ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

前回あらすじ>はいっ、必殺技は大きな声で……!

す、すぺしゃ……!

では、本編どぞー。



第七百五十六話 クリエとシドーの必殺技

 

『……っ、すぺしゃるふぁいてぃんぐこんびねーしょんあたーっくぅっっ!! 異世界すぺしゃる!! あ、やば、すぺしゃる二回言っちった!』

 

 

 二人が着地すると衝撃波が発生し、辺りの砂が周囲に撒き散らされる。

 アベルは飛んで来た砂が目に入らないようサッとマントを翻し避けた。ピエールたちも顔を背け、何とか凌ぐ。

 

 

「……すぺ……? お、おお……っ!?」

 

 

 衝撃波が治まり、アベルが【ほのおのせんし】のいた場所に視線を戻すと、そこには【ほのおのせんし】が一匹だけ無傷で残ってはいたものの、他の四匹の姿が消し飛んでいた。

 

 

「アベルにぃ! ラスト一匹任せた!」

 

「あ、ああっ! じゃ、僕も、ピエール! 連携技だっ!」

 

 

 ――連携技かっこいいなぁ! 僕もやってみたい……!

 

 

 クリエにサムズアップで残りの一匹を託されたアベルはピエールに合図を送る。

 ……つい、自分も連携技をやってみたいと思ったのだ。

 

 

「え、ええっ!? そんな急に言われましても……無理ですよ!」

 

「えー!? アリアといっつも連携してるじゃないか!」

 

「アリア嬢は特別なんです!」

 

 

 アベルの無茶振りにピエールはすぐに応えることができず、はっきりと断る。

 アリアとは付き合いが長く、主従関係とはいえ、アベルのように彼女から特に何か命令されて戦ったことはない。だからこそできる阿吽の呼吸であって、主であるアベルからの命令で連携技を繰り出すのであれば練習が必要なのだ。

 

 

「くっ……。わかったよ、じゃあプックル!」

 

「がうう?? がうがう(我、連携とかムリポ。熱いのは苦手)」

 

 

 ピエールに振られてしまったアベルは眉を歪ませ矛先をプックルに変えるが、プックルは【ほのおのせんし】に近付きたくない様子で、アベルの視線から目を逸らした。

 

 

「くっ……プックルもダメなのか……! クリエちゃんたちが羨ましい……!」

 

 

 ――僕だって“すぺしゃるすぺしゃるふぁいてぃんぐこんびねーしょんあたっく”をしてみたかったのに……!

 

 

 コンビ技など持ち合わせていないアベルは、仕方なく単身【ほのおのせんし】目指し駆けてゆく。

 クリエの技名が格好良すぎてそれを超える技名を――と思ったのだが、誰も参加してくれなかった……。

 

 

「ええいっ! ならばソロでいこうじゃないか! くらえっ、父剣・一刀両断・極(ぱぱすそーどあたーっく・えくすとりーむ)……!!」

 

 

 ……アベルは砂を蹴り付け飛躍、【パパスのつるぎ】を頭上に掲げ【ほのおのせんし】目掛けて力任せに振り下ろす。

 

 

「ぎゃああああっ……!!(やっべー技名ー!!)」

 

 

 【ほのおのせんし】が恐ろしいものでも見たような怯えた顔で倒れていく……。

 ……技名はともかく、アベルの攻撃は【会心の一撃】となったようだ。

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ……うん。我ながらいいネーミングだったな」

 

「……(アベル殿……クソダサいですよ……)」

 

 

 一撃で倒れた【ほのおのせんし】を見下ろし、満足そうに笑みを浮かべるアベルに誰もツッコむことはなく、ピエールがアベルの背中に思いをのせた視線だけ送った。

 ……ちなみにクリエとシドーも互いに顔を見合わせ苦笑いだったが、プックルは瞳をキラキラと輝かせ、気に入った様子。一方でメッキ―は困惑し固まって砂の上に倒れた。

 魔物の好みも十人十色らしい。

 

 馬車から見ていたアリアはといえば、優しい瞳をアベルに向けて、にこにこと微笑んでいる。

 ダサいと思ったのか、格好良いと思ったのか、どちらかはその笑顔から読み取ることはできないが、アベルのネーミングセンスを評価できるほど、アリアは良いセンスを持っていない。

 ……アベルが楽しそうならそれでヨシ……、恐らく彼女はそんな感じなのだろう。

 

 アベルの背中越しに馬車が見え、アリアが視界に入ったピエールは、彼女も主のネーミングセンスを是とする者で、似た者同士なのかもしれない――と、未来の二人の子の名前が心配になった。

 

 

 そして――。

 

 

「や」

 

「……ど、どうも……なんか自分をお待ちだったとか風のウワサで……ボボッ」

 

「やったぁああああっっ!! ファイア! 待ってたよ……! って、あちち……」

 

 

 アベルが目を見開く中、クリエたちの攻撃で倒れていた四匹の内一匹の【ほのおのせんし】が起き上がり、耳の後ろを掻き掻き愛想笑いを浮かべる。

 嬉しさのあまりアベルは【ほのおのせんし】に抱きついたが、炎の熱さにすぐに離れた。

 

 

「あ、自分モエールって名前で……。すみません、火傷に気を付けてくださいボボッ」

 

 

 【ほのおのせんし】の頭髪は炎でできている。

 抱きついたアベルは小さな火傷を負ってしまったが、笑顔だ。

 

 ……彼の名前は【モエール】というらしい。

 アベルの遠き記憶の中では【ファイア】だった気がしたが、どうも違うようだ。

 

 

「モエールか……まあ、名前なんてなんでもいいや。君を是非仲間にしたいんだ」

 

「こちらこそよろしくお願いします、アベル様……ボボッ」

 

「ああ、よろしくモエール! じゃあ拠点に戻るから馬車に乗ってくれるかい?」

 

「ええ、わかりましたボボッ」

 

 

 【ボボッ】という語尾が少々気になるが、モエールは礼儀正しい。

 クリエたちにも紹介し、アベルはモエールを馬車まで連れて行く。

 

 

「アリア、モエールだよ!」

 

「わぁ……! 明る~い! 温か~い! 初めまして、私はアリア。モエールさんよろしくね!」

 

 

 アベルの紹介に、キャビンから顔を覗かせるアリアが暖を取ろうと手を伸ばす。

 砂漠の夜は非常に冷える。

 モエールの頭髪――燃え続ける炎がそこにあるだけで冷えた身体が温まるからありがたい。

 

 

「……ほぉ……なんて眩しく麗しい……火力が上がるボボッ」

 

 

 キャビンの上から不躾に手を(かざ)してくるアリアに嫌な顔一つせず、モエールはアリアを見上げその手を取る。

 瞳は大きく見開かれ、頭髪の炎が一際大きく燃え上がった。

 

 その様子にアベルが“またか……”と渋い顔でモエールを見る。アリアは魔物にも好かれやすいから仕方ないかと苦笑した。

 

 

「わっ、炎がおっきく……!」

 

「あ、熱いボボッ?」

 

「うん、馬車燃えちゃうかも……」

 

 

 このままモエールを馬車に乗せていいのだろうか……屋根に引火どころか床板も燃えかねない。

 アリアとモエールの会話にアベルは、別世界でそんなこと気にしたことなかったなと瞬きを繰り返す。

 

 ……さて、どうしたものか。

 そう思っていたらモエールが二カッと白い歯を見せた。

 

 

「あ、馬車に乗る際、炎を熱くないようにしておくので馬車は燃えませんよ。安心してくださいボボッ」

 

「へえ、そんなことができるんだね。初めて知ったよ」

 

「モエールさん、すごーい!」

 

 

 “ぱちぱちぱち”

 

 モエールの言い分にアベルもアリアも感心して手を小さく叩き合わせる。

 

 

「精霊ですから炎を操るのは容易いのでボボッ」

 

 

 二人に拍手を贈られたモエールは、得意気に人差し指を頭髪に向けると一瞬目を閉じ、炎を変質させた。

 燃える頭髪の炎の外側に薄い膜が張られたような気がする……。手を近付けると先ほどアリアが翳した時より温度が低い。

 

 モエールが触ってみろと言うので、二人は言われるままに恐々炎の頭髪に触れてみる。

 ……人肌より少々温かいという程度の温度だった。

 

 

「わぁ、私炎に触ったの初めて……ふしぎ~。温かいけど熱くない……」

 

「僕もだ……」

 

「っっ、これなら馬車は燃えないボボッ」

 

 

 炎に触れているのに火傷をしないというのはかなり不思議な感覚で、感触はないが、熱気だけを感じる。

 温度は40度前後といったところだろうか……火傷することはなさそうだ。

 アリアとアベルはつい、モエールの頭皮をぺちぺち。炎の中に手が埋まる感覚を楽しんだ。

 

 ……なるほど、馬車に乗る時はこうしていたのかと合点がいった。

 

 




馬車燃えると困るんよ……。

モエールは本来二匹目の名前ですが、なんとなくファイアよりこっちかなと思ったのでモエールに。
ふと語尾が面白いキャラが欲しくて“ボボッ”と付けてみました。
燃ーえろよ燃えろ~よーっと。

アベルがかっこ可愛くて好きな回です。
クソださ技名がきらりと光るw

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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