしてクリエも持っているらしい。

 クリエが船にいれば船に着くし、まだ名産博物館にいるのなら博物館に戻るまで。森を歩いているなら合流もできるだろう。

 

 

 ……二人は森の中を進んだ。

 

 

 森の中を歩いている間、アリアがシドーにどうして自分(アリア)の疑問に答えてくれたのかを訊ねたら、

 

 

『以前パンをビルドさせてくれたお返しだ』

 

 

 ……とのこと。

 

 なぜそんなことで秘密を教えてくれたのかは不明だったが、訊かれなかったから答えなかっただけで、特に秘密にしていたわけでもないそうだ(但しアベルにはやっぱり秘密)。

 “あなたは破壊神ですか?”なんて、そんなことを質問する人間がいなかっただけということらしい。

 クリエももちろんシドーのことはわかっているし、その上で親友同士ずっと一緒に旅を続けている。

 

 元々シドーは怪力で口はぶっきらぼうなところもあるが、良い子だということはわかっていた。

 素直でよく笑うし整った顔立ち、修道院ではシスターたちからも可愛がられており人気者であった。

 アリアもシドーを好意的に見ており、弟のように思っていたほどだ。

 

 そのシドーが良い子過ぎて、アリアはシドーが破壊神だとわかったものの恐怖を感じることはなく、ますます好感が持てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……しばらくシドーと共に森を歩いていると、前方にぼんやりと【たいまつ】の明かりが見えてくる。

 金の髪のツインテールに大きなカバン、あの見覚えのある後ろ姿はクリエだった。

 

 

「クリエちゃーん! おーい!」

 

 

 アリアは両手を口元に沿えてクリエを呼ぶ。

 

 

「……ん? あれ~? シドーくんとアリアお姉さん、なんでこんなとこにいるの? 先に出たんじゃなかったの~?」

 

「うん、そうなんだけどね。って、あれ? アベルは先に行っちゃった?」

 

 

 駆け寄るとクリエが不思議顔で首を傾げた。

 森を彷徨っていました……とは言わずに、アリアは一緒に来ると思っていたアベルについて訊ねる。

 

 

「アベルお兄さんなら展示台の修理が終わったから、ゆうじいさんに捉まって名産品の展示をしてるよ。終わったら来るって」

 

 

 ……クリエの話ではアベルはゆうじい捉まっているようだ。

 終われば合流できるだろう。

 

 

「そうなんだ? クリエちゃんは一人で来たの?」

 

「うん。この辺りの魔物って大したことないからね」

 

「頼もしい~♪」

 

「地図見たらこっちの方角に船があるみたいだからさ」

 

「頼もしい~♪」

 

 

 ――クリエちゃん無傷だし……どれだけ強いのかな?

 

 

 ドヤァと腕組みし胸を張るクリエにアリアが拍手し褒め称える。

 クリエは鼻高々で踏ん反り返った。

 

 ……やはりクリエは単独でも強い。

 アベルがこの場にいれば【ステータスウィンドウ】で能力値が確認できるのだが、アリアでは表示させることができないため今は諦める。

 

 

「なあクリエ、アリアはオレが破壊神だってこと知ってたぞ」

 

「ええっ!? なになに、どうして~? アリアお姉さんてなにもの~?」

 

 

 クリエとアリアの会話が終わるのを待って、シドーは自分の正体をアリアが知っていたことをクリエに伝えた。

 すぐさまクリエは反っていた身体をガクッと崩し、目を見開いてアリアを見つめる。

 

 

「あっ、ウフフッ♡」

 

 

 驚きの顔を向けるクリエにアリアは、口元にそっと手を添え上品に笑ってみせ首を傾げた。

 

 そうして船までの道中、アリアは自分も異世界から来たことをクリエに話す。

 アベルの時のように混乱させては悪いので、ここがゲームの世界だということまでは言わずに、クリエたちの世界にも干渉できる世界だったということだけは伝えておいた。

 

 

「へぇ~、アリアお姉さんが前世にいた世界は、世界をビルドできるほど上位の次元に存在していたんだね。楽しそうだなあ」

 

「ぅ……クリエちゃんてばスルドイなぁ」

 

 

 ――そうなの、ずばりあなたたちが存在する世界を作る世界にいたのよ……!

 

 

 上位の次元……、クリエの表現にアリアは胸元を押さえる。

 言い得て妙だなと苦笑した。

 

 

「ボクたちも次元を超えてやって来てるからね。理解はできてるつもりだけど~。ね、シドー君?」

 

「……あ? ああ……まあな……。……――」

 

 

 お喋りしながら先頭を行くクリエが最後尾のシドーに振り返り訊ねるが、シドーは何か思案するように深く頷く。

 “上位の次元か……”と小さく聞こえ、その後にはふっと息を吐き出すように笑った。

 

 ……驚いてはいないようである。

 

 

「いやぁ~……なんというか……理解が早過ぎてこっちが驚きだよ」

 

 

 アリアは愛想笑いで頬を掻いた。

 

 

 アベルもそうだったが、クリエもシドーも素直に受け入れ過ぎやしないだろうか――。

 ……と、ここまで考えアリアは、そういえばドラクエの主人公はどのシリーズも素直な性格が多かったなと何となく思い出す。

 

 嘘は言っていないが、突拍子もない話をすんなり信じてくれるクリエとシドーに、二人のどちらかがもしかしたらスピンオフゲームの主人公なのだろうと見当だけ付けておく。

 本当ははっきりさせたいところだが、アリアにはスピンオフゲームのタイトルがさっぱりわからないから今はこれでいい。

 

 それに、二人に深入りするのは少々不安が募る。

 

 全くの別世界――異世界からこの世界に干渉できるクリエとシドーの力はこの世界のバランスを崩しかねない気がするからだ。

 深入りすればもしクリエとシドーが元の世界へ戻る時、自分も巻き込まれる可能性がなきにしもあらず。

 ようやく結ばれたアベルと離れ離れになりたくはない。

 

 

「ふふっ☆ ボクたち頭が柔軟なんだ~」

 

 

 クリエが不敵に笑みを浮かべながら地図を取り出し船の位置を確認する。

 ……一行は船へと向かった。

 

 




アリアはビルダーズ2を知らないためタイトルは当てられません。
そしてクリエとシドーも。
きっと最後までわからないでしょう。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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