前回のプチあらすじ>クリエと合流したアリアとシドーは船に向かいます。
妻の許可要ります?
では、本編どぞ~。
船へと向かう道中、魔物の群れと何度か遭遇、クリエとシドーの二人が難なく倒していく。
二人の戦う姿にアリアは「ほえぇ……つよっ」と見惚れてぼぅっとしてしまう。
戦闘中に呆けるなんてとんでもないことではある。
だがアリアが呪文を放つ前に倒してしまうのでやっぱり「ほえぇ……」という間の抜けた声しか口から出ない。
規格外の強さだな~、なんて二人に楽をさせてもらって申し訳ないと思いながらアリアは夜の散歩を楽しんだ。
「いや~、アリアお姉さんがいてよかったよ~」
「ん?」
まさか先に船に向かったアリアとシドーが後ろから来るとは思っていなかったクリエが“次は右ね”と進む方向を指差し告げる。
彼女の片手には見慣れない形の手の平サイズ、小さな地図。アベルが持っている【ふしぎなちず】とはかなり形状が異なる。
世界儀に似ている気もするが、水晶玉のようにも見えた。
その丸い球体に表示される地図は常にクリエの位置を中心とし、一定の距離間を縮尺拡大、詳細に現わしている。
クリエが手首を動かす度、方位を表すN・S・E・Wの小さな文字が動く。
丸い球体の左上部には時間帯を表すのだろう、月のマークが記された地図よりもかなり小振りな球体が浮かんでいた。
……まるで惑星の周りにいる衛星のようだ。
お喋りをしていようとも、時々地図を取り出し確認することを怠らないのはさすがと言わざるを得ない。
「ほら、船にボクだけ行っても船長さんたちびっくりするでしょ?」
……クリエは船のメンバーとは初対面のため、単独で行けば警戒されるだろう。アリアかアベルがいれば話が通しやすい。
「あ、そっか。それもそうだね、面識がないものね」
クリエの話に始めは何のことかと思っていたアリアだったが、合点がいって首を縦に下ろす。
停泊中の船には保護呪文が適用されるとはいえ、夜は魔物たちの活動も活発化している。
……その夜がずっと続いているのだ。
今頃オコーゼが寝ずの番をしているはず。
占いババと同じくわけも解らないまま疲労している可能性もある。
そんな時に見知らぬ少女が闇夜から一人で現れたら……魔物と勘違いしてもおかしくはない。
余計な問題が増えずに済み、互いに丁度いいタイミングで合流できてよかったと思いながらアリアたちは歩みを進めた。
◇
一方でゆうじいに引き留められ、名産博物館に置いて行かれたアベルはといえば――。
「う~ん。……いや、それはあっちがいい気がするのう」
「えぇー……どこでもいいじゃないですか。今急いでるんですけど……」
名産博物館の展示室でゆうじいが名産品をのせた【展示台】を前に首を捻ると、アベルは次の名産品を手に不詳顔。
クリエのおかげですっかり直ったピッカピカの各【展示台】にはアベルが旅先で手に入れた各地の名産品が数点展示されていた。
……シドーに云われた通りクリエに伝言をしに来たアベルだったが、ゆうじいに捉まってしまい、名産品の展示を頼まれる。
まだまだ空いている【展示台】は多いが、その内すべての【展示台】が埋まることだろう。
ゆうじい曰く「夜が明け次第客がきっと来る……!」とのことで一刻も早く展示をしないと死んでしまうとかなんとか。
“いや、あなたもうすでに死んでますよね。”
アベルは一応ツッコんだが「名産品が死ぬんじゃぁああああ!!」とよくわからない理由で怒られた。
現在所持している名産品を展示して行かないと部屋から出してくれない勢いのため、アリアの元にすぐにでも駆け付けたかったアベルだが、展示さえしておけば夜が明けて戻って来なくともいいだろうと諭され置いて行くことにした。
「ほう……次は安眠枕じゃな!」
腰にぶら下がった【ふくろ】に顔を埋めるゆうじいが、次に取り出す名産品はこれだと見当をつける。
……無作法に顔を突っ込むのはやめて欲しい、アリアがこの場にいてまた勘違いでもしたらどうするつもりなのか。
先ほどやんわり注意しておいたが、ゆうじいにはまったく効果がない。
「あ、それは駄目です。アリアの必需品なので……」
「むぅ……。新婚なんじゃから毎晩おぬしの腕の中で眠っておるのだろう? 必要ないではないか……!」
アベルの制止を振り切り、【ふくろ】から顔を出したゆうじいは今度は物理的に【ふくろ】に手を突っ込み【あんみんまくら】を取り出す。
それはあっという間に引き出され、ゆうじいの両腕に包まれた。
……幽霊のくせに【あんみんまくら】に触れることができるらしい。
しかも【あんみんまくら】の効果は幽霊ゆえに効かない様子。
「あ、そっか。そういえば最近使ってないような……?」
――アリアは僕と一緒に眠る時は【あんみんまくら】を使ってなかったっけ……?
ゆうじいが【あんみんまくら】を掴み放そうとしない中、アベルは最近のアリアを思い出す。
結婚してからは共寝が多いため【あんみんまくら】を必要とする機会が少ない。
なら置いて行ってもいいかなー……と思いつつ。
「そうじゃろそうじゃろ!」
「……いや、やっぱり駄目です。奥さんのお気に入りを勝手に展示するわけには……」
――ここは愛する妻を優先で……!
明るく相槌を打つゆうじいを前に、アリアが残念がる姿が目に浮かんだアベルは思い留まった。
ゆうじいが集客し喜ぶ姿よりも、アリアが健やかな日常を送る方がアベルには利が大きい。
「むぅ……イケズじゃのぅ」
「ははは……すみません。妻の許可が出たら展示しに来ますよ」
「ふむ……仕方あるまい、今は我慢するか。では次じゃが――……」
【あんみんまくら】は【ふくろ】に戻され、他の名産品を展示していく。
さっさと展示を終わらせアリアと合流したい。
アベルの一念はそれだけだ。
……ところがゆうじいのこだわりは強く、展示を終えるのにかなりの時間を要した。
「じゃ、またっ!」
名産博物館を出る頃にはずいぶんと時間が経っており、アベルはゆうじいへの挨拶もそこそこに駆け出す。
アベルについていたピエールとプックルも後に続いた。
“バンッ!!”と、勢いよく外扉を開け放った先は相も変わらず暗闇の中……。
時間の経過が鈍って何時間経ったのか見当もつかないのが、続く夜の怖いところだ。
「はぁ……! パティ、みんなお待たせ!」
アベルはすっかり待ちぼうけのパトリシアと、馬車から顔を覗かせるスラりんとキングス、メッキーに目配せする。
馬車の仲魔たちはアベルの姿に安堵したように歓喜の声をあげたが、アリアの姿がないことに気付くと動揺した。
「ピキー! 主さまぁ、アリアちゃんは……!?」
「アリアなら先に船に行ったよ。今から僕らも向かうからね」
「うん……! 早くアリアちゃんに会いたいよ」
「ははは、僕もだよ」
瞳をうるうるさせるスラりんを撫でてやり、アベルはパトリシアの手綱を掴む。
シドーのことは信用しているが、アリアはトラブルに見舞われやすい。
早く合流して不幸の種を取り除いてやらねば……。
アベルは一足先にプックルに乗って船に行きたかったが、無責任に皆を置いては行けず、仲魔を引き連れ早足で船に向かった。
◇
……時は少し遡り、アベルが名産博物館で名産品を飾っている頃、アリアたちは無事に船に到着――。
「はい到着~」
「すごーい! 迷わず海に出たね、さすがクリエちゃん! あ、オコーゼさんだ。おーい、オコーゼさーん!」
停泊する船を前にクリエは地図を仕舞う。
森を抜けた先にはストレンジャー号がアリアたちを出迎えた。
船の乗船口にオコーゼの姿が見え、アリアは駆け寄りながら手を振る。
「あっ……! お嬢……おじょ~~!!」
乗船口で見張りをしていたのだろう、真顔のオコーゼはアリアに気が付くと一気に破顔した。
すぐさま歩み板を下ろし始め、近付くアリアを時折眩しそうにチラ見する。
……つい先日前までの態度とまったく違うではないか。
奥さんに意見を訊いてくれる旦那さまって素敵だと思うのですがどうでしょう。
なんでもかんでも訊かれるのはイヤだけども……。
匙加減大事。
※クリエの持つ地図はアレです。
ゲーム画面上、右上に出てる各大図をイメージして立体にしてみました。
アイテムですらないけどアイテムになってますねえ……。
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!