ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

前回のプチあらすじ>船がテルパドールに向けて出航したよ!

砂の大陸に到着しましたよー。

では、本編どぞ~。



青年期・前半【テルパドール・前編】
第七百四十六話 上陸、砂の大陸


 

 

 

 

 

 さて、海を南下する。

 航行中、夜が明けることはやはりなかったものの、幸い嵐に遭うことはなく数度の魔物の群れと遭遇後、テルパドール大陸の北東に無事接岸した。

 

 船から眼下を見下ろせば、砂・砂・砂……。

 海岸沿いに岩山脈が目視できるとはいえ大陸内部には岩すらも見当たらず、砂以外何も見えない。

 修道院やルラフェンの南にも小規模な砂漠はあったが、地図を確認するとわかる。

 ……テルパドールは砂しかない大陸なのだ。

 

 これからアベルたちは船を降り砂漠の中を行き、仲間になるまで長期戦が予想される【ほのおのせんし】を探すことになる。

 遭遇する確率はそう低くない魔物であるが、仲間になってくれるかは運次第――。

 

 いまさら数時間で決着をつけたい(仲間にしたい)という無茶振りをするつもりはない。

 ただ、なるべく早く仲間になってくれることを願い、戦うだけだ。

 

 

「すな……すなっ! 辺り一面砂、砂ぁ!! 砂漠だ~~!! シドー君、砂だよ!! やったー!」

 

「おい、クリエあんまはしゃぐなよ、ククッ、はっはっはっ……!」

 

 

 オコーゼが下ろした歩板をクリエが我先にと駆け下り、上陸すると足元の砂を一掴み。夜だというのにハイテンションでなぜか喜色満面で大喜びした。

 シドーも口では(たしな)めているものの、堪えきれないのか腹を抱え笑いだす。

 細められた目と大きく開けた口、その顔は嬉しそうだ。

 

 

「ふふふ。クリエちゃんもシドー君もすっごくうれしそうだね?」

 

 

 アベルと共に歩板を下りて来たアリアが、はしゃぐクリエたちを見て優し気に微笑む。

 クリエは【ガラス】の材料となる【砂】を手に、シドーと二人で見合ってからアリアに白い歯を見せた。

 

 

「うん! 砂があればガラスが作れるからね! ガラスがあればビルドの幅が広がるんだよ。ね、シドー君。いい砂だよね!」

 

「おう、そうだな!」

 

 

 シドーに同意を求めるクリエの手からサラサラと【砂】が零れ落ちていく。

 この【砂】を高温で溶かせば――。

 

 

「ガラス……そういえば、ガラスって砂で作るんだったっけ……」

 

 

 アリアは夜風に吹かれ、サラサラと流れてゆく砂粒を見つめた。

 

 ……昔、アリアは本か何かで読んだことがある。

 珪砂(けいしゃ)と呼ばれる【砂】を炉にて高温で熱して溶かし、どろどろにしてから冷やすと固まりガラスになる。

 原子の結晶がどうのという難しい話はともかく、【砂】で【ガラス】ができるということくらいは知っていた。

 

 それにしても【ガラス】まで作れてしまうとは……。

 ……クリエといると驚きの連続ばかりだ。

 

 

「修道院でガラスを使い切っちゃたから、大元の材料が手に入ってうれしいな☆ あとで拠点決めたら簡単な部屋を作ってあげるね。ボクも寝泊まりするからたぶん壊れないと思うんだ」

 

「え……ガラスってステンドグラスの? あれクリエちゃんが作ったものだったのね……!?」

 

「そだよー」

 

「すごっ!」

 

 

 修道院の【ステンドグラス】をクリエが作ったことにいまさら気付き、アリアの目が見開かれる。

 アベルは知っていたが、アリアは修復作業に直接関わってはいないため知らなかった。

 

 

 ――なにそれっ!? クリエちゃんスゴすぎじゃない!?

 

 

 屋根修理に留まらず、家具も作れて家本体も建てることができ、ありとあらゆるアイテムを次から次へと生み出す力、それは“創造の力”というのではないだろうか。

 

 シドーが破壊し、クリエが創造する――最強コンビの二人はビルダー。

 二人だからビルダーズ?

 それもうスピンオフのタイトル【ドラゴンクエストビルダーズ】でいいのでは……。

 

 

 ……アリアは知らずにスピンオフゲームのタイトルをほぼ当てていた。

 

 

「さ、アリア。君は馬車に乗ろっか! 新大陸だからね。炎の戦士はともかく、他の魔物は新手も出るはず。気を引き締めて行かないと」

 

 

 馬車を引き大陸に足を着けたアベルがアリアの手を取り、エスコートするように馬車の後方、キャビンの乗り口へと連れて行く。

 

 【砂】の上は歩きにくい。

 最近では馬車に乗り込むのも上手くなってきたアリアだが、【砂】に足を取られれば踏み込みが足りずに乗り込めないかもしれない。

 そう思ったアベルは過保護にもほどがある。アリアを馬車に乗せてやろうと考えたのだ。

 

 

「あっ、うん……。アベル気を付けてね……?」

 

「……うん、気を付けるよ。怪我したら回復してくれるかい?」

 

「うん……いつでも呼んで? すぐ回復させるから……」

 

「うん……」

 

 

 クリエたちからは死角になるであろう位置まで来ると、アリアがアベルのマントを引いて窺うように告げる。

 上目遣いの不安そうな妻の表情にアベルの目尻が下がった。

 

 そして――“ここは、ハグだ……!!”。

 タイミングを見誤らないアベルはそっとアリアを引き寄せ抱きしめる。

 

 立ったまま小さな妻を抱きしめれば、絹髪の頭に自らの顎をのせてしまえる。

 紫のマントで覆えばアリアを他人の目から隠すことだって可能。

 彼女の柔らかくて温かい抱き心地の良さが、いつもアベルの精神を落ち着かせ、時に興奮もさせてくれる。

 

 アリアとの抱擁は何物にも代えがたい。

 アリアもきっとそう思ってくれているに違いない。

 

 アベルは背に回され抱きしめ返してくれる妻の手に、心が満たされた。

 

 

「アベル大好き……♡」

 

「僕もだよ……♡」

 

 

 アリアの声がアベルの胸元で吐息と共に発せられると、アベルの身体が熱を帯びる。

 

 

 ――ああもう、アリア本当大好き、可愛い、可愛いが過ぎる……!! アリア愛してるっっ……!!

 

 

 ここは、危険を伴う砂漠。こんなところで発情している場合ではない。

 だが妻が好き過ぎるアベルのアベル(・・・)は素直に反応するから困ったものだ。

 

 ……なにせ星々が輝く空の直下である。

 二人きりならばロマンティックな夜が過ごせるというのに――。

 

 残念ながら今は仲魔たちだけではなく、クリエとシドーがすぐ近くにいる。

 仲魔たちだけならなんとか誤魔化し、即座に妻を馬車に連れ込むことができるが、クリエとシドーがいる手前、それはできない。

 仲魔の前なら恥ずかしくないが、人間であるクリエとシドーの前ではさすがのアベルもちょっぴり恥ずかしい。

 

 ……この場所ならば死角になって見えないだろう。

 

 仕方なくアベルは身を屈め、アリアの頭頂に口付けを落としたかと思うと、額、頬、唇、首と小鳥のようにチュッ、チュッと啄み始めた。

 アリアは「やだくすぐったいよー♡」と(くすぐ)ったさに身を捩るも逃げずに受け止める。

 不自然にならない時間分だけアリアを愛で、最後は唇を触れ合わせることで締めくくった。

 

 

「……バッチリ見えてるんだよなあ~(仲いいなあ!)」

 

 

 馬車から少し離れた場所で、ザクザクザクとクリエが【砂】をある程度の大きさにブロック化して【ふくろ】に詰めていく。

 

 ……素材のブロック化はクリエとシドーの固有の技だ。

 アベルとアリアは知らないが、クリエたちがいた世界では殆どのものがブロックでできていた。

 この世界に来て初めてブロック化されていない【土】や【砂】を見たクリエとシドーは驚いたものである。

 

 ところがクリエの元々持っていたアイテムは、元の世界と変わらずその殆どがブロックばかりで、異世界に飛ばされても使用することができた。

 そしてこの世界で過ごしていく内に気付いたのが、素材のブロック化だ。

 クリエとシドーが触れたものは、必要と思えばブロック化され、また、使用することもできる。

 異世界のため色々と制約はあるが、そこまで不自由なく過ごせていることはありがたかった。

 

 

「……おいクリエ、あの二人なんで口と口をくっつけ合ってるんだ??」

 

「シドー君は知らなくていいんだよ?」

 

「そうか?」

 

「うん。キミにはまだ早いと思うな~」

 

 

 ……そんなことよりほら、【砂】を集めようよ。

 興味津々でアベルとアリアを眺めるシドーに、クリエはにこにこと【砂】集めを続ける。

 

 一先ずあと50個は欲しい。

 【ドッカンハンマー】や【さくれつハンマー】のスキルで一気に辺りの【砂】をブロック化して手に入れることもできるが、夜の静かな砂漠でそんなことをすれば、元居た世界と勝手が違うこの世界では、大量に魔物の群れがやって来るのだ。

 昼になれば強い風も吹くだろうし、ある程度煩くしても問題ない。スキルを使用することもできるだろう。

 夜の間は地道にコツコツと素材を集めていくしかない。

 

 ザクザクザクと【ビルダーハンマー】で【砂】を一つ一つブロック化していく。

 もう何年もこの世界にいるクリエの素材集めは手慣れたものだった。

 

 

「ムウッ……!」

 

「フフフッ! その内キミにもわかるさ☆」

 

 

 シドーが頬を膨らますが、クリエは白い歯を見せブロック化した【砂】を【ふくろ】に詰めていく。

 そんなクリエの態度にシドーも不服そうにしながらも作業を手伝い始めた。

 

 

「クリエちゃん、シドー。そろそろ出発しようと思うんだけどいいかな?」

 

「……あ、うん。袋に詰めちゃうね」

 

「大分掘ったね……」

 

「はははっ。砂、いっぱいあるからもらってもいいよね!」

 

「……いいとは思うけど……」

 

 

 アリアを馬車に乗せ、クリエたちの元に戻って来たアベルはしばらく様子を見ていたが、そろそろ【ほのおのせんし】探しを始めたい。

 うず高く詰まれた【砂】のブロックと、すっかり抉れた【砂】を前に口をあんぐりさせた。

 

 ビルダーという職人はモノ集めが趣味なのだろうか……。

 【砂】で【ガラス】ができると、先ほどアリアと話をしていたから多少は必要なのだと思うが、ちょっと掘り過ぎのような気もする。

 大人を二、三人余裕で埋められそうな範囲だ。

 

 さっきからアベルの持つ【ふくろ】と同じような、クリエの持つ【ふくろ】に彼女たちは【砂】ブロックを大量に詰め込んでいるのだが、そんなにも必要なのかどうか……。

 

 

 ――だってただの【砂】だよ……!?

 

 

 アベルの感覚と彼女等の感覚は違う。

 

 ビルダー二人の瞳がきらきらと輝き、“仮置きに使えて便利だよねー♪ 仮置っき、かりおっき♪”クリエの口から上機嫌な歌声が聞こえて、シドーもそれに倣い“仮置っき、仮置っき”――二人はとても楽し気で……。

 

 ……仮置きとはいったい……ビルダーの好みはアイテム収集が好きなアベルにもよくわからなかった。

 




今回、ちょっと長めになっちゃいました。
やっと新章(?)突入です。

しばらくはビルダー二人と一緒の楽しい旅が続く予定……のはず。

※クリエとシドーのブロック化は別世界のため、固有スキルとしました☆
砂の下りは砂集め大好きなもんで……。
DQBの知られざる島にて水に浸かった土をすべて砂に変更したのはいい思い出……。
結果画面が重くなったけど、砂に水って綺麗なんよ……すき。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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