ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

前回あらすじ>ゆうべは以下略☆ クリエに指摘された新婚夫婦は気まずくて……。

シドー君はお母さんになれるかもしれない。

では、本編どぞ。



第七百五十五話 シドー君はお母さん?

 

「グフフ……もうすぐ、もうすぐ完成するんだ……♪ ウフフ……。ボクちゃんビルダーよ……」

 

「そ、そうなんだ……?」

 

 

 ――最近のクリエちゃん、テンションがおかしいな……目の下の隈も酷いし……。

 

 

 テントの片隅、【木の机】で一人作業をしていたクリエを無理やりシドーが引っ張って来て食卓に座らせたものの、目の下は真っ黒で、テンションも妙ちくりんだ。

 そんな彼女は何日も寝ていないらしい……。

 

 腕を組み、瞬きも忘れぶつぶつと「あそこはこうで、いや、やっぱあっちで……」とぶつぶつ呟いている。

 ……【本】の制作はとても大変のようだ。

 アリアが「クリエちゃんはワーカホリック……」とぽつり。

 

 そんなクリエを見かねたシドーがため息を吐きながら【甘米汁】を手にした。

 

 

「はぁ……せめて食事くらいちゃんとしろって言ってるだろ」

 

「……きん……く……レイ……んごっ!」

 

「んぁ? ほら甘米汁だぞ。飲み下せ」

 

 

 クリエはもはや廃人寸前で、目は開いているのに焦点が合っていない。

 そんな彼女の顎を上向かせ、シドーはどぼどぼと【甘米汁】の入った竹のカップを傾ける。

 シドーの介助によってクリエは器用に【甘米汁】を飲み下していく。

 慣れているのだろうか、吐き出したりしないのが不思議だ。

 

 ……アベルとアリアはクリエの様子にもシドーの行動にもドン引きし、黙って見守る。

 

 

「ンゴッンゴッ……甘……。そう、甘々でなければ……――」

 

「……はぁ。よし、飲めたな! じゃあ、出発までがんばってこい」

 

「……うんっ! ありがとーシドー君!」

 

 

 一杯の【甘米汁】を飲み終えたクリエは、シドーに背を叩かれ駆けて行く。

 そして【木の机】に向かって作業の続きに取り掛かった。

 ……皆の食事が終われば、再び【ほのおのせんし】を求めて出発するのだ。少しでも待機時間があるなら作業を進めたい――とのこと。

 

 

「……シドー君てお母さんみたいね」

 

「おかあさん……? よくわからんが、あいつはオレがいないとダメなんだよ」

 

「ふふっ、本当ね」

 

 

 アベルの隣で食事を摂るアリアが呟くと、シドーがクリエをチラッと見やって身支度を始めた。

 彼は赤い手袋を嵌めて武器である【こんぼう】を背に背負い、いつも束ねている髪の髪紐を結び直し、最後には触覚のような前髪をナデナデ。髪を整える。

 

 ……破壊神も身だしなみを気にするんだなぁ、などとアリアは【パン】を咀嚼しながら見ていた。

 

 

「……アリア。ほら、このイチゴも食べなよ。身体にいいらしいよ」

 

「えっ、ンッ?」

 

 

 シドーが破壊神であることを知らないアベルは、にこにことシドーを見つめるアリアの口に、通常の赤い【イチゴ】とは違うピンク色をした【あまイチゴ】を入れてやる。

 

 

「……甘くておいしいでしょ?」

 

 

 ――アリア、シドーを見過ぎじゃないか……?

 

 

 アリアがシドーをじっと見ていることに ついムッとしてしまったが、シドーとクリエはまだ子ども。シドーの気持ちはクリエに向いているのだから、成人した大人としてみっともない嫉妬心を見せたりはしない。

 ……けれどもやっぱり自分を見て欲しいので、ここは食べ物で釣りたいところだ。

 

 

「うん、とっても~♡」

 

 

 突然口に入ってきた【あまイチゴ】にアリアは目を一瞬丸くしたものの、口に広がる甘くてジューシーな果実にうっとりと目を細める。

 

 

「……もっと食べさせてもいい?」

 

 

 ――僕も、シドーのようにアリアにお世話したい……!

 

 

 アベルはもう一粒の【あまイチゴ】を手にアリアに近づいていく。

 二粒目は至近距離で食べさせてやりたい、そう思ったのだ。

 

 ここ数日間、シドーが当たり前のようにクリエに世話を焼く姿を目の当たりにしてか、アベルはアリアに何かしてやりたくて仕方なかった。

 ビルド中クリエは他のことに無頓着で、シドーの世話焼きを素直に受け入れている。

 

 ……あんな関係性もいいなと思ってしまった。

 ところがアベルの思い通りにならないのはいつものことで――。

 

 

「だめ~」

 

「ムッ……なんで!」

 

「だって照れちゃうから。……みんなの前だよ?」

 

 

 案の定、あっさり好意を断られたアベルは頬を膨らませたが、アリアの頬はぽっと赤く色付き、仲魔たちに目配せをする。

 ……アベルもアリアの視線の先を辿ってみた。

 

 彼女の視線の先、仲魔たちはアベルと目が合うと目を逸らしたが、身支度中のシドーは興味津々で瞳を輝かせ両手拳を握っている……いったい何を期待しているというのか……。

 さらにはアベルの背後、部屋の隅からも鋭い視線を感じた。

 

 ……そこはクリエが【本】の執筆作業中だったはずだが――。

 

 

「……、コホンッ!」

 

 

 ――シドー……なぜそんな期待に満ちた目で見るんだ……、そして――。

 

 

 背後からただならぬ視線を感じアベルは咳払いを一つ。

 クリエに振り返ることはしなかったが、背中に刺さる視線が痛い。

 仲魔たちだけなら気にしないアベルも、少しだけ恥ずかしさが勝ってしまい、アリアからそっと離れ居住まいを正した。

 

 

「くっ……(アリアにもっと構いたかった……!)」

 

「……ね、アベル。また二人きりになったら食べさせて欲しいな~♡ 私もアベルに食べさせてあげたいの。どう?」

 

「っ、よろこんでっ♡」

 

「ふふっ、じゃあ楽しみにしてるね。今日も一日がんばって、すてきなだ・ん・な・さ・ま、チュッ♡」

 

「っっ!! ああ! 任せてっ!」

 

 

 苦々しい顔をするアベルの耳元でアリアがこっそり囁き唇を鳴らせば、アベルの顔は一気に破顔する。

 

 

 “さあ、今日こそ【ほのおのせんし】を仲間にするため、張り切って戦って行こー……!”

 

 

 単純だなーと自分でも思いつつ、アベルは残りの食事を急いで平らげた。

 

 ……【ほのおのせんし】が仲間になれば昼もやってくるし、一気に問題が解決する。

 夜が明けてクリエとシドーと別れるのは淋しくもあるが、まだ思春期に入ったばかりであろう二人とずっと一緒にいるのは、自分たち新婚夫婦にとってはあまり好ましくない。

 

 夜が明けなくなって回数も減っているのに……とアベルはさっさと昼を迎えに行くべく奮起した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「アベルにぃ、炎の戦士もそろそろ仲間になってくれると思うんだよー。もうひと踏ん張りがんばろうねえ~☆」

 

「あ、ああ……(アベルにぃ……)」

 

 

 さて、食事を済ませてアベルたちはオアシスを出発。今夜も何度かの戦闘を経たわけだが、クリエのテンションがやはりおかしい。

 隈が酷くなった顔でヘラヘラと笑顔を見せられても、不気味にしか思えないのだが……。

 

 

「……クリエちゃん、もっとちゃんと寝た方がいいと思うよ」

 

「! 寝てる場合じゃないっつーの!! おらぁっ! 来た来た来たぁあああっっ!! アベルにぃ、奴らが来たよ!」

 

 

 アベルが睡眠は大事だよと伝えるも、クリエはアベルの背後を見るや否や、目を血走らせ武器を手に駆けだした。

 今回現れたのはアベルたちのお目当て、【ほのおのせんし】五匹の群れである。

 

 

「クリエちゃん……!」

 

 

 クリエの言葉遣いが普段と違い 乱暴で戸惑ったアベルだが、すぐに追い掛けた。

 さすがのクリエも一人で【ほのおのせんし】五匹を相手にするのは分が悪すぎる。

 

 ……クリエは呪文が使えないのだ。

 サポートしてやらねば――と、思っていたらアベルの前をシドーが走って行く。

 

 

「たぶんこれが最後だよっ! いけるいける。原稿はできた……ボクは新刊を出したいんだぁああああっっ……!!」

 

「おいっ、クリエ! 一人で突っ走るな……!」

 

 

 クリエが一匹の【ほのおのせんし】に斬りかかり、アベルが追いつく前に到着したシドーも加勢する。

 

 

「おっ! シドー君、もたもたしてないでアレ行こ! オケ?」

 

「お、おう……! オケ」

 

 

 やって来たシドーの姿を確認し、クリエは目配せして素早く武器を【はやぶさのけん】から【ビルダーハンマー】に持ち替えた。

 するとシドーが【ほのおのせんし】の群れに向けて、クリエの身体を持ち上げ宙に放り投げる。

 クリエは空中で四回転。彼女が回転しながら群れに向かっている間に、シドー自らもクリエよりも高く跳躍、その身を回転させた。

 

 ……着地点は【ほのおのせんし】Bの頭上。

 

 二人は空中から同着地点目掛けそれぞれ【ビルダーハンマー】と【こんぼう】を振り下ろす。

 その瞬間、聞こえたのはクリエの大きな声――技名だった。

 




お久しぶりです。
ビルダーたちとの旅もあとちょっと……!

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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