ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

子分になるためには……。

では本編どぞ~。



第七十五話 子分になるために

 アベルはパパスから離れ、ヘンリーの部屋の扉を開いた。

 

 

「こんにちは、ヘンリー王子」

 

 

 アベルは今度は優しく微笑み掛けてみる。

 

 

「なんだ、またお前か? やっぱり子分になりたくて戻って来たのか?」

 

 

 ヘンリーはまだ絵を描いていたらしく、先程と同じように手を止め振り返り椅子から下りた。

 

 ニヤニヤと、一見嫌味ったらしい笑みを浮かべるも、テーブルの上には自分らしき子供とアベルらしきターバンの男の子が、並んで遊んでいる絵が描かれている(上手くはないが、見て何かわかる絵である)。

 先程まで描いていた絵はテーブル奥に置かれており、若者がカエルに驚いている様子が描かれていた。

 

 

「ううん、子分にはならないよ」

 

 

 アベルはまたも拒否する。

 

 

『あぁ……もぅ……』

 

 

 アリアは顔を片手で覆い“あちゃ~”と俯いた。

 

 

「じゃあ、あっちへ行けよ。さようならだっ!」

 

 

 むぅっと、ヘンリーは頬を膨らまし「フンッ!」とそっぽを向くと、椅子に腰掛けた。

 そして、描いていた絵の端に手を掛け持ち上げる。破くつもりらしい。

 

 

「っ、ヘンリー王子!」

 

 

 アベルは慌てて再び声を掛ける。

 

 

「なんだ、またお前か? やっぱり子分になりたくて戻って来たのか?」

 

 

 破こうとしていた用紙をテーブルに置いて、瞳をキラキラさせながら、つっけんどんに訊いて来る。

 

 

『……素直じゃないなぁ……』

 

 

 アベルと遊ぶ気満々じゃない……。

 

 

 アリアはテーブルに置かれた絵を打見に、子供はなんて天邪鬼なの。と苦笑した。

 

 

「…………いいよ。子分になってあげても」

 

 

 素直に遊ぼうって言ってくれればいいのに……。

 

 

 アベルもテーブルの絵に気付いたので、渋々了承したのだった。

 

 

「そんなに言うならオレの子分にしてやろう。隣の部屋の宝箱に子分のしるしがあるからそれを取ってこい! そうしたらお前を子分と認めるぞっ」

 

 

 ふふん。

 

 

 ヘンリーは片手を腰に当て尊大な態度で顎を突き出し、奥の部屋の扉を指差すとアベルに命令する。

 

 

「……………………わかった。取って来るね。行こ」

 

『あ、うん』

 

 

 アベルがアリアに目配せするので、アリアは一緒について行く。

 

 

「行こ……? オレは行かないぞ!」

 

「…………君には言ってないよ」

 

 

 奥の部屋へと向かうアベルをヘンリーが首を傾げて訊ねたが、アベルはちらっと顔だけヘンリーに向けただけで行ってしまった。

 

 

「っな、何だよ、その態度は……! 後悔するぞ!!」

 

 

 ヘンリーの声は奥の部屋の扉が閉じる音でかき消されていた。

 

 

 

 

 

 

 ヘンリーご指定の隣の部屋――。

 

 その部屋のど真ん中には宝箱が置いてあった。

 

 

「あ、宝箱があるね」

 

「……この中にあるのかな?」

 

 

 アリアが宝箱を指差すと、アベルは宝箱に近付く。

 

 

「あれ? わからない(・・・・・)の?」

 

「あ、うん。みたい。この部屋に入ったところまでしかわからないや」

 

 

 何だろう、また(・・)がピタッと止まった気がする。

 

 

 

 

 ……この先が何にもわからない。

 

 

 

 

 アリアと一緒だからまた(・・)が止まったのかな……?

 ……それっていいことのはずなんだけど……、なんだろ……。

 

 思った程全然嬉しくないな。

 ……なんだか逆に不安になって来ちゃう……。

 

 

 アベルは宝箱を開けながら、ちらりとアリアを盗み見ていた。

 

 

「へぇ……。あ……、空っぽ……」

 

「……何にも入ってないね」

 

「仕舞い忘れかな?」

 

「うーん……、かなぁ……。ヘンリー王子に訊いてみようか」

 

「そうね」

 

 

 アベルとアリアはヘンリーの部屋に戻ることにした。

 

 

 

 

 

 

 ――ヘンリーの部屋。

 

 

 二人が隣の部屋から戻るとヘンリーの姿は見当たらず、もぬけの殻だった。

 

 

「あれ……?」

 

「いない……ね。どうしちゃったのかな……」

 

 

 アベルは頭を捻り、アリアは部屋を見回す。

 隠れそうな場所は見当たらない。

 

 

「外に行っちゃったのかな」

 

「誰かに呼び出されたかもしれないわね」

 

「一応、捜した方がいいよね。それに父さんにも報告しないと。何か知ってるかも」

 

「一応って……言い方! もぅ……」

 

 

 二人は部屋から出て行ったのだろうと、通路に出てパパスの元へ。

 

 

「父さん」

 

「どうした? アベル」

 

 

 壁に背を預け、ダンディーな様相で佇んでいたパパスは、アベルが来ると途端目を細めた。

 

 

「ヘンリー王子を見なかった? 部屋から居なくなっちゃったんだけど……」

 

「えっ? ヘンリー王子がいなくなったって!? この通路を通らないと外には行けないはず! しかし王子は来なかったぞ」

 

「そうなの……? でも、部屋には隠れる場所なんて無かった気がするよ……?」

 

「ふーむ……。とにかく見てみよう。お前もついて来なさい」

 

 

 アベルの言葉にパパスは思案顔をし、アベルを引き連れヘンリーの部屋に戻る。

 アリアも「どこに行っちゃったんだろう……?」と首を捻りながら二人の後ろについて行った。

 

 

 

 

 

 ――そうしてヘンリーの部屋にパパスがアベルを連れ立ってやってくると、ヘンリーの不愉快そうな怒鳴り声が聞こえる。

 

 

「あっ! パパス! お前は部屋に入るなと言っておいたはずだぞ!」

 

 

 ヘンリーは最初に居た椅子に腰掛け、絵を描いていた。

 パパスの姿を見た途端、キッとパパスを睨み付け出て行くように手をシッシと払う。

 

 

「やれやれ……。とことん嫌われたものだな……。失礼つかまつった」

 

 

 あまりの剣幕にパパスは目礼して、アベルを連れ部屋を出た。

 

 

「アベルよ。夢でも見たな。王子はちゃんといたではないか。ともかく王子の友達になってやってくれ。頼んだぞ」

 

「え……、あ、うん……(本当に居なかったんだけどなぁ……)」

 

 

 パパスはアベルの頭をぽんぽんと撫でて、先程佇んでいた場所まで戻って行った。

 仕方がないので、アベルはヘンリーの部屋へと戻り、彼に話し掛ける。

 

 

「どうだ? 子分のしるしを取ってきただろうな!?」

 

「あの……何も入ってなかったんだけど……?」

 

「なに? 宝箱は空っぽだったって? そんなはずはないぞ! 子分になりたければもう一度よく調べてみな!」

 

「う、うん……」

 

 

 ヘンリーの勢いに呑まれ、アベルは再び奥の部屋の宝箱を調べに行くことにした。

 奥の部屋の扉を開き、アベルとアリアは宝箱を見下ろす。

 

 

「……さっき何も入ってなかったよね」

 

「うん。なかったよ?」

 

「だよねぇ……」

 

 

 アベルはパカッと宝箱を開いてみる。

 念のため蓋の裏側も見てみるが、何かが貼り付けられているといった様子はない。

 やはり中は空っぽだった。

 

 

「ん~? 変ねぇ……」

 

「うん……妙だな……」

 

 

 ここに来てアベルは某少年探偵宜しく、顎に手を当て難しい顔をする。

 

 

「ぁ…………プッ! ……あははっ、アベルったらコ〇ン君みたいっ!」

 

「え……コ〇ン君って誰?」

 

 

 アリアが突然吹き出し、笑うのでアベルは目を瞬かせた。

 

 

「んーと、……探偵ね!」

 

「たん……てい? 何それ……。アリアって面白い事ばっかり言うんだね」

 

「ふふっ、そう?」

 

「そうだよ。……やっぱり宝箱の中は空だね。別の場所に仕舞って忘れてるのかもしれないからヘンリー王子に訊いてみる」

 

「うん」

 

 

 アベルはヘンリーの部屋へと戻るのだった。

 




ヘンリーもアベルも可愛い。

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感想など頂けたらめっちゃ嬉しいです。

読んでいただきありがとうございましたっ!


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