ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

前回のプチあらすじ>クリエが作ったのはテントです!

テントと言ったらテントなのです。

では、本編どぞー。



第七百五十話 火中にて滴る油

 

「おー、クリエちゃんすごいね!」

 

 

 あっという間にテント(?)を一張り設置してしまい、様子を見ていたアベルは“ぱちぱちぱち”、クリエに称賛の拍手を贈った。

 

 

「これでボクたちのはおしまい。ピエールさんとプックルもテントの中へどうぞー、ゆっくり寛いでてよ。次はアベルお兄さんとアリアお姉さんの分を作るね~」

 

 

 ……テント――とは少々違うような気もするにはするが、作った本人がテントだと言い張るので、ここではテントと呼ぶことにする。

 

 出来上がったテントはかなり大きく、仲魔たち全員が余裕で休める作りにしたようだ。

 クリエは【ヤシの木】の側にいるピエールとプックルに声を掛けてから二張り目に取り掛かろうとしていた。

 

 

「へっへーん。クリエはすごいんだ」

 

「ああ、本当にすごいよ」

 

 

 クリエを褒められて嬉しいシドーが鼻の下を擦る。

 “オレの相棒は世界一自慢のビルダーだ”とでも言いたげだ。

 

 ……彼はきっとクリエのことが好きなのだろう。

 アベルの目に映るシドーはそう見える。

 

 ここはクリエを持ち上げておこうと笑顔で首を縦に下ろした。

 

 

「だろ! ぁ……、なあアベル。今、ちょっと聞いてもいいか?」

 

「ん? なんだいシドー?」

 

 

 先ほどアベルはクリエに、皆とは別で夫婦二人きりで泊まれるテントを設置して欲しいとお願いした。

 二張り目のテントはもう少し小さめになるはずだから、あっという間にでき上がるだろうと思ったのだが、クリエはテントを設置するであろうスペースを前に、腕組みをして何やら考え込んでいる。

 

 我儘だっただろうか――。

 あっさりOKしてくれたから簡単なのかと思ったが、あの様子では少し時間が掛かりそうだ。

 

 ……それを知ってか知らずか、待ってる間にシドーが訊ねたことといえば――。

 

 

「……アベル、“ちゅっちゅらぶらぶ”とはいったい何なんだ……?」

 

「え」

 

「……お前とアリアが 口と口をくっつけ合うのと関係があるんだろ?」

 

「えーっと……?」

 

 

 アベルとシドーの後ろをクリエに呼ばれたピエールたちが通り過ぎる。

 そこにはアリアの姿もあり、会話が聞こえたらしい――彼女は赤い顔を片手で覆って「Oh……」プックルの尻尾を掴み、連れられるようにそろそろと大きなテントに入って行った。

 

 

「おーっと、シドー君! 君にはまだ早いよ!? アベルお兄さん、シドー君にそういうこと教えちゃダメだからねー?」

 

「なっ!? クリエ邪魔をするなよ……! あ、だったらオマエが言い出したことなんだ。オマエが教えてくれよ」

 

 

 地獄耳なのか、会話を聞きつけたクリエが作業を投げ出しやって来て、シドーの両耳を塞ぐ。

 ……シドーは不満顔でクリエを恨めしそうに見やり、両耳に当てられた手を払い退けた。

 

 

「その内わかるようになるからさぁ! そういうのはゆっくりでいいんだよ、ゆっくりで。ねー、こっち手伝ってよー。ほい、エアベント。ボクたちのテントに置いてくれる? 場所は行けばわかるようにしてあるからさ」

 

「ぐっ……。なんでそうやっていっつも……っ、はぁ、しょうがないな……。これを設置すればいいんだな?」

 

 

 クリエからシドーへ【エアベント】と呼ばれる四角い箱が手渡される。

 その箱の外装は黒く、中に三枚の板状の白い羽が付いた見たこともない形――アベルにはそれが何かはさっぱりわからないが、換気のためのものらしい。

 

 それを受け取ったシドーはため息を吐きつつも、クリエと共に完成した大きなテントへと歩いて行った。

 

 

「クックック……。シドー君、ありがとね」

 

「別にっ? しょうがないから設置してやるって言ってんだ……ったく……オレが建築に携わるとか……」

 

 

 クリエの笑顔にシドーの機嫌は悪そうだが、手元の【エアベント】を見下ろし、心なしかそわそわしているようにも見える。

 アベルは“やっぱりシドーはクリエちゃんが好きなんだなぁ……”などと遠ざかって行く微笑ましい二人を見送った。

 

 

 ……さて、テントに入ったクリエだったが、シドーを中に残してすぐ外に出てくる。

 

 

「アベルお兄さんも中で休んでていいよー?」

 

 

 一人外で立ち尽くすアベルに、戻って来たクリエが作業を再開しつつ声を掛けてきた。

 

 

「なにか手伝えることはあるかい? 物を運ぶとかなら僕でもできると思う」

 

「んーん。中でアリアお姉さんがご飯作ってくれてるから、それだけでいいや。建築が楽しいから邪魔されたくないんだよね」

 

「邪魔って……」

 

 

 ……アリアがテント内で食事を作っている……。

 

 

 だが こちらからお願いしたのだ、手伝いくらいしなくては。

 そう思ったものの、クリエから聞いた話でアベルは揺らぐ。

 

 彼女の話にすぐにでもアリアを手伝いに行きたかったが、今はクリエの手伝いを優先した方がいい気がする。

 確かに自分は建築に関しては素人だ。

 だが、邪魔とまで言われてしまうとは思わなかった。

 

 ……修道院で一緒に屋根を修理した仲だし、邪魔をするつもりはないのに……と、少し凹んだ。

 

 

「あ、あはは。邪魔ってわけじゃないんだけど、ボク、一人作業が好きなんだよね~。ほら、人に指示するより自分でやった方が早いっていうかさ」

 

「……そっか、わかったよ。なら人手が必要なら言ってね」

 

「うん、ありがとう!」

 

 

 アベルが落ち込んだのを読み取ったのか、クリエが作り笑顔で“トントン”――素材を形成し始める。

 一人作業が好きなら仕方ないか……と、作業に集中し始めたクリエに背を向け、アベルはテントへ行くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……クリエと別れ、大きなテントにやって来たアベルは、足を一歩踏み入れ屋内の様子に目を瞬かせる。

 テントだというのに、床は板張り。その【木の床】の上には宿屋によくある【木のベッド】が三つに、【どうぶつの寝わら】という名の(わら)でできた寝床が四つ。

 奥には炊事ができるスペースがある。

 

 そこでは【絹のエプロン】を身につけたアリアとピエール、シドーが楽し気に何かを捏ねており、馬車組の仲魔たちも来ていたのか、メッキ―が煉瓦と鉄で出来た【レンガキッチン】で器用にスープをかき混ぜていた。

 キッチンコーナーも作ってあるとは、しっかりしたテントである。これなら何泊でもできてしまえそうだ。

 

 ……アベルは感心しながらふと入口付近に目を向けた。

 

 入口付近の床には【石材】で組まれた【床石】が敷かれ、そこにはスラりん、キングス……は分裂し八匹の【スライム】に変化。

 計九匹が不自然に設置された九つの焚き火の上で炙られている……、なぜ……。

 

 

「スラりん何してるの?」

 

 

 疑問に思ったアベルは身体に油を滲ませるスラりんに話し掛けてみる。

 

 

「溶けちゃうよお……、ピキー! 主さまぁ……ハァハァ……ボクの新鮮な油をクリエさまがご所望で……!」

 

 

 ……スラりんの油は料理に使える優れものだ。

 キャンプ時にいつも油を提供してくれるのはありがたいが、クリエが所望とはいったい……。

 

 

「油……。そういえば焚き火があると君、すぐ炙られに行くよね」

 

 

 ――おぉ……! 油が滴ってきてる……!

 

 

 スラりんが苦悶の表情で青い身体から黄色い油を滲ませていく。

 

 火に炙られるなんて……と始めはアリアに心配されていたスラりんだが、毎度自ら望んで火中に飛び込むため、もう見慣れてしまった。

 死の火山で遭遇した【ようがんげんじん】との戦いでは、高温の熱に色の変化が認められたものの、焚き火程度では赤くなることは殆どないらしい。

 アベルはそもそもスラりんの行動を止めはせず、好きにさせている。アリアも諦めたのだろう、いつからか止めることはなくなっていた。

 

 ……そんなわけで、焚き火があるとスラりんは自ら炙られに行く。

 

 アベルは今じゃ、油が滲みゆくスラりんの苦悶の表情を、複雑な顔で見るアリアが面白くて仕方ない。

 そのアリアは今は白い食材をピエールとシドーとで捏ね捏ね。そちらの作業に夢中でスラりんには注目していなかった。

 

 

「ピ、ピキー……! 主さまとアリアちゃんに新鮮な油をお届けしたくて……あぅ……溶けちゃうよお……」

 

「……あ、ありがとう……? 火傷をしないように気を付けるんだよ?」

 

 

 恐らく熱いのだろうと思う。

 スラりんはふるふると震えながら眉間に皺を寄せ、口はへの字。

 ……苦悶の表情である。

 

 この苦悶の表情――。

 油を一定量出し切ると解放感なのか、黒目が上部へと移動し、口もへの字が崩れ だらしなく弛み、表現し難いなんとも言えない恍惚の顔へと変わる。

 

 ……スラりんに他意はないのだろう。

 けれどもその様子にアベルは、独りでナニかしてるみたいだなと毎度思っていた。

 アリアが恥ずかしそうに、スラりんから目を背けるのが面白いから口には出さずじまいだ。

 

 スラりんに火傷だけは気を付けるようにと伝えて、アベルの足はアリアたちの元へ向く。

 

 

「ピキー! わっかりましたっ! おい、キングスず! 火傷に気を付けるんだぞっ! クリエさまにお渡しするんだからなっ!」

 

 

 アベルの背中からスラりんの声が聞こえる。

 キングスの分裂体たちの声は聞こえなかったが、身体を揺らしたらしい。焚き火の薪が一斉にパキパキと音を立てた。

 

 にしても“クリエさま”とは……。

 スラりんの主はアベルなのだが、やはりクリエに心酔しているようだ。

 




シドー君にはピュアなままでいて欲しい。

さて、次回は久々クッキング&ビルド回。
DQB2クロスオーバーが止まらない、好き過ぎるDQB2。

物作り楽しいよね。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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