ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

前回あらすじ>アベルの仲間になったことを後悔し始めたモエール。

弱火がいいのです。

では、本編どぞー。



第七百五十八話 大事なのは火力

 

 

 

 

 

 モエールが仲間になったことを後悔し始めて三十分後――。

 

 

「モエールさーん! ごはん持って来たよーって、モエールさんっ!? クリエちゃんなんてことを……!」

 

「いやあ~、ちょっと固定しただけだよ? ……やーっぱ空腹時にはコスパのいいパンだよねーウフフ☆ んぐんぐ……」

 

 

 クリエがシドーを呼びに行き、しばらくして戻って来ると、そこにはシドーだけでなくアベルとアリアの姿もあった。

 モエールはただでさえ青い顔だというのに、寒さに唇を紫に変化させぐったりした様子。

 温かい【パンプキンスープ】を持って来たアリアに僅かだけはにかむ。

 ……寒さで元気が出ないらしい。

 

 アリアは抗議したが、クリエはなんでもないことのように手にしていた【パン】を咀嚼していた。

 

 

「モエールさんは炎の戦士なんだよ!? こんな氷で囲っちゃったら寒くて凍え死んじゃうじゃないの?」

 

「大丈夫だって! 死にゃーしないよ。なんだったら薬草たくさんあるから調節するし」

 

「ダメージ受けてるじゃん!?」

 

 

 【氷】の囲いに覆われたモエールは素材こそ【土】と違えど、生き埋めにされているも同然――。

 ……アリアには受け入れ難かったようだ。

 

 

「けど固定しておかないと闇のランプが直せないよ?」

 

「そうだけどっ、可哀想だよ……。ね、アベル」

 

 

 【やみのランプ】を直すために必要な工程であることはわかる。

 だが寒さに凍える仲魔を三日間、この状態で放っておくのはあまりにも酷くはなかろうか。

 クリエに言ってダメならアベルに訴えてみよう――。アリアは隣に立つアベルを見上げて訴えかけた。

 

 

「……う、うーん……(アリアは優しいからなあ……)」

 

 

 ……アベルは腕組みして口を濁す。

 

 アベル自身、モエールが拘束されていても別に何とも思わない。

 なぜなら、モエールが死ぬことはないからだ。

 ただ少し寒い思いをしてもらうだけ――、可哀想ではあるが世界の夜明けが掛かっている以上モエールには耐えてもらうしかない。

 

 アリアもそれはわかっているはずだが、目の前で生き埋めにされた仲魔の姿を見てしまうと辛かったのだろう。

 愛妻に上目遣いで訴え掛けられたとあっては、どうにかしてあげたくなるわけで……。

 

 

「なあ、モエール。キミ、寒いと死んでしまうのかい?」

 

「……死にませんけど……。寒くて凍えるだけで……」

 

 

 わかってはいたがアベルはモエールに訊ね、アリアに目配せをする。

 アリアは「でも……」と心配そうにモエールを見つめた。

 

 

「でしょー!? いけるいける! ングッ!」

 

 

 クリエは食べ途中の【パン】を一気に口に突っ込み、今度はいくつかの作業台を出し始め「これか? こっちかな?」と作業台を選んでいる。

 【やみのランプ】復活にはビルダークリエに従うのが一番だ。アリアもそれは解っている。

 心苦しいが、死なないのであれば頑張ってもらう他ないのだ。

 

 ……これからクリエがシドーと二人で割れたランプの修復作業をするということで、その間にモエールに食事を摂らせることにした。

 

 

「……っ、ごめんねモエールさん。今、ごはん食べさせてあげるね。あーんできる?」

 

「……アリアさま……あー……」

 

 

 “ぱくっ。”

 

 アリアは【氷】の囲いに上り、スプーンで一掬いした【パンプキンスープ】をモエールの口に入れてやる。

 そもそもモエールは基本的に口を開けている。

 “あーん”するのは得意なようで、スムーズに口に運ぶことができた。

 

 

「……モエールさんの炎に世界の夜明けがかかっているの。申し訳ないけど頑張ってもらえる……? 作業が終わったら温かいもの、好きなもの、何でも作ってあげるからね」

 

「……おいしい……。温かい……ボボッ……ボッ!! 頑張るボボッ!」

 

「わっ! 炎が強くなった!? わあっ!?」

 

 

 アリアにスープを食べさせてもらったモエールの頭髪が一際大きく燃え上がる。身体が冷えているというのに食事とアリアの存在で火力が上がったようだ。

 驚いたアリアは【氷】の囲いの上でバランスを崩し、背中から倒れていく。

 囲いから落ちても地面は砂だから死ぬことは無いが、打ちどころが悪ければ怪我をするかもしれない。

 

 

「アリアっ!! ……っと! ……ふぅ」

 

「っ、アベル……ありがとう」

 

「うん、大丈夫?」

 

「平気!」

 

 

 ……囲いのすぐ下で見守っていたアベルが、落ちて来たアリアを咄嗟に受け止め事なきを得た。

 

 

「――で、金とー……ん……? あっ! アリアねえ! ダメだよ強火にしちゃ! 弱火弱火!」

 

「えっ!?」

 

 

 少し離れたところでシドーと作業中のクリエが【氷】の囲いの中心で燃える大きな炎に気付き大声を上げる。

 アリアもその声に驚き囲いを見上げた。

 

 ……【氷】の囲いの上で大きな炎が上がっている……。

 

 

「アベルにぃ! アリアねえとチェンジっ!」

 

 

 クリエの怒気を孕んだ大きな声と腕が交差し、交代を命じられる。

 

 

「えっ? わ、わかった。アリア交代しようか」

 

「へ? 交代?」

 

「うん、残りは僕が食べさせるよ」

 

「そ、そう? じゃあ、お願いします」

 

 

 そっと地面にアリアを下ろし、アベルは【氷】の囲いに上って行く。

 【はしご】が掛けてあるから上り下りがしやすい。

 さすがはクリエ。一時的に利用するために作った囲いとはいえ、細かいところも忘れないのはあっぱれだ。

 

 アリアが下で見送る中、囲いの上まで上りきり、アベルが食事の続きを始めるとモエールの炎が徐々に元の強さに戻っていく。

 

 

「すまないね」

 

「いえ、三日間眠らなければいいそうなので、頑張ります」

 

「ありがとう、アリアも喜ぶよ」

 

「っ、アリアさまぁ♡ ボボボボッ!!」

 

「っ……モエール、興奮しないように……抑えて抑えて……」

 

「は、はい……」

 

 

 【氷】の囲いの上で、アベルとモエールの会話が聞こえる。

 ……固定されたモエールの位置からは死角となっているのか、アリアを見ることはできないようで、時折炎が強くなったが徐々に安定していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……いい? アリアねえは三日間モエールに会うの禁止ね。アリアねえがいるとモエール強火になっちゃうからね」

 

「……はい、すみません……?(どうして強火になるんだろう……)」

 

 

 【邪教の作業台】なる“しゃれこうべ”ののった天板を、骨を模った脚で支えている少々おどろおどろしい作業台にて【炉】で溶かした金属を【ビルダーハンマー】で打ち付けつつ、ながら作業でアリアを呼び付けたクリエは説教をする。

 クリエのテンションはやはり高めで、アリアの呼び方も“アリアねえ”になっており、語気も強め。徹夜続きで余裕がなさそうだ。

 

 ……意味がよく解らないが、勢いに呑まれたアリアはとりあえず軽く頭を下げておいた。

 

 

「ここはオレたちに任せて、アリアはテントに戻って皆と過ごしてればいいんじゃないか?」

 

「だねー、それがいいかな。修復が終わったら呼びにいくし」

 

 

 にこにこと笑顔のシドーがクリエの手元を見下ろしながら、ちらとアリアに視線を送る。

 クリエも同意し、アリアに満面の笑みを向けた。

 

 

「そう? じゃあ、私、三日間みんなの食事を作って持ってくるね」

 

 

 作業を手伝えないなら、食事くらいは作ろう。

 アリアは今自分にできることを――と申し出る。

 

 

 ……クリエの背後には、モエールへ食事を与え終えたアベルが歩いて来るのが見えた。

 




決してモエールをいじめたいわけじゃないんですよ……。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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