前回のプチあらすじ>クリエの砂集めが終わるのを待って出発しようと……。
深夜の戦闘、たまには通常戦闘でも。
では、本編どぞー。
◇
一頻り【砂】を集めクリエの収集欲求も満たされ、アベルたちは砂漠を歩き始める。
それから間もなく魔物の群れは現れた。
……滝の洞窟でも出遭った【オーク】の群れだ。
今回は四匹のお出ましである。
【オーク】は攻撃力が高めの魔物で、滝の洞窟で何度も戦った。アベルたちのレベルなら問題はないが、クリエとシドーはどうだろうか。
体感で二人が強いと感じてはいる。
ゆえに詳細なステータスを見ようとしたが、なぜか見られなかったから、数値としての強さがどの位なのかはわからずじまい。
「っ、クリエちゃん、シドー! オークの群れだ、気を付けて!」
「任せて!」「任せろ!」
アベルはクリエとシドーへ、気を付けるようにと注意喚起だけしておく。
二人は同時にサムズアップとスマイルでもって【オーク】に攻撃を仕掛けに行った。
クリエとシドーにアベルが特に何か指示を出したりはしない。
なぜなら二人は物作りの天才であるが、戦闘のプロでもある。
サンタローズの洞窟ではその戦いっぷりに感嘆した。二人は自由に戦ってもらう方がいい動きをする。
『やば! この世界マジやば~、パないわ! オークが群れで出るとかやば過ぎ! ね、シドー君そう思わない?』
『タネ落とすんか? こいつ……』
『わかんない。小麦! トマト! キャベツ! キビ! カマーンッ、モンゾーラ! モンゾーラ!』
一匹の【オーク】を二人が取り囲み、攻防しながら謎の会話がなされている……。
【オーク】から繰り出される槍の激しい突き攻撃に、クリエがひょいと横に避けて背後に回り込み、切れ味の良い【はやぶさのけん】で素早く切り込む。
シドーも風のように駆けて【オーク】の脇に【こんぼう】でもってフルスイングで殴りつけた。
(一匹は二人に任せて良さそうだな……。)
アベルは四匹の内 一匹を彼女等に任せることにして、残り三匹を現在のパーティであるピエール、プックル、キングスたちで倒すことにする。
上陸初戦に【ほのおのせんし】は見当たらなかったものの、逃げずに戦い抜けた。
……その初戦以降、幾度となく魔物の群れと相対し、中にはお目当ての【ほのおのせんし】との遭遇もあった――のだが。
「はぁ……今回も駄目か……」
カチャっと、音を立て【パパスのつるぎ】が鞘に収まる。アベルは足元で消えゆく【ほのおのせんし】の亡骸を見下ろした。
【ほのおのせんし】との戦いは砂漠に入ってもう何度目か。十度目以降から数えるのをやめた。
簡単に仲間にはならないとは思っていたが、アベルの記憶通りやはりそうらしい。
「ふぅ……。はぁー……なんか眠くなって来たよ……」
「珍しいな、クリエ」
アベルの後ろで戦闘を終えたクリエが目蓋を擦る。
シドーは疲れを全く見せず、クリエに【やくそう】を手渡していた。
「薬草ありがと。さっきの魔物を見てたら、ボクもたまにはぐっすり寝なきゃなって改めてそう思って……」
「さっきの魔物ってあれか……? 青緑色の毛むくじゃらか? 一匹最初から最後まで眠ってたもんな」
「そうそう。もう一匹もなんかボーッとしてたしさ。毒気抜かれるよね」
【やくそう】を噛み噛み、クリエとシドーが話している魔物は【ビックアイ】の上位種【ケムケムベス】のことである。
【ビックアイ】同様、一つ目で青緑色の毛むくじゃら。
砂漠を歩き始めてから中々の高確率で出遭う【ケムケムベス】は、体力はそこそこ、普通攻撃に加え氷呪文の【ヒャド】を使ったり、守備力強化の【スクルト】を使ったりする一見厄介な魔物であるが、個体によっては眠っていたりボーッとしていたりすることがある。
出会い頭に寝ている個体を見るとなぜ出て来たのか、戦う気はあるのか問いたくなるほどだ。
……夜の闇は眠りを誘う。
クリエは【ケムケムベス】のマイペースさに釣られて眠くなったらしい。
「んー……もう少し歩けばオアシスがあるようだし、そろそろ今日は休むかい?」
「いいの!?」
アベルが【ふしぎな地図】を広げて南東を指差すとクリエの瞳が輝いた。
「うん。まあ、急いではいるけど二、三日くらい遅れてもたぶん大して変わらないからね」
死の火山まで行かずに済んでよかった。
そちらを選んでいれば移動だけで最低でも一週間のロスとなる。
それからすれば二、三日遅れたところで世界が急激に変化することもないだろう。
今日は移動が多く、きっとアリアも疲れているはず……と、アベルは地図からキャビンに目を移す。
さっきまでアリアがキャビンから心配そうに顔を覗かせていたが、戦闘が終わりほっとしたのか、今は奥に引っ込んでしまい見えなかった。
――ひょっとして疲れて横になったのかな……?
ゆっくりできていればいいのだけど……そうは思うが、どうせならアベルも一緒に休みたい。
度重なる戦闘で、戦わせていないとはいえアリアも気疲れしているはず――。
……アベルは砂漠のオアシスであろうテントのシンボルを目指し、身体をその方角に向ける。
「やったね~! オアシスで水をゲットしなきゃ。海水だったから困ってたんだよねー」
「そうだね。昼が戻ったら暑くなるだろうし、水を手に入れておいた方がいいかもしれないね」
【海水】云々の下りはよくわからないが、スルースキルの高いアベルの同意にクリエは手をパチンと叩き合わせた。
……まさか【水】もクリエにとってはビルドの一環だということを、この時のアベルは知らない。
「そうと決まったら、目指せオアシス! シドー君、行くよ!」
「おう!」
クリエとシドーはアベルたちを置いてオアシス目掛け走ってゆく。
「あっ! クリエちゃん! シドー!!」
――あの二人、……元気だなぁ……。
連戦の疲れなど見せず、砂煙を巻き上げながら全速力で駆けて行く二人に続き、アベルもパトリシアの手綱を引いた。
馬車からアリアもクリエとシドーの走り去る様子が見えたようで「元気だなぁ……」と呟いて欠伸をした。
◇
……アベルたちがオアシスに着くと、一足先に到着していたクリエとシドーが泉に浸かり、何やら妙な動きをしている。
水浴びをしているのか魚を取っているのか……少々距離がありアベルにはわからないが、二人が悪さをすることはないだろうと、ここは放っておくことにした。
そんなことよりアベルはアリアを早く馬車から降ろし、抱きしめたい。
「アーリアッ、着いたよ♡」
「わぁ! オアシスね!」
アベルがキャビンに声を掛けるとアリアが顔を出す。
月の光を映すオアシスの泉を前にして、アリアの瞳が輝いた。
いつものように差し出されるアベルの腕を借り、アリアは地面に降り立つ。
……すぐさまアベルは彼女を抱きしめた。
「アリアお疲れさま。疲れたでしょ? 今夜はここでキャンプさせてもらおうよ(ああ、癒される……)」
「……アベルもおつかれさま♡ 怪我してない? 大丈夫?」
抱きしめながら労いの言葉を掛けるアベルの頬に、アリアの白い手が伸びる。
怪我がないか確かめているのだろう。彼女は密着した身体を離し、心配そうにアベルの様子を確認した。
「大丈夫だよ♡ さっきアリアに回復してもらったじゃないか」
「ん……ならよかった。アベルが怪我してたらと思うと心配になっちゃって。ほら、馬車からだとよく見えないし……」
「アリアは過保護だなぁ♡」
「いや、それ私のセリフなんですけど?」
「ははは」
早速アベルはアリアを伴いピエール、プックルと共にオアシスにある唯一のテントへと向かう。
アリアがテントを前に「サーカスのテントみたい……」なんて呟いた。
そのテントは大きめでしっかりした造りをしており、一歩入れば老人と犬が住んでいる様子が窺える。中は一定の室温が保たれているのか暖かい。
……砂漠の夜は寒いのだ。
テルパドールの砂漠をこの世界ではまだ経験していないアベルだが、同じ南に位置するメダル王の島はかなり暑かった。昼と夜との寒暖差はかなりのものであろうと推測できる。
「く~ん、く~ん……」
「こんばんは、お邪魔します……わ~テントの中ってこんな風になってるんだ~。中は暖かいね」
……テントに入るなり犬が鼻を鳴らして寄って来るのでアリアはにっこり、挨拶をした。
挨拶と共に
屋内を見回せば、家主の老人がハンモックで横になり目を閉じている。
夜だから当たり前だが、眠っているのだろうか……。
どうでもいいことなんですけど、テルパドールって島なんでしょうか……。
名産博物館に寄る前に見る立て看板にテルパドールの「島」と書かれているのですが、お城もあるし、大きさ的に大陸っぽいのでこのお話では大陸としています。
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!