ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

ヘンリーってどんな子なんだろ?

では、本編どうぞっ。



第七十四話 イジワルな王子

 

「ここが、ヘンリー王子の部屋。一応挨拶だけしとくね」

 

「うん、挨拶は大事よね(アベルっていい子ね)」

 

 

 ヘンリーの部屋の扉に手を掛け、アベルが言うとアリアは頷く。

 

 ガチャ、とおもむろに扉を開いた。

 

 アベルが扉を無遠慮に開く様を、アリアは「いつも思うけど、ノックも無しに無遠慮過ぎでしょ……」とくすくす笑う。

 そういう文化だからなのか、気にする人はあまり居ないようである。

 

 アリアも随分と慣れて来たようで、いちいち驚くことはしなくなった。

 

 部屋に入ると扉側のテーブルで椅子に腰掛け、羽根ペン片手に何やら絵を描いている緑のおかっぱ頭の少年が見える。

 歳はアベルと同じ位だろうか、貴族の着るような高級そうな服を着ていた。

 夢中で絵を描いているらしく、アベルが部屋に入って来ても気が付く素振りは見せない。

 

 

「あの……君……」

 

 

 アベルの声が少し上擦る。

 

 アベルからすればまた(・・)だとはいえ、相手が初対面だということはわかっている。

 だもんだから、初めて声を掛ける時はこちらも多少緊張してしまうのである。

 

 

 アベルが声を掛けると少年が手を止め、羽根ペンをテーブルに置く。

 そして不機嫌そうに振り返って椅子から下りた。

 

 

「誰だお前は? あっ! わかったぞ! 親父に呼ばれて城に来たパパスとかいうヤツの息子だろう! オレはこの国の王子。王様の次に偉いんだ。オレの子分にしてやろうか?」

 

 

 ヘンリーはアベルを見た途端、兵士じゃないことに気付き瞳を輝かせる。

 言葉は傲慢さを孕んではいるものの、自分と同じ位の年の子に興味津々といった感じだ。

 

 

「っ、ううん……」

 

 

 アベルは首を左右に振るった。

 返事はノーである。

 

 

『ちょっ、アベルっ! そんなこと言ったら……』

 

 

 アリアが心配してアベルのマントを引っ張るが、

 

 

「はーん? よく聞こえないなあ……。もう一度聞くぞ。オレはこの国の王子。王様の次に偉いんだ。オレの子分にしてやろうか?」

 

 

 ヘンリーは、今度は腕組みし両足を開く仁王立ちの恰好で、顎を突き出してくる。

 

 

『……アベル、とりあえず“うん”って言ってあげて? でないと、この子ずっと同じこと言いそう』

 

「…………じゃあ、うん。子分にして……?」

 

 

 “うん”と言ったところで、酷い扱いされるだけなんだけどなぁ……。

 アリアは知らないからしょうがないか……。

 

 

 アリアがそう云うなら……と、アベルは首を縦に下ろした。

 

 

「わははははっ。誰がお前みたいな弱そうなヤツを子分にするか! 帰れ帰れ!」

 

 

 ヘンリーは「ふんっ!」と鼻で笑ってさっさと出て行けと、手を払う仕草をする。

 

 

 ムッ。

 

 

 アベルは「やっぱり苦手だ」とヘンリーの部屋を出て行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「……ふぅ。ヘンリーってイジワルだよね」

 

 

 ヘンリーの部屋を出てアベルは一息吐く。

 アリアはくすくすと、笑っていた。

 

 

「ふふっ……。そうだね」

 

「…………あれ? アリアなんで笑ってるの?」

 

「ふふふ……、何か、可愛いなぁって思って」

 

 

 ヘンリー王子ったら、顔はすっごく嬉しそうだったのに言葉は高圧的なんだから……。

 淋しさの裏返しなのかな……?

 

 アベルも珍しくムッとしてたし、二人共可愛いんだから。

 

 

 子供あるあるよね、とアリアは微笑ましく思っていたようだ。

 

 

「な、か、可愛いって……(ど、どっちが!?)」

 

「ん? あ、ね、アベル。そろそろお話終わったんじゃない? 王様の所に戻ってみようよ」

 

「っ、アリア!(ねぇ、どっち!?)」

 

 

 アリアが王の間へと戻って行ってしまうので、アベルは追い掛けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 王の間――。

 

 アベルとアリアが戻って来ると、そこにはラインハット王だけが座っており、パパスの姿は無かった。

 

 

「あの、父さんは……?」

 

「パパスには我が長男、ヘンリーのお守をしてもらうことにした。そなたもヘンリーの友達になってやってくれい。頼むぞよ」

 

 

 ラインハット王が僅かに口角を上げ、アベルの頭を撫でる。

 

 

「はい……(本当は嫌だけど……)」

 

 

 アベルは渋々了承し、アリアと共に再びヘンリーの部屋へと向かった。

 

 

『アベル、お友達になってやってって』

 

「うん……」

 

 

 階段を下りながらアリアが話し掛けて来るが、アベルは気乗りしない様子で生返事である。

 

 

『嫌そうだねぇ……』

 

「……っ、そういうわけじゃ……。ちょっと苦手なだけだよ」

 

『ふふっ、ヘンリー王子、ちょっとイジワルだものね?』

 

「……アリアやビアンカみたいな子ならいいんだけどね……」

 

『ああ……なるほど』

 

 

 ビアンカちゃんはしっかり者だし、私も中身は大人だものね。

 アベルは聡い子だし、ヘンリー王子が我儘に見えるのかな……?

 

 初めて出会ったタイプなのかも。

 

 ……戸惑っているのかな。

 

 

 アリアは、アベルがヘンリーを苦手な理由が分かった気がした。

 

 

 

 

 

 

 ――二階東側通路に出ると、パパスが腕組みして天井を見上げている。

 

 

「あ、父さん!」

 

 

 アベルはどうしたのだろうと、パパスに声を掛けた。

 

 

「おお、アベルか! 父さんはヘンリー王子のお守を頼まれたのだ。本当は王子の傍にいたいのだが、参ったことに嫌われてしまったらしい。だが、お前なら子供同士友達になれるかも知れん。父さんはここで王子が出歩かないよう見張ってるから頑張ってみてくれぬか?」

 

「えぇー……」

 

 

 さっき、あんなこと言われたのに友達になんてなれると思えないんだけど……。

 

 

 パパスの話にアベルは一歩引いてしまう。

 

 

『アベル……ははは……(そんなに嫌なの……?)』

 

 

 アリアはアベルの様子に苦笑していた。

 

 

「よろしく頼んだぞ!」

 

 

 アベルの様子に気付かないパパスはほとほと困っていたのだろう。

 アベルにヘンリーの相手を託したのだった。

 

 出来るだけ頑張ってみるね……と、アベルは大好きな父の期待に応える為ヘンリーの部屋へと向かう。

 

 

「……行こ」

 

『ん……? あ、はいはい』

 

 

 もちろん、アリアの手を引っ張って行った。

 

 




以上、アベルとヘンリーの出会いでした。
アベルはヘンリーのことをわかっているので、何度も繰り返した結果苦手になったんだと思います。
現時点では先のことは知らないので、いつか親友になれるといいなぁ。

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読んでいただきありがとうございましたっ!

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